富山市石倉町にある、炭火焼きとパスタに定評のあるイタリア料理店。オーナーシェフの田中穂積さんは、イタリアや東京の有名店などで約10年腕を磨き、Uターンにてお店をオープンされました。可愛らしい店名からは想像できない高いレベルで、全国の食通や同業者である有名シェフの来店も多いお店です。田中シェフの探究心は日々加速している印象で、新作も多く、技術力の上に咲くクリエイティビティが毎度楽しみです。
店内入ってすぐに4席のカウンターがあり、お店中央は広めのオープンキッチン、さらに奥に行くとテーブル席があります。白と木を基調としたシンプルでナチュラルな空間デザイン。メニューは黒板のアラカルトもありますが、8000円のおまかせコースにするのが一番オススメです(私はいつもおまかせコース)。
【紹介項目】
(最終訪問 2020年6月19日)
2020年6月19日 生しらす岩海苔パスタ、鱒カツ
春の営業が出来なかったので、前回から約3ヶ月ぶりの訪問。毎回新作づくしなのがすごくて、シェフの止まらない探究心とバリエーションの広さが感じられて楽しいし、秘められたポテンシャルを想像させられるようで、また通いたくなります。
●鰯のマリネ
揚げジャガイモを土台にマリネした赤玉ねぎと黒部のシェーブルチーズを合わせ、鰯を並べてあります。見た目と解説では予測不能の味で、クミンを効かせてオリエンタルな着地に驚き。
●水餃子
包みものは田中シェフの得意技の一つ。海老と豚に山椒を効かせ、風味で立体感を出すのは“シェフらしい”演出。赤ワインビネガーの豊満なふくらみとキレのある酸味でさっぱり。
●バイ貝
パクチー使いも得意技。嫌味のない品のある味わいにまとめてあって美味。花びらのようにしたバイ貝の跳ね返す優しい弾力にも調和。肝の部分は藁で風味を添えて。
●サラダ
新しく可愛らしい一品。グラスの中に咲くガーデン。エンドウ豆に空豆ピューレ、フレッシュのイチゴにエディブルフラワーを添える。豆の青い香りもイチゴのチャーミングな甘さも黒部のシェーブルチーズがまとめ上げる。淡く繊細で華やかな一品。
●生しらすのパスタ
運ばれてくると同時に海の香りが鼻腔をくすぐる。生しらすと岩海苔のパスタだが、冷製ではなくほの温かく、キリッと締まった感じではなく、とろっと滑り込んでくる妖艶な美味しさ。
●鱒カツ
富山で魚と言えば、思いつく一つであるのが鱒。均一で歯切れの良いサクサクな衣と、身の絶妙なレア感。水分を保ち口溶け良く美味。ソースは行者にんにくと山独活。
●熊本県産赤牛
2020年3月5日 猪クレープ、ホワイトアスパラリゾット
初めて食べた猪クレープなども良かったし、ジャージー牛の炭火焼やホワイトアスパラのリゾットといった王道もバシッと決めていてさすがだなぁと思いました。
●能登牡蠣炭火焼き
炭火での風味の添え方、火入れはさすが。紅ほっぺとビーツのソース、黒部Y&Co. さんのシェーブルチーズ添え。
●野菜スープ
色鮮やかに発色した野菜が目に飛び込んでくる。“野菜スープ”と言えどごった煮ではなく、それぞれおいしい調理法で個性を立たせてある。富山の雉のスープはクリアだが、波紋のようにとくとくと余韻にまろみが広がり美味。
●猪クレープ
大和芋と土遊野の全粒粉のもちっとしたクレームに隠れているのは猪を薄くスライスした生姜焼き。滋味あるナチュラルな味わいのクレープに調和させた、野趣と品を兼ね備えた生姜焼きだ。
●蛤と菜花のパスタ
見た目に春の訪れを感じるパスタ。蛤の旨味と菜花の淡い苦味が奏でる、和食に通じる品のある美味しさ。
●ジャージー牛サーロイン
(個人的な肉の好みもあるけど)今までのシェフの炭火焼メインの中で一番好きかもしれないと思った。良い意味での牛の雑味のなさと、パーフェクトな火入れで肉に内包された旨味が塩で引き立つ。いくらでも食べられる。
お肉に添えてくれる葉野菜
●ホワイトアスパラのリゾット
イタリア米がちょうどいいアルデンテで咀嚼するたび目尻が下がる。王道もうまいのだと実力の高さを教えてくれた。
●黒糖のクレームブリュレ
以前食べたことあるけどやっぱり良い。キャラメリゼの香ばしさと、黒糖のホロッとくる深い甘みが抜群の相性だ。
2020年1月6日 焼きトリッパ、小猪ラグーピチ
今回も新作多々で心踊りました。個人的には、焼きトリッパ、トルテッリーニ、真鱈のヴァポーレ、小猪のラグーピチが好きでした。
●SAYS FARM シードル
●軽く炙った水ダコと大根
まずはお花畑のような可愛いらしい一皿から。富山県南砺市「Genta Glass」さん製の器がとってもステキ。ガラスなのにやわらかさ・温かみを感じて、なんだか愛着が湧きます。
●焼きトリッパ
ネーミングで食べる前からそそられます。こんがりと焼き目をつけたハチノスの下は、自然薯と野芹とゆで卵で、酸味を効かせてあり爽やかな印象。軽快に進むし、シェフ的には試験的に?今年初出しで作ったらしいですが美味しかったです。
●新湊カツオ藁焼き
地物のカツオは表面を均等にうっすら火入れ。藁のスモーキーな香りが鼻腔を抜けます。味わいの仕上がりが“和”に寄ってしまいそうな料理ですが、しっかりイタリアンで着地しているのがさすが。玉ねぎにはクミンを効かせて。
●トルテッリーニ
豚肉を詰めて三角に折り、リング状にしたパスタは繊細な口当たりが印象的。比内地鶏の力強くクリアな黄金のスープで。
●真鱈のヴァポーレ
真鱈は蒸し料理で。鱈の繊維感が出てくる前の絶妙なところで仕上げてあり、口の中でとろけてなくなるくらいデリケートで美味。
●真鴨
網獲れの新潟産真鴨を炭火焼で。キノコにはローズマリーの風味と酸味を効かせてあり、見た目はシンプルで素っ気ないが、力強い味わいの鴨に爽やかな風を吹かせ良いアクセントになる。
●小猪のラグー ピチパスタ
一本一本伸ばして作る丸太のピチパスタは、セクシーな舌触りとコシのある食感が美味。小猪のラグーはシンプルな塩味だが、旨味がしっかり骨太で、ピチをコーティングしている。うまい。
●ゴルゴンゾーラのアップルパイ
薄生地一枚をお皿のようにしたアップルパイで、中にはりんごとゴルゴンゾーラ、焼き立てにアイスをのせて。焼くことで風味も味わいも丸くなったゴルゴンゾーラがバニラアイスと調和しており、かつ、今回のコース構成を完結させていて良いと思いました。
2019年5月27日 熊ワンタン
今回は新作づくしで初めて食べるものばかりでしたが、その中でも熊のワンタンが一番好きでした。パクチーソースのリングイネも良かった。
●白エビ、大麦、きゅうりのサラダ
●いわしのゼッポリーネ
●乳飲み仔山羊
●アカイカのパクチーソース リングイネ
リングイネとアカイカの食感、口当たりを合わせているのが肝。パクチーの風味を軽くまとわせて。
●サクラマスのコンフィ
●熊のワンタン
今回はこれが一番好きでした。ワンタン皮は紙のように薄くシルクの舌触りで美味。ウサギとスッポンのスープには少々の野趣があり熊に寄り添い、そしてクリアで美味。
●富山県産池多牛
●チョコレートとローズマリーのアイス、黒部ヤギヨーグルト、バナナ
2018年8月 白えび冷製パスタ、アニョロッティ・ダル・プリン
●鯖フライ
熱々の鯖フライ。鯖の個性がパクチーで上手に持ち上がっていて、う、うまい!
●バイ貝夏野菜サラダ
思わず吐息が漏れる美しさ。こういう意表をつく繊細さ、さすがです。
●白えびの冷製パスタ
夏の暑さを冷たさでスッキリと吹き飛ばしてくれるだけではなく、端正で品のある“和の顔”も見せてくれる一品。
●アニョロッティ・ダル・プリン
“プリン”と聞くとデザートを思い浮かべますが、つまんで閉じる製法のことを指し、言わばラヴィオリパスタのようなもの。中身は仔牛とウサギ肉、豚肉を合わせたもので、それらが内包されたまま調理され、口の中で濃厚で複雑な旨味エキスが炸裂します。紙のように薄いパスタの繊細な口当たりも美味。ほんのり効かせたスパイスで、ライトな印象。
●富山県さんジャージー牛
炭火焼きは、店主厳選の仔牛やブランド豚、ジビエ類。カット面で火入れが秀逸なのは一目瞭然で、旨味が均一に行き渡っています。骨太な味わいですから、あらかじめ施された塩で十分。
さらに付け合わせのポテトがうまい。そして添えてくれるグリーンサラダがビネガーをしっかり効かせてあってアクセントになって肉が飽きずに進む進む。
●黒糖のクレームブリュレ
うまい!キャラメリゼの焦がしの香ばしさと、黒糖のホロッとくる深い甘みが好相性で、味の深みに横幅が加わります。
2017年3月 ゼッポリーネブラック、鮑
●コウイカと青大根、パクチーソース
ある日の軽い前菜は、青い風味を味方に付けた爽やかな一皿からでした。これでその後のお料理への期待感が膨らみます。
●ゼッポリーネ・ブラック
おつまみとして「ゼッポリーネ・ブラック」の注文がオススメ。ゼッポリーネはイタリアの港町ナポリの郷土料理で、海藻入りのもっちりした揚げパンです。ここではイカ墨入りで、海藻の風味にイカ墨の深みが加わっていますよ。
●鮑
立派な鮑をソテーにて。お肉だけではなく海鮮もおいしいのがニクいところ。
●淡路島ポーク(イノブタ)肩ロース
予想以上に味がしっかりとしており、噛むほどにその旨味がこぼれ出します。
2016年3月 ロバ、ホタルイカのコルツェッティ
●牡蠣の炭火焼き
●海鮮サラダ 甘海老、ハマグリ、コヤリイカ、バイ貝
●バーニャカウダ
●イタリア産ロバ(左上)、蝦夷豚
え!ロバ?と二度見(笑)。メニューにあったらぜひ食べてみてください。意外と品のある味でした。
付け合せは淡路島産のタマネギと下仁田ネギ、チコリに似たイタリア野菜「タルティーボ」など。
●アニョロッティ・ダル・プリン
●ホタルイカのコルツェッティ
ホタルイカのパスタも、ここではリグーリア発祥の平べったい円形のパスタ「コルツェッティ」を合わせて。クルンと包み込むように挟んで食べると、口の中でホタルイカが弾けて濃厚な旨味がソースの役割を果たします。
●うさぎのパッパルテッレ