能登町当目という能登空港近隣(と言っても車でのアクセス必須)にあるそば店。大通り沿いを看板に従って脇道を入ったところにある古民家で、あたりは長閑な山々に囲まれていますから、私的には能登の祖父母の家に帰ってきたような感じです。また、周辺に飲食店がない(土日限定営業の「ケロンの小さな村」さんはありますが)ので、人を寄せ付けない頑固そうなお店なのかなぁというイメージを持ってしまいますが、 全然そんなことはありません。アットホームで入り易いですよ。店内には切株の椅子や囲炉裏、そして薪ストーブがあり、冬はパチパチとはぜる炎が雰囲気も温めてくれます。
同店のおそばですが、蕎麦は信州戸隠産で水はお店の裏山に湧き出る清流を使用し、二八で打っています。これだけで食べてみたくなりますね。つゆは、自家製焼き飛魚を出汁に加え、金沢大野の生醤油で仕上げてあるので、どこか余韻に海の香あり。食器は輪島塗のルーツと言われる合鹿椀であることも見逃せません。
そばは「板盛り蕎麦(冷)(1000円)」や「椀盛り蕎麦(温可)(900円)」などで、価格帯は金沢だと普通に感じられますが、能登ではちょっと高額なほうかもしれません。ただしこだわりとお味からすると納得というところです。
里山らしい小鉢がセットになっているのも同店ならでは。シーズンで内容が異なり、冬は昆布巻きや燻製たこ、初夏はブルーベリーやプラム、8月中旬は夏野菜とカタハなどが。季節問わずに添えてあるのは「燻製とうふ」。やさしい燻製の芳香と、プロセスチーズのようなしっかりした食感があります。
そして同店は、黄金伝説「秘境めし」にも取り上げられたお店ですが、番組で紹介されたメニューはこれ。
●和牛丼(能登コシヒカリ、能登和牛、温泉玉子、蕎麦、小鉢、フルーツ)
お品書きの中では一番値が張りますが、そそられるものがあります。さらに料理が来てびっくり!メニューには「和牛丼」としか書かれていないので、予想以上の豪華なセットに驚くはずです。
和牛丼は、能登和牛のロースを卓上コンロで自ら調理し、ご飯にのっけて食べるという贅沢なスタイル。コケがたっぷり入った鍋にお肉を入れ、しゃぶしゃぶ程度に泳がせてご飯にオン。出汁は甘さが極々控えめなので、ご飯と合わせて丼にするよりも、すき焼き風しゃぶしゃぶといった感じで、和牛のうまさをそのまま楽しむような上品な味付けでした。けっこうつゆだくにしてもしつこくならない感じです。
●つけとろろ蕎麦(冷)
そばは細切りでしなやかで、冷だと締まっていてシコシコとした心地よい弾力がしっかりと感じられます。水が良いためか、雑味のない澄んだ味わいが印象的で、スッと体に入ってきます。
●岩のり蕎麦(温)
岩のりは年々高級品になっていまい、今ではお正月にしか食べない能登の家庭も多いかもしれません。その岩のりがたっぷり入っていますから、堪能したい方はぜひこれを。
●きのこ蕎麦(温可)
ヒラタケに岩のりも添えてくれてあるので、内心ちょっと嬉しかった。石川ではキノコのことを“コケ”と言います。ということで、これは「コケそば」。
ちなみに、金沢の方や他県の方は、能登へ向かうのに心細さもあると思いますが、道中にとっても楽しいこともあります。
「のと里山街道」の七尾市と穴水町にまたがる別所岳サービスエリアから輪島方面へ向かう越の原インターチェンジ(穴水町)の間の下り線1.2Kmは、車の走行時に路面から音楽が聞こえるメロディー道路になっており、NHK連続テレビ小説「まれ」のオープニングテーマ曲「希空~まれぞら~」が聞こえます。
(車のタイヤとの摩擦で音を発生させる仕組みで、制限速度の時速70キロで走って約1分間)
ぜひこちらも旅のお楽しみに!