「Restaurant Naz」長野 軽井沢|Naz, Karuizawa Nagano JAPAN

軽井沢にある超予約困難なイノベーティブレストランで、ディスティネーションレストランとしても注目を集める。

シェフの鈴木夏暉さんは長野県出身で、イタリアやデンマーク「noma」・「KADEAU」など数々の名店で腕を磨き、軽井沢に2020年9月9日に同店をオープン。

2024年と2025年の予約はすでに満席で、2026年も予約困難(リピーターさんが予約するため)すぐ埋まるだろうという状況。その人気っぷりに納得、秋の深まりを感じさせ、長野の山奥に連れて行ってくれる本当に素晴らしいコースでした。
シェフの料理は、お皿ごとにテーマがハッキリしていて、ここだからこその食材にしっかりフォーカスして、地力とその特性を伝えてくれる。
個人的には、味に“色” “カラー”のようなものが、バーンと伝わるなぁという感想を持ちました。

特筆すべきはノンアルコールペアリング。ここまで完成されたペアリングは他にないでしょ?と思うほど。
以前は結構コンブチャを多用していた印象を持っていましたが、今回それはゼロで、ガラッと一新した印象。同調する味わいだけのペアリングではなく、挑戦的で革新的で、味のマジックで驚かせてくれる。かなり研究されたことが伺えます。

 

①シャインマスカット
繊細なアミューズの登場に、1皿目でもう「やられた〜」と感じました。長野県坂城村のシャインマスカットを薄くスライスして花のように咲かせて。透明感のある花びらが美しい。
糖度が上がった頃合いのシャインマスカットの、フレッシュな鮮度とみずみずしさそのままに、ストラッチャテッラの塩味と乳脂肪分、そしてエルダーフラワーの蕾がぷちっと香りを広げて、黒文字オイルで持ち上げる。
ペアリングは、幸水梨と鈴木シェフご自宅のエルダーフラワー、朝摘みのレモンバーベナ。

 

② 天然茸のスープ
シャカシメジ、ツノシメジ、ウラベニホテイシメジ、チチタケ、ニンギョウダケなど、8種類きのこを焼いて一旦火入れして、鰹と昆布の一番出汁で。

まずはこのスープから口に含むと、深い森が目の前に広がる。食べ応えある茸は、しゃくしゃくとした食感を感じるごとに、森に誘ってくれる。

ラビオリには朝締めの合鴨と生のポルチーニと生姜入りで、鴨のエキスがスープにじゅわりと広がって、ガラッと味変。

ペアリングは、きのこの生えている森の空気感をそのまま感じてもらうプレゼンテーション。赤松の葉を焙煎し、青胡桃を煮出して、長野のりんご果汁だけを発酵させた林檎酢と合わせて、滋味とフルーティーな酸味がツンと引き立てる。

 

③ かぼちゃと柿と浜名湖のうなぎ
バランスをテーマとする一品。うなぎは 500〜600gのもので皮目をバリっと仕上げて甘辛タレを塗る。ソースはふかしたかぼちゃを柿ソースで伸ばし、柿酢に漬けたフレッシュな柿はジュリエンヌして。フルーティーで温かなオレンジ色の味わいに、クミンシードの妖艶な風味をアクセスに効かせることで、効果的に輪郭が出る。
ペアリングは、お料理には足りていない酸味と、渋みを加えて口の中で味わいが完成する。
食用ほおずきに、キンモクセイの風味、カリンのアクで渋みの要素を加え、甘みをぼやけさせることで輪郭がはっきりする仕掛け。

 

・ジャガイモのフォカッチャ

 

④Signature Dish、信州サーモン

スペシャリテ。20日熟成させた鮭の柔らかい部位を、2週間発酵させたかぶの薄切りで包み込む。そこに1ヶ月発酵させたトマト、柘榴と青紫蘇でスッと味を立てる。別皿は3年目の奈良漬を乗せたものと、発酵金柑とすぐり
ペアリングは、発酵プルーンジュース、薔薇、ダージリンのコンビネーション。

 

⑤ビーツ
Naz定番の”季節野菜再構築シリーズ”、この時期はビーツ。
ビーツは丸ごとオーブンに入れてセミドライにし、1/3くらいになったものをビーツスープで戻したものに、軽く焼いた胡桃のアイスを味の接着剤として合わせ、トップにはスライスしてから乾燥させた、言わば”切り干しビーツ”を。塩も砂糖も使っていない凝縮したビーツの、見た目以上に紫色の味わいとコクが口の中に広がる。普段は感じられないビーツの新しい食感も新鮮だ。上には焼いたアニスシードとビーツパウダー

ペアリングが素晴らしい!発酵したラズベリーの原液、焙煎したコーヒー豆、カカオの葉のお茶で、そのまま飲むと(わかりやすくいうと)まずいのだけど、ペアリングするとホームラン級の素晴らしい美味しさに。
同調する味の置き方ではない、ペアリングのマジック!

 

⑥はや
”はや”という聞きなれない川魚の料理。通常は、獲れても逃してしまう小魚だそうですが、あえて料理に取り入れる。これぞディスティネーションレストランの醍醐味だ。

香ばしくカリッと、身はふわふわに揚げたはやを、カオヤーピンで包んで北京ダッグ風に仕立てて食べる。軽く叩いたアボカド、鞍掛豆(青大豆の一種)、紅玉りんごのジュースとバイマックルのオイル、甘辛味漬け、発酵キャベツ、白ネギ、コリアンダーシード、マイクロパクチーでエスニックなニュアンスで味わいを昇華。うまい!

ペアリングは、新潟のルレクチェ、いちじくの葉のお茶、クローブ。

 

⑦すっぽん
今まで食べた焼きスッポンで、断トツのナンバーワン!1.3〜1.4kgの大きなすっぽんを、2時間米麹に付けて、周りだけに旨みをまとわせてから炭火でじっくり火入れ。古酒と魚醬、ジュニパーベリーパウダーと。手前にはすっぽんのレバーの串刺し。
ガブリとかぶりついて、肉肉しさを堪能できるのはこの大きな個体だからこそ。言われなければスッポンと分からないかもしれない、ジビエのような味わいで力強さがあり、やわらかく仕上げて旨みも膨らむ。絶品だ。

ペアリングは、もみの木とエルダーベリーで、スッポンの血を思わせる鉄分のニュアンスを。

 

⑧お米の一皿
五郎兵衛米を芯まで炊き、2ヶ月発酵させた野沢菜に蕎麦粉をまぶして揚げたものを混ぜ込んで。薄い貝のお出汁で。とにかく野沢菜の緑の香りが鮮烈だ。秋鮭のいくらを添えて。

ペアリングは、発酵したキウイ、ライチ果汁と緑茶。

 

⑨無花果アイス
無花果をテーマとしたデセール。無花果は葉もしっかり香りがあるのですが、その風味をのせたアイス、無花果オイル、フレッシュな無花果と、バターたっぷりのクランブルに黒無花果のチップ。
秋のコースに相応しいデセール。こちらは紫の味わいが口いっぱいに。

食後は、ハーブティーとヘーゼルナッツケーキ。小麦粉なしのこのケーキがとっても美味しくて、食後の満足度をさらに高めてくれました。

Restaurant Naz
長野県北佐久郡軽井沢町追分134-3 GREEN SEED軽井沢 内

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