激動の2020年。話題に出したくないと思っても避けられないのが“新型コロナウイルス”の影響です。
年の始まりは日本中が「念願のオリンピックイヤーだ」「ついにオリンピックが日本で開催される」と期待と夢に満ち溢れていました。誰もが夏に向けて、感動に包まれる明日を想像していたはずです。そして「日本が世界から注目される年になるぞ」と。それが一転コロナ禍へ。世界的に感染症のパンデミックが起きるなど、誰が予想できたでしょうか。
インバウンドにも期待していたことは言うまでもありません。東京だけではなく、金沢もホテルがたくさん建つなど、多くのお客様を受け入れる準備を整えていたところでした。
食に関わる職業の方にとっても苦しみの多い年となってしまいました。
飲食店は営業が制限されたり、営業ができても席数を制限せねばならなかったりと、経営が傾いたり、作りたい料理が作れないというモチベーションダウンにも繋がってしまったり、シェフや料理人、レストラン関係者を苦しめました。かくいう私も、ジャンルは違いますが仕事がいくつもキャンセルになったりと、不安の多い日々を過ごしました。
まだまだ気が抜けない日々が続きそうですが、2020の明るいニュースとしてレストランの開店があります。ニューオープンのお店があるってやはり嬉しいです。希望が詰まっていてこちらもワクワクします。
2020年にオープンした注目店が7つありますので、今年の締めとして改めてここでまとめておきます。
※オープンした順番で紹介します。
「ジブンチ」 (オープン日:2020年3月20日)
以前「トラットリア チカーラ」で腕を振るっていた山本シェフの独立店。場所は片町エリアの中央通りで、片町の雑踏を背にして少し離れます。以前はトスカーナ料理をベースに力強いイタリアンを作っていましたが、現在のお店ではジャンルを取り払って自分の料理として表現しています。食材はシェフの実家(自分家、石川県河北潟津幡町)で育てている鶏の卵や自家栽培米や野菜、山菜なども大いに取り入れ、炭火を駆使したFarm to Tableな料理を提供しています。メニューはアラカルトで、何度も通いたくなるお店です。
「ジブンチ」炭火を駆使した”Farm to Table”なイタリア料理。シェフの実家で育てる鶏の卵や自家栽培米、畑の野菜も。Tボーンは山本シェフの代名詞!
「MAKINONCÎ」 (オープン日:2020年7月7日)
金沢の中心部エリアで犀川沿いにあった「フランス料理Makino」が金沢市山の上町に移転オープンしました。お店は少し山手で、夜は街の明かりが遠くに見えます。古民家を改装した一軒家を広々と使われていて、ナチュラルで趣きがありながら他にはない不思議な空間でした。お料理はフレンチがベースですが、牧野シェフが新たに挑戦したい料理を、自由に表現されていて、今までとは一味違う印象を受けました。“フランス料理”という代名詞を店名から外しているあたりも、そういう思いなのかもしれません。
オープンから予約困難の人気が続いています。(料理の写真は1枚のみ投稿可能)
「一本杉 川嶋」 (オープン日:2020年7月29日)
七尾の一本杉通りにオープンした日本料理店。美味しさで噂となり、早速予約困難の人気店に。
店主の川嶋亨さんは七尾出身で、京都「桜田」さんなどで修行後、和倉温泉「のと楽」内にある「割烹 宵待」の料理長として腕を振るっていました。
能登食材にこだわり、産地を巡って仕入れをし、料理に落とし込みます。良い食材を見極めてさらなる美味しさに落とし込めるのは力量あってこそ。
現状でも素晴らしいですが、まだまだすごいことになりそう。四季を通して通いたい一店。
「きく家」(オープン日:2020年10月5日)
以前は片町のディープな横丁“中央味食街”にあったすし店で、バラックのような店舗で洗練されたすしが食べられるとギャップがツボなお店でもありました。ミシュランガイドでは1ツ星も獲得しました。
建物は前店とは異なり、空間に余裕を持たせたL字カウンター8席で一気に高級店の雰囲気に。この場所に移って、きく家のすしは“ギャップが良かっただけではない”ということが証明されたように思いました。大将の培ってきた技量の高さとセンスの良さが、しっかりとこの空間にのっています。予約困難は以前からですが、移転先も相変わらず予約取りにくいです。
「Villa della pace」 (オープン日:2020年11月17日)
七尾のイノベーティブイタリアンが、七尾市白馬町から中島町の海辺にオーベルジュとして移転オープンしました。敷地には、海が目の前に広がるレストラン棟と、その裏には宿泊棟もあります。
同店の場所は能登半島の内海に位置しているため、海は湖のように穏やかです。その海を臨むメインダイニングは、窓が大きく取られていて海との一体感があります。
料理の一番の特徴は能登食材を主軸としていることで、さらに器も地元の作家さん製のこだわり。何もかも前店よりもパワーアップしています。
「villa della pace(ヴィラ・デラ・パーチェ)」七尾中島の海辺にある注目のオーベルジュ!能登食材を使用したイタリアンを素晴らしいロケーションで
「蛤坂まえかわ」 (オープン日:2020年12月10日)
犀川大橋の近隣、蛤坂の中腹にオープンした焼鳥店。店主の前川良輝さんは、なんと日本一予約が取れないと言われる焼鳥店「鳥しき」の二番手だった方で、本来であれば2020年1月にニューヨークにオープンした鳥しき姉妹店の「鳥えん」ヘッドシェフとして今も腕を振るっているはずだったのですが、コロナ禍で帰国。前川さんが石川県出身ということで、故郷にお店をオープンする運びになったという訳です。人生どうなるか分かりませんね。お店は築100年の町家をリノベーションしてあり、外観も内装も趣が漂います。
すでに予約困難ですが、それに納得の美味しさです。
金沢に自慢できるお店ができて嬉しい。
「L’evo」 (オープン日:2020年12月22日)
私の中で2020年ナンバーワンの衝撃でした。
谷口英司シェフ率いるあのレヴォが、満を持して富山県利賀村にオーベルジュとして移転オープン。
シェフが掲げるコンセプトは“前衛的地方料理”。究極の地産地消を追求するために山奥に移転するという思い入れの強さで、シェフの“妥協をしない”という姿勢もここで色濃く感じられました。計画が壮大で、構想を形にするまでの苦労は計り知れません。谷口シェフが料理人人生をかけて全力で取り組んだプロジェクト。世界に照準を合わせたディスティネーションレストランであり、ここでしか味わえない真のローカルガストロノミーです。富山が世界に誇るレストランです。
さまざまな思いがある2020、本当にお疲れ様でしたと言いたいです。
シェフ、料理人さん、ソムリエさん、サービスの方、レストラン関係者の方々、食に携わる全てのみなさん、本当に本当にお疲れ様でした。
みなさんのおかげで暗い気持ちが明るくなり、どんよりと重い不安な気持ちもひと時軽くなったように思います。ありがとうございました。
そして本年も「あすかの美味献立」をご覧くださいまして誠にありがとうございました。