観光客で賑わうひがし茶屋街の奥に、静かに暖簾をかけるそば会席のお店。店主の田尻淳さんは東京で腕を磨かれた方で、同店オープンは2015年8月。現在は昼夜共にコース(前日までに要予約)で営業。それは端正で繊細な日本料理のコースに、そば料理を織り込んであります。お店は町家造りで外観から凛とした雰囲気が漂い、店内も静寂閑雅。東山の風情が非日常の縁取りをしているのもまたステキ。季節食材の滋味を味方につけたお料理が、この空間に呼応しています。個人的にとてもツボなお店で、毎回櫂さんの静かな凄みを再確認しています。あまり多くを語らず、身を委ねて浸りたい場所。
・「ミシュランガイド北陸2021 特別版」1ツ星獲得(2021年5月19日発表)
・「ミシュランガイド富山石川(金沢)特別版」1ツ星獲得(2016年5月31日発表)
【紹介項目】
2022年7月26日 夏:能登の鮑、鱧、ヘタ紫なす、抹茶氷
夏の櫂さんは、涼しい風が町家にスッと吹き込んでくるような風流なコースです。夏食材にそばの要素を融合させて、正統派な日本料理とは少し異なる、櫂さんならではお料理に仕上げます。
●玉蜀黍葛寄せ、才巻海老、オクラ、潤菜
●鮑 能登、そばの実
能登半島の波の音が聞こえてきそうな、優しい塩気を乗せた鮑。そばの実の滋味が重低音に効いています。
●お吸い物
お椀に咲く純白の大輪の花。美しい鱧と、肉厚の富山の大門キクラゲが美味。
●お造り(アラ 珠洲、縞海老 輪島)
●八寸
南高梅蜜煮、黒ムツそば寿司、穴子昆布巻き、バイ貝、地のタコ柔らか煮、インゲン、河北川海老炒り煮
毎回楽しみな櫂さんの端正な八寸。一つ一つに美味しさを置いてあり、大将の丁寧なシゴトが伝わる。
●カラスミそば
削ったカラスミをふんわりかけて。そばがオイルコーティングしてあることでカラスミと馴染みます。若めのからすみは鮮やかな黄色で、優しい塩味と旨味がおそばの個性に良いバランスで調和します。
●炊き合わせ
加賀野菜のヘタ紫なすと合鴨つみれの炊き合わせ。いいお味の入り方で、美味しさの余韻がずっと残る。
●甘鯛
甘鯛は鱗揚げで、余熱でレア状態の絶妙な火入れ。香ばしくパリパリな鱗との食感の対比も美味。
●そば
最後の直球を外さずにしっかり決めてくるあたりがさすがです。
●抹茶氷
コースの流れに乗った櫂さんらしいデザート。お抹茶の苦味と緑の風味が雅な余韻を残します。
2022年1月24日 冬:美川白子、毛蟹白味噌仕立てお吸い物、更科いちご大福
毎回良いのですが、なんだか今回はより一層櫂さんの真骨頂である“そば会席”という部分が格別に決まっていたなという印象。感動が大きかったです。
●そばがき
櫂さんのそばがきは秀逸。いつもとは少し違う配合で、温かくほちゃっとした食感に軽やかな滋味が重なる。今回は醤油のもろみの発酵のコクと、フキノトウの凛とした苦味を添えて。ちょうど七十二候で「款冬華(ふきのはなさく)」の時期でした。最初の一品で櫂さんの良さが心に刺さる。でもこれがほんの序章。
●美川白子
お餅のようにふっくら焼きあげた白子は香ばしくクリーミー。蕪すりながしと焼きネギ、そばの実と。姿勢が正されるような端正で美しい一品に嬉しくなります。
●赤貝、雲丹
赤貝と雲丹を土佐酢のゼリーがけで。赤貝は昆布のような豊かな旨味。丁寧の丁寧さが光る一品でもあり、赤貝ひもも綺麗に添えてありました。
●能登ぶり、紅芯大根
●お吸い物
赤がパッと鮮やかで美しく、一目で射抜かれた椿の輪島塗。
吸地は白味噌仕立てで、椀種は毛蟹。毛蟹の身は真薯というよりも、蟹身を寄せてある感じです。中には蟹味噌が入っており、グラデーションも楽しませます。こちらも丁寧で端正で、さらに驚きもある。
●八寸
あん肝 才巻エビ、能登もずく昆布締め鯛、鯖そば寿司、赤蕪、菜の花、合鴨ロース、花豆
何も言えない、整然たる八寸。素晴らしいです。
●自家製からすみそば
オイルでコーティングしたおそばに、自家製のからすみを削って。若めのからすみは可愛らしいひよこ色で、優しい塩味と旨味がおそばの個性に良いバランスで調和します。
●天麩羅 甘鯛鱗揚げ、独活
甘鯛は鱗揚げで、余熱でレア状態の絶妙な火入れ。香ばしくパリパリな鱗との食感の対比も美味。
独活は穂先を使用しており、その爽やかで妖艶な風味にふわっと持ち上げられます。
●おそば
このコースの流れで、最後の直球を外さずにど真ん中を決めてくるあたりがさすがだと思います。
●いちご大福
まんまるのいちご大福。作りたてというだけで心躍るのですが、お餅は求肥に更科を混ぜたもので、一呼吸置いてほんのりとそばの野趣が立ち上がり、櫂さんらしさを最後まで感じさせます。粒あんの滋味とも好相性。
2021年6月12日 初夏:そば豆腐、そばがき、才巻エビ天
爽やかな風が吹き込んで来そうな、初夏らしいお料理の数々でした。今回も大満足でした。
●南高梅蜜煮
綺麗に炊かれた梅蜜煮。品のある甘さで爽やかなスモモのような味わい。
●そば豆腐
山から積んできた蓬を加えたそば豆腐に白海老をのせて。蓬とそば、そして白海老の繊細に一体感あり。
●お吸い物
椀種の鱧と青みの加賀太きゅうりに夏を感じます。櫂さんらしい繊細なお吸い物。
●お造り(白カレイ、トリガイ)
●八寸
蓴菜と雲丹と大和芋、タコのやわらか煮、山葵の葉の上に鯵のそば寿司、バイ貝の旨煮、鬼灯、才巻海老、水茄子浅漬け、空豆蜜煮
●そばがき
櫂さんのそばがきは秀逸です。石臼挽きのそばがきの野趣と繊細が織りなす妙味。そこに、ふぐの卵巣粕漬け(糠漬けに加えて粕漬けしたもの)を使用した調味料「醸し漬け」をのせて。
●輪島毛蟹、出来立て汲み上げ湯葉
●才巻エビ天ぷら
●おそば
●棒茶寒天のあんみつ
雅やかなコースの流れに乗った櫂さんらしいデザート。棒茶寒天の軽やかな苦味と風味がアクセントに効いています。
2021年4月21日 春:七尾トリ貝、コシアブラ、タラの芽天、そばカラスミがけ
山菜を多種取り入れた、春の訪れにウキウキするコースでした。さすがの丁寧なシゴトが春の味覚を昇華させます。冬に溜め込んだ毒素を取り払い、体の細胞がどんどん目覚めていくような感じも心地良かった。
七尾トリ貝、コシアブラ、そばがき、鯛そば寿司、ワラビの信田巻き、そばカラスミがけ、タラの芽と穴子の天ぷらなど。
↓写真をクリックすると内容を見ることができます。同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
2020年9月4日 初秋:スッポンお吸い物、鱧出汁そばがき
夏から食材がガラリと秋へと変わっていて気持ち高揚。お酒もひやおろしが出ていて、秋酒と共に堪能。ああ、いいわぁ。
そば豆腐、スッポンお吸い物、自家製カラスミのそば、夏の新そばのそばがきなど。
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2020年5月29日 初夏:鮎魚女お吸い物、そば寿司、鴨団子
春先の営業ができなかったため、櫂さんに訪れたい気持ちが募りやっとの訪問。テイクアウトで2度お邪魔したが、春の美味を味わえず、本営業の訪問は5ヶ月ぶりとなってしまった。などともやもや思っていたが、初夏の美味を堪能し上機嫌に。さすがの櫂さんのシゴトに感銘を受けました。
そば豆腐、七尾の鮎魚女のお吸い物、鴨団子、カラスミそばなど。
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2019年12月30日 鴨鍋コース
「鴨鍋コース」は、はじめに数品のお料理から始まりメインが鴨鍋です。シメとして雑炊も作ってくれますが、おそばも食べたいので追加しました。櫂さんらしい端正なお味のお鍋で、いつものコースを食べたことがある方はぜひこちらも試してもらいたいなぁと思いました。
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2019年11月12日 冬:カマスのそば寿司、合鴨つみれそばがき、フグの子そば
まずは今がまさに季節の香箱ガニを、霙のすりながしに隠して。カマスのそば寿司、合鴨つみれとそばがきのお椀、ふぐの子そばなど、新しい発見のあるお献立構成でした。
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