香林坊の一角にある北イタリア料理店。ワインを楽しみながらゆっくりと美味に浸る、大人のためのレストランですよ。イタリア料理と一言で言っても北と南では傾向が異なります。(ざっくりと)南イタリアは三方を海に囲まれており魚介類やトマトが登場することが多いですが、北イタリアは寒冷地帯であり酪農地域なのでジビエや加工肉を使用することが多いですね。オーナーシェフは松岡健一さん。メニューを見ただけでこだわりは一目瞭然で、稀少肉やイタリア野菜のお料理など、なかなか出会えない食材も見受けられますよ。手打ちパスタもいいですね。種類が多過ぎないのも好感が持てるところ。
お店の場所は北國新聞社ビルの横手を入ったところにあります。店内は奥に長い造りをしていて3、4のカウンター席はありますが、他はテーブル席。ライティングを落としたシックな空間ですが、肩肘を張りすぎずに楽しめるような温かみのある雰囲気も漂っています。
お肉料理は焼き上がりまでに時間を要するので、ワインと前菜を頂きながらゆっくり待ちます。
●アンディーブとくるみ ゴルゴンゾーラチーズのサラダ
アンディーブ(チコリ)の苦味とゴルゴンゾーラチーズの個性的な風味と奥深いコク、クルミの滋味が調和しており美味。
●プンタレッラとホタルイカの燻製サラダ
プンタレッラはローマで人気の野菜。旬が短く、イタリア国内の市場に出回るのも冬のごく短い時期だけです。チコリやチンゲンサイの茎ような食感で、少し苦味がありますが、アクの強い感じはなくサクサク食べられます。
●プロヴォーラチーズとイノシシの燻製ハム
イノシシのモモ肉の燻製ハムとプロヴォーラチーズをのせたサラダ。プロヴォーラチーズは、モッツァレラチーズを脱水せずに燻製にしたもの。みずみずしく淡泊な味わいに、スモークの風味がのったオトナで繊細なチーズ。胡桃や赤キャベツの苦味と共に、大人の余韻を残します。滋味の演出がニクイ!
●トマトとプロヴォーラチーズのサラダ
●カルパッチョ
甘海老、ヒラメ、エンガワ、サヨリ、雲丹のカルパッチョ。海鮮類も吟味されているのでしょう、エンガワやサヨリなどは、プリッと弾けるような食感で鮮度の良さが伝わってきますし、淡い味わいの白身も甘さが引き立っていて、しっかりと印象を残します。海鮮ものの料理も手抜きなしなんですね。
●ガスエビのオイルパスタ
見た目でもうやられました。説明不要、うまいに決まってる(笑)甘海老より甘いと言われるガスエビは、足が早いため都心には出回らず金沢で地元消費される幻の海老。ミソたっぷりの頭がゴロゴロ入っていて、濃縮された甲殻類の旨味とミソのコクがオイルに移り、さらにそれがパスタをコーティングし悶絶のうまさ。
●カッペレッティのラグー
カッペレッティは、詰め物をした帽子型のパスタで、中にはじゃがいもとブリアンゼッタ入り。最初にパルミジャーノを削りかけてくれます。パスタに凹凸があるのでソースをよく受けてくれるし、厚い部分は食感がしっかりあって歯ざわりも美味。
●イノシシのラグー
この他、ラザーニャ、シャラテッリ(南伊太麺)、タリアテッレ(北伊平打麺)などもあり。
●イノシシの炭火焼
金沢の湯涌で獲れた30キロのイノシシをシェフが捌いたそうですよ。手前がモモ肉で、奥のはホホ肉。モモは赤身ですが、クセなくさっぱり淡泊な味わいですから、白ワインも合わせられそうな感じ。ホホは脂肪が厚めですが、しつこさがまるでなく、サクサクいけてびっくりでした。イノシシの出汁ベースのソースが、繊細なお肉に野趣と濃厚な旨味を添えています。
●アバッキオのオーブン焼き(春から初夏まで。入荷があるときのみ)
まだミルクしか飲んでいない仔羊「アバッキオ」のオーブン焼きです(左はヒレ下ロース肉、右がモモ肉)。羊らしいクセはなく、地鶏の若いのみたいに淡泊でプリッと跳ね返す弾力があり、お乳の香りもほのかに余韻に残る繊細なおいしさ。一時目を閉じて味わいに浸りました。
手前はイタリアプーリア州の野生のキノコ「カルドンチェッリ」。エリンギのような食感で、旨味エキスがほとばしります。
●チンタセネーゼの炭火焼き
「伝説の黒豚」と呼ばれている「チンタセネーゼ」が食べられることです。トスカーナ州シエナ地方の山奥で約3年半放牧されて育つ、猪に近い古代品種の豚で、絶滅の危機に瀕していたこともあります。「チンタ」というのはイタリア語で“バンド(帯)”という意味で、この豚は首の回りから前足にかけて白い帯状の模様があります。生産数が限られていますから、本物は個体識別番号付きです。ドングリや松の実を食べて育ち、厳しい自然環境でも生きて行けるように遺伝的に脂肪を蓄えているため、猪肉のようにパワーに溢れた味わいで、いつも食べ慣れている豚肉とはまるで別物の美味しさですよ。
一人で訪問するとどうしてもパスタで胃袋が満たされてしまうので、2名~4名での訪問が適度かと思います。