金沢おでん老舗のひとつ。創業は戦前の昭和9年、店内には昔片町に路面電車が走っていた頃の写真も飾ってあって、あの頃にタイムスリップすることができます。二代目の大将が亡くなってからは、女将さんと娘さんが暖簾を守り続けています。2015年1月、「秘密のケンミンショー」で金沢おでんが紹介された際も、大きく取り上げられたのが同店で、スタジオで金沢おでんを振る舞われていました。(※カニ面の提供は11月7日から12月末頃までです)
【紹介項目】
(最終訪問 2020年11月7日)
菊一のおでん
命のおでん出汁は、大将が火加減にも細心の注意を払って仕込んでいた頃の出汁と変わりなく、まろやかで角のないしみじみと情のある味で、心にく~っと染みるようです。おでん鍋には、金沢おでんならではのくるま麩や梅貝、ふかしの他、昆布巻きやたにしなど懐かしさを誘うおでんダネもあります。
(2020年10月8日訪問にて)
冬季限定「加賀れんこん団子」がメニューに加わっていました。注文したら3分くらいで出来上がり。表面にはれんこんのスライスが。もっちりしており野趣があってとっても味わい深い。これはオススメ!
熱燗をやりながらおでんを。体の芯からポカポカ温まって来ます。
熱燗を注文すると、小皿を敷いたグラスが運ばれ、そこに熱燗を注いでくれます。
(金沢弁で)“つるつるいっぱい”に注いであるので、まずは口で迎えにいかなければなりません。
くは~!
(↓2020年6月28日訪問にて)
ちなみに金沢人はおでん屋さんを居酒屋として利用するので、夏でもおでん。トウモロコシもおでんダネに加わっていました。
じゃがいもやさといもといった芋類は、出汁を吸ってくれているし、ホクホクでおいしいですよ。ロールキャベツの中身は、糸こんにゃくと肉だんごでシンプルです。
菊一のカニ面
メスのズワイガニである「香箱(こうばこ)ガニ」を使ったおでんで、11月7日くらいから12月末までの提供です。身出しをして甲羅に詰めておでんダネにします。手間大変かかかるため、他のおでんよりも高価ですが人気で売り切れしている日も少なくありません。
香箱ガニはオスの加能ガニよりもサイズは半分ほどで小さいですが、オスより身が甘く、地元でもメスの方が人気です。さらにお腹はカニの卵を持っており、通称 ”外子(そとこ)”で、プチプチ弾ける食感が美味。甲羅の中には未成熟卵であるオレンジ色の “内子”がびっしりと詰まっています。しかし香箱ガニの漁期はとても短く、11月6日~12月29日と2ヶ月未満ですので、カニ面の提供もかなり期間限定です。
菊一さんの創業は昭和9年で、カニ面を始めたのがいつからというのが定かではありませんが、昭和29年頃にはもう既にメニューにあったそうです。しかしその頃の名前はカニ面ではなくて単に「カニ」。香箱ガニは昔はたくさん獲れて安かったので、「子供の頃はおやつだったのよ~」とおっしゃる方がよくいらっしゃいますが、これをおでんダネにしようと思ったんですねぇ。
しかも菊一の先代は、片町から金沢港までソリで買いに行っていたのだとか…。びっくりですね。結構距離ありますよ…(笑)でもその風貌を思い浮かべるとなんだか金沢のサンタクロースみたい。ふふふ。
そして、「カニ」「カニ」とだけ呼ばれていた「カニ面」ですが、なぜ「面」という言葉が付いたのかというと、カニの身を甲羅に詰めて(雄のズワイガニで言うところのフンドシに当たる)腹の部分で蓋をするのですが、それが剣道の「面」に見えたから。
出汁をすったカニ足は茹でガニとはまた違ったおいしさ。外子のプチプチ食感もいい。
身をおおよそ食べ終わったら熱燗を注いでくれます。甲羅酒として楽しみ、もうほっぺは真っ赤に。
こちら↓のカニ面特集ページでも各店のカニ面を紹介しています。
https://food-japon.com/kanimen
ちなみにカニ面の時期は、香箱ガニの殻が出るので、それで出汁を取ったカニ汁がある日もあります。(カニ足が入っていますが身は入っていません。しかしながら濃いカニの美味しさがスープに移っていてうまい。)
菊一のサイドメニュー
金沢おでんのサイドメニュー定番は「どて焼き」です。金沢で「どて焼き」は串に刺した豚肉を茹で焼きにして味噌を絡めながら焼くもののことを言います。ネギのせのお店もありますが、菊一では味噌だけのシンプルタイプ。1本からでも注文可能です。
豚肉の弾力のある柔らかさ、旨味に味噌がぴったり。
さらにシメとして、出汁で炊いたご飯「茶めし」は食べておきたい。ほわっと馥郁たる香りが口に広がって旨さが後を引き、箸が止まりません。青海苔がよく合うんです。ああ、しみじみうまい。