「フランス料理と自然派ワインの小さなレストラン」を掲げるお店。オーナーシェフの田川真澄さんは、フランスでの修業を始め、モントリオールやニューヨークなどを巡って料理を学び、2017年6月に出身である金沢でお店をオープン。店名の「FIL D’OR(フィルドール)」は“金の糸”という意味のフランス語で、人と人、モノとモノの繋がりを大切にしたいという意味が込められており、金沢の“金”にもかけているそうです。
料理はジャンルで言うと、フレンチが基盤にあるフュージョンで、地物食材を取り入れて構成してあります。田川シェフが作る料理はセンスの宝庫で、組み合わせの妙や風味の演出、器にも注目です。
ワインはナチュールも目立ちますし、日本酒も吟味した面白いものがあって、訪れるたびに新しいお酒に出会えて嬉しいです。なかなか痺れるチョイスで、毎回楽しみです。
場所は金沢片町の中心部、スクランブル交差点から元車方面に向かう途中で、中央通りの大通り沿い。店内はカウンター6席にキッチンのみととてもコンパクトですが、天井が吹き抜けで自然光も入る造りなので(夜なので太陽光は入りませんが)狭さを感じさせません。また、コンクリート打ちっ放しで、スタイリッシュだがナチュラルな雰囲気も漂わせる空間造りがまたステキ。
早い時間は予約にてディナーコース提供。遅い時間はアラカルト料理とワインを楽しみに来る常連さんも多く、“金沢の2軒目と言えばフィルドール”と、ファンも多く作っています。
フィルドールのコースはトリュフのカヌレから幕が開くことが多いです。
●トリュフのカヌレ
ガラスを層にして重ねて研磨した、保木詩衣吏さん製の美しいガラス作品で提供されるアミューズブーシュのカヌレは毎回の定番。これがとっても美味しいのです。ほの温かくカリッとしており、温度と共にトリュフの馥郁たる香りが口に広がります。
過去のお料理参考まで。
【紹介項目】
2023年5月28日 アラカルト
4月5月の営業は新店舗準備もあり不規則です。これからのお店も楽しみですが、やはり田川シェフの料理が食べたい。組み立てが斬新だったり、風味使いが新しかったりと、毎回発見があります。
●パプリカムース
赤パプリカは焼いてからムースにすることで、甘さが最大限に引き出されており、凝縮された旨味とビビッドな風味が口の中にパッと広がりました。インパクトのある一品。
器は、昆虫をテーマとした作品が有名な堀貴春さん製で、メロンに昆虫の足が生えています。
●スティックセニョール
緑が器に映える一品で、ソースのようにパクチーを使用しているのがポイント。
パクチーの風味は独特ですが、爽やかでシトラスのような香気もあってふわっと持ち上げ、スティックセニョールの繊細さにマッチし、おいしさを引き立てる役割を果たしています。
●リエット
こちらも八角を効かせて意表を付いた風味の演出です。八角のスパイシーで温かみのある風味が、リエットにエキゾチックなテイストを添えていました。
2022年3月14日 コース
●トリュフのカヌレ
●蕪
松任の中野さんの葉付き子カブ。これは絶品。しかも皮を剥いたばかりでみずみずしく、口の中に甘いエキスがほとばしります。
●モッツァレラブラータ、白イチゴ
モッツアレラブラータは、金沢の「magazzino38(マガジーノ38)」さん製。
ほんのり淡いピンク色をした白イチゴは、カカオのパルプで作ったドレッシングでマリネすることで、イチゴの素材を活かしたまま、ほんのりとカカオの風味を乗せています。 フレッシュでミルキーなブラータも溶け合い三位一体の美味しさ。
●メジマグロ
すぐそこまで来ている春を思わせる一皿。
能登町「日の出大敷」中田洋助さんの11キロのメジマグロは、とてもきめ細かくて美味。
能登島「八太郎漬本舗」さんの粕漬け“七郎漬け”の刻みとケイパー、さらにキャビアに見えるのはニシンの卵を燻製してイカ墨と塩とレモン汁で調味したもので(手間かかってます)、ふんわりとスモーキーな風味と程よい塩気を与えてくれます。
●アスパラ
春の味覚アスパラにウキウキ。出始めの国産のホワイトアスパラとグリーンアスパラは、フュメドポワソンにほんのりブルーチーズの風味を乗せて。
●中野さんのほうれん草
松任中野さんのほうれん草は、牛すじを脂のイメージで合わせて味を支え旨味に厚みを持たせます。ゼラチン質がとろっとソースのように絡む。ニンニク、安納芋とも相性良し。
●中島の牡蠣のリゾット
ぷりっとした中島の牡蠣は、濃いめのフュメドポワソンで炊き上げたリゾットを合わせ、仕上げにヤギチーズの塩気をふわっと乗せて。
●イチボ炭火焼、姫人参、プンタレッラ
じっくり焼き上げることで増した、姫人参の味の濃さと甘味がインパクトを残します。
●グラッパと柑橘のグラニテ
2022年2月 加賀丸いものパイ
●「加賀丸いものパイ」コンソメ添え
サクッと歯切れの良い香ばしいパイに、ねっとり粘りが強い加賀丸いもを挟んであります。加賀丸いもは熟成を使用しているので甘さが重厚。中には、能登島「八太郎漬本舗」さんの粕漬け“七郎漬け”を刻んだものが入っており、食感と共に発酵の旨味がじわじわと広がります。
加賀丸いもHPより引用
http://kaga-maruimo.com/
「加賀丸いも」は、石川県の能美市・小松市で栽培される特産のブランド山芋です。ヤマノイモ属ツクネイモ群に属する黒皮種の大和芋で、大人の男性の握りこぶしほどの大きさがあり、すりおろすとビックリするほどの粘りがあります。そのモッチリとした強い粘りと独特の食感、滋味深い味わいを体験すると、他の山芋では物足りなくなるほどです。栄養価が高く、生でも食べられるのが特徴です。
2021年11月6日 コース
秋もグッと深まり冬の一歩手前。お花を使った田川シェフらしい風味の使い方や、酸味の取り入れ方がとても印象的でした。金沢の作家さんの器に咲く、秋のおいしさ美しさ。
(お料理は一部)
●トリュフのカヌレ
ガラスを層にして重ねて研磨した、保木詩衣吏さん製の美しいガラス作品で提供されるアミューズブーシュのカヌレは毎回の定番。これがとっても美味しいのです。ほの温かくカリッとしており、温度と共にトリュフの馥郁たる香りが口に広がります。
●甘海老
甘海老に、カラマンシービネガーでマリネした柿と七尾の白瓜漬物を合わせ、さらに金沢の「magazzino38(マガジーノ38)」さん製のミルキーなモッツァレラブラータを乗せて、軽やかでフルーティーな一皿に。
器は、昆虫をテーマとした作品が有名な堀貴春さん製で、メロンに昆虫の足が生えています。
●アラ
4日間熟成させたアラとハヤトウリに、秋の花である金木犀の透明オレンジのジュレをかけて。白ワインと白ワインビネガーの酸味に、金木犀の芳香が口いっぱいに広がります。
豪華さと雅やかさと併せ持つ谷口史さん製の金属工芸作品で。
●白子
ムニエルにした白子に、ほんのりピンクに色付く赤蕪のピュレをかけて、ほっこりした根菜の甘味と白子のミルキーな美味しさを一緒に。
杉原万理江さんの作品で。
●真鯛
お魚のメインは真鯛。酸味を効かせたバターのソース、落花生、トマトと。
●牛ヒレ
脂肪の少ない牛ヒレは、ややどっしりめのソースに黒胡椒のアクセントをガッツリと効かせて。
2021年10月13日 コース
いよいよ北陸の秋も真ん中に差し掛かり、田川シェフの料理も石川の秋をバシバシと感じられるコース構成でした。そして、シェフの料理はセンスあるなぁと再確認。
●カヌレ
ハニートリュフを削った温かいカヌレ。温度で馥郁たる香りと甘さが立ち上がり口の中に広がります。
●イチジク
前回とっても美味しかったので、リクエストしてあったイチジクの料理。今回はまた趣向を変えてありました。
金沢の「magazzino38(マガジーノ38)」さん製のモッツァレラブラータに、押水の松浦さんのイチジク“ロードス”、甘海老のサラダ、2種類の柿、仕上げにパフで軽い食感を添えて。イチジクのロードスは珍しい品種で、ねっとり濃厚な甘さ。甘海老の甘さと食感に同調し美味でした。
●ホッキ貝とバイ貝
ホッキ貝とバイ貝、アスパラ、白ワインと白ワインビネガーのジュレ、金木犀の香りを乗せて。酸味とお花の香りが印象的で、透明感のある一皿。
●香箱ガニのフラン
香箱ガニは地物はまだ先なので県外ものですが、ふるふると繊細なフランで、はしりの香箱ガニを堪能。
●秋刀魚
炙った秋刀魚に、ポシェして甘みを引き出しマリネしたネギを絹のようにかぶせた美しい一品。こういう見せ方もシェフのセンスが感じられますね。肝のソースと青柚子で。
●リゾット
ぷっくりと太った栗と五郎島金時の秋の味覚のリゾット。ほっこり温かみのある味わいを、キハダの実の清涼感のある柑橘味が引き締めます。
●金目鯛、蕪のロースト、白子、レモンパセリオイル
●和牛
レホールを削って、優しく辛味の刺激を添える。
●イチジクのアイス
2021年9月22日 無花果
変則的に、昼から夜までの通しで、立ち飲み営業をされていました。
メニューは久々にアラカルトを出していて(いつもはコース)、旬のイチジクの料理が美味しそうだったので注文しました。
●松浦さんのひめほうらい・ドリーミースイートとブラータチーズ
石川県のイチジクの産地として知られる宝達志水町押水の松浦さんの2種類のイチジクと、金沢の「magazzino38(マガジーノ38)」さん製のモッツァレラブラータに、金澤やまぎし養蜂場のアカシア蜂蜜とパッションフルーツのソースをかけて。こだわり食材を一皿に、シェフのセンスをのせて。
「ドリーミースイート」は果皮が緑色で中がしっかり詰まっており、味わいは酸味が少なくて甘味が強く、優雅で惚れ惚れるするような美味しさ。「姫蓬莱」は小粒でみずみずしくすっきりとした甘さ。食べ比べで明確に味の違いがわかりました。丹精込めて育てられている光景が目に浮かぶ素晴らしいイチジク。
2021年6月23日 コース
●カヌレ、サマートリュフ
●メジマグロ
メジマグロにアボカドの組み合わせで味わいに厚みを出し、山葵の菜で巻いて爽やかな酸味で引き締めて。ホワイトバルサミコで漬け込んだ葉ワサビとそば菜を散らして。
●稚鮎のコンフィ
稚鮎をコンフィにして、焼いた鮎の頭で取った出汁を泡にして苦味を添える。ミルクや添え物のマッシュポテトで、優しい甘みと苦味とのコンビネーション。山椒のタプナードソースソース、レモンのゼストで風味の演出を。
●治部煮
金沢の郷土料理である治部煮の夏バージョンとしてイノベーティブな一皿に。トマトのエキスと鶏コンソメをベースに、鴨と加賀太きゅうりをさっぱりと夏らしく。
●太刀魚のムニエル
骨付きの太刀魚をムニエルにし、トマトと魚出汁の骨太な味わいのスープで。
●とうもろこしリゾット
ヤングコーンとゴールドラッシュを福井のうらら米でリゾットに。パッと元気な夏の甘さが口に広がります。1キロの甘鯛を乗せて。
●ランプ、イチボ
お肉はマデイラと赤ワインのソースで、添え物のレタスはカカオドレッシングを。良いコースの流れで、シェフのセンスの乗せ方もさすがだなぁと再確認。
2020年5月19日 アラカルト
●炭火焼ヤングコーン 冷凍したフォアグラを削り、ふわっとコクを添えます。
●炭火焼ヒラメ オリーブのり塩
●パッケリの山椒カルボナーラ
太い筒状のパスタ“パッケリ”のカルボナーラソースで、アクセントとして実山椒をピリリと効かせて。
2020年1月3日 アラカルト
●自家製パン あんぽ柿バターのせ
●紅くるり大根、レンコン
紅くるり大根はカンパリとホワイトビネガーで味を添えて。レンコンはナチュールワインで。
●仔羊アニョーのモモ
●ビーツとたまご
2018年9月12日 アラカルト
田川シェフの”おまかせ”で注文(1人分のポーションに調整してもらいながら)。
●能登豚のリエット
リエットはとっても滑らかなクリーム状で。マジョラムを効かせて。
●キヌアとトウモロコシ
スーパーフードとして注目されているキヌアですが、プツプツと弾ける繊細な食感と滋味がいいですね。ニラの花を散らし、エスニックな味付けで。
●レモンゴルゴンゾーラコンキリエ
ゴルゴンゾーラソースにレモンを効かせたコンキリエ。レモンコンフィチュールで出している酸味が重厚なソースにマッチし、味わいを持ち上げてパッと昇華させます。濃厚なのにどれだけでも食べられるさっぱり感がGOOD。
●蝦夷鹿ロースのロースト
とっても良い火入れでやわらかく仕上がっています。ベリー系のソースで。
2017年10月31日 アラカルト
●カヌレ
●自家製スモークサーモン
キューブのスモークサーモンに、じゃがいものミニパンケーキをのせて。エアリーで温かなパンケーキと口どけ良いサーモンが一緒になり溶け合います。
●川端さんの加賀レンコンと梨
加賀レンコンのカリスマ農家、川端さんのところのレンコンにナシを併せるという、なかなかの発想力。食感のシャキシャキと濁りのないピュアな味わい、そして梨のジューシーな甘さが良い調和。
●ムール貝と里芋のマリエール
なんとカナダのエドワード島のムール貝ですよ。ご自身が修業で訪れ、思い入れのある土地のものをお使いとはステキです。里芋の滋味と併せて。
●キノコとポルチーニ茸のフラン
ふくふくと温かい湯気にのってキノコの香りが広がります。フランはややしっかりめタイプ。
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