「JL STUDIO」台湾 台中|JL STUDIO, Taiwan

(訪問日 2019年12月14日)

台中にある超注目の一店。お店のジャンルは“現代新加坡料理”(現代的シンガポール料理)。シェフの出身地がシンガポールで、台湾食材を使用してイノベーティブ料理に昇華させています。シェフが料理に落とし込んでいるストーリーやメッセージに深みがあり、国の文化や背景まで味わいとするところがとにかく魅力的。
「Asia’s 50 Best Restaurants(アジアのベストレストラン50)」では、2019年に「注目のレストラン賞」を受賞、2020年と2021年は26位にランクイン。
“芸術は今の自分を写す鏡である”という言葉がありますが、芸術を料理に置き換えるならば、どこまで読み解けるかは食べ手の経験や知識次第。深く知っていれば、より深いところに発見と驚きが見出せる。なんだか料亭や懐石料理の楽しさに似ていると思いました。

タクシーで建物の前まで到着したのですが、お店の入り口が分からない。確かに「JL studio」と外観に大きく書いてあるのに。その理由は、1階はとても広いカジュアルレストランで、沢山のお客さんが食事をしています。その笑い声の中を通って奥のエレベーターに乗り、お目当てのレストランは2階。エレベーターの扉が開いてすぐに厨房の前に出る造りで、まずは活気に迎え入れられます。メインダイニングは広いワンフロアで、下とは違って余裕を持った空間使い。ピンク、黄色、緑のカラフルなメニューがテーブルにセッティングされてあって心躍ります。


ディナー“Experience Menu”15〜16品(デザート、小菓子込み)
●STREET BITES
Cucumber, Pineapple, Tofu, Cashew Sauce Turmeric, Lemongrass, Galangal
Mahi Mahi, Shrimps, Lemongrass
Black Pepper “Crab”
Bafun Uni, Papaya, Fermented Sweet Potato
まずは6つのフィンガーフードから。6品あり、2品ずつの提供。どれも高い芸術性。また、いくつもの文化の交差点と言えるシンガポール、エリアで街の顔も違う。そんな街を歩きながら、マレー系、中国系、インド系、ニョニャ系と、テーブルの上で食べ歩きを楽しんでいる気分になりました。
まず最初のタルトは見た目は華やかだが、口の中にスパイスのアロマが広がる。豆腐をムースのようにクッションに使い、ナッツソースとパイナップル、胡瓜。

美しい黒の花型にはレモングラスのクリーム。





フィッシュペーストを挟んだサンドイッチは、シェフが小さい頃にお母さんがお腹が減らないようにと作ってくれたサンドイッチの再構築。

●Bak Chor Mee
Abalone, Foie Gras, Shitake
味でもプレゼンテーションでも記憶に残った一品。食事の冒頭から、卓上のキャンドルに火を灯してくれたので、単に灯りとして置いてくれたのかと思っていましたが、そのキャンドルだと思っていたものは実は蝋ではなくてポークオイルで、それが炎で溶けたところで料理登場のタイミング。溶けたポークオイルに、醤油とビネガー、セサミオイルを混ぜたものを加え、料理に仕上げとしてかけます。

料理は、シンガポールのストリートフードの麺料理であるBak chor meeで、中華麺の変わりに薄いスライスのシイタケとアワビを使用。能登の原木シイタケ「のとてまり」は別名“アワビ椎茸”と言われるが、鮑とシイタケは優しい弾力が似ていて、つるんと滑る口当たりも似ている。チリと豚の脂、醤油を絡めて、汁なし混ぜ麺として。美味。

●Chili Crab
Local Crab, Squid, Coconut milk, Torch Ginger
カニとココナッツミルクと辛味ハーブで、味的にはグリーンカレーのような感じ。

●Teochew Fish Soup
Fish of the Day, Spring onion, Ginger
お花のように盛り付けてある魚にスープを注ぎ、しゃぶしゃぶのようにして瞬間的にお皿の中で火入れをして食べる。生姜と茗荷を風味づけに。

●Everything “Stinky”
Fish Sauce Caramel glazes “CHAR SIEW”, Beef Short Rib Jicama, Petai, Green Sambal
魚醤や“Petai”(ネジレフサマメノキ)などの個性のある風味を使った一皿。ビーフは厚みありジューシーだが、表面は八角を効かせて中国系のチャーシューのような味付け。

●The Forgotten Blossom
Banana Blossom from Hualian, Fermented Banana Curry
水墨画のような一皿。台湾花蓮市のバナナの花とバナナカレー、コリアンダーなどの香草と海老をクレープで。説明通りにカレーだと思って食べると、まず口に入れた途端、白黒の視覚的印象からは全く想像もつかない、とてもトロピカルでいてフラワリーな香りに包まれ驚きました。


●Small Sweets
Yaw Kun Kopi Tiam
Bandung
Watermelon Pumkin Passionfruit
いくつかのデザート。ひとつにシンガポールやマレーシアで朝食の定番として知られるカヤトーストの再構築。半分に切った卵に何やらモコっとペーストを詰めてあって、食べると口の中でサクサクと香ばしいカヤトーストと、同じく定番のホワイトコーヒー、ゆで卵の味が登場します。本当にブレックファースト。あの甘ったるいホワイトコーヒーらしい味もそのまま出現するから面白い。



Black Rice, Purple Sweet Potato, Coconut
鮮やかな紫、紫のグラデーションが美しい一皿。紫芋のモンブランの中には黒米、ココナッツミルク、タマリンドソース入りで酸味がアクセント。モンブランはもっと甘さが来るのかと思ったけど、予想以上に甘さを引いてあって、大地の味、野趣が感じられる一皿。