2023年6月4日に金沢市北安江にグランドオープンしたフランス料理店。オーナーシェフは、フランスの農事功労章である「シュヴァリエ」も受賞した経歴がある川本紀男さん。店名は“素材に耳を傾ける”のフランス語の造語で、その店名に食材へのリスペクトと生産者の想いに寄り添うという信条が表れています。
場所は、金沢駅港口(西口)を出て徒歩で7分ほど。
住宅街の一角に、色彩が素敵な暖簾のかかる一軒家レストランに出会います。ロゴマークは梅の花にとまっているメジロで、春先によく家に来る、シェフの大好きな鳥だそうです。
民家のリノベーションで、店内はスタイリッシュなL字カウンターに、薪窯が存在感を放ちます。
お店造りは、シェフらがレンガを組んだり、漆喰を塗ったりして仕上げたそうで、洗練の中に温かみも感じられる空間です。調度品にもこだわり、ダイニングを彩ります。席はカウンター10席とテーブル1席あり。
料理には1品ごとにコンセプトを置き、近年では珍しくなってしまった古典の要素も取り入れてありドキドキ。
食材はもちろん、器も地元作家さんのものばかりなので、県外からのお客さんも喜ばれるはずです。記念日にもおすすめ。
注目ポイント①
スペシャリテ「父からの伝承」
コース内で注目なのは鰻料理。
シェフのお父様が和食の料理人で、よく作られていた鰻料理があって、そのオマージュなのだそうです。
鰻は
炭火焼きから、仕上げに薪の風味を乗せて。蜂蜜と赤ワインのソースは、どっしりと深みのある甘さで鰻にぴったりで、セリのオイルの緑の風味が持ち上げます。
シェフは小さい頃からお父さんの鰻の焼を手伝っていたそうで、さすがの火入れ。そのストーリーも味に溶け込んでいて、心に染みる一皿だと思います。ファミリーストーリーまで落とし込んだ一品で、スペシャリテと言えるのではないでしょうか。これは毎回出してほしいなぁ。器はお父様が使われていたものです。
注目ポイント②
高村刃物ナイフ
ヴィヤンド用のナイフは福井「高村刃物」さん。これだけ揃えているのはすごい!好きな色を選べせてもらえるのは嬉しい。
木村拓哉さん主演のドラマ「グランメゾン東京」でも高村刃物さんの包丁が登場しました。料理人さん憧れの包丁ですが、今注文しても出来上がりは数年後です。
ちなみに、木村拓哉さん扮する尾花夏樹シェフが使っていた刃の黒い包丁は世界に5本しか存在しないのですが、川本紀男シェフはその1本をお使いです。
【紹介項目】
2023年7月20日
7月2日の前回訪問から2週間半ほどですが、気候も食材もいよいよ夏本番という感じで、新作が多かった印象です。
前回と同じ食材もありましたが、ブラッシュアップさせたり、調理法や表現を変えたりと、新鮮に感じました。
(料理タイトルはメニューのまま、解説は長くなるので一部です)
●「一献」
夏のスープです。アボガドの冷製ポタージュに生姜の風味をふわっと効かせて。
どっしり存在感のあるショープレートは大樋焼。
●アミューズ 出会い
・蟹、蟹ジュレ、キャビア
・能登 サザエ
夏の新作、能登島のサザエのクロケットです。
サザエが予想以上の優しい弾力で、とろけるようなじゃがいもに同調していました。
・人参雲丹
能登島 高農園さんの人参ムースと雲丹
・フォアグラ、おわら最中、金沢 カマス
フォアグラのムースはスパイスととうもろこしケークサレで夏の味。おわら八尾の昆布最中には塩ウニを塗って、茄子のキャビア・ド・オーベルジーヌ(ノリオシェフの定番)を挟んで。カマスはふわっと香ばしさが広がり軽い食感。
●「始まり」柴垣岩牡蠣
柴垣の岩牡蠣は、どっしりしておりピュアな美味しさが人気の珠玉食材。和食では生で出てきますが、これはゆっくりと低温調理してあり、クリーミーなソースに相性抜群でした。
●スペシャリテ「父からの伝承」
鰻(解説上記)
●「夏」庄川鮎
前回も鮎料理が出ましたが、さらにブラッシュアップさせた印象。
まずは炭火で焼き上げて、しっかり中まで火入れをして、薪で風味付け。黒っぽいソースは、茄子の皮と鮎のソースで、ほろっとくる野趣も美味。梅のビネグレットソースも添えて。
●パン
パンは木製のBOXで提供されるのですが、底に温めた石が入っており、ずっと熱々の温度がキープされます。
この日は、とろろ昆布と昆布のパンで、バターには「天たつ」さんの若芽が練り込んであり、海の風味とほんのり塩気にそそられました。
●「大地」蓮根
夏の塩釜焼きは新蓮根で、塩釜にはほうれん草とオゼイユが練り込んでありました。
木槌でコンコンと塩釜を割ると、透明感のある真っ白な新蓮根が登場。
この時期の蓮根は冬と異なり、でんぷん量が少なくてシャキシャキ食感で爽やか。ブールブランソースの酸味が相性抜群でした。
●「山」鶉
近年、鶉料理を食べる機会が減ったので、エクティルさんのコースで食べられるのが嬉しい。
包んであるのは、イカ墨とひゃくまんごく米、鶉のムネとモモ。しっとりと焼き上がっていて、咀嚼すると鶉の旨味エキスが滲み出して、ひゃくまんごくの甘さ、イカ墨のコクの全てが一体になります。
鶉卵黄でコクを添え、柚子胡椒の和の風味と辛味をアクセントに。
●「海からの恵み」能登島カサゴ、水蛸、加賀野菜 打木赤皮甘栗かぼちゃ
●「休息」高農園 赤紫蘇グラニテ
●「渾身」白山猪
●「余韻」高松デラウェア
シェフのご実家がある高松のデラウエアを、1粒1粒実出ししてコンポートにし、涼しげなジュレと共に。
●「饗宴」黒部山羊、桃
桃の優雅でチャーミングな甘さに、ふんわり軽い山羊フロマージュとトロピカルなパッションフルーツが重なります。とっても美味しい。
●小菓子、ハーブティー
バニラクッキー、フィナンシェ、マドレーヌ、抹茶生チョコ、シャインマスカットタルト
2023年7月2日
(料理タイトルはメニューのまま、解説は長くなるので一部です)
●「一献」
一品目は夏らしくホワイトとうもろこしのスープ。なめらかなポタージュにザクザクと粒も入っており、糖度の高いフレッシュでみずみずしいエキスが咀嚼するとパーンと広がります。
ショープレートはなんと大樋焼で、重厚な存在感あり。
●アミューズ 出会い
・人参雲丹、鶏出汁
・熊本馬肉、紫蘇、梅
・白海老四十物昆布、おわら最中、金沢港めぎす
●「始まり」金沢港毛ガニ、カニジュレ、キャビア、カリフラワー
●スペシャリテ「父からの伝承」
鰻(解説上記)
●パン 土遊野
パンは木製のBOXで提供されるのですが、底に温めた石が入っており、ずっと熱々の温度がキープされるという工夫あり驚きました。
●「饗宴」庄川鮎 薪焼き、茄子の皮と鮎のソース
●「山」鶉
鶉料理をレストランで頂くのがなんだかとても久しぶりに感じます。
鶉のムネとモモ、お米、セップ茸を詰めて焼き上げてあり、内包されたジュの旨味とセップ茸の風味が口に広がる。鶉卵黄でコクを添え、柚子胡椒の和の風味と辛味をアクセントに。
●「能登島の台地」能登島あやめ雪蕪の塩釜焼き、蕪のクーリ、春菊オイルで
●「海からの恵み」オマール海老の甘鯛包み、打木赤皮甘栗かぼちゃ
●「休息」高農園 紫蘇グラニテ
●「渾身」岩手子鹿、山椒ソース
●「リスペクト」
シェフが尊敬するサンドランスのマンゴースープのオマージュ。
●「余韻」
桃、黒部山羊フロマージュ
運ばれてくると鼻腔をくすぐる桃の高貴な香り。果肉が果汁に変わる瞬間に、ふんわり軽い山羊フロマージュに重なります。
●小さなお菓子、ハーブティー
【作家紹介】
高澤ろうそく 河上真琴(石川)ろうそく台
二俣和紙 石川まゆみ(石川)メニュー
大樋焼 大樋長左衛門(石川)ショープレート
山中漆器 荒川文彦(石川)バン皿
能登島ガラス工房 シャボン玉グラス 高橋真人(石川)お水グラス
アイアンワークスコル 酢馬慶太(石川)カトラリー置き
木工食器 下尾和彦 (富山)
釈永岳(富山)皿
器
secca(石川)デザート 置皿
高村刃物(福井)ナイフ