(訪問日 2020年4月2日)
※同店は、残念ながらコロナ渦のため、私が訪問した数日後から臨時休業となり、その後も営業再開せずに閉店となりました。
「The World’s 50 Best Restaurants」4回連続1位というデンマーク「noma」で腕を振るってきたトーマスシェフが2018年6月にオープンしたイノベーティブレストランです。2019年3月に発表された「Asia’s 50 Best Restaurants」2020では初ランクインで49位(個人的には正直もっと上位でも良いと思ったけど)。ミシュランガイドでは2つ星を獲得。
私は初訪問でしたが、オープンから通われている方の感想だと、以前から飛躍的に進化されたそうで、このタイミングで行けたのは非常に良かったし、本当に心揺さぶられた。
ちなみに、木村拓哉さん主演の「グランメゾン東京」で、尾花夏樹シェフに対立するレストランとして登場した「gaku」の料理監修をしていたのが同店です。
店名は、イヌイットの神話に語源を持つ言葉だそうです。場所は飯田橋エリアのビル9階で、アプローチから実に都会的だがその中でボタニカルな演出も印象づけられた。メインダイニングは広く不思議な異空間だが、丸みのある家具と雲のような照明で効果的にやわらかさも感じさせる。オープンキッチンのライブ感はどれだけ見ていても飽きないしドキドキさせられました。
料理には、“日本食材を追求し新たな価値を見出す”というスローガンに偽りはなく、本当に突き詰めていてすごいと思いました。日本人とは別の角度で、日本の伝統食材やローカル食材、発酵も研究し、さらに野菜果実だけでなく、草木のジャンルにまで切り込み、彼ら独自の使い方をしてあって面白い。
例えば、松。松ぼっくりや松の葉も使いどころが多く、今まで味わったことのない新しいおいしさに一役買っていました。
松の新芽は炊き込みごはんとして。松の新芽って、個性的で爽快な風味がするんだなぁと初体験の味でした。ベビー松ぼっくりはデセールで蜂蜜漬けとして。嘘でしょ?という食材使いのオンパレード。
コース冒頭に出て来るスペシャリテのプラムシートは、見た目に美しく、食べ進むごとに香りが変わることで景色も変わり楽しい。あん肝は今まで食べたことのないエアリーな食感に驚く。沖縄のカニステル(別名エッグフル)という果実を揚げてフライにしたものは、果実なのに卵の卵黄にそっくりで、これも面白かった。かぼちゃを鰹節を作る技法でかぼちゃ節にしてあるのも驚きだった。本当にかぼちゃ節。
中盤で驚いたのが(コースに加えた)「麹とキャビア」という名前の一品。なんと“うどん生地”をカード状にして2、3日麹菌を表面に意図的に繁殖させ、ふわふわにした状態でキャビアを乗せたフィンガーフード。恐る恐る口に運ぶと、最初に舌に当たる麹菌の細い糸の柔らかくエアリーなクッションに興奮。キャビアの塩気で頂く。
●プラムレザーとフレッシュなアロマティックフラワー
●スナップえんどう、ハバネロ味噌とプラムカーネルクリーム
●鬼エビ、かんずりオイルと沢蟹醤油
●鮟肝テリーヌとナツハゼ
●ナスタチウムの花とスモークした昆布のクリスプ
●落花生豆腐、カシスの新芽とコリアンダー
●熟成・爆製させた舞茸、松のだしと塩漬けしたサクラ
●桜の葉で包んだうずらの卵
●サルナシと森の香り
●揚げカニステル、ローストしたイーストとルバーブの根のオイル
●かんずりにつけた季節のシトラス、昆布オイル
●空豆とドライフルーツ、マジョラムとスモークしたパセリのペースト
●麹とキャビア
●かぼちゃとかぼちゃの削り節
●炊きたてのななつぽしと松の新芽
●フレッシュアーモンドミルクのソルベ、樽熟成貴醸酒、杜松と上溝桜の実
●ワカメのミルフィーユ
●アテモヤとアーモンドの種の香り
●松ぼっくりのハチミツ漬け、ハイビスカスとリコリス
食事の最後にキッチンツアーしてくれるのもいい。
最初から最後までエキサイティングで、夢の世界に行ってきた高揚感のまま翌日を迎えました。