「未在」京都|Mizai, Kyoto JAPAN

(訪問日 2021年2月21日、2020年8月11日)

言わずと知れた京都3ツ星日本料理。“一生に一度は訪れてみたい”と言う人も多い予約困難を極める一店。
店主 石原仁司さんは、嵐山吉兆の湯木貞一氏に師事し31年間も勤められた方。同店のオープンは2004年6月(なので2021年6月で17年目を迎えたことになります)。料理の写真撮影はNG。そのため、「プロフェッショナル仕事の流儀」(放送2016.1.25)に注目が集まったのが記憶に新しい。
お店までは看板はないので、初訪問ならGoogle MAPが頼り。京都の街並みを楽しみながら向かう。営業は1日一回転、18時からスタートで17時30分に開門する。お弟子さんたちがみなさん「おいでやす」と迎えてくれるのが印象的。


席はL字カウンター14席と6席の個室。数寄屋造りの内装は建築家・杉原明氏によるもので、その建築美に店主が心魂を込めるお花やお軸など季節のしつらえが重なる。店主の信条を受け取ることができる空間。
店名は、“未だここに在らず”という禅の言葉で、“修行に終わりはなく、常に向上心を持って上を目指せ”という意味。
料理は茶懐石を基本とし、そこに石原さん独自のスタイルを吹き込んだもの。まずは折敷に“煮えばな”と汁、向付が出されるのもそのため。お食事には湯桶。
ちなみに未在で注目されるのは、料理に使用する食材の多彩さだ。約300種類と言うからすごい。
さらに“おもてなし力”、というか、コースの流れを指揮する総合プロデュース力のようなものの凄みも感じる。料理と料理の間合い、タイミングも良いし。そして、コースのスタートは厳格に始まるが、思いっきり驚かせる遊び心もあり、温冷や香りの演出、強弱ありとにかく最後まで目が離せない。
量は正直すごく多い。朝から何も食べないで行った方が良いです(健康診断のように)。

2021年2月21日

(※料理の撮影はできないので、解説のみ。)
●折敷
まずは茶懐石の流儀で幕開け。
煮えばなは、石原さんの出身地である島根県奥出雲産の“仁多米”(特A)。初午(はつうま)自家製あげ入り白味噌仕立ての汁を交互に。
一献頂いたのち向付を。大豆や真珠豆といった“福豆”5種を取り入れた「しみつかり」という郷土料理をアレンジ。

●温かい向付
精進のかぶら蒸しである七福神蒸し。器は楽焼9代。

●お造り
ボリュームあるお造り。今回は、対馬の剣先イカ、愛媛の鯛、長崎の寒鰤13.2キロ辛味大根、寒鰤砂ずりチリ酢、マグロ大トロ千葉168キロ、マグロ静岡130キロ、マグロ舞鶴。お醤油がわりに、お醤油と昆布出汁の煮こごりを添えてあります。
小付は3種類で、ちり酢、鯛の肝を柚子胡椒とごま油で調整したもの、塩酢。鯛の肝が、そのまま酒の肴になる美味しさ。

●お椀
松葉ガニとホタテの真薯、クワイ餅、豆腐を細かくして雪中仕立てに。カニ、ホタテの旨味、クワイ餅の揚げの香ばしさという各々個性の異なる個性に合うように調整した吸地が味わいどころ。前回の出汁とは異なる、食材に合わせた出汁使い。自由自在です。

●焼き物
ここでお肉。コースの流れを壊さずにアクセントになっています。奥出雲の黒毛和牛サーロインにマウンテンペッパーベリーとりんごのソース、日本みつばちの蜂蜜をかけて。九条ネギと海老芋のコロッケを添えて。

●長寿蒸し
不老長寿の豆と言われている高知土佐の銀不老豆の飯蒸し。紅白のちょろぎを添えて。

●八寸
まずは勧められた通り、琵琶湖のモロコの揚げたてから頂く。にぎやかな八寸を楽しみ、最後には熱々の桜海老餅のカラスミがけを出してくれた。

●くもこ(鱈白子)
お水取りの「糊こぼし」という器で。

●炊き合わせ
聖護院大根に自家製の生七味、徳島の新筍

●強肴
松葉ガニ黄身酢、トラフグ梅肉、フグ煮こごり、とおとうみ、真珠貝ぬた

●湯桶(ゆとう)
臙脂色のお焦げに、お湯と塩を入れたものを出汁として、白いご飯に茶漬けのようにしてかけて食べる。香ばしさが妙に新鮮に感じられ、満腹なのにこれでスッと胃が整うから不思議。お焦げのスープの良い塩加減と香ばしさ。

●菓子、お茶
つばき餅と、干し柿と酒粕を巻いた長寿巻き。石原さん自ら点ててくれるお薄に良い緊張感。

●果物
2皿構成の果物。果物は本日は合計73種類使用しているそうです。
1品目は、淡雪イチゴ、徳島さちのか、和歌山三宝柑をくり抜いて器にしたゼリー。
2品目は小さなパフェグラスに多種フルーツのコンポートぎっしり。
帰りは、未在と書かれた提灯を持ったお弟子さんが、足元を照らしてくれて石段をお見送りしてくれます。

2020年8月11日

まずは待合で氷の入った紫蘇ドリンクを頂き、火照った身体をクールダウンさせ心を落ち着かせる。

(※料理の撮影はできないので、解説のみ。)
●折敷
煮えばなは、石原さんの出身地である島根県奥出雲産の“仁多米”(特A)。千両茄子の焼き茄子入味噌汁と交互に。一献頂いたのち向付を。
予め目の前には、蓮の葉が紅白の水引をかけて筒状にした状態で登場している。紐解くと中央には薄桜色の大きな蓮の花びらをのせた蓮根水玉寄せが鎮座している。葉が弾く水滴のキラキラ、生気ある演出に驚き。花びらには揚げた蓮の実を乗せて。茶豆のピュレ、新レンコン水玉寄せ、カツオの旨出汁ジュレを合わせて食べる。スッキリ夏の味から幕開け。

●お造り
ボリュームあるお造り。1人前盛りでも2人分かと思ったくらい。器はお客さんそれぞれに異なるもので出され、私のはルネラリックのコキーユだった。
明石鯛、対馬の剣先イカとエンガワ、淡路島の釣り鯵、淡路島の鱧(梅肉と新生姜、青海苔のソース)、190キロ大間の鮪、93キロ戸井の鮪、鮪の皮塩焼き。
お醤油がわりに、お醤油と昆布出汁の煮こごりを添えてあります。小付は3種類で、ちり酢、鯛の肝を柚子胡椒とごま油で調整したもの、塩酢。鯛の肝が、そのまま酒の肴になる美味しさ。

●煮物椀
お吸い物だが、お酒と味わってほしいためこう呼んでいるそうだ。
椀種は、丁寧に隠し包丁を入れた立派な伊勢の鮑。熟れた黄色い胡瓜“イタチ胡瓜”、生湯葉、吸地にはとろみあり。漆器は150年前のものだそうですが、これだけ時を刻んでもミリでもブレない精巧な造りがすごい。良いものを体感させて頂きました。

●焼き物
お肉の焼ける美味しそうなにおいに胃袋が騒ぐ。こういう食欲をそそる料理も挟むんだなぁと。奥出雲の黒毛和牛に、ピンクのルバーブソースを塗り黒胡椒の粒をのせて。別添えの、実山椒入りの日本はちみつをかけて。牛肉の脂っ気を切ってくれる爽やかなルバーブと、アクセントに効果的な黒胡椒。インカのめざめ、丹波篠山の野菜6種類。

●箸休め
四万十川の天然すっぽんの冷たい箸休め。スッポンの玉じめの上には冷たい出汁あんがかけてあり、エンペラ、スッポンの卵やスッポンの出汁で炊いたお麩が。生姜と九条ネギをほぐして。

●鮎
琵琶湖の鮎の塩焼き。蓼酢のソースが波のようにあらかじめかかっています。

●八寸
団扇の器ににぎやかに盛り付けられた八寸。桃の微塵粉揚げから食べて鮎のお口直しに。有明海の赤クラゲのコリコリの美味。鯛のお寿司、鮎のテリーヌ黄身酢のせなどなど。

●炊き合わせ
加茂茄子の含ませ煮、干ぜんまいの信田巻き、赤万願寺とうがらしの結び

●強肴
明石の蛸、北海道の毛ガニ、琵琶湖鱒、金糸瓜

●湯桶(ゆとう)
臙脂色のお焦げに、お湯と塩を入れたものを出汁として、白いご飯に茶漬けのようにしてかけて食べる。お焦げのスープの良い塩加減と香ばしさ。さっぱりしているのにふくらみのある味わい。妙に新鮮。

●菓子、お茶
本蕨粉のわらび餅に丹波の黒豆きな粉、和三盆蜜、じゅんさい。石原さん自ら点ててくれるお薄。小山園の新茶の抹茶は、実に香り高く、青い風味が力強く鮮明で夏の風のような味わいだった。

●果物
2皿構成の果物。2皿と知らずに、はじめに白桃や白無花果やシャインマスカットなどのお皿が来たので、食べきって今日のディナーの余韻に浸っていたら、なんともう一皿登場。ステムの低いグラスにフルーツパンチのような形で多種の果物が。全部でなんと73種類もの果物が使われているそうで、もうびっくりするしかない。