白山比メ神社の境内にある、川魚と山菜料理が名物の料理旅館。創業は江戸後期の1865年。全7室に囲炉裏があるというのが最大の特徴で、目の前で料理人さんが川魚を炭火焼にしてくれて、焼きたてが食べられます。旅館なのでお部屋は全て個室ですが、宿泊なしでもお料理が頂けます。季節では春は山菜、夏は鮎、秋はきのこや落ち鮎、冬は白山麓のジビエが楽しめます。
迎えてくれる女将 和田智子さんの細やかなおもてなしにも心掴まれます。
・「ミシュランガイド北陸2021 特別版」1ツ星獲得(2021年5月19日発表)
・「ミシュランガイド富山石川(金沢)特別版」1ツ星獲得(2016年5月31日発表)
白山比メ神社北参道駐車場内にお店へ続く門があり、整えられたお庭を拝見しながら坂を下るようにして行くと、凛とした白地の暖簾が見えてきます。
お部屋から見える整えられたお庭も素敵。梅雨とかぶる鮎の季節は、雨で緑が潤いを増し鮮やかに映えています。
床の間に活けてある野草は女将さんが山に入って摘んできたもの。
【紹介項目】
2022年8月5日 鮎コース
和田屋さんの鮎コースは本当に鮎づくし。
日本料理店ではこの時期、お献立に鮎の塩焼きや鮎ご飯などが加わりますが、和田屋さんではデザート以外の全ての料理に鮎を使用したコースが食べられます。
一つの食材で調理法を変えて味を変えて、最初から最後まで発見の連続で楽しませてくれる鮎三昧のコースは、鮎を熟知していないとできません。王道の美味しさに加えて工夫も凝らしてあるので、新しい美味しさもあって感動があります。わざわざ食べに行く価値があると。
今回特に印象的だったのは、鮎素麺、鮎すり流し。さらに、鮎ご飯の出汁茶漬け、赤出汁の鮎つみれ。
一番特筆したいのは、やはり女将さんの心のこもったおもてなしです。笑顔と気配り、所作や丁寧さなど、女将さんとしても女性としても美しさを感じます。憧れる。
●先付 鮎粥 冬瓜
冬瓜の中に鮎のお粥を射込んだ、夏らしい最初の一品。これから始まるコースを期待させます。冬瓜の青い風味に、鮎骨を擦った優しい旨味を効かせ、カリカリ梅のリズムと酸味と。
●椀物 鮎すり流し
これは驚きの美味しさ。鮎焼きをすり潰したすり流しで、焼き鮎そのものと言える味わい。口当たりはぽってりとして、焼きの香ばしさと鮎の風味が広がり、とくとく余韻にまろやかな甘さが広がります。
●鮎 塩焼き
鮎料理のド定番ですが、室内の囲炉裏で焼いてくれるのが和田屋さんの醍醐味。同店にしかできない強みです。
炭は、竹串に刺した鮎を焼くため炭は縦に組みます。料理人さんが塩を打って目の前で焼いてくれるのですから、この工程から美味しい。
私たちのために焼いてくれる特別感も、有り難く贅沢に感じます。
この日は(写真2人分)福井の九頭龍川の鮎2尾、富山の庄川4尾。さらに、お酒に漬けたのち一夜干しした鮎2尾は、おそうめんに乗せてくれました。
●鮎 造り
こちらは生なので良い状態の養殖で準備してくれました。洗いにして身を締めてあるので、食感も美味。聡明で繊細な甘さはお造りだからこそ。梅肉醤油で。
●お凌ぎ 鮎そうめん
とてもインパクトがあった一品。
先ほど焼いてくれた一夜干しの鮎を素麺に乗せて。そうめんつゆも鮎出汁という和田屋スペシャルです。添えてあるのは揚げた蓼の葉です。
一夜干しの鮎から凝縮された旨味が滲み出し、グラデーションを描きながらつゆに溶け合っていき、素麺に絡んでちゅるんと喉をすべって胃袋に落ちてゆく快感。素晴らしい。
●八寸 鮎の山椒煮、鮎玉子とじ、茄子のうるか田楽
八寸までも鮎づくしで、しっかり決めてくるという素晴らしさ。小さい一品も手が込んでいます。茄子田楽は鮎うるか味噌で、旬の茄子にうるかの力強さが調和。
●油物 鮎
揚げた鮎を、苦味の効いた鮎肝ソースで。身はカダイフ揚げのようですが、トウモロコシペーパーを糸状にしたもので、乾いた食感のリズムと共に。中骨がサクサクで美味でした。
●鮎と新生姜のご飯、香の物、赤出汁
お楽しみのご飯はもちろん鮎。鮎と新生姜の釜ご飯です。
おかわりは出汁がけにしてサラサラとお茶漬けで。膨れた胃袋にも心地良く収まる。
赤出汁の実まで鮎つみれで驚きでした。すごい。本当に最初から最後まで鮎づくしを食べさせてもらった充実感があります。
●小菓子 桃とスイカのジュレがけ
帰りにアプローチを戻っていく際も、緑の中を抜けていくので、鮎の美味しさの余韻を感じながら夢心地に浸れます。
過去食べた鮎コース
鮎はまだ手取川が天候の関係で獲れていないそうで福井九頭龍川でした。コース名の通り本当に鮎づくしで、鮎塩焼きが見せ場ではありますが、その他の鮎料理が美味。鮎をいろんな味と調理法で食べさせてもらいましたし、一工夫凝らしたものもあり発見の多いコースです。
個人的に好きだったのは、鮎洗い、鮎そろばんおろしあえ、鮎バター焼きです。
お酒は近隣の酒蔵「萬歳楽」と「菊姫」でバリエーションあり。その他、手取川と天狗舞。
●萬歳楽「山ほうし」
和田屋オリジナル吟醸酒で、山菜や鮎に合わせてブレンドしたそうです。爽やかで余韻が短く、木の芽や鮎のタデ酢にも好相性な印象。
●前菜
虫籠を開けると前菜。無花果出汁ジュレがけ、鮎押し寿司、鹿肉ロース、白瓜昆布締め、新サツマイモ、松風焼き、玉子焼き。前菜から鮎が登場。
●椀物
香ばしく焼いた稚鮎を椀種とするところが和田屋さんらしいですね。加賀野菜の加賀太キュウリに蓴菜。
●お造り
この鮎の洗いが美味。程よく水分を抜き、身の締まった食感と旨味が感じられるようになっています。梅肉醤油で。素晴らしい。
●小鉢
枝豆の水無月豆腐が涼しげで夏らしい味わい。
●焼き物
鮎塩焼きは料理人さんが部屋内の囲炉裏で焼いてくれます。まずは炭を組むところから。竹串に刺した鮎を焼くため炭は縦に組みます。塩を打ち、目を見張って焼いてくれる。何より、私のために焼いてくれる特別感が贅沢に感じられます。
●八寸
3品とも鮎。鮎そろばんは大根おろし和えで。涼しく透明感のある味わいで美味。
茄子田楽はうるか味噌で。茄子の風味と香ばしさ、熱々の温度にうるか味噌が乗って調和。
鮎の風干しは香ばしさと凝縮した旨味が絶妙でした。
終盤に近づきまだまだ鮎。しかも全部別の味わいで工夫もされていて心踊る八寸です。
●油物
鮎をバター焼きに。これ個人的にすごく好きでした。
繊細な身を香ばしく焼いてバターの風味を乗せる。太い中骨は出して別で焼き、カリッと煎餅のように歯切れが良い。添え物は加賀野菜の金時草、打木赤皮甘栗かぼちゃ、加賀つるまめ。
●お食事
鮎たっぷりの鮎ご飯にまた興奮。少々ワタの苦味もあって酒が飲めるご飯でした。
●小菓子
白山名物の堅どうふのムース、スイカ、桃