人口当たりのおでん屋さんの軒数が全国で首位と言われる金沢。しかし金沢市民は「おでん屋ってそんなにたくさんあった?」と、当たり前すぎて気にも留めていなかった様子。全国に認知された「金沢おでん」というネーミングも地元の人には逆に耳慣れていません。しかしながら街を歩くと確かに「おでん」の看板が多いことに気が付きます。また、おでんというと肩がすぼまるような寒い日に暖簾をくぐるイメージがありますが、金沢では一年中食べます。なぜならばおでん鍋がある居酒屋が多いから。おでんのいいところは、好きなものを鍋から見繕ってもらってすぐに食べられるところで、お通しがてらに使い勝手が良いのも人気の理由かも。ここでは、おでんダネの中でも“金沢おでんの王様”と言われる「カニ面」にフォーカスしてみたいと思います。はて、カニ面とはなんぞや。
(2018年11月12日 更新)
命の出汁とおでんダネ
まずは金沢おでんの紹介ですが、金沢おでんの命である出汁は透き通った黄金色をしており、「ああ、うまいなぁ」と胃から体に染みるような旨味しっかりタイプです。
金沢おでんならではの具に、ドーナツ型のお麩である「車麩」がありますが、お麩は出汁をよーく吸ってくれますから、出汁を口に運びやすく、その店の味を一番堪能できるのかもしれません。さらに「梅貝」(注文したら殻から身を出してくれます)や「赤巻き」(紅白の渦巻き模様の蒲鉾)も金沢おでんならではですね。
また、金沢おでん店のサイドメニューの定番は、お湯で煮焼いた豚肉に白味噌を塗った「どて焼き」です。甘い白味噌をたっぷり塗った豚肉は、日本酒やビールのいいおつまみになります。(どて焼きがないお店もあります。)
〆にはおでん出汁で炊いた「茶飯」もお忘れなく。
金沢おでんの王様「カニ面」
金沢市民の冬の風物詩の一つでもありましたが、近年メディアに取り上げられたことで認知度が飛躍的に高くなり、今や誰しもが知る金沢おでんの代名詞的存在に。カニ面はズワイガニのメスである“香箱蟹(こうばこがに)”の甲羅の部分にカニ身や内子・外子を詰めたおでんダネです。大胆な風貌でありながら、作る際には繊細さが求められる(細い足から身を出すの大変!)ので、他のおでんダネよりも価格は張りますますが、食べてみる価値有りですよ。作り方はお店によってさまざまで、キレイにカニ足を整列してあるお店もあれば、ごちゃ混ぜにして詰めてあるお店もあります。各店での食べ比べも面白いですよ。
注意しなくてはならないのは食べられる期間です。香箱蟹の漁期は毎年11月6日から12月29日までと短い期間しかありませんので、この季節限定ということになります。ご注意ください。さらに、作るのに手間がかかるため、数量が限られているお店がほどんとです。
(2018年11月6日夜、金沢港にて初セリの様子)
ちなみに香箱蟹は、煮込み過ぎると身がかたくなってスカスカになり味が落ちるので、注文があってから出汁に入れてくれるお店がほとんどです。さらにもう一つの楽しみは、身を食べ終える頃に熱燗を注いでもらって「甲羅酒」にすること。これもまたカニ面が人気の理由です。
誰にも分からないカニ面の発祥
カニ面の起源を辿ってみたのですが、いつどのお店が発祥かのかという断定的なことは分かりません。各店にエピソードがありますが、菊一さんのお話しがとっても興味深かったのでここにカニ面エピソードのひとつとして書いておきます。
菊一さんの創業は昭和9年で、カニ面を始めたのがいつからというのが定かではありませんが、昭和29年頃にはもう既にメニューにあったそうです。しかしその頃の名前はカニ面ではなくて単に「カニ」。香箱ガニは昔はたくさん獲れて安かったので、「子供の頃はおやつだったのよ~」とおっしゃる方がよくいらっしゃいますが、これをおでんダネにしようと思ったんですねぇ。
しかも菊一の先代は、片町から金沢港までソリで買いに行っていたのだとか…。びっくりですね。結構距離ありますよ…(笑)でもその風貌を思い浮かべるとなんだか金沢のサンタクロースみたい。ふふふ。
そして、「カニ」「カニ」とだけ呼ばれていた「カニ面」ですが、なぜ「面」という言葉が付いたのかというと、カニの身を甲羅に詰めて(雄のズワイガニで言うところのフンドシに当たる)腹の部分で蓋をするのですが、それが剣道の「面」に見えたから。
「お義父さん(先代)がふざけて名付けたのよ~」と女将さんが楽しそうに話してくれました。カニ面と名付けられたのが20年ほど前だとか。なるほど確かに剣道の面に似ていますね。カニ面はユーモアから生まれた名前だったんですね。(諸説あると思います。)
カニ面が食べられるお店をご紹介
それではここで、名店のカニ面を一挙にご覧いただきましょう。
違いが分かって面白いと思いますよ。
菊一「カニ足整列・外子のっけタイプ」
カニ足をキレイに整列させて腹の部分でフタをしてあるタイプ。外子たっぷりでテンションあがります。
身をおおよそ食べ終わったら、熱燗を注いでくれるので、甲羅酒として楽しめます。
「おでん菊一」ここに行かないでどうする!老舗の暖簾はくぐっておくべし。あの頃にタイムスリップできる
おでん菊一 (おでんきくいち)
価格帯: 2,000円~5,000円
定休日: 火曜、水曜
営業時間: 17:30~22:30
住所: 石川県金沢市片町2-1-23
電話: 076-221-4676
カテゴリ: 金沢おでん カニ面
ポイント: 料理 6.5 + その他の要素 6.5
合計ポイント 13.0/20.0※ポイントについて
おでん高砂「カニ足整列タイプ」
菊一と同様、カニ足を整列させてフタをしてあるタイプ。外子と内子は中に入っています。こちらも身をおおよそ食べ終わったら、熱燗を注いでくれるので、甲羅酒として楽しんで。
「おでん高砂」生姜味噌で食べるおでん名店。ほどける柔らかさのスジも必食。名物のカレーおでんやネギマおでん、黒胡椒のどて焼きもびっくりのうまさ
おでん高砂 (おでんたかさご)
価格帯: 2,000円~5,000円
定休日: 日曜
営業時間: 16:00~22:30
住所: 石川県金沢市片町1-3-29
電話: 076-231-1018
カテゴリ: 金沢おでん カニ面
ポイント: 料理 6.8 + その他の要素 6.7
合計ポイント 13.5/20.0※ポイントについて
三幸 犀川店「カニ足整列タイプ」
「三幸犀川店」 〆はおでんラーメンで決まり!半分が香箱蟹な茶碗蒸しも必食ッ!
三幸 犀川店 (みゆき さいがわてん)
価格帯: 2,000円~5,000円
定休日: 日曜
営業時間: 18:00~0:00(L.O 23:30)
住所: 石川県金沢市片町1-9-8 ベルガモビル102
電話: 076-262-1332
カテゴリ: 金沢おでん カニ面
ポイント: 料理 5.5 + その他の要素 5.0
合計ポイント 10.5/20.0※ポイントについて
パシオン赤玉「ごちゃ混ぜタイプ」
「赤玉 金劇パシオン店」通はパシオンに行く!の法則。名物5つは必ず食すべ~し!カニ面、牛すじ、茶飯は出汁がけで
赤玉 金劇パシオン店 (あかだま きんげきぱしおんてん)
価格帯: 2,000円~5,000円
定休日: 水曜
営業時間: 17:00~1:00 (L.O.0:30)
住所: 石川県金沢市片町1丁目7-23
電話: 076-221-6655
カテゴリ: 金沢おでん カニ面
ポイント: 料理 7.0 + その他の要素 6.5
合計ポイント 13.5/20.0※ポイントについて
笠舞つぼみ「カニ足整列・蒸しタイプ」
「笠舞おでんつぼみ」ファミリー歓迎だが料理は妥協なし!名物手羽先は必食だ~
笠舞おでんつぼみ (かさまいおでんつぼみ)
価格帯: 2,000円~5,000円
定休日: 水曜
営業時間: 17:00~23:00(L.0)
住所: 石川県金沢市笠舞本町1-1-1
電話: 076-225-8333
カテゴリ: 金沢おでん カニ面
ポイント: 料理 6.0 + その他の要素 6.0
合計ポイント 12.0/20.0※ポイントについて
ちくわ「ごちゃ混ぜ・外子びっしりタイプ」
「ちくわ」自家製ちくわと変わりダネ満載ッ新店だが注目!バル感覚のおでん屋さん片町に登場だ!
ちくわ (ちくわ)
価格帯: 2,000円~5,000円
定休日: 日曜
営業時間: 12:00~14:00、17:30~24:00(L.O.23:00)
住所: 石川県金沢市片町2-10-42 RENNビル 1F
電話: 076-255-0303
カテゴリ: 金沢おでん カニ面
ポイント: 料理 6.0 + その他の要素 5.5
合計ポイント 11.5/20.0※ポイントについて
大衆割烹大関「ごちゃ混ぜタイプ」
「大衆割烹 大関」教えたくないおでんサービスデーは超お得ッ!名物は活うなぎの白焼きかば焼
大衆割烹 大関 (たいしゅうかっぽう おおぜき)
価格帯: 2,000円~5,000円
定休日: 火曜
営業時間: 16:30~22:00頃
住所: 石川県金沢市木倉町1-5 中泉ビル1F
電話: 076-221-9450
カテゴリ: 金沢おでん カニ面
ポイント: 料理 5.5 + その他の要素 5.0
合計ポイント 10.5/20.0※ポイントについて
どうでしょうか、十人十色。いや、十カニ十色。
金沢おでんの食べ歩きには、カニ面食べ比べも楽しみのひとつにしてみてください。