「カンテサンス」東京 北品川|Quintessence, Tokyo JAPAN

言わずと知れた最高峰。「ミシュランガイド東京2008」(ミシュランが日本で出版した初年度)に3ツ星に輝き、現在までその星を15年連続で継続している超名店。シェフは岸田周三さん。岸田シェフは、木村拓哉さん主演のドラマ「グランメゾン東京」で料理監修されていたのも記憶に新しいですね。尾花夏樹シェフと早見倫子シェフが3ツ星獲得に奮闘する料理シーン、カンテサンスの料理も数々登場していました。
カンテサンスの魅力を一言で表すとするならば、“記憶に残る美味しさ”ということではないでしょうか。スペシャリテはもちろんですが、季節料理も写真を見返さなくても味まで思い出せるものが多いです。メニューは何も書いてない「白紙のメニュー」。全てを委ねて楽しみます。 

(訪問日 2020年6月30日)
初夏ということもあり、酸味を効果的に使った料理が目立ちました。
●アーモンドパウダーのサブレとピスタチオ ほうれん草
サブレにカリッとローストしたピスタチオの粒を並べ、その上にニンニクとピスタチオのピュレでソテーしたほうれん草をのせ、豚ホホ肉の塩漬けをパウダー状にしたものをまぶして。一口の中に少し骨太さも感じさせるプロローグ。

●ウニの冷製スープ
塩ウニのスープ。裏ごしたウニのスープにさらにごろっとウニが。かといってウニの濃厚さだけではなく、オカヒジキの食感がアクセントとなり、一呼吸置いて訪れるセロリの風味が爽やかに味わいを昇華させる、“夏”なスープ。

●塩とオリーブ油が主役 山羊乳のバヴァロワ
カンテサンスのスペシャリテとしてあまりに有名。山羊乳は季節によって味わいが異なり、そのコンディションでオリーブオイルもブレンドを調整するので、これらの微妙な違いが味わいどころでもある。すごいのは、ずーっと通っていらっしゃる常連さんが「これが食べたくて来るんだよ」と力説するくらいの一品であること。これぞ本物のスペシャリテだ。

今年は気温が急に暑くなったので、山羊が外で若草を食べている期間が長かったため、例年よりも爽やかめ。オリーブオイルはプロヴァンスのものブレンドで、ピリリと辛口というよりも少しふくよかなブレンド。口の中でぽわっと広がるなんとも言えないやわらかさのバヴァロアに、スッと青い風が吹き込み、塩がグラデーションを描きながら同時に輪郭も描く。ユリ根とマカデミアナッツの削りのシャリシャリも心地よい。目を閉じて味わいたくなる夢のような美味しさ。

●穴子のサラダ ロックフォールのヴィネグレット
この白い身はなんと穴子。皮面からだけサッと炙ってあり、身に透明感があって美しい。ナイフからも伝わる身の跳ね返すような弾力。アスパラガスやさやいんげんをビネガーで和え、さらにブルーチーズを効かせてあるのですが、ロックフォールの旨味と風味だけを上手にのせてあるのがすごい。ちなみに大きい穴子だと骨も当たるし脂肪あり弾力も出ないので、程よい大きさのものを使用しているのだとか。アーティチョークも良いアクセントだった。

●ミル貝 マルコナアーモンド レモンとミント風味
強火で短時間ソテーしたミル貝、ズッキーニ、賀茂茄子。ソースは、スペインのマルコナというアーモンドにレモンとミントを加え、ザラっとしたテクスチャーを残しながらピュレに。柑橘とハーブの清涼感に、アーモンドの香ばしさが重低音で支えている面白さ。

●フォワグラテリーヌのクレープ包み
手で巻いて食べるクレープ。フォアグラのテリーヌをパルマの生ハムで包んで、キャラメルでマリネしたヘーゼルナッツやキュウリをのせ、安穏芋のチップスを敷いてある。味わいクラシックだが遊び心あり夏仕様にもなっていて楽しい。キュウリは皮の青くしっかりした部分だけを刻んでのせてあり、食感と青い風味だけが感じられる。

●マナガツオ モリーユ茸とヴァンジョーヌソース
徳島のマナガツオ、皮目は紙のように繊細な薄さで、パリッと香ばしく仕上げてあり、身はレア感を残す。トランペット茸とモリーユ茸を刻んだヴァンジョーヌソースの香りの豊かさよ。キノコの豊満な香りが口の中に膨らんだかと思ったら、ヴァンジョーヌの鮮烈な香りにのって酸味が花開くように現れる。トマトと枝豆のラビオリを添えて。トマトの凝縮された旨味が効いていて美味。

●シャラン鴨 シェリーヴィネガーとタイムのソース
器は富山の陶芸家 釋永岳(しゃくなががく)さん作。ギリギリ絶妙な火入れに興奮。ソースはシェリーヴィネガーをベースに、鴨の旨味とタイムをしっかり効かせてあり風味がパーンと鮮烈に感じられ、酸味でキリッと仕上げる。パルメザンチーズとトウモロコシのケークサレを添えて。

●エポワス
アプリコットのジャムが美味。

●紫蘇とショコラのソルベ
紫蘇のジャパニーズハーブとしてのスッとくる香りをのせたショコラのソルベ。

●パッションフルーツとグラニテ
底にはコンポートレモンを絡めたサワークリーム、パッションフルーツにはラム酒のグラニテをのせて。


●パイナップルのタルトとココナッツクリーム
アナナスのタルト生地キャラメリゼして、ココナッツクリームをのせて南国の味。

●メレンゲのアイスクリーム
最後にもう一つのスペシャリテ。お菓子の焼きメレンゲを砕いて砂糖の代わりとするアイスクリームで、仕上げに能登半島の海水を表面に吹き付けてある。メレンゲアイスは、和三盆のようなニュアンスの優しくふくよかな甘さが美味。塩でまろみが増しているのもすごい。なんと言っても、このパーフェクトな柔らかさでサーブされていることに感動がある。食後に再び気持ち高揚する。嬉しいのは、この重厚感ある紅鳶色の器も富山の釋永岳さん作であること。

ちなみにエントランスに飾ってある柿は、富山の木彫刻師 岩崎努さんの作品。どう見ても本物にしか見えないのですが、これ木彫りの柿なんです。

白薔薇の飴細工は、お誕生日だと岸田シェフが作ってくださるものです。大切な大切な白薔薇を金沢まで無事に運べて安堵しました。