「CRAFEAT produced by 田谷漆器店」2021年7月7日に木倉町にオープン!石川が誇る素晴らしい伝統工芸で奏でる日本料理。※会員制

料理: 7.5 その他: 7.0 ポイントについて
CRAFEAT produced by 田谷漆器店 (くらふぃーと ぷろでゅーすど ばい たやしっきてん)
営業時間 17:00〜23:00
定休日 2階は要予約
価格帯 2階は完全会員制の日本料理店(1階はBAR)
訪問回数 1回

金沢市木倉町の一角に2021年7月7日にオープンした日本料理店。
創業200年以上の歴史を持つ輪島塗 田谷漆器店さんの10代目田谷昂大(たや たかひろ)さんが「お客さんが直接輪島塗に触れられる場所を作りたい」という思いで金沢にオープンさせました。
金沢のキラーコンテンツである食と工芸のマッチングに焦点を当てたお店です。

伝統工芸が盛んな石川に住んでいても、確かに自宅では漆の器を使う機会があまりないかもしれません。職人さんの素晴らしい作品を見て実際に使って体感する事で、より一層その良さが伝わるというもの。審美眼も鍛えられます。同店はその発信地となるべく、伝統工芸品の体験型日本料理店として幕を開けました。
店名は、コンセプトである「CRAFT(伝統工芸品)」と「EAT(食)」を楽しんでもらう場所という意味を込めた「CRAFEAT(クラフィート)」という造語です。

お店の外観は、暖簾がかかる日本料理店の雰囲気ではないので、「何かおしゃれなお店ができたなぁ」と気になっていた人は多いはず。1階はどなたでも入れる工芸品のショップと、その奥はカウンター6席のBARがあります。

食事が楽しめる2階は「CRAFEAT premium」という、完全会員制・全席予約制の日本料理です。会員制というのはちょっとハードルが高いかなという印象ですが、コースにはかなり高価な器や希少な器も多々登場しますし、逆に気心の知れた人だけで楽しい時間を過ごせて良いと思います。クラウドファンディングMakuakeで会員を募集をしたところ、サポーターがたくさん付き目標は早々と達成されたそうです。

階段を登っていくと素敵なカウンターが迎えてくれます。贅沢な空間使いのワンフロアで、天井が高く梁も目を引きます。まさか木倉町の一角にこんな隠れ家があるとは想像がつきません。

料理人として腕を振るうのは奥村仁さん。
同店オープンの前は、銘酒「池月」で知られる能登の鳥屋酒造店さんにもいらっしゃいました。
コースに使用する食材は、奥村さんが自ら農家さんを巡って調達したりと、食材への熱量が伝わる。さらに、地物魚介や加賀野菜、季節感や日本の伝統行事を織り込んだ料理が、食べ手のハートを掴みます。
カウンターで嬉しそうに料理をする奥村さんの姿から、とっても料理が好きな方なんだなぁと伝わってきますし、こちら側も幸せな気持ちになります。

テーブルセッティングのしつらえは、加賀水引 津田水引折型さんの水引き、能登上布のコースター、能登仁行和紙などで、最初から同店のコンセプトを印象付けられます。


(メニュー名はお献立のまま)
●輪島塗 れんげ+寿司
アカイカゲソいしり漬け入りのお寿司は、輪島塗のれんげで。呼吸をする本物の漆塗りの、ぽってり柔らかい質感が唇に当たりハッとなります。メッセージ性あり最初の一品目として良いプレゼンテーション。

●輪島塗 一段重+八寸
赤富士を眺めるかぐや姫が描かれたお重箱が登場。この存在感。工芸に詳しくなくても、一眼で「良いものだなぁ」と伝わります。
赤富士が見られるのは、晩夏から初秋。かぐや姫が月に帰るのは中秋の名月と言われますので、月に帰る間際を描いているところもグッときます。なんだか表情にも寂しさが表れているよう。

絵柄は種類があって、桃太郎や花咲爺さんなど全て昔話のワンシーンが描かれます。
さらに見返しにも一興。かぐや姫が月に帰るための牛車が描かれていて、物語を別の角度で覗けます。話に花が咲きますね。

また、お重の中に八寸が盛り付けられる事で、お重の空間美も感じさせます。
能登むすめと木滑なめこ、グリーンアイコトマト、有機人参の天ぷら、ズッキーニ、加賀太胡瓜と鶏塩こうじ漬け、金時草生麩田楽、ヤーコンの梅酢漬け、打木赤皮甘栗カボチャのカステラ、ヘタ紫茄子いしる煮、ミニ胡瓜のぬか漬け、中島菜せんべい

●輪島塗 煮物椀+七夕
お吸い物は金が眩しいお椀で。なんと50万円するらしいですよ。金箔に厚みがあって立体的。豪華で重厚感がありますが品もあり、ずっと眺めていたくなります。

7月7日オープンした同店、野菜を短冊に見立てて七夕の演出。吸地は豆乳としじみ、椀種は岩牡蠣の真薯。畑のミルクと海のミルクでミルキーウェイ(天の川)をイメージして。

●輪島塗 ひさご、九谷焼いっぷく椀+甘鯛
イチジクの葉で隠したお料理は輪島の甘鯛。

1週間寝かせた鯛はカリカリと食感を出した鱗を包んで。もう一味は、黒ごま醤油で和えて馥郁たる香りを添えて。はしりのイチジクの風味もほんのりと。

●山中塗 一段重+のど黒
のど黒の玉手箱仕立てで、蓋を外すともくもくと煙が現れるという演出。煙は藁と加賀棒茶で、のど黒を瞬間スモークに。表面を炙ったのど黒は食感レアでほちゃほちゃとしており、こちらもカリカリ香ばしい鱗で食感を出してあります。

まるで本物のような艶のスイカの蒔絵が施されたお皿も目を引きます。

●九谷焼 針山、金箔コースター+コロッケ
縫製の株式会社ヒロさんの針山に、ピンチョスのようにして出てきたのは加賀丸いものコロッケ。池月の酒粕とフォアグラのふくよかな味わいが、熱々の温度と共に広がる。

●九谷焼 赤絵角皿+鮎
器は福島武山 作。赤色の極細線で描かれます。
鮎のリエットを鮎最中に挟んで鮎焼きとして。スイカは150度で1時間火入れをしたもので、鮎が持つスイカのニュアンスを表現。

●珠洲焼 銘々皿+能登牛
能登牛ローストビーフに、あんがとう農園さんのエディブルフラワーを添えて。オキサリスやアサツキなど、小さいお花ですが一つ一つ味に個性あり。

●輪島塗 てのひら+煮麺
能登牛スジの出汁の煮麺はシメにポッと胃袋が落ち着きます。
なんと言っても「てのひら」と名付けられた器の凄みを体感できる一品で、手の中にしっくり収まるジャストな丸みと重量感は職人さんのシゴト、伝統工芸品の素晴らしさです。精密でいて温もりが感じられる。感動的。

●輪島塗 フリーカップ、釜八 銘々皿+甘味
能登ミルクと能登卵のプリンはとろとろタイプで、ミルキーな味わいが広がる。能登のブルーベリーを乗せて。カラメルは福光屋さんの味醂で和の深みがプラスされています。

梅で酸味と和の風味を加えた生チョコと、加賀棒茶で締めくくり。高さのある器は輪島塗のフリーカップを裏返して使ってあります。
カトラリー代わりに添えてあるのは、漆を塗る時のハケなのだそうです。

最初から最後まで発見続きで、食べ進むごとに学びがありました。石川に住んでいてもまだまだ知らなかった伝統工芸の素晴らしさを、体感しながら堪能させてもらいました。