シドニーで腕を研磨した佐藤翔太さんが、“モダンオーストラリアン”というジャンルを掲げ、2022年8月16日に加賀市大聖寺にオープンしたお店。
佐藤シェフは2021年は「ドラゴンシェフ」の石川代表にも選ばれた方です(現コンテスト名「CHEF-1グランプリ」)。
店名「シュガーレイ」は、シドニーにいる頃から決めていたそうで、“佐藤(さとう)”のシュガーと、息子さんのお名前から来ているそうです。
料理で大きな特徴は2つ。“モダンオーストラリアン”という新ジャンルであることと、奥様のご実家の農家「下出農産」さんのお野菜を主役に置いていることです。
もっと華やかでオシャレに振った料理かなと思っていたのですが、1皿1皿にしっかりと主役とその美味しさを置いてあり舌の記憶に残る。スパイス使いも秀逸で、風味での立体感の出し方も素晴らしくインパクトあります。実力派だと思いました。
ただ場所が、石川県で言うとかなりマニアック。金沢の中心部にあってほしい!と思っちゃうのは私だけではないはず。どうしてもアクセスのことを考えてしまうかな。片町からだと車で1時間強でした。アルコールを飲むことを考えると、気軽に訪れるのは遠方からだと難しい場所(周辺に宿泊もなさそうだし)。
でも、たくさんの食通の方、食を愛する方に食べてもらいたいです。本当に!
この辺りは土地勘が全くないので場所の説明ができないのですが、地図上は近隣に大聖寺署がありました。
ビルの1階がお店になっており、大きくガラス張りになっているので、中の楽しそうな様子が表からもよく見えます。
バルの気楽な雰囲気でありながら、カトラリーを包んだ布ナプキンを配置し、レストランの品格も要所に漂わせます。
料理はコースもアラカルトもあり。
おまかせコースは、6500円コース(予約なし)と8000円コース(要予約)の2種類あります。
メニュー表を見ても料理が想像できないので、初めてならコースが断然良いと思いました。
(アラカルトは後記)
【紹介項目】
アラカルト 2023年5月
この日はたらふく焼き鳥を食べてからの2軒目に寄らせてもらったので、アラカルトで数品のみ頂きましたが、ピンポイントでシェフのオススメが食べられて、新しいおいしさにも出会えて、本当に行ってよかった!という気持ちでいっぱいになりました。帰りの電車の中は夢心地。次はまた1軒目でコース訪問したい。
カジュアルな雰囲気の中にこのカトラリーとナプキンのセットは、シェフの意図通り、やはり引き締まっていいね!
●ビーツ
かなりインパクトあった一品。
しっかりとメニュー化したら、シェフを代表するスペシャリテとしての地位を確率しそうな素晴らしい料理でした。が、お店の立地的に、野菜主役の料理がなかなかメインとして認知されにくいそうだけど(あまり馴染みのないビーツは特に)、しかし、今まで食べた野菜をメインにした料理の中でダントツだったし、ぜひシグネチャーに!(金沢中心部だったら爆発的に広がりそうなんですよね。)
岩塩で包み焼きしたビーツと、中東で食べられている水切りしたヨーグルト”ラブナ”、柘榴果汁を煮詰めた糖蜜”モラッサ”のコンビネーション。ラブナの凝縮されてねっとりとした舌触りと爽やかな酸味に、包み焼きをして旨さがMAX値になったみずみずしいルージュ色のビーツ、バルサミコ酢のようなモラッサが妖艶で華やかで、酸味のバランスもパーフェクト。やや重厚でフルーティーな赤ワインに抜群の相性。
●ローストビーフ、燻製イワシのクリーム
肉を燻製させるのと違って、燻製イワシのクリームを添えることによって、肉はそのままの美味しさが保たれ、スモーキな風味だけふんわり乗せることに成功している。
●能登豚
肩ロース炭火焼きには、香草・薬味・ビネガーを効かせた南米発祥のチミチュリソースを添えて。複雑な風味と酸味が爽やかなアクセントとして効いており、肉を引き立てます。この味わいも同店ならでは。美味!
【ある日のメニュー】
パンヒラクペーカリー、揚げひよこ豆 スパイスデュカ、オリープのマリネ、橋立甘海老 炭焼きプレッド 唐墨、山羊チーズの炙り 花梨ピューレ
ホタルイカ イチゴ ピスタチオのサラダ、スペイン産生ハム 焼きナス セミドライトマト、百万石椎茸のフライ、サーモンのコンフィ 丸八製茶の香り、ローストビーフ燻製イワシのクリーム
炭焼春キャベツ 燻製チリマヨ、タコの炭焼き ひよこ豆 トマト、能登豚肩ロース マッシュポテト、炭火焼和牛ランプステーキ、自家栽ひゃくまん穀 チーズリゾット
フライドポテト、マッシュポテト トリュフオイル、ハウスサラダ 熱成バルサミコ
カスタードプリン、チョコレートテリーヌ、ドライフルーツ ナッツのセミフレッド
シェフおまかせコース
オープン早々に訪れ、コースを頂きました。
●シェフおまかせコース(6500円)
最初に出てきたおつまみのオリーブには、クミンが効かせてあって、風味使いがこの後の料理を期待させました。
・スイカとビーツのガスパチョ
ビーツとスイカのコンビネーションで、フレッシュで爽快で華やかさも感じさせる夏の味に。
・マスのコンフィ、丸八製茶
マスを加賀棒茶に漬け込み、馥郁たる風味を乗せて燻製に似たニュアンスに仕上げます。
・加賀キャベツ、長熱バルサミコ、パルミジャーノ
50年熟成バルサミコビネガーの重厚さが、味の濃い加賀キャベツに調和。ドシンプルな直球、好きです。
・ズッキーニのグリル、グリーンロメスコ、トウモロコシ
・自家栽培カボチャ、ラブネ
加賀市名産の味平カボチャのローストは、そのヴィヴィッドなオレンジ色の通り、甘みと旨味にずしりと存在感あり。もったりしたヨーグルトソースとその酸味に、柘榴の和の滋味が粋なアクセントに。今回一番好きな料理でした。
・鱸、茄子、黒ニンニクソース
鱸は茄子と黒ニンニクのソースで。黒ニンニクはニンニクとは別物で、特有の匂いはなく熟成することで糖度が増してドライフルーツのような凝縮された味わいで、茄子に好相性。
・炭火焼 タスマニア若牛、チミチュリソース
しっとり焼き上げた密度の濃い赤身を、香草・薬味・ビネガーを効かせた南米発祥のチミチュリソースで。うまい!
・マッシュポテト、トリュフ
トリュフで風味付をした絹の滑らかさのマッシュポテト。
・セミフレッド
最後のデザートにも気を配ってありしっかりと美味しいのは、コースの満足感が高められて最高です。さっぱりミルキーでひんやりとしたセミフレッドに、ドライフルーツの野趣と甘さ、蜂蜜のコクがコントラストを描きながら溶け合います。