「茶禅華」東京 南麻布|sazenka, Tokyo JAPAN

(訪問日 2019年11月6日、上海蟹コース)

「和魂漢才」を掲げる中国料理レストラン。2017年にオープンし、「ミシュランガイド東京2021」(2020年12月10日発売)では中国料理で初の3ツ星を獲得しました(2020年版まで3年連続2ツ星、2021年度版・2022年度版で3ツ星を獲得)。また、「Asia’s 50 Best Restaurants」では、2019年は23位、2020年は29位、2021年は12位にランクイン。「プロフェッショナル 仕事の流儀」に取り上げられたことも記憶に新しいですね(2020年11月)。

川田智也シェフの料理は、足し算や掛け算だけでなく、日本料理の“引きの奥深さ”や極限まで研ぎ澄ました繊細さも大きな魅力。磨かれた技術とセンスの上に花咲く、記憶に残る美味しさ。確固たる美味しさのスペシャリテ、堂々と豪華で迫力ある料理、素朴だが哲学が詰まった一品、初めて味わうおいしさまで実にドラマティクな構成。コースに抑揚があり、最後まで展開が面白く夢中になります。
サービスはマネージャーの大下太洋さんがついてくれました。大下さんのスーパー解説は、食べ手を引き込む。大下さんのアシストで味のラビリンスに大いに迷い込んでみたくなる。ペアリングはアルコールとティーがあり、「茶禅華に行くなら絶対ティーペアリングも」というくらいティーペアリングに定評あり両方を注文。緑茶を始め、青茶、白茶、紅茶、黒茶など、実に多彩でこちらも味わいどころだ。

料理のお献立は四字熟語のように、各料理を漢字4文字で表現。

藍色が美しいショープレート、「もしかして」と思って尋ねてみたらやはり、九谷焼 山本長左さんの器でした。ああ嬉しい。しかも金継ぎまで施してある。

その他の器や酒器も、味わいのあるアンティークを始め、こだわって選ばれたんだなぁと思うものばかりでした。

一年を通して予約が取りにくい、超人気のレストランですが、秋の上海蟹コースを目掛けて予約を入れる方も多く、この時期は特に殺到しています。

●青山縁水
まずは見るからに繊細な一品から幕開け。鶏出汁の清湯スープに、糸のような超極細でしなやかな三輪素麺、そして青山緑水という緑茶をオイルと合わせたもの。まず最初に持ってくる“繊細”に衝撃がある。食べ手が迎えにいって感じ取るおいしさ。カチリと引き締まった清らかな香り。健やかな風を吹かせる一皿に、和魂漢才、川田さんのスピリットを教えてくれるようだった。


●酔大閘蟹
紹興酒で酔っ払わせた上海蟹。これ本当に素晴らしかった。芳醇の波。数日経ってもその美味しさが蘇る、記憶に残るおいしさ。別で出してくれたのは蟹爪の部分。




●蟹黄春捲
上海蟹とフカヒレの春巻き。乾いたサクッの後に膨らむ繊細で贅沢な口福。


●酸橘海蜇
清々しいほどシンプルな登場。その中に丁寧と繊細が詰まっていた。クラゲの冷菜。


●雉雲呑湯
スペシャリテ。雲呑の清湯スープに白木耳と高麗人参。清らかなスープに一呼吸置いて立ち上がる奥行き。瑞々しく透明感のある味わいだが、バシッと印象に残る。高麗人参のほんのり滋味も良いアクセント。

●四川排骨
唐辛子の赤に埋もれているのは、ブランドポークやまと豚。見た目にパンチがあるが、ただ辛いだけじゃない、むしろ良い風味がご馳走で、ジャミジャミと辛いというよりも、カリカリの香ばしさに寄りそう辛味と痺れ、そしてアロマ。



●鴛鴦蒸蟹
蒸した上海蟹は甲羅の中に、オスとメスのおいしいところをフュージョンさせたイイトコ取りのダブル。足はオス、メスの内子。さらに隠れているのは白子。こんな贅沢で、繊細でおいしい上海蟹は食べたことがない。黒酢をかけると輪郭が出てまたより美味しい。



●蟹皇魚翅
気仙沼産アオザメのフカヒレ、上海蟹あんかけ。こんな厚みのあるフカヒレ、今までに食べたことがない!という驚きのサイズ感で心踊る。肉厚なフカヒレのやわらかさと弾力。こんなしっかりと食感にフカヒレを感じる機会はなかなかない。

さらにこの上海蟹あんをリゾットにしてトリュフがけに。





●塩妙白菜
日本料理で蕪や玉ねぎがシンプルに出されることがあるがそれを思わせた。このシンプルさ。素材のおいしさ、口の中でほとばしる白菜のジュ。美味。

●茶禅羊肉
メインのお肉は羊。クミンの風味が寄り添う。さらにペアリングには、シナモン、クローブ、レモングラス、バラなどをサイフォン式で淹れたハーブティーで、これが抜群の相性。シナモンの重低音のような深みと個性的な風味がベースに効いていて、それを立体的に昇華させるレモングラスとバラ。


お料理の最後は清湯麺。XOに上海蟹をプラスして。


デザートは三段階で。
まずは水菓子的に金木犀のジュレで覆われた梨。口の中でシャリッと響く音に乗って金木犀が香気を放つ。

杏仁豆腐はなんと、冷と温、温度の違いで2種類を。温かいほうはもっちり作られていて、杏仁の風味も増し横幅を持たせます。

最後は、お団子なのですが、蒸籠が登場し中には栗。目の前で熱々の蒸し栗を削りかけることで、幻のように消える口どけを演出。




1品をみても全体としてみても、素晴らしいコース。

「茶禅華」東京 南麻布|sazenka, Tokyo JAPAN