「海月が雲になる日」長町武家屋敷の不思議なアジアレストラン。クリエイティブな料理は目が離せない。たどり着くまでには4つの扉!

料理: 7.7 その他: 7.3 ポイントについて
海月が雲になる日 (くらげがくもになるひ)
営業時間 12:00〜 ※予約制
定休日 日、月 (営業日や時間などたびたび変更するので、詳細はお店にご確認ください。)
価格帯 ランチコース(5,500円)
訪問回数 30回30回以上、ヌードル店の時から

長町武家屋敷の一角にある不思議なタイ料理店。
元々は「くらげが雲になる日」という名前(“くらげ” がひらがな)で、夜タイヌードルのみを提供しているお店でしたが、現在はくらげが漢字の“海月”になり、現在は昼に予約制で営業。お食事はお一人様5,500円です。
(営業時間や定休日などがたびたび変わるので、予約の際お店にご確認ください。)

空間が広いのに少人数制なのはお一人で調理もサービスもされているからで、行き届く範囲で営業をされています。個人的には、少人数制のほうがこの素敵な雰囲気を壊さずに堪能できて良いと思いました。
料理はタイ、ベトナムなど東南アジア料理がベースです。現地の味と伝統料理を再現しつつ、特にハーブ・野菜や調味料には地元産にこだわり、日本人の味覚に寄り添うような組み立てもしてあり、一品一品丁寧に作り込んでいます。
アジア料理の肝であるハーブや野菜は、富山で農薬・化学肥料不使用でお野菜やハーブを作ってる農家「PHAM farm(ファムファーム)」さん、中能登町の自然栽培・無農薬農家「あんがとう農園」さんから仕入れているため、見るからに生命力に溢れピンとしていて、口の中でもパッと鮮明な風味が印象的です。

ちなみに、とっても不思議な店名ですが、ラーメンどんぶりをひっくりかえした図をくらげに見立て、空に昇っていく様子をイメージし、ラーメンという料理を大衆的イメージとはまた違ったハイエンドな食べ物にしたかったという思いが込められています。同店は一見料亭さん風の佇まいですが、この外観でタイ料理店というギャップがまた魅力でもあります。

冬はこの辺りの長町武家屋敷では、雪から壁を守るために“薦掛け(こもがけ)”された様子が見られます。これもまた風情あり。

表門の最初の扉から数えて、4つの扉を開けたら店内。開けるたびドキドキしますでの、ぜひ実際に行って体感してください。隠れ家的かつ大人の好奇心をくすぐる造りになっています。






店内は、アジアンで和モダンな空間にアンティーク調の家具がマッチしていて不思議な居心地の良さ。以前からインテリアが変わって、また少しイメージが違っていました。海月さんの良さの一つはやはりこの非日常空間。何度来てもいいですね。


2022年12月20日 ランチ

雪がうっすら積もった冬のくらげさんは、一段と風情あり。
お料理は、最初から最後まで個々の料理も全体の構成も考えられていたし、クリエイティブな要素も発見できて新しい美味しさに驚きました。訪れるたびに発見がある、目が離せない一店。



●ハーブと生姜のドリンク

(コース価格は5500円に変更になっていました。)
●カイトゥン
カイトゥンタレーモーファイは火鍋で作るシーフード茶碗蒸し。こちらは白子入りで、干海老と干貝柱の旨味を効かせ、ハーブの風味を乗せて。同店らしいとても良い序章。

●ラープ
ミント、クレソン、ディル、春菊など香草を使用した2種のサラダ。菊芋の表面に細かく包丁を入れて揚げ、鱗揚げのような食感を出し、中はホクホクねっとりしており、この食感の対比が新しくて美味。

●香箱ガニ
揚げ春巻きはアジア料理でよく出てきますが、北陸らしく香箱ガニを織り込み、味わいも計算してあって拍手でした。
春巻きの中は、カニ身とココナツの胚乳、さらにじゃがいもの千切りで食感を出し、咀嚼した時に驚きがあります。チリソースには、レア感のある濃厚な内子と外子の粒感を出してあり、香箱ガニの再構築的な料理でもある。ナスタチウムに乗せて。

●ナメラ
ナメラをココナツウォーターと豚で煮込むことで、味に骨太さを出してあり、和食とはガラッと違った煮込みに仕上げてあります。

●鱸ハーブ蒸し
バナナの葉を使用した鱸のハーブ蒸し。チーファーという唐辛子の辛味と、ココナッツミルクの妖艶なまろやかさ、ハーブの風味が三重奏。

●鴨マッサマンカレー
お献立の流れも計算された鴨のマッサマンで、アクセントの鬼灯の使い方も絶妙でした。もも肉とムネ肉は絶妙火入れ。

●才巻エビ トムヤムヌードル
和食に通じる繊細さのあるトムヤムは、スープが胃から全身に染み渡るよう。まずはそのまま味わってから、ノコギリコリアンダー・ライム・海老味噌ダレでガラッと味変。


●チェー
ベトナムのご当地スイーツとして超メジャーですね。かき氷にフルーツ・タピオカ・豆などを合わせた甘味で、現地ではよく食べますが、見た目にあまりこだわりないなーなんて思っていました。が、“日本人シェフがブラッシュアップしたらこうなるんだ!”という美しさとおいしさでした。
白インゲン豆、キウイやパッションフルーツなどの果実、タピオカ、リンゴシャーベットで、ジューシーで爽やかで繊細で、かなり洗練されたチェー。とても印象的な一品。


●モナカ
タイのスイーツである“カノムモーケン”の里芋バージョンを小豆と共にモナカで挟んだ小菓子とお抹茶で締めくくり。最後まで引き込まれたコースでした。

2022年7月27日 ランチ

夏、特に露地ハーブが旬で良い時期。さらに、夏はお庭の緑が映えており、ゆらぎのあるガラス窓から差し込む自然光も風情あり。

コース構成も考えられていてとても良かったです。

●赤紫蘇ジュース

●鱸 蒸し物
鱸の赤ちゃんを、ホムデン・ガランガル・ディルなどのハーブと共に笹の葉に包んで蒸し物にして。メギスの魚醤で味を添えてあり、そのまろやかで品のある旨味が繊細な鱸にピッタリです。魚醤の中でもメギスは癖が少なく、出汁のようにして使えるんですよね。


●ゴイクン
ファムファームさんの野菜とハーブの生春巻き“ゴイクン”。パイナップルソースの元気のある南国の風が吹き込む。

ホーラパー(タイバジル)、ノコギリコリアンダーと。

●豚肉ファルシ
レモングラスを苞のようにして豚肉を詰めた、ワイルドで爽やかなファルシ。

●牛肉の米麺
ちゅるんと滑るような舌触りの牛肉の米麺に、八角の風味が効いた複雑なスープが美味。パクチーの茎、ネギ、ピーナッツのアクセントが秀逸。

●枝豆のグリーンカレー
枝豆を主役にしたグリーンカレー。むせかえるような枝豆の風味と濃厚な味わいを、コリアンダーとコリアンダーシードの個性的な緑の風味で持ち上げる。

●デザート
スイカ“姫甘泉”のシャーベット、タイガーメロン、真桑瓜、ココナッツソース、栗豆、2種類の寒天
最後のデザートまで海月さんらしい妖艶さがあり、この不思議な世界観の余韻を楽しみながらお店を後にしました。

2021年10月6日 ランチ

お一人で調理されているので、30分ずつ入店時間をズラしてお客さんを入れていました。
秋の晴れた日、気持ちいい風が縁側から吹き込んでいました。こんな日の海月さんは特に最高ですね。

●ランチ
まずはお料理が3皿登場してから、カレーが登場しました。
・ハーブサラダ
「PHAM farm(ファムファーム)」さんのミント、ディル、パクチー、クレソンと鮎の魚醤でマリネした鯛。それぞれの個性的な風味が多方向に広がり、酸味でさっぱり切るフレッシュな爽やかさの一皿でした。

・鱸
ライムで蒸した鱸とセロリのサラダ。セロリの妖艶な風味をライムのアジアらしいフレッシュな柑橘味がキリッと締めてくれます。

・レモングラスのファルシ
レモングラスの素材感を活かした一品。レモングラスに豚肉を詰めて焼き上げることで、レモングラスの鮮烈な風味が移って美味。ホーリーバジル、ノコギリコリアンダー、へべすと合わせて、複雑な風味も重なり、クセになる美味しさ。これはまた食べたい一品です。

・レッドカレー
「あんがとう農園」さんのアイコトマトとナス、海老がゴロゴロ入ったレッドカレー。さすが海月さんのカレーは美味しいですが、そこに素材の良さも加わっていてさらに美味。輪郭がしっかりした風味豊かな長粒米もカレーの立役者。

2021年6月15日 ランチ:カオヤム

まだ夜の営業はしばらくされないそうです。ランチは11時から30分おきに予約を入れて、(店主のワンオペですが)スムーズに提供できるようにされています(予約は1人から可能。5名以上での予約は不可)。
昼の海月さんはお庭の緑が心地よくて、ついつい時間を忘れてしまいます。

●2021年6月のランチ
6月はカレーの月で、グリーンカレーかレッドカレーの選択でグリーンカレーを選択しました。
・カオヤム
まずは前菜として、野菜とご飯を混ぜて食べるタイのライスサラダ「カオヤム」が。ジャスミンライスはバタフライピー(タイではよく使われるお花)で炊いているため綺麗な紫色をしています。全部をしっかり混ぜてから食べると、口の中で胡瓜のフレッシュ感が弾けたり、柑橘の甘酸っぱさがぴゅっとアクセントに効いたり、ハーブの香りが広がったりと次から次へといろいろな味と食感が現れます。


・ヤムガイサップ
軽く干して旨味が凝縮した鶏手羽を素揚げして、刻んだミントやパクチーの茎を添えて。素揚げの香ばしさにハーブの爽やかな風味がのる、夏にぴったりの一品。

・ケーン・キャオワーン(グリーンカレー)
ご存知グリーンカレーは、スパイスやハーブ、ココナッツミルクをベースとしたタイの代表的なカレーです。同店では、野菜は無農薬ほうれん草やピーマン、マメ科の植物などの緑野菜を使用。カレーはココナッツミルクがやや濃厚なタイプで、味の濃い無農薬野菜に調和していました。お野菜が美味しく食べられるグリーンカレー。

2021年4月27日 ランチ:トムヤムヌードル

コロナ渦で長らく営業されていませんでしたが、待ちに待ったランチ営業開始です(ディナーはまだしばらくお休み)。調理もサービスもお一人でされているということもあり、11時から30分おきに予約を入れて、スムーズに提供できるようにされています(予約は1人から可能。5名以上での予約は不可)。
昼の海月さんは、店内から眺めるお庭も見どころ。この季節は緑が目に眩しく、縁側の開いた窓から気持ちの良い風が入ってきて頬を撫でてくれます。日常から離れて、時間がゆっくり流れている感じも好きです。

●2021年4月のランチ
4月のランチは、トムヤムクンヌードルと鶏ガラスープのタイヌードルの2種類。5月はタイカレーセットにされるそうです。
・海老の炭火焼
まずは海月さんらしい前菜から始まりました。炭火焼の海老にハーブペーストをのせて。

・トムヤムヌードル
ヌードルは海月さんお馴染みの、スタイリッシュでどっしりとしたどんぶりで。ヌードルはつるっと喉ごしの良い米粉麺です。

中能登「あんがとう農園」明星さんの野菜、富山県「ファムファーム」斎藤さんのフレッシュハーブ、山菜が別皿で提供されてテーブルの上が春に。ディル、野芹、タラの芽、コシアブラ、コゴミ、大根、水菜とバラエティー豊か。

スープはさっぱりした味わいですが、ひき肉やミンチ状にした海老がたっぷり入っており、余韻に旨味が広がります。野菜・ハーブ・山菜は、しゃぶしゃぶのようなイメージでスープに浸して、ヌードルと一緒にいただきます。さっぱりで旨味あるスープと優しい苦味の山菜、どちらの主張も打ち消すことなくうまくマッチしており、自然の美味しさも活かしてあり、バランス良く感じました。


さらに、魚醤やライムで構成されたドレッシングを加えると、酸味や奥行きが加わり、ますます味わいが複雑になります。食べ出したら止まりません。
・ジャスミンライス
最後の締めはジャスミンライスにスープをかけて。ジャスミンライスの個性的な香りがスープに溶け合います。さらに、牛蒡と玉ねぎの辛味ペーストを溶かして食べると、深みが増して大きく味変。最後まで楽しませてくれました。

2020年2月24日 ディナー:コース

夜の予約は1組限定で、4人から6人までと限られています。(今回は5人で予約しました。)人気のため予約はすぐに埋まってしまい、今回も約2ヶ月前に予約していました。
お客さんは1組限定なので自然と仲間同士の会になるわけで、和気藹々とした温かな雰囲気になるのもよい感じ。料理はフルコースで大皿料理で華やかに見せる演出も多く、何よりプレゼンテーションもしっかり考えられていて素晴らしい。東南アジア料理の複雑な味の組み立ての面白さも教えてくれます。

●バナナの葉蒸し
ラオス料理のインスピレーションで、ガンドとレモングラスなどハーブに鮎の魚醤を加え、バナナの葉にくるんで蒸した料理です。包みを開けるドキドキ感。ほわっと湯気にのってバナナの葉の香りがふわっと鼻腔をくすぐります。口の中に現れるいくつもの不思議な風味が、まずは海月さんに来た良いプロローグとなります。

●生春巻き
(5人で訪問)予め4ピース準備してくれて、残りの1ピースは中身を解説しながらその場で巻いてくれました。このような演出が要所に準備されていて素晴らしいと思います。
生春巻きと言えばベトナムですが、現地で食べるそれよりも繊細で食材へのこだわりも詰まっています。アマダイの松笠揚げを主役に、パイナップル、キュウリ、ココナッツの果肉、「PHAM farm(ファムファーム)」さんのノコギリコリアンダーなど多種の食材を巻いてあります。アマダイ鱗のパリパリ乾いた音が口の中で響き、フレッシュな食材のみずみずしさや風味が次々現れる。


●トートマムクン
海老のさつま揚げ。手作りのすり身料理の出来立てのおいしさ、一口で「ああ、うまい」。プリッ、ほわっとしたやさしい弾力を感じてすぐ、甲殻類とスパイスの風味が華やかに広がります。

●バインセオ
ベトナム料理の代表格のひとつであるクレープを折り畳んだような玉子焼き。通常はもっと生地がしっかりしていますがこれはほわほわ。なぜならば生のココナッツ果肉をたっぷりと入れてあるから。味はトロピカルというよりも落ち着いておりとても繊細。

●タマリンドスープ
タマリンドのスープは東南アジアでよく見かける酸味あるスープで、日本でいう味噌汁の立ち位置。ツンとくる酸味が暑い国でさっぱりと頂けて良いんですよね。鰤、チンゲンサイなど。ヌクマムをプラスして味を変えて。


●豚の角煮、カレー、ソーセージ、長粒米
長粒米と共に、豚の角煮とカレーとソーセージが登場。

長粒米はベトナムのホーチミンから車で1時間半のところにあるゴーコンという海の街で育てられたもの。キラキラと光り輝く純白のお米。長粒米らしい風味を持っているのに、味わいがとてもナチュラルで軽いのに驚きました。おいしくておかわりを頂きました。貴重なお米なのにすみませーん。美味。


カレーは「あんがとう農園」さんの紅はるかと鶏肉入りの、ココナッツミルクベースのカレー。


ソーセージは生ソーセージで、焼く前にまずは現物を見せてくれたあたりも素晴らしかった。

●フォーボー
シメは牛肉のフォー。シナモン、クローブ、ワイルドカルダモン、八角、「PHAM farm(ファムファーム)」さんのノコギリコリアンダー、フライドオニオン、フライドレモングラス、ライムなど好みでトッピングし味を変えて楽しみます。クリアなスープが美味。


●ピスタチオジェラート
デザートは生ココナッツ添えのピスタチオジェラートとフルーツ。フルーツはハーブコーディアルでマリネしてあり、ひと呼吸置いてフローラルな風味が余韻に残ります。最後まで海月さんらしさが詰まったコース、楽しませてもらいました。拍手。


2019年12月2日 ランチ:メギスのいしるのトムヤムクンヌードル

2019年12月のランチは、「チキンブロスのライスヌードル」と「メギスのいしるのトムヤムクンヌードル」の2種類で、どちらもジャスミンライスと飲み物付で1600円でした。私は後者のトムヤムを選択。以前のタイヌードルのみの時のようにどんぶり単品で提供されるのかと思いきや、薬味トッピングが別添えでテーブルの上が華やかになり嬉しい驚きでした。
・中能登「あんがとう農園」明星さんの野菜を中心としたトッピング野菜(ヌードルにのせる)

・富山県「ファムファーム」斎藤さんのフレッシュハーブ(ディル、ノコギリコリアンダー、パクチー)、富士酢とカフィアライムリーフのドレッシング、ライム、タケノコ、炒ったレモングラス、自家製柚子胡椒

・メギスのいしるのトムヤムクンヌードル
スープは赤みがかっていますが、辛さが強いわけではなく、和な印象も感じられるさっぱりと品のあるおいしさ。魚醤は能登町桜井さんの天然メギス(ニギス)のいしるを使用。メギスのいしるは能登の魚醤の中でも一番クセがなくて、魚醤にあまり馴染みのない方も“旨味”として味わえると思います。

ヌードルは米粉麺でつるっと喉越しよく、あっさりしたスープにマッチ。


フレッシュハーブを手でちぎって入れ、薬味を加えて、風味や辛味、酸味を足したりしながら味を変えて。味がどんどん複雑になります。複雑な味わいがタイ料理の醍醐味。もう少し足して、もう少し足してと、止まらなくなるんですよね。

・ジャスミンライス
最後はこのスープをジャスミンライスにひたひたにかけて。ジャスミンライス特有のクセのある香りがスープと溶け合い、また味わいに奥行きが出ます。おいしい。


・辛口ジンジャエール

2018年1月 ディナー:コース

お料理は地物食材を取り入れたタイ料理で、器にも注目で、蒔絵を施したオリジナルの漆器、オリジナルの焼物などこの空間に呼応します。
●ヤムウンセン
タイの春雨サラダの海月スタイル。春雨やひき肉、ハーブ、トマトやキュウリなどいろいろな野菜を輪島のいしるで。さらにこぶみかん入りのドレッシングをかけて。合わせたお酒は「パラダイ酒」という遊び心溢れる名前ですが、本気の酒。酒蔵さん自家製の無肥料・無農薬・無堆肥で天日干しのコシヒカリを使用したこだわりの酒です。酵母も創業340年の蔵付で自然の力で醸されており、シャンパンのようなシャープな酸味と微発泡もあり、後から米らしさが追いかけてくるという複雑で不思議な味の美酒です。この複雑な味はタイ料理の複雑な風味や味に相性が良いと思います。

●白子のお椀
鶏ベースのスープがしっかり濃くて美味。胃から体に染みていくようです。白子のマイルドな味にマッチ。

●甘海老ナンプラーソース

●揚げ春巻き
原木椎茸と金沢春菊の揚げ春巻きをココナッツの発酵ソースで。

●蒸し物
蒸したてを蒸篭のまま。いい香りが湯気にのって鼻腔をくすぐります。お肉、野菜やキノコを、オレガノとクミンの付けダレで。

●能登牛
見た目はフレンですが、味はタイというところが面白い。赤いソースはラズベリーとビーツ、そして辛すぎないチリソースが味を引き締めます。ピュレは五郎島金時にコリアンシード。塩はチェンマイの古代塩。

●いしるトムヤムクンワンタン
通常思い浮かべるトムヤンクンらしさはないですがおいしいです。能登豚入りのワンタンはカシューナッツの落ち着いた野趣がいいシゴトしてます。

●カオパッガイ(追加)
言わばタイの炒飯で、パラパラしていて香り良い長粒米に魚醤が良い風味を添えています。うまい。中とろとろのフライドエッグを割って卵黄を絡めて。これは追加がオススメ!

●デザート
赤米をココナッツで炊いたカオニャオにタマリンドやハイビスカス、バナナの味が溶け合います。食べる箇所によって味が異なるデザート。

●小菓子、コーヒー
タイ北部の宇佐美農園さんのドイチャンコーヒーが出てきました。浅煎りで割とライトなタイプです。形が自由自在に変えられる富山の錫の器で小菓子まで。最後まで凝っていますね。

冬に訪れるもう一つの楽しみは、雪化粧のお庭を町家から眺められることですね。風情あります。

2017年4月 ディナー:コース

●タケノコとタラの芽のマッサマンカレー
この器でマッサマンカレー、そして春の山菜とコラボしていることにまずは驚きがありましたが、この心地よい違和感が海月さんらしくてよい。


●能登山菜のヤムウンセン
タイの春雨サラダ「ヤムウンセン」は、赤貝、そしてこごみを春の苦味がアクセントに。和であり、程よいところでやはりタイ料理なので、その境界線ギリギリなところにそそられます。

●ラープヌーの焼売
ミント風味のひき肉の焼売で、鼻からスーッと抜ける風味が爽快。能登のいしるを合わせて。

●蛤と春キャベツのトムヤムクンスープ仕立て
お吸い物風にトムヤムクンスープが出てくるところが斬新。繊細な食材の持ち味を壊さない絶妙な加減です。

●金華ハムのパオ

●葉たまねぎとホタルイカの春巻き
ホタルイカの肝が濃厚ソースの役割を果たし、さらに添えてあるお塩がレモングラス風味で、重厚なコクをふわっと持ち上げてくれます。

●岩のりとライムのバーミーナム
くらげさんと言えば、やはりヌードルに期待をしないわけにはいきません。バーミーナムはスッキリとライムを効かせ、初夏を思わせる味わいでした。岩のりの磯の香りも調和。

●バーイトゥーイのクレームブリュレ、タイティー
デザートまで海月スタイルで手抜きなし。タイハーブを香りづけに用いたブリュレで、不思議なコースの余韻に浸れるおいしいデザートでした。

他にはない新ジャンルだと思います。冒険心をくすぐってくれるあたりは、営業形態が変わってもやはり海月さんでした。