「龍吟」東京 日比谷|Ryugin, Tokyo JAPAN

(訪問日 2020年7月10日)

日本を代表する日本料理店。オーナーシェフは山本征治さん。「ミシュランガイド東京」では2021年までに3ツ星を10年連続で獲得。「アジアのベストレストラン50」でも同ランキング設立以来ずっと上位にランクインしています(2021年35位、2020年24位、2019年9位、2018年9位、2017年7位、2016年5位、2015年4位、2014年5位、2013年2位)。
同店は六本木で15年営業、2018年8月に東京ミッドタウン日比谷に移転オープンしました。まずは、「さすが天下の龍吟だな」という壮大な空間使いに度肝を抜かれます。エレベーターを降りた瞬間に一面の利休白茶色の土壁と高い天井に迎えられスケールの大きさに驚きますが、それはエントランス、店内にも引き続き同じくで、こんなにも広々とした閑雅な空間造りが都会で実現していることに驚きます。



お献立にメッセージとして添えられているのは「日本の豊かさを皿の上に」。
ショープレートは黒田陶苑 山口真人さんの織部。

お箸はお箱が選べて楽しい。多色ありますが和の伝統色を意識してあるのでしょう、雅やかです。




お料理は皿数が多くて個々にボリュームもややしっかりあり、素材がハッキリと存在感を残しているのが印象的でした。器もきっとシェフのこだわりのものばかりなのでしょう、素晴らしい作品の数々に見惚れました。

まずは前菜が4皿続きます。
●とうもろこし
しつらいに山帰来(サンキライ)。秋は実が真っ赤になるがこの時期はつやつやの白緑(びゃくろく)色で初夏を感じさせる。
蒸したての長野ゴールドラッシュをひんやり冷たいすり流しに。仕上げには焦がし醤油で香ばしさを添え、焼きとうもろこしのイメージで。


●さえずり、焼き豆腐、枝豆、讃岐味噌
温かい一品。焼き豆腐やどんこ椎茸、讃岐味噌、そしてナガスクジラの舌“さえずり”からコクのある良い出汁が出ていて美味。

●無花果、胡麻、夏野菜
鴨白肝を握り寿司のようにして、薄くスライスした蒲郡の無花果をのせて。

●毛蟹、赤万願寺唐辛子、酢ゼリー
見た目に涼しい噴火湾毛蟹の面詰め。赤酢ジュレの三つ葉の野趣がアクセントになる。

●名物鱧椀 泉州水なす、青柚子
2019年6月28日・29日に大阪で開催されたG20夕食会で山本シェフが各国首脳に振る舞ったお吸い物。銀色(しろがねいろ)が美しいお椀は、“銀椀9号”とお献立に書かれていましたが、これが銀の荒さ細かさなんだそうです。

吸地は、富士の青龍水、香深の蔵囲昆布、削ったばかりの枕崎 本枯節を使用。とかく
昆布が効いていました。淡路の鱧はぼたん鱧にしてあり身が厚く、大輪の牡丹が咲いているよう。鱧の骨切りが特殊で、包丁を寝かせて骨切りをするため斜めに開いています。
泉州水なすを揚げなすにしたものを中に忍ばせて。この揚げナスが美味。
お造りは2部構成で、“温かいお造り”になるほどでした。

●お造り
艶やかな暗緑色が美しい大皿は、こちらもショープレートと同様に山口真人さんの作品。利休草をあしらって。
三陸のマコガレイはお塩で、スダチをぎゅっと絞って。北海道あん肝はほの温かく、鰹節があん肝のふくよかな味わいにさらに横幅を持たせます。

カレイのエンガワを黄身和えにしたものがもう一品。

●温かいお造り
天草の車海老を、焼き石で自ら40秒片面焼きにして頂くという演出ありのお造り。緑に車海老の紅白が映える。ジューと焦げる音に耳をそばだてながら、ぷっくり膨らんで暴れるのを箸で抑える。自分で仕上げる楽しみ。新鮮なので反り返る海老はプリッと弾力あり。にんにく醤油で予め少し味を添えてあり焼きでさらに香ばしさが引き立つ。



●名物“泳がし鮎” 紅蓼酢
“日本料理の夏祭り”というタイトル付けをしてあるだけあって、本当にお祭りのようなしつらえでここで気持ちが一気に高揚。今回の見せ場のひとつ。

悪天続きだったため鮎は天然ではなく天竜養魚場(料理人さんが絶大な信頼を置く養魚場です)。
生きたまま焼き上げるため、まるで川で泳いでいたところを切り取って来たかのように躍動感のある鮎。しかも、全体が飴色をしているので揚げてあるようにしか思えませんが、鮎自身が持っている脂で焼いているそうです。尾の部分を指で掴んで頭からパクリと。口の中でサクサクっと乾いた音がする。通常の塩焼き以上の香ばしさ。紅蓼酢で。

●鮑、鱶鰭、若とうもろこし
タイトルは“心和一癒”。立派なアワビの貝殻蓋を外すと、徳島阿波のアワビと気仙沼の鱶鰭、ヤングコーンの炊き合わせ。綿菓子のような繊細な高知のアオサ海苔を乗せて。


●七谷鴨炙り
カツオのたたきと同じように表面を炙るようにして焼いた鴨。

●一口“飲み貝”
“飲み会”を文字った一品。北海道つぶ貝をベースに煮アワビの煮汁、少しの塩だけの貝の旨味が詰まった出汁スープ。

●名物野生の希少本物天然鰻、国花菊椀、彩菜巻
天然鰻が豊漁だという今シーズン。岸田川の1キロ弱の立派な天然うなぎ。天然のうなぎは個体差が大きく、10回焼いたら10回違うというくらい難しいそうです。うな重でもひつまぶしでもなく、白いご飯とは別での提供。
タレの飴色に食指が動きます。部位によって味わいが少しずつ異なるので各部位を。皮が柔らかく身に野生の弾力があり美味。素材のポテンシャルの高さを味わう。



●モモレモン
レモンソルベの上には山梨産の桃、ミントのジュレをかけて。ジュレの青はしゃりしゃりとしたツユクサの砂糖漬け、赤はブルーベリーパウダー。ジューシーな果実の美味しさにミントが爽やかな風を吹かせる。

●大納言


●薄茶 最後はお薄で締めくくり。