札幌「beija Flor（ベイジャフロール）」のシェフを勤めた佐藤幸大氏が、2023年8月15日の東京・赤坂にて新たなレストラン「amorphous（アモルファス）」をスタートさせました。
日本にありながら誰も知ることがない北海道の深い深い山の“聖域”を、佐藤シェフの創造性によって味に落とし込んである料理が同店の魅力だと思いました。
味わいを重ねたハーモニーの妙と、“発酵”を駆使しているのも特徴的です。革新的で幻想的な美食の世界。
今後さらに尖ってくるのではないかと思われます。
赤坂のビル3階に、まさかこんな空間が存在するのかという、幻想的空間です。
（料理名はメニューのまま）
●蝦夷鹿/茸
プロローグであるこの一皿が一番印象的でした。
スープは蝦夷鹿のコンソメで、北海道で人口が4人しかいないという、人間によってほぼ開拓されていない山の蝦夷鹿です。まるで鹿の体液を飲んでいるような濃厚で力強い味わいなのですが、ネガティブな雑味がゼロで澄んだ味わい。
ポルチーニ茸のジェラートは、甘さを引き出した玉ねぎピュレと白カビサラミを合わせて。この時期の山は秋の天然茸のシーズン前で、土壌に湿度が増して蒸してくる頃ですが、それを味わいとして表現してあります。
深い森に迷い込むような、最高のプレゼンテーション。
●赤貝/f西瓜/胡瓜
赤貝はその体液で4-5日漬け込んで寝かせ、旨味をMAX値に感じられるように熟成。熟成した西瓜も、パッと弾けるような爽やかさの中に奥深さがあり、赤貝に調和しておりました。
●冷麺/渡り蟹/バプリカ
全粒粉と卵白とタピオカ粉で打った麺は、キリッとシャープでシコシコした食感が美味。
調味料やハーブで漬け込んだ渡り蟹とパプリカの、ガスパチョのようなソースを絡ませて。様々な味わいが織り重なる、イノベーティブの真骨頂。
●鯟/定点観測
北海道の鰊は季節で味わいが大きく変化するので、個体そのものの定点観測であり、鰊の身質をシェフがどのように昇華させるかという意味でも定点観測的な一品。
鰊は塩をして酢締めし、2-3日間寝かせ、大葉を発酵させたジュース、ガリ、本わさびオイルでテリーヌ状に。ハスカップのピュレと。
タルトは鰊の子である“数の子”とクリームチーズのタルト。プチプチした食感が口の中で鳴り響きます。
●七谷鴨/ソーセージ
七谷鴨の内臓を使ったソーセージ。ハツ・レバー・砂肝とモモを網脂で巻いて香ばしく焼き上げてあります。荒みじんなので肉肉しく、ワイルドな味わいが印象的。
●フォアグラ/治療
“治療”というタイトルになるほどの美味しさでした。
フランスから輸入されるフォアグラはどうしても運ばれてくるまでに酸化がおきているので、コンディションが悪くなり、現地で食べるものよりも劣ってしまうのですが、それを現地さながら再現したいと研究したのがこのフォアグラ。
血管を残したままPhコントロールをするなど、医療のように施された”治療”によって蘇生されたフォアグラは、品があって軽やかで別次元の美味しさでした。
●タヤリン/キノコ
卵黄を混ぜ込んだ伝統パスタタヤリンに、香茸など多種の天然茸を合わせ、鰹節の鹿肉バージョンである鹿節を削った森のパスタ。むせかえるような複雑な風味が口に広がり、ふわっと鼻腔を抜け、静かで地力のある山を連想させてくれました。
●紫バジル/ぶどう
●白甘鯛/蕪
白甘鯛のしなやかで高貴な身質を、一番美味しく食べさせてくれた素晴らしい料理。シェフが表現する”鯛のかぶら蒸し”でもあります。
鱗焼きよりも、シルクのような舌触りがそのまま味わえて私は好きです。美味しさにインパクトありました。
ソースは白甘鯛のピルピル。
●七谷鴨/牛蒡
炭火で焼き上げた七谷鴨の胸肉は、鴨の美しいロゼ色に魅入ってしまうようでした。ソースは鴨のジュとニラ醤油。
特筆したいのは、添えてある牛蒡。鴨の油でコンフィにしており、お馴染みの強い繊維感がなく、ホクホクしており美味。意外性に嬉しい驚きがありました。
●甘酒/アプリコット/コンブチャ
甘酒のパンナコッタに、ハイビスカスのコンブチャでコンポートにしたアプリコットをのせて。発酵を掛け合わせたデセールで、各々違ったニュアンスの酸味が会話をするようでした。
●小菓子
マスカット、チーズクレープ 薔薇ピクルス、台湾山椒のホワイトチョコレート
店舗名: amorphous（アモルファス）
住所 : 東京都港区赤坂 3-12-11 ニューギンザビル7号館 3F
営業時間 : 18:00 ※一斉スタート
定休日 : 水曜日・木曜日
座席 : カウンター10席
HP： https://www.instagram.com/amorphous.official/
予約：https://booking.teriyaki.me/ja/store-detail/310
