金沢市柿木畠の雑居ビルの奥にひっそり暖簾をかける名店。“おでん”を懐石として料理に織り込んであることが特徴です。同店の開業は2002年で、店主である竹内裕雄さんがお一人で切り盛りされており、店内はカウンター6席のみの茶室をイメージしたコンパクトな空間です。お軸が掛けられ茶釜もあります。
“おでん”といっても大衆的なものではなく、実に洗練されており、こんにゃくやがんもどき、甘味に至るまで全てが竹内さんの手作りなんです。なんだか「美味しんぼ」に登場しそうな一店。全て自前でおもてなしをするという点が、店主の信条の確たるところなのでしょうね。また、珍味には年代別のカラスミが準備され食べ比べができるのも特徴のひとつ。料理は見た目に派手さはないですがシンプルで端正。県外からのリピート客も多く支持は厚い。
コースは1種類のみで、先付から菓子までで約10皿構成。お酒を頂いて1人15,000円くらいです。
日本酒は、店主の出身である加賀の山中温泉にある松浦酒造「獅子の里」のみ。超辛口のスッと入ってくる美酒です。
【紹介項目】
(最終訪問 2020年7月4日)
竹千代のスペシャリテ5つ
まずは竹千代で毎回出てくるスペシャリテのご紹介です。全部自家製なのがすごい。毎回出てくるけど毎回おいしさを再確認します。コースはこれらに加え、季節のお料理いくつかとお食事、甘味とお薄です。
①自家製胡麻豆腐
毎回最初に出てくるのがこれ。白くもっちりとした美人な胡麻豆腐は、シンプルだが最初にインパクトを残します。
②カラスミ食べ比べ
コース中盤に登場します。1年もの、4年もの、6年もの(年代はその時による)などといった感じで、年代別で出してくれます。シンプルだけど贅沢。年数が増えるにつれ色は濃くなりますが、塩味が強くなるわけではなく深みが増して少し水分が抜けてかためになります。
③自家製鶏団子
自家製団子と鶏肉。団子は一旦蒸してあるので口当たりがぷりっとしていますが、軟骨が練り込んであるためコリコリとした軽快な食感。出汁は五感をすり抜けそうなくらい淡い。
④自家製こんにゃく
一番好きな料理です。竹千代さんのスペシャリテの中でも特にすごいやつ。このお手製こんにゃくは、もちろんこんにゃく芋から作ります。練って水分をギリギリまで飛ばして表面を焼いてあり、市販のこんにゃくとは別物のサクサクとした食感と弾力があります。こんにゃく芋の素材そのものを感じられるしみじみくる旨さ。予め味を加えてあるのでこの色。
⑤がんもどき
ぷっくりまあるい小さながんもどきの中に、銀杏やサツマイモ、人参、ごぼうなどが詰まっています。とーっても繊細ながんもどき。美味。
2020年7月4日の竹千代
コロナ禍で春の営業ができなかったので約4ヶ月ぶりの訪問になります。前記のスペシャリテに加えて鱧や夏野菜など季節食材。さらに竹千代さんでスッポン出てきたの初めてかも。
・鱧
純白の鱧。蒸してふっくら美味。
・スッポン
天然ではなく養殖。養殖は泥臭みなくて品質が安定するのでそれをあえて使うというのに納得。澄んだ味の一呼吸後、まろみが余韻に残ります。
・カラスミ食べ比べ(1年もの、5年もの、6年もの)、鯖の粕漬け
・茄子揚げ田楽
・加賀太きゅうりと甘鯛
・鱧と新生姜ごはん、豚と新生姜ごはん
4名で予約だったので2種類準備くださいました。おかわりで違う味をいただけるのはいいですね。針にした新生姜の繊細なシャキシャキと淡い風味が美味。
2020年2月20日の竹千代
前記のスペシャリテに加えて。今回は牡蠣やかぶらなどの冬食材と、そこまできている春を感じるお料理の数々でした。
・蛤と橋立の若芽
蛤からのいいお出汁が体に染みる。加賀の橋立漁港からの若芽がやわらかくとろんと滑らかで美味。
・かぶら
ふろふき大根と思いきや繊維の柔らかいかぶらでした。
・牡蠣白みそ仕立て
牡蠣は焼いて焦げ目をつけて。焼きの香ばしさと白みその相性の良さ。あまくふくよかな白みそを菜の花の苦味が引き締める。
・牡蠣ご飯
・最中、お薄
2020年1月29日の竹千代
前記のスペシャリテに加えて、冬らしいお料理の数々でした。
・鰤 薬味和え
・鱈の白子と海老芋の白味噌仕立て
白味噌の甘くほっこりくるおいしさが白子に調和し美味。ふくふくと温かくて、あぁおいしいわぁ。
・カラスミ食べ比べ(1年もの、4年もの、6年もの)
・風呂吹き大根
シンプルにおいしさが伝わる風呂吹き大根。擦ったばかりの胡麻を一振り。温かい料理は、蒸し器でギリギリまでお皿を温めているのもさすがです。
・がんもどき、金沢春菊添え
・鰤しゃぶ、菜の花、椎茸
鰤の切り身をサッとしゃぶしゃぶにして、みぞれがけにして。
・大根ごはん、赤だし、香の物
出汁の味が寄り添うしみじみ美味しい大根ごはん。おかわり必至。
・お薄、チョコレートあんの茶巾
最後は店主がお茶を点ててくれて終演。お菓子はあんにチョコレートを合わせて茶巾にしたもの。あんもチョコもどちらも上手に立てている絶妙なバランス感。
2018年10月中旬の竹千代
前記のスペシャリテに加えて。秋らしい松茸と、毎年楽しみにしている秋刀魚ご飯に嬉しくなりました。
・小鯛
小鯛は軽く締めて薬味と和えて。
・松茸
シャクシャクとした歯ごたえを感じて食べる松茸は最高ですね。風味の移ったお出汁ももちろん余さず。ふぅと幸せの吐息が漏れます。
・カラスミ食べ比べ
今回は、1年もの、3年もの、5年もの。そして鯖の粕漬け、甘海老とイカの塩辛、干し海老と干貝柱の味噌和えも添えてありました。鯖はへしこを粕漬にしたもので、塩味が抜けて優しい味わいになり美味。カラスミは年数が増えるにつれ色は濃くなりますが、塩味が強くなるわけではなく深みが増しています。
・自家製がんもどき、子持ち鮎
・自家製こんにゃく
・にしん、そばがきの揚げ出し
・秋刀魚ご飯
目の前で炊き上がる秋刀魚ご飯を今年も食べられる幸せ。まずはお焦げに食指が動く。程よい味の添え方で、箸が止まらない。
・お薄
最後は店主がお茶を点ててくれて終演。
ちなみに、この翌週も伺ったのですが、こんにゃくを上品なすき焼きの味付けで出してくださって、こちらも美味でした。
2017年10月中旬の竹千代
前記のスペシャリテに加えて。
・毬栗仕立て、銀杏、無花果
・鯛の酒蒸し、松茸
鯛の御頭に松茸。吐息がこぼれるような、見た目からもう美味しい一品。繊細な出汁に松茸の香りが移っており美味。
・軽く〆た鯛
・珍味の数々
・自家製がんもどき
この日は白みそ仕立てで牡蠣と共に。
・秋刀魚ご飯
・五郎島金時のあん包み
五郎島金時をこしあんで包んだもので、あんはチョコと合わせて香味とたおやかさがプラスされています。店主にお茶を点ててもらい終宴。
2016年10月の竹千代
前年も10月に伺っており、↓松茸や秋刀魚ご飯が良かったので秋には絶対また行きたいなあと思っていました。(写真は一部)
・松茸
こちらは鯛は入っていませんが、鯛でとった出汁が松茸に良く合っていました。
・珍味
カラスミ(1年もの、2年もの、4年もの、5年もの)
・蓮蒸し 鯛の出汁で
・自家製がんもどき、鰊
・秋刀魚ご飯
出汁は昆布とカツオ、さらに秋刀魚は一夜干しにして焼いたもので、3つのうまさが溶け合い相乗効果を発揮。う、うまい!
5月の竹千代
前記のスペシャリテに加え。ホタルイカ、空豆、豆ご飯、新生姜ご飯など春らしいお料理。
・ホタルイカ酢味噌がけ、アスパラ
・自家製がんもどき プレーン、黒胡麻、五目の3種
・厚揚げ田楽風
・カラシ蓮根
・豆ご飯、新生姜ご飯
・自家製くずもち
くずを練り上げるところから目の前で調理。冷水に落としたくずもちを餡の上に載せ、餡をくるんと包み込み出来上がり。黒砂糖が味わいに深みを持たせており、滋味豊かな餡に調和しています。