「蕎味 櫂(きょうみ かい)」ひがし茶屋街の奥に暖簾をかけるそば会席。静寂閑雅な空間で端正なコースに浸る。

料理: 8.0 その他: 7.7 ポイントについて
蕎味 櫂 (きょうみ かい)
営業時間 12:00~14:30、18:00~22:00
定休日 日曜、第一月曜
価格帯 【昼】コース5000円、8000円【夜】コース9800円(前日までに予約)
訪問回数 9回

観光客で賑わうひがし茶屋街の奥に、静かに暖簾をかけるそば会席のお店。店主の田尻淳さんは東京で腕を磨かれた方で、同店オープンは2015年8月。現在は昼夜共にコース(前日までに要予約)で営業。それは端正で繊細な日本料理のコースに、そば料理を織り込んであります。お店は町家造りで外観から凛とした雰囲気が漂い、店内も静寂閑雅。東山の風情が非日常の縁取りをしているのもまたステキ。季節食材の滋味を味方につけたお料理が、この空間に呼応しています。個人的にとてもツボなお店で、毎回櫂さんの静かな凄みを再確認しています。あまり多くを語らず、身を委ねて浸りたい場所。

・「ミシュランガイド富山石川(金沢)特別版」1ツ星獲得

(最終訪問 2021年6月12日)

2021年6月12日 初夏

爽やかな風が吹き込んで来そうな、初夏らしいお料理の数々でした。今回も大満足でした。
●南高梅蜜煮
綺麗に炊かれた梅蜜煮。品のある甘さで爽やかなスモモのような味わい。

●そば豆腐
山から積んできた蓬を加えたそば豆腐に白海老をのせて。蓬とそば、そして白海老の繊細に一体感あり。

●お吸い物
椀種の鱧と青みの加賀太きゅうりに夏を感じます。櫂さんらしい繊細なお吸い物。

●お造り(白カレイ、トリガイ)

●八寸
蓴菜と雲丹と大和芋、タコのやわらか煮、山葵の葉の上に鯵のそば寿司、バイ貝の旨煮、鬼灯、才巻海老、水茄子浅漬け、空豆蜜煮

●そばがき
櫂さんのそばがきは秀逸です。石臼挽きのそばがきの野趣と繊細が織りなす妙味。そこに、ふぐの卵巣粕漬け(糠漬けに加えて粕漬けしたもの)を使用した調味料「醸し漬け」をのせて。

●輪島毛蟹、出来立て汲み上げ湯葉

●才巻エビ天ぷら

●おそば

●棒茶寒天のあんみつ
雅やかなコースの流れに乗った櫂さんらしいデザート。棒茶寒天の軽やかな苦味と風味がアクセントに効いています。

2021年4月21日 春

山菜を多種取り入れた、春の訪れにウキウキするコースでした。さすがの丁寧なシゴトが春の味覚を昇華させます。冬に溜め込んだ毒素を取り払い、体の細胞がどんどん目覚めていくような感じも心地良かった。

●赤貝、七尾トリ貝、コシアブラ、そばの実
最初の一品から櫂さんらしさが詰まっています。季節感と細やかさ、そばの実で滋味を添えて。コシアブラの清らかな香気と苦味でスッと全体が整います。

●そばがき
石臼挽きのそばがきは、滋味香り雅な薄甘さがあり、繊細な口当たりでねっとり舌に絡む。お出汁はすっぽんで、まろやかで深みのある旨みがとくとくと広がる。

●お造り
鮎魚女、細魚、赤イカ

●八寸
ホタルイカ沖漬け、鯛そば寿司、ワラビの信田巻き、野芹胡麻和え、鯛の白子含め煮、イイダコうま煮

●お吸い物
椀種はえび真薯、椀づまにタケノコ、そして青みのカタクリは吸地にゆらゆら遊ぶと薄紫の花が咲くという粋なお吸い物。カタクリは開花期間短く、春を告げる“春の妖精”と言われますが、お椀の中で春の光を浴びて山に群生する幻想的なカタクリが思い起こされました。

●そばカラスミがけ
削ったカラスミをふんわりかけて。そばがオイルコーティングしてあることでカラスミと馴染みます。いい塩気と旨味でお酒も進む。

●ワラビと新玉ねぎのかえし炒め

●タラの芽と穴子の天ぷら
タラの芽を摘み取る前の景色まで想像できる美しい天ぷら。

●おそば

●ほうじ茶寒天のあんみつ

2020年9月4日 初秋

夏から食材がガラリと秋へと変わっていて気持ち高揚。お酒もひやおろしが出ていて、秋酒と共に堪能。ああ、いいわぁ。
次回は秋がグッと深まったら訪れたいなぁ、と。やはり季節ごとに通いたいお店。


●前菜 そば豆腐
もっちりとしてそこはかとない滋味と品を感じるそば豆腐。秋のはじまりを感じさせてくれる菊花あんと旬のイクラで。蕎味櫂さんらしい最初の一皿。

●お造り 白カレイお造り
身はポン酢、肝はお醤油で。締まった身の弾力ともっちりを感じられるいい厚み。肝がとにかく美味しいのは新鮮だからこそ。

●お吸い物 スッポン
秋のお月様を思わせまる、まんまるのスッポン豆腐が鎮座する“丸椀”。やわらかい身とゼラチン質の部位がゴロゴロと入っており歯触りに存在感あり。スッポンの旨味が溶け合う、雑味なくまろみのあるお出汁も美味。

●八寸
見た目から丁寧なシゴトが伝わる八寸。
子持ち鮎煮びたしと金時、雲丹オクラたたき。煮穴子のそば寿司、才巻海老、ズイキ、銀杏は、柴栗の葉の上に盛り付けてさりげなく秋を添える。
そば寿司は、煮穴子の口どけの良さにしなやかなそばが調和。子持ち鮎は、甘すぎない絶妙な味の添え方が鮎の持ちを引き立てています。

●自家製カラスミのそば
昨年秋に仕込んだ自家製カラスミがけのおそば。カラスミは2年くらい経つと朽葉色になり、さらに赤みを帯びていき、5年もすると雀色に向かうのですが、これは10ヶ月ほどの若いもので透明感のある藤黄色が美しい。削ったカラスミがそばに絡まり、フレッシュで軽い塩味と旨味が極細切りのそばに合います。酒肴にもなる一品。

●そばがき
夏の新そばのそばがき。キタミツキという品種だそうです。青い風味と粒にみずみずしさも感じる風情のある味わい。
黄金色の出汁は、なんと鱧。クリアだが濃厚で、ずりしとした旨味が体に染み渡るよう。これがフレンチでいうところのソースの役割を果たし、口の中でグラデーションを描きながら一体になり味わいが完成。美味。
黒い粒は、野山に自生するウワミズザクラの実を塩漬けにしたもの(杏仁子)。杏仁に似た風味で、少し清涼感もあり、塩味もアクセントに。

●天婦羅 才巻海老
うまい。衣はカリカリというよりも、薄いけれどふわっとした感じ。海老の頭や足は香ばしく乾いた音がするが、身はほわほわとしており、海老味噌がソースのようにとろりと飛び出す。

●冷かけそば
極細打ちの外二そば、今回は冷やかけで。山葵の代わりに辛味大根で頂くのが櫂スタイルで、手繰ると喉が涼しくなる。おそばは凛としていて秀逸で、そば屋のプライドが無言で伝わる。

更科粉で入れたそば湯。

●ピオーネのゼリー寄せ
夏から秋への移り変わりにふさわしい、ピオーネを寄せたの涼やかなゼリー。白いソースは胡麻ソースで、軽いクリームチーズのようでした。

2020年5月29日 初夏

春先の営業ができなかったため、櫂さんに訪れたい気持ちが募りやっとの訪問。テイクアウトで2度お邪魔したが、春の美味を味わえず、本営業の訪問は5ヶ月ぶりとなってしまった。などともやもや思っていたが、初夏の美味を堪能し上機嫌に。さすがの櫂さんのシゴトに感銘を受けた。
・西出酒造「春心」特別純米

・車多酒造「五凛」生酛純米吟醸

●そば豆腐
最初の一品から櫂さんらしさを感じる。見た目から実に風流。涼しげなじゅんさいに、もっちりとして透明感のある味わのそば豆腐が調和する。雲丹をのせて。

●金沢港毛蟹

●七尾の鮎魚女 お吸い物
蓋を外すと今が見頃の白い芍薬を連想させる鮎魚女の大輪花が咲く。ほろっとやわな食感が美味。そのあとに一呼吸置いて甘さが訪れる。木の芽と糸にした独活をのせる。

●お造り アオリイカ、鮎魚女
鮎魚女は、お吸い物のほろっとした食感とは対照的に、もっちりと弾力ある食感が美味だ。

●八寸
白玉蜀黍すりながし山椒オイル、海鼠腸茶碗蒸し、美川の鱚のそば寿司
すりながしは、玉蜀黍の風味と天然の弾けるような甘さが口の中にパーンと鳴り響く。蒸したて熱々の茶碗蒸しは滑らかで、海鼠腸の海の塩気がグラデーションを描く。酒が進むなぁ。そば寿司は、やや厚みのある鱚のもっちりした身に極細切りのそばを包む。


●鴨団子
鴨団子は予想以上に口どけ良く滑らかで、口の中で消えるようだった。信田巻きは豆腐を充填したタイプで、こういう1パーツにも大将の繊細な仕事が光る。
鴨団子も信田巻きも、どちらも透明感のある味わいの出汁にとてもマッチしている。

●カラスミそば
前々回はふぐの子そばでしたが、今回は自家製のカラスミで。極細切りのそばに和えるようにして、酒肴にもなる一品。


●白えび天麩羅
ここで熱々の香ばしい白えびの天麩羅。ああ、おいしい。この考えられたコース構成。

●そば
これが来ると「待ってました」となるのは、そばが締めでありメインで、やはりここのそばがうまいことを証明する。極細打ちの外二そば、山葵の代わりに辛味大根で頂くのが櫂スタイルだ。良い意味での野趣と凛とした味わいに喉が震える。味わいに浸り無言で楽しんだ。

そば湯で心落ち着ける。土瓶は小鹿田焼。

●あんみつ
最後までそば屋たるプライドとその美味しさを味わわせてくれるのが櫂。寒天はそば茶の寒天で、口の中でふんわりそばの香りが立ち上がる。あんと蜜の雅な甘さ。コースを昇華させるデザート。

2019年12月30日 鴨鍋コース

「鴨鍋コース」は、はじめに数品のお料理から始まりメインが鴨鍋です。シメとして雑炊も作ってくれますが、おそばも食べたいので追加しました。櫂さんらしい端正なお味のお鍋で、いつものコースを食べたことがある方はぜひこちらも試してもらいたいなぁと思いました。
●白子の玉じめ かぶらのすりながしがけ

●お造り 鰤、アオリイカ
鰤は濃口醤油と辛味大根で。アオリイカは生姜汁を合わせた薄口醤油で。

●八寸
香箱蟹、能登もずく加賀丸いものとろろ雲丹がけ、能登ガキ時雨煮
シゴトにも味の添え方にも“繊細”が光る八寸はさすが櫂さんだと思います。

●鴨鍋
合鴨、鴨つみれ、諸江芹、平茸、ネギ、牛蒡
素材を立てる、昆布と鰹のシンプルなお出汁の鴨鍋。まずはつみれとネギと牛蒡が入った状態で登場。つみれはほわっとやわらかくなめらかなタイプで、煮詰まっていく前のピュアな状態の出汁にもマッチします。



さらに鴨、平茸、芹など足していきます。鴨はゆっくりめにしゃぶしゃぶと出汁に泳がせて早めにあげて。噛むごとに広がる平茸の旨味、牛蒡の土気ある馥郁たる香り、そこにさっと出汁にくぐらせた芹の清らかな香気とカチリとくる苦味が味わいを引き締めます。美味。

シメのお雑炊はそばの実をご飯の代わりにした“そば米雑炊”。鴨や平茸、牛蒡といった素材からの旨味がよく溶け出したスープの美味しさよ。そばの実と共にたまごでとじてあるので、おいしさを余さず口の中に運べます。そばの実のぷつぷつと跳ねる食感も気持ち良い。ああ、うまい。このシメにも櫂さんらしさが詰まっている。

●そば(追加)鍋に加えてもし食べられそうならオーダーを。
膨れた胃も喜ぶ美味しさで、食べずには帰れません。櫂さんは、極細打ちの外二そばで、山葵の代わりに辛味大根で頂きます。

●酒粕シャーベット、花豆、イチゴ

2019年11月12日 冬


●先付
今がまさに季節の香箱ガニが、昨日も降った霙(みぞれ)を思わせる蕪のすりながしに隠れています。もうこんな季節だなぁと味わう香箱ガニのカニ足と内子外子、そのおしいさに心も舌も喜ぶ。蕪のサラサラ流れるような舌触り、ポワっと立ち上がる甘さに胃袋が撫でられるよう。そばの実のあしらいも櫂さんらしく。


●カマスのそば寿司
食べる前からもうその繊細さが舌で想像できるような美しいそば寿司。あしらいの葉の色づきがお皿で異なり、景色を変えてあるのも一興。

●お造り 七尾のヒラメ、珠洲蛸島のアオリイカ

●八寸
白子と能登もずく、金沢春菊と輪島の毛蟹、いくら長芋

●お吸い物
合鴨つみれ、そばがき、珠洲松茸
蓋を外すと松茸の風味がふわりと。端正な合鴨つみれ。そばがきはキメ細かくもっちりで、口の中にとろとろつるんと滑り込んできます。美味。この繊細を頂ける喜び。

●ふぐのこそば
石川県を代表する珍味である、通称“ふぐの子”はふぐの卵巣ぬか漬けのこと。お酒のアテやご飯のお供にも最高です。味わい的にカラスミのようなニュアンスというとわかりやすいでしょうか。
おそばはオイルで和えつるつると滑り良くて、ふぐのこの粒感も快感。塩気と発酵食ならではの旨味が、上手に極細のそば切りに寄り添います。


●ゴリ佃煮
通常ゴリの佃煮というと甘さ力強くてねっとりした印象ですが、同店のゴリ佃煮は保存食ではなく料理としての佃煮で、揚げたゴリのサクサクと歯切れの良い乾いた音が口の中で鳴ります。小さい身1つ1つが美味しい。

●才巻海老天麩羅
あまり天麩羅は得意ではない私ですが、この天麩羅が絶品で「うまいうまい」と興奮してしまった。衣はカリッと乾いた音を立てるタイプではなく、ふわっとしており海老をやさしく内包。海老の頭の部分は、香ばしい殻から濃厚な海老みそがじゅわっと出てきて、ソースの役割りを果たす。うまい。

●そば
シメのそばは、そばつゆに薬味は山葵ではなく辛味大根で。辛味大根の清涼感がそばを引き締める。

●水菓子
水羊羹、羽咋無花果、あんぽ柿チーズ
とても瑞々しくて滑らかな絹のような水羊羹。最後まで手を抜かないデザートに満足感がより一層高まります。

2017年5月 初夏

●そば豆冨
胡麻豆腐のそばバージョンで、じゅんさいと雲丹添え。そばのほのかな滋味と、じゅんさいの澄んだ味わいに雲丹が贅沢な甘さを添えています。

●岩牡蠣

●お造り(鯛、シマエビ、赤西貝)お醤油と煎り酒にて

●そばがき
そばがきには山椒の風味を移したオイルを敷いてあって、ジャパニーズハーブの風味と、舌に心地良く当たるピリピリ感がアクセントになっています。

●そば寿司、炊き合わせ(しのだ巻き、打木甘皮甘栗カボチャ、タコの柔らか煮)
鯵の握りかと思いきやそば寿司でした。巻物にしてあることが多いですが、こちらは握りにて。水っぽくなくてキリリとしており美味。どの味わいも立てる繊細な味の添え方がニクイ。

●ハモの吸い物
ハモの骨で取った出汁が研ぎ澄まされた味わい。五感をすり抜けそうな淡さがまた美味なり。

●天ぷら
車海老の頭とシソ巻き、シシトウ、トウモロコシ
  
●そば
挽きぐるみの二八で、風味良く美味しいそば。

●酒かすのシャーベット
アイスではなくシャーベット。アイスクリームの脂肪味と合わせてあるのと違って、より日本酒感が出てオトナな味わい。甘味は茹で小豆から。