「NOMI RESTAURANT」京都福知山|NOMI RESTAURANT , Fukuchiyama Kyoto

“切れ味”というコンセプトがかなり印象的な、京都福知山にある食通大注目のレストランです。

ハッキリ言ってモンスター店。料理をするのはなんと、3歳から包丁研ぎをしてきたという若き3兄弟。長男 山本遊士丸(23歳)、赤がトレードマークの次男 陽之進(21歳)、三男 凛志郎(17歳)がオープンキッチンで各得意ジャンルの持ち場を守り、プレゼンしながら料理を仕上げます。

猪や鹿をはじめとするジビエの狩猟も行っており、さらに米や野菜作りもして、天然茸や山菜も採取しに行くという、もうここまでの情報で突き抜けていますが、さらに若さゆえのタフさと「なぜだろう?」「もっと良くできないか」という柔軟性と職人気質の探究心が加わって、彼らの視点と理論で唯一無二の料理が編み出されている。
チームワークも抜群で、料理の流れも秒単位で計算してあるところが素晴らしい。プレゼンに説得力があるのは、若いとは言え3歳からという経歴の長さで、多くの経験に裏打ちされた自信があるからこそ。

ちなみに彼らの研ぐ包丁は、1本の髪の毛を縦に5当分以上に裂くこともできる鋭さ。毎回20種類以上の包丁を使用し、“切れ味”というものがどれだけ味に影響するのかを教えてくれた。研ぎ澄ました神の領域。

彼らは現代に生きるアシタカ。


みんな目鼻立ちがハッキリしていて、なんだかドラマのワンシーンのよう。

特筆したいのは器の素晴らしさ。その目利きはモンスターを生み出したお父様の審美眼によるもの。

 
●究極の一枚
まずは三男 凛志郎(17歳)のカンナのプレゼンテーションから幕開け。刃を調整して鰹節を削る。ちなみに髪の毛は80ミクロンだが、削られた鰹節は5ミクロン。



●DASHI
削った山盛りの鰹節は総重量20g。軽い。これを83度のお湯で出汁を抽出。0.8番出汁と呼ぶ。ちなみに、旨味を出す刃付けと、香りを出す刃付けの2種類があるそうです。

●松豚 × KIREAJI ✕ 胡瓜
狩猟した猪は稲藁で薫香を付けて。猪も良いが胡瓜の別次元の味に度肝を抜かれました。刃物だけでこんなに違うのか!フレッシュでみずみずしく、咀嚼した瞬間にパァと全身の細胞が目覚めるようでした。

●茶碗蒸
たまごだけの茶碗蒸し。使用するたまごは、彼らが卵から孵して放し飼いしたもの。飼料は、鶏のクチバシの形状から導き出したものだそうだ。
サラッとしていてコクがあり、シンプルだけどインパクトあり。ご馳走だ。

●鹿菜茸
鹿もものしゃぶしゃぶは、歯に記憶されるような優しい弾力で、パワーと野趣が里芋や牛蒡の地力に重なる。ズッキーニの切れ味にも唸った。

●kushiyaki
先端から、ハツ、ヒレ、雄鹿モモ、ランプ完熟山椒の4種類で、1本で部位の食べ比べ。竹串も自分たちで削ったそうだ。

●万願寺甘唐

●A cucumber that doesn’t realize it’s being cut
切れ味が良すぎて“切られたことに気づかないきゅうり”。そして押し切りと引き切りの、切り方を変えただけで味が変わるというプレゼンも素晴らしい。

●ご飯
お米は土鍋と銅釜の食べ比べにて。
陶器と金属ではお米への熱の伝わり方が違うという、炊飯マニアである次男 陽之進(21歳)のプレゼンが光る。お米はコシヒカリだが、肥料なしの自然の中で育てるのでさっぱりした食味。
私は輪郭が出る炊き上がりの銅釜が好みだったが、ここまで来るともう好みでしかない、どちらもうまい。


●出汁巻
ふるふるのきめ細かい出汁巻は天国の味。シンプルだからこそ差が出やすい料理。まさかこんな若い子が巻いてくれたなんてとても思えない貫禄がある。

●10日熟成 鹿ロースカツ

●人参
“THE切れ味”の人参なますは衝撃の一品。
舌に乗せた瞬間にそのつるつるした表面の、良い意味でエナメルのような質感にのけぞる。「え、嘘でしょ?」と、確かめながらその切れ味を堪能する。

●猪鹿鉄
スペシャリテとして完成されている料理がすでに複数ありますが、これも究極。“切れ味を隠し味に”したというハンバーグ。鹿と猪のあいびきで、人参・セロリ・玉ねぎは潰さないように混ぜ込んであり、その存在感を発揮しながら調和。今までで一番美味しいハンバーグ。別次元。

●猪小丼、SUMASHI
猪バラ肉をやわらかく炊いて小丼に、アクセントにシシトウを乗せて。

●甘味 野生茶
ここでの味わい所は、マスカットに添えてあるお手製の楊枝。鋭くて、皮に刺さるときの「プツッ」がない。注射針が無痛で肌に刺さったときの感覚。

●アイス
アイスは出来たて。福知山の山で育てられた香高い紅茶に、白茶をペアリング。

日本の伝統の素晴らしさを再確認させてもらった貴重な体験でした。
ここは間違いなく日本最高峰であり、若き彼らが探究し研ぎ澄ませた高い技術で伝えるからこそ、ズドンと伝わるものがある。
光り輝く日本の宝。ぜひ味わって体感してほしい。わざわざ福知山の山奥まで食べに行く価値あり。

NOMI RESTAURANT
京都府福知山市三和町下川合710番地の3