「長谷川稔」東京 南麻布|Hasegawa Minoru, Tokyo JAPAN

(訪問日 2020年10月10日)

食通では知らな人はいない超予約困難店。北海道から2018年4月広尾に移転。予約は1年か2年先まで埋まっていると言われます。ジャンルはイノベーティブやフュージョンなどに分類されていますが、肩書きのない“長谷川稔料理”だな、と思いました。シェフの名前そのものの店名がそれを表しているようにも思われます。料理は、私が思っていたよりも骨太で食材を立ててあり、日本料理の要素もフレンチやイタリアンの要素も感じるが、そのどれでもない予測不能のコース構成に驚きました。

入り口にはエントランスも何もなく、外からの扉を開けたらすぐにコンパクトなフロアにテーブル1つあり、ここがメインダイニング。4名限定での営業。
テーブル席から見えるのは、ガラス張りの厨房で料理をするシェフの姿、天井にはお月様のような照明。全部カッコイイ。

●鮑
京都舞鶴の鮑と福島県のズッキーニ。鮑は昆布締めにして水と塩で3時間ほど火入れし、葛粉でといた鮑の出汁をソースにして。素材の味を最大限に引き出した、まず最初のこのシンプルさに驚く。長谷川稔を教えてくれるプロローグ。

●白カジキ
つい先日「プロフェッショナル」に出演された魚の仲買人 長谷川大樹さんの白カジキを使った料理で、1つのお皿で5味を表現している。神戸牛のブレザオラを一緒に頂くと、その凝縮された旨味と塩気が白カジキにピタッと乗る。3種類のソースは、シーザーソース、25年熟成のバルサミコ、タプナードソース。

●すき焼き
石垣島きたうちプレミアムビーフの肥育約40ヶ月のリブロースに割下を染み込ませてすき焼きにして、岩手の松茸と一緒に。ウニのソースと赤酢のジュレで。

●白子パスタ
冬のスペシャリテ、冷たい白子のパスタ。コースの中で個人的にこれが一番好きでした。
白子は59.5度のお湯でさっと湯がいて、同温度の白だしを浸透させ、ふるふるとした仕上がりで、心地よい出汁のまろみが一体となっている。パスタは鱧とハマグリの出汁に絡ませて。クリーミーな白子に絶妙な柚子胡椒がふうわりと香って引き締める。


●クエ
小田原のクエをベニエで。クエのジュを閉じ込めてあり艶々でみずみずしい。ベルーガキャビアの塩気のグラデーションで。

●牡蠣と豚
北海道厚岸(あっけし)の牡蠣は出汁の旨味を吸わせて炭火で炙る。それを松坂豚の炭火焼と一緒に食べると旨味がフュージョン。喧嘩せずスッと一体になる。白ごまのソース、黒ごまのソース、黒七味で。

●うなぎ
福岡県の海うなぎを軽く蒸して炭火焼に。福井のいちほまれをハマグリの出汁と実山椒で炊き上げたものを酢飯にして。輪郭を残したご飯とほわほわなうなぎの美味しさ。

●箸休め
余市のトマト、木更津の水牛ミルクのモッツァレラ、生ハム。無数のお花が散りばめられる美しい器は、ベネチアグラスで有名なベニスのモレッティの“ミルフィオーリ”。

●羊
北海道白糠の羊のTボーン。ソースはマルサラ酒とフォン・ド・ヴォーと生クリーム。付け合わせはポルチーニ茸と賀茂茄子のグラタン。秋を感じる。

●桜桃さくらもも
桜桃だけで組み立てた一皿。カリカリの食感の桜桃に凍らせて削った桜桃をはらりとかけて。花びらのように美しく、チャーミングで品があり、清涼感のある味わい。

●ティラミス
ピスタチオのアイスに黒イチジク。マスカルポーネにはメレンゲを加えてふうわりと持ち上げるような軽やかさ。