2024年3月28日に、金沢片町エリアの鱗町にオープンした新たなスペイン料理店。大注目の一店です。
オーナーシェフである野々村敬裕(ののむらたかひろ)シェフは、スペイン・バルセロナにある世界的に有名なレストラン「Enigma(エニグマ)」で腕を磨いた経歴を持ちます。「Enigma」といえば、グルメ界に革命をもたらしたエルブリ(El Bulli)のDNAを引き継ぐレストラン。エルブリは、分子ガストロノミーの草分け的存在であり、「エスプーマ」など、今では世界的に知られる技術を多数生み出しました。このような前衛的な料理の精神が「Enigma」に引き継がれており、野々村シェフはそのフィロソフィーを金沢の地で体現しています。
店名の表記は「Restaurante No2」で、野々村シェフのお名前と元素記号を組み合わせたユニークなアイデアを組み合わせてあります。正式な読みは、「ヌメロアルクアドラード」と言うのですが、私は覚えられる自信がないので「のの」と呼んでいますが、そう呼んでいる人が多い気がします(笑すみませんシェフ)。
オープン前に片町で間借り営業をされていた際に、一度少しだけお料理を食べたことがあったのですが、「これは本格営業始めたら大注目店になるのでは?」とそのポテンシャルにワクワクしたものでした。
席数は10あるのですが、基本ワンオペ営業なので、フルでお客さんが入れられないところが勿体無い部分。いまのことろ2組(合計4名〜5名まで)に限っているので、1日でおもてなしできる人数がかなり制限されます。
(この日は臨時でサービスがお一人いらっしゃいましたが、お客さんは4人に制限していました。)
右腕みたいな人か敏腕ソムリエが居たら勢いが加速しそうです。しかし着実にファンを増やしている印象。
金沢には超人気スペイン料理店が何軒かあるのですが、それぞれ個性が異なっており、みなさん全然違うカラーで面白いです。同店は、ガストロノミーを楽しむファインダイニングで、金沢にありながら特に地元食材や季節感に特化しているわけではないのも、ある意味尖った魅力で、異色を放ちます。お料理は多皿構成で、目の前で仕上げるプレゼンテーションも多くてライブ感あり。マル・イ・モンターニャ(海と山の融合)を意識したお皿も特徴的。
店内はワンフロアで、手前が待合で、その奥がコの字形のカウンターになっています。カウンターは波打つような形状で、この独特なフォルムが空間デザインをして不思議な世界観を生み出しています。
飲み物はワインペアリングに加えてノンアルペアリングがありますが、本当に素晴らしかった!
まず最初の3つはフィンガーフードで、見た目に美しく、その見た目と食感のギャップも味わいどころ。
・ピニャ・コラーダ
口の中でピュッと液体が広がる新感覚のピニャ・コラーダ。飲み物ではなく料理として味わう「カクテル」。
・クリスタルパン
「Enigma」直伝のシグネチャー、透き通ったパン。見た目の美しさもさることながら、口に入れるとパリッと乾いた食感が広がり香ばしく、見た目とのギャップが楽しい。
・焼きトウモロコシ
トウモロコシのピュレを形成してあるので、口の中で粒が弾けて繊維感があるのではなく、口に入れた瞬間に溶ける感じで、凝縮した甘さが流れ込みます。
・甘海老・セビーチェ
ペルーの唐辛子とココナッツを用いたソースで仕上げたセビーチェは、グリーンカレーを思わせるシャープな酸味。柔らかな甘海老に、キリッとした酸味で細胞が目覚めるような一皿。
・アオリイカ・ピルピル ベジョータ
麺状にスライスされたイカは、鱈ではなくベジョータで作ったピルピルソースで。とてもクリーミーで旨味がバランス良く、つるんとすべるようなイカの断面をコーティングしています。美味!
・Tamal リードヴォー
トウモロコシ粉を用いてバナナの葉で包んで蒸し上げるペルーの伝統料理。NO2では蒸しパンは、エスプーマの技術でシフォンケーキのようにしてふるふるにして、。リードヴォーのミルキーな旨味をのせて。伝統料理とモダンの融合。
・パン・アンチョア カンタブリコ、アホ・ブランコ
アンダルシアのアーモンドとにんにくの冷静スープを、チーズに見立ててアイスクリームにして、胡桃、トリュフオイル、はちみつをかけて、スペインの北カンタブリア産アンチョビを乗せたパンをディップして。
・兎・ペピトリア
本来は鶏肉を用いたスペインの煮込み料理「ペピトリア」を、スナックとして。カリカリの鶏皮チップの上に、兎肉をのせ、アーモンド、サフラン、卵黄の濃厚なソースをかけて。
・淡路島・タマネギ
もう見た目で美味しい!玉ねぎをスライスしてオニオンフライにしたものが蓋になっており、そっと外すと現れるのは見るからに濃密な玉ねぎスープ。じっくりと煮詰め、甘さが凝縮したエッセンス。
・オマール海老
オマール海老に和牛のオイルを塗り、海と山の旨みを重ね合わせた一皿。和牛が海老に骨太なコクを出しておりました。絶品。添えてあるのは、オマール海老のそれ以外の部分を使用したアロスカルドソ。おいしくておかわり。
・ブラッディ・メアリー
カクテルのブラッディーメアリーを猟奇的なイメージに仕上げた、お肉料理の前のグラニテのような一品。
・SUKIYAKI
お肉は宮崎産の和牛。ソースは、すき焼きの味付けを分解し、黄色は卵黄とガルム、茶色は割下に濃度をつけたもの、緑は春菊。
・Mel i mato
デザート一品目。これがとってもおいしくて感激しました。
カタルーニャの伝統的なデザートを、シェフなりに構築。本来はマトというチーズに蜂蜜をかけた素朴なデザートですが、ブラータチーズを一旦崩して練乳を加えてあります。蜂蜜はタスマニア島の希少な蜂蜜とそのチュイール。ミルキーなブラータと上質な蜂蜜の調和が素晴らしい。
・ペルー産カカオ・南瓜
ペルー産のカカオとカボチャ、バターナッツを組み合わせた濃厚なデザート。ほっこりほのかな甘さとビターなカカオが、食事の最後を締めくくります。
・エディブル メタル
最後に遊び心を持ってくるのはさすがです。驚きの「食べられる金属」。実はこれギモーブで、見た目とは裏腹にふんわりした食感。
ここまでの仕込みをお一人でされるとは、なんだか想像しただけで途方もないな…すごい。
ノンアルペアリングもとにかく素晴らしかったのですが、解説が長くなるので割愛します。
ここまで完成されたノンアルペアリングは金沢ではここだけだと思います。