(訪問日 2020年2月28日)
「The World’s 50 Best Restaurants(世界のベストレストラン50)」2019では11位にランクイン、「Asia’s 50 Best Restaurants(アジアのベストレストラン50)」2019年3位、2020年3位、2021年3位にランクインという世界的有名店。
傳さんで魅力に感じたのは、固定概念に縛られない日本料理のプレゼンテーションとエンタメ性、飛び抜けた楽しさ。「また来たい」となるのに大きく頷けました。
まずは優しい笑顔で迎えてくれる長谷川在佑シェフと女将さんが、料理を食べる前に今日のこの時間を楽しむ心の準備を整えてくれます。肩肘張らない良い意味での抜け感が、料理に、そして内装や雰囲気にも感じられてホッとなります。傳のホームページで長谷川シェフが自身のメッセージとして書かれているのが、“笑顔がこぼれるような家庭料理を目指して”という言葉で、日本の家庭料理のエッセンスが入っているのになるほど。
また、コースに長谷川シェフのスペシャリテも多いが、どれも思わずクスッとなる楽しい仕掛けがある。遊びの要素があるところは徹底的に遊ぶ。しかし、そういうものにこそしっかりおいしさを作り込んであってギャップ萌えする。たとえばニコニコ人参が印象的な「傳サラダ」や、ケンタッキーならぬ「傳タッキー」。楽しいと美味いしいが細部まで考えられています。
ダイニングには長テーブルがあり厨房が臨める配置でお客さんが座ります。個室も窓を造ってあり厨房のライブ感あり。ワクワクが止まらない。お客さんは海外ゲストの割合がとても多く、世界から注目されていることを印象付けられます。
●傳モナカ
最初の一品は傳の千社札が貼ってある白地の袋に入れられたモナカ。千社札は季節でデザインが異なるそうです。
モナカの中味もその時で変わり、この日は、10日間味噌漬けしたフォアグラ、ムラサキイモ、そして食感にコリコリいうのはいぶりがっこ。塩味と甘味、発酵食のふくよかなコクと脂肪味のグラデーション。
●ズワイガニ葛よせ、みぞれあん
●傳タッキー
全力で遊び、全力で美味しい、ユーモアに溢れたスペシャリテ。“DFCの調理法!”“秘傳の愛情スパイス”などパッケージを読めば読むほど楽しい。
裏面表記もお楽しみに。
箱の中はもちろんフライドチキン。チキンの中にはもち米が入っていて、この季節は紫蘇、青梅のカリカリ入り。鶏肉は軽く干して旨味を凝縮させてあり、熱々の温度と共に口の中に旨味がほとばしる。
●クエ
静岡サスエ前田魚店さんの9日熟成のクエを海苔ソース、山葵で。
●牛ほほ煮込み
これはすごかった。箸がスッと入るほちゃほちゃな牛ホホ煮込みに、クリームソースには日本のトリュフ。トリュフは火を入れると味がのってくるそうで、いい感じに風味が溶け合う。横幅のある風味と味の広がりは洋だが、着地も余韻も和。その秘密は出汁。なるほど。
●傳サラダ
見た目では伝わらない、食べて初めて分かるこの料理の凄さ。サラダではあるが、日本料理の炊き合わせの要素をサラダで表現しているところに感動があります。
千葉からのお野菜を揚げたり煮ふくめたりとそれぞれに合う調理が施してあり、かなりの種類があって、食べ進めるごとに発見あり。そして葉野菜は細かい塩昆布入りのドレッシングでマリネをし旨味を添えてあることで、全体の味にまとまりが出ており余韻が和のおいしさに落ち着く。
益子焼 伊藤剛俊さんの器もこの料理を引き立てる。胴から腰にかけての角度と深さが絶妙で、容量があるのにスタイリッシュに見えるのは、高台がシュッとしているからだろう。
●豚汁
ネギたっぷりの豚汁で、中央には繊維の柔らかいカブラ。
●タケノコご飯
タケノコは揚げて香ばしさを出してあり、箸が進む進む。
●デザート