(※2016.12.29 初投稿の記事に新しい情報を加筆・修正してあります。最終更新2024.11.08 最新情報は情報入り次第追記予定)
金沢おでん「カニ面」と、香箱ガニ・加能ガニの情報をまとめてあります。
人口当たりのおでん屋さんの軒数が全国で首位と言われる金沢。しかし金沢市民は「おでん屋ってそんなにたくさんあった?」と、当たり前すぎて気にも留めていなかった様子。全国に認知された「金沢おでん」というネーミングも地元の人には逆に耳慣れていません。しかしながら街を歩くと確かに「おでん」の看板が多いことに気が付きます。また、おでんというと肩がすぼまるような寒い日に暖簾をくぐるイメージがありますが、金沢では一年中食べます。なぜならばおでん鍋がある居酒屋が多いから。おでんのいいところは、好きなものを鍋から見繕ってもらってすぐに食べられるところで、「コレとコレとコレで」と注文して、お通しがてらにつまみ、そのあとのメニューをゆっくり決めます。使い勝手が良いのも人気の理由かも。ここでは、おでんダネの中でも“金沢おでんの王様”と言われる「カニ面」にフォーカスしてみたいと思います。はて、カニ面とはなんぞや。
金沢おでんの王様「カニ面」とは
金沢市民の冬の風物詩の一つでもありましたが、近年メディアに取り上げられたことで認知度が飛躍的に高くなり、今や誰しもが知る金沢おでんの代名詞的存在に。カニ面はズワイガニのメスである“香箱ガニ(こうばこがに)”の甲羅の部分にカニ身や内子・外子を詰めたおでんダネです。大胆な風貌でありながら、作る際には繊細さが求められる(細い足から身を出すの大変!)ので、他のおでんダネよりも価格は張りますが、食べてみる価値有りですよ。数量が限られているお店がほとんどなのでお早めに。
作り方はお店によってさまざまで、キレイにカニ足を整列してあるお店もあれば、ごちゃ混ぜにして詰めてあるお店もあります。各店での食べ比べも面白いですよ(各店のカニ面は下部に紹介)。
ちなみに香箱ガニは、煮込み過ぎると身がかたくなってスカスカになり味が落ちるので、注文があってから出汁に入れてくれるお店がほとんどです。さらにもう一つの楽しみは、身を食べ終える頃に熱燗を注いでもらって「甲羅酒」にすること。これもまたカニ面が人気の理由です。
注意!は食べられる時期。これが初セリの様子
カニ面にせよその他の食べ方にせよ、注意しなくてはならないのは食べられる期間です。石川県のカニ漁の解禁日は(香箱ガニ・加能ガニ共に)毎年11月6日(シケの場合延期される年もあり)で、オスのズワイガニ(加能ガニ)の漁期は翌年3月20日までです。しかしながらメスの香箱ガニは11月6日から12月29日までの2ヶ月未満という短い漁期で、年をまたいでは食べられません。
解禁日とは…
船が出港して解禁日の0時に海に網が投げられます。夜にはカニ漁を終えた船が金沢港に戻ってきます。到着して19:30から競りが始まるのですが、カニは金沢の冬の味覚の主役ですから、このカニの競りは1年のなかで一番 セリ人たちがピリピリとしており市場内も緊張感が漂います。
いよいよお店で販売が開始するのは(通常は)7日からです。
「解禁は11月6日、買える・食べられるのは7日から」をお忘れなく。(6日夜から出るお店もあるのかも)
※2024年は大シケで初セリが11月8日になったので、お店での提供は11月9日からです。
ズワイガニのオス「加能ガニ」とメス「香箱ガニ」
「加能ガニ」は石川県で獲れたズワイガニのオスのことで、“加賀”と“能登”の最初の文字を取り、こう名づけられています。加能ガニには、石川県で水揚げされた証として青いタグがつけられています。(福井では越前ガニ、山陰では松葉ガニと呼ばれ、それぞれタグの色が異なる。)
2021年から、最高級品として認定する加能ガニのブランド、その名も「輝(かがやき)」が登場しました。認定には厳しい条件があります。
ズワイガニのメス「香箱ガニ」
メスの香箱ガニはオスの加能ガニよりもサイズが小さいですが、身が甘く、地元ではメスの方が人気です。さらにお腹に抱いているのはカニの卵、通称 “外子(そとこ)”で、プチプチ弾ける食感が美味。甲羅の中には未成熟卵であるオレンジ色の “内子”がびっしりと詰まっており、これが美味しいと人気です。
メスの香箱ガニも2022年からトップブランド「輝姫(かがやきひめ)」が誕生。厳しい条件を満たしたものを認定し、タグが付けられます。
2023年の初競りの様子はこちらに取り上げました↓是非ご覧ください。
「輝」と「輝姫」の規格も記載しております。
2022年の初競り
【2022年 いよいよ今年もカニ漁解禁】11月6日の初競りの様子をお届けします!加能ガニ、香箱ガニ。新ブランド「輝姫」もデビュー!
誰にも分からない?カニ面の発祥
おでんカニ面の起源を辿ってみたのですが、いつどのお店が発祥かのかという断定的なことは分かりません。各店にエピソードがありますが、菊一さんのお話しがとっても興味深かったのでここにカニ面エピソードのひとつとして書いておきます。
菊一さんの創業は昭和9年で、カニ面を始めたのがいつからというのが定かではありませんが、昭和29年頃にはもう既にメニューにあったそうです。しかしその頃の名前はカニ面ではなくて単に「カニ」。香箱ガニは昔はたくさん獲れて安かったので、「子供の頃はおやつだったのよ~」とおっしゃる方がよくいらっしゃいますが、これをおでんダネにしようと思ったんですねぇ。
しかも菊一の先代は、片町から金沢港までソリで買いに行っていたのだとか…。びっくりですね。結構距離ありますよ…(笑)でもその風貌を思い浮かべるとなんだか金沢のサンタクロースみたい。ふふふ。
そして、「カニ」「カニ」とだけ呼ばれていた「カニ面」ですが、なぜ「面」という言葉が付いたのかというと、カニの身を甲羅に詰めて(雄のズワイガニで言うところのフンドシに当たる)腹の部分で蓋をするのですが、それが剣道の「面」に見えたから。
「おとうさん(先代)がふざけて名付けたのよ~」と女将さんが楽しそうに話してくれました。カニ面と名付けられたのが20年ほど前だとか。なるほど確かに剣道の面に似ていますね。カニ面はユーモアから生まれた名前だったんですね。(諸説あると思います。)
カニ面が食べられるお店7つ紹介
それではここで、名店のカニ面を一挙にご覧いただきましょう。
違いが分かって面白いと思いますよ。
菊一「カニ足整列・外子のっけタイプ」
カニ足をキレイに整列させて腹の部分でフタをしてあるタイプ。外子たっぷりでテンションあがります。
身をおおよそ食べ終わったら、熱燗を注いでくれるので、甲羅酒として楽しめます。
「おでん菊一」金沢おでん老舗の暖簾はくぐっておくべし。あの頃にタイムスリップできる。加賀れんこん団子もオススメ!カニ面は11月12月
おでん高砂「カニ足整列タイプ」
菊一と同様、カニ足を整列させてフタをしてあるタイプ。外子と内子は中に入っています。こちらも身をおおよそ食べ終わったら、熱燗を注いでくれるので、甲羅酒として楽しんで。
「おでん高砂」生姜味噌で食べるおでんがうまい!ほどける柔らかさのスジも必食。名物のカレーおでん、黒胡椒のどて焼きもびっくりのうまさ。冬はカニ面も登場!
パシオン赤玉「ごちゃ混ぜタイプ」
「赤玉 金劇パシオン店」通はパシオンに行くの法則。おでんのれんこん団子うまい!名物の湯豆腐。茶めしはおでん出汁をかけてお茶漬けに
笠舞つぼみ「カニ足整列・蒸しタイプ」
三幸 犀川店「カニ足整列タイプ」
ちくわ「ごちゃ混ぜ・外子びっしりタイプ」
大衆割烹大関「ごちゃ混ぜタイプ」
どうでしょうか、十人十色。いや、十カニ面十色。
金沢おでんの食べ歩きには、カニ面食べ比べも楽しみのひとつにしてみてください。
命の出汁と金沢おでんならではのおでんダネ
その他の金沢おでんならではのおでんダネをご紹介します。まずは金沢おでんの命である“出汁”ですが、透き通った黄金色をしており、「ああ、うまいなぁ」と胃から体に染みるような旨味しっかりタイプです。
金沢おでんならではの具に、ドーナツ型のお麩である「車麩」がありますが、お麩は出汁をよーく吸ってくれますから、出汁を口に運びやすく、その店の味を一番堪能できるのかもしれません。さらに「梅貝」(注文したら殻から身を出してくれます)や「赤巻き」(紅白の渦巻き模様の蒲鉾)も金沢おでんならではですね。
また、金沢おでん店のサイドメニューの定番は、お湯で煮焼いた豚肉に白味噌を塗った「どて焼き」です。甘い白味噌をたっぷり塗った豚肉は、日本酒やビールのいいおつまみになります。(どて焼きがないお店もあります。)
〆にはおでん出汁で炊いた「茶飯」もお忘れなく。