予約が取れない神楽坂「SECRETO」が輪島でガラディナー。ラトリエ池端シェフとのスーパーコラボ。−196℃を駆使!

2019年6月2日、輪島の「L’atelier de NOTO」にて開催された、東京神楽坂「SECRETO」さんとのコラボガラディナーに参加。私は少人数制で行われた初回に参加させて頂きました(2日夜、3日昼・夜開催)。「え?なんであの超予約取れないSECRETOが輪島で?」と思われる東京のFoodieが多いと思いますが、藪中章禎(やぶなかあきよし)シェフは実は輪島のご出身なのです。

今回のコラボは「SECRETO」スタイルで進行。まずはお会計を済ませてしまってから存分に楽しむのも同店スタイル(ちなみに神楽坂と同料金だった。←安いという意味。びっくり。)。そしてアペリティフを楽しむ。目の前での実演は特設テーブルで実現させ、液体窒素でのパフォーマンスも多々。テーブルにセッティングされているのは箸とピンセット。ペアリングはノンアルコールでも楽しめる。もちろんこの会では輪島・能登食材のオンパレード(たぶんいつも以上に)。

なんといっても藪中シェフの人間力に脱帽。一気に空間を自分のものにしてしまうのもさすが。最初から最後まで全員のハートをガッチリ掴んで離さない。ライブ間溢れる楽しくてしょうがないパフォーマンス。絵的にすごいのは液体窒素だが、駆使されているのがすごいし、液体を封じ込める技術が特にすごく「液体の魔術師」と呼びたい。
(藪中シェフはフランスやスペイン名店を経て、2017年10月14日に神楽坂に「SECRETO」をオープンした。店名は“秘密”の意。)

そして輪島のフレンチ「L’Atelier de NOTO」の池端隼也シェフの出身地も輪島。大阪「カランドリエ」を経て渡仏。4年半星付きレストランで腕を磨き、帰国し故郷にて開業。能登と世界を繋げ、能登から石川の料理会を牽引している一人だ。ちなみに私は池端さんの料理すごく好きで、こういったポップアップイベントのときも味に重点を置いて、味、温度、タイミングをバシッ!と決めてくるところはすごい。さらに今回は仕上げを目の前で行うスタイルなので、いつも見れない池端シェフの姿が見られた。

(料理名はメニュー表のまま)
●石・黒真珠
席に着いたら純白のテーブルクロスに川辺に転がっていそうな小石が散りばめてあるのですが、実はこの中に前菜が。この石の中に1つだけ食べられるものが準備されている。言われるまで気付かないくらい精度の高い仕上がり。注意深く探して発見。これはじゃがいもの料理で、塩茹でしたじゃがいもにコーティングしてあり、これをトリュフバターにつけて食べる。まず最初のどっきり。



そして「黒真珠」は「SECRETO」のスペシャリテのひとつ。注意深く持ち上げて口の中に放り込むとサラサラとジュースが流れ出す。これは驚き。粘度を持たせた液体ではない。卵の殻くらいの薄さのカカオバターの表面層が割れると、イチゴとクランベリーのチャーミングな味わいがパーっと広がり頬が緩む。思わず「え。うそー」な嬉しい裏切り。

●クレープ・海草バター
目に飛び込んでくるクレープの深い緑は小松菜粉から。ギバサやアオサなどの海藻、春蘭の酢漬けに締め鯖が乗っていてくるっと巻いて。クレープの繊細な食感が印象的。

●フォアグラフレンチトースト
「SECRETO」スペシャリテのひとつ。53度で火入れし−196度で凍らせたフォアグラテリーヌをフレンチトーストの上にすりおろす。これがびっくりのふわっと消えるような食感。りんごジャムをつけて。ペアリングは数馬酒造の柚子酒。純米酒にゆずを漬け込む方法で仕込まれていて、どっしり甘いフォアグラにぴったり。



●高農園・シーザーサラダ
能登島「高農園」さんの野菜が約15種類(ケール、兼六いも、加賀太きゅうりなど)で彩られるお皿に、液体窒素で凍らせたドレッシングをサラサラかけて。ひんやりアイシーなシーザーサラダの出来上がりだ。特に葉野菜はバリバリとした食感になって味も引き締まる。味の力強い野菜あってこそのこの料理。


●宇出津・アワビ・サバイヨン
舳倉島の春ワカメが最高の美味さ。しなやかでやわらかく、サバイヨンを合わせても負けない味の濃さだ。アワビ、サザエ、輪島ふぐ、アワビ肝ソースと春菊ソースで。なんだか海の中の、ゆらゆらや水圧まで感じるような一皿。輪島の海の強さ、ポテンシャルを伝えてくれた。


●春キャベツ
春キャベツとそら豆のポタージュにアラのソーセージ、エイ貝の泡をのせて。そら豆の個性的な風味にそそられる。ちなみに、その昔輪島の特産品だったのが素麺で、素麺座が組織されるほど栄えた(今はない)が、その時の出汁はアゴとエイ貝から取っていたそうだ。

●のど黒
池端シェフ渾身のすごい一皿。のど黒の火入れがすごくて、皮目は繊細にカリカリで歯切れ軽快で、身はたぷたぷとおいしい脂を蓄える。それぞれの部位の火入れが完璧。ソースは原木椎茸のブランド「のと115」の干し椎茸から出汁とメギスのいしるを合わせたもの、そこにのど黒の旨味。絶妙に調和し、昇華させた旨味のトライアングルが芸術的だ。

●バゲット
輪島マリンタウンにある「ラポール デュ パン」さん製のバゲットは、このために研究されたとだけあって美味。複雑で深いおいしさ、香ばしさがファーっと広がる。12種の小麦粉使用、2日間熟成だそうだ。


●エディブルフラワー
ボリジの花を、一見ゼリーで固めたような一品。アルギン酸ナトリウムとカルシウムを利用して外膜を作って中に液体を仕込んである(のだろう)。かなり繊細で口に運んだ途端ジュースが流れ出す、食べるジュースだった。グラニテの代わりに。

●能登牛 ラムシンの藁燻し



●フォー
池端シェフがベトナムでインスピレーションを受けたフォーを、輪島らしく素麺で表現。出汁は鶏ベースで、クミン、八角、クローブなど風味が複雑に溶け合う。細い素麺が良く合う。

●能登いちご・-198°c
液体窒素と輪島のフレッシュイチゴをガンガン使い、瞬く間に出来上がるイチゴのアイス。イチゴ感200%と言える凝縮させた味わいで、これ以上ないジューシーさ。実物は小粒だがかなり甘い。

●吐息
こちらも液体窒素を使った「SECRETO」スペシャリテであり最後の楽しい演出。メレンゲを凍らせて、お口の中へ。どうなったでしょうか〜。