「民宿ふらっと」1日4組限定の能登イタリアンと発酵食の宿。日本海を臨む露天風呂が気持ちいい!

料理: 7.3 その他: 7.2 ポイントについて
能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと (のといたりあんとはっこうしょくのやど ふらっと)
営業時間
定休日
価格帯 1泊2食(20,350円、土日祝連休など22,550円)※キャンセルポリシーあり
訪問回数 4回

能登町矢波にある1日4組限定の、能登イタリアンと発酵食の民宿です。
切り盛りするのは、1996年から能登に住んで2022年で26年のオーストラリア人ベンジャミンフラットさんと、能登出身である妻の船下智香子さんご夫婦です。

場所は、海岸沿いを伝ってきて高台に登ります。アクセスが便利とは言えない場所にあるのにもかかわらず、遠方からのお客さんが後を絶ちません。ふらっとの魅力はたくさんあるのですが、やはり料理も大きな魅力で、自家栽培の野菜や能登の地魚をふんだんに使ったイタリア料理を提供しています(朝食は和食)。
中でも特徴的なのは自家製の発酵調味料で、魚醤「いしり」と「ゆうなんば」は絶品です(下記に解説)。

同宿は2019年8月11日にテレビ番組「情熱大陸」で“石川・能登に魅せられた青い瞳の民宿主人 究極の発酵食で極上のおもてなし”と題して取り上げられました。番組で取り上げられていた発酵食は、能登町で毎年7月に行われる「あばれ祭り」のときに出す熟鮓(なれずし)。準備は春に山椒の葉(木の芽)を摘むところからスタートしますので、取材は春から4ヶ月に渡って行われたそうです。地下発酵室で、発酵3年目のこんかさばや鰯の塩漬け(アンチョビ)、山菜の漬物などなどたくさんのお手製発酵食を仕込んでいる様子も印象的でした。

温和なベンさんと、明るい智香子さんのおもてなしにはお2人の人柄の良さが溢れ出ていて、とても幸せな気分になります。能登の食や文化、ふらっとを大切にしてくれる人に訪れてほしい場所。

ふらっとのロケーション お部屋と露天風呂

建物は、構想を練って造り上げたご夫婦こだわりの夢空間。入り口は料亭のような門構えで、日本庭園のようなアプローチを抜けると玄関にたどり着きます。


宿泊のお部屋は和室。海側を向いていて(4部屋のうち3部屋)、障子を開けると抜けの良い風景が広がります。その他、“離れ”も出来ました。

ホテルではなく民宿ですが、アメニティーは一通り揃っており、バスタオルや小タオル、歯ブラシ、浴衣などは備え付けあります。

到着してまず最初の楽しみは、晴れた日に入ることができる露天風呂です。露天風呂はお部屋を出て“離れ”にあるので、中庭を通って「湯」の暖簾がかかる小屋へ。



中は脱衣所がありますがすぐに外です。
お風呂は智香子さんのお父様が作ったそうです(木はアテの木かな)。シャワーをかけるところも木で出来ていています。屋根がない開放感ったらないです!

高い天井、オープンエアな空間が最高に気持ち良い。宿は高台にあるので湾曲する海岸を向こうまでずーっと眺められます。
おーい日本海っ!!ここでひとっ風呂。心からの「あぁ〜」日頃の疲れもスッキリ取り払ってくれて体が軽くなります。リフレッシュ!

ちなみに陽が落ちた夜もまた良いです。

待ってました!の夜ご飯。ダイニングルームも海に向かっています。窓の向こうに広がる一面の里海は時間を忘れてずっと眺めていたくなる癒しの風景。また、水墨画や珠洲焼、ガラス作家さんなどの作品が展示されていてこちらもまたステキです。




ふらっとの究極の発酵調味料いしり・ゆうなんば

ふらっと料理の味わいポイントのひとつは発酵調味料。ここの「いしり」が格別な美味しさなのには理由があります。
ちなみに魚醤いしり(呼び方は能登の中でも地域によって異なる。いしり、いしる、よしる)は能登の伝統発酵調味料で各店各家で鯖や鰯など仕込む魚が違います。
智香子さんの父 船下智宏さんは「さんなみ」という宿をされていましたが、実は日本で唯一の「いしりの匠」に認定された方なのです。そのお父様直伝の、いかで仕込む3年熟成のいしりで、絞るのは極上の「一番いしり」のみというこだわり。料理に使うと、湧き出るように深い旨味が押し寄せてきて余韻に残ります。醸し出された深い旨味とまろみ、そしてバランスは究極の味わいです。

もうひとつ、「ゆうなんば」は無農薬自家栽培の柚子と能登の塩、国産唐辛子を合わせて2年ほど寝かせたもの。長期熟成によって醸し出されたコクが、ピリっとくる辛味を包み込んで丸みを持たせ、ほのかな柚子の香気が口の中にふわっと立ち込めます。その絶妙な調和と奥深い旨さは、一度味わったら忘れられません。これは絶品。

ふらっとの夕食(イタリアン)2022/7/24

コロナ禍もあり久しぶりの訪問。ご夫婦の心のこもったフレンドリーなおもてなしが大好き。時期的に、天塩にかけて育てた夏野菜・ハーブがたくさん登場していました。
今回個人的に好きだったのは、ナメラバチメとひね寿司です。

●夏みかんエール
ふらっとさんの夏みかんを使って仕込んだ、日本海倶楽部製のふらっとオリジナルビール。柑橘味が溶け合いぐびぐび美味しい。

●ズッキーニスープ
見た目からも夏らしい爽やかなグリーンのスープ。味付けは魚醤のみで、ズッキーニの青い風味に、ほんのり魚醤香りコクが広がります。

●ナメラバチメ(キジハタ)
ハチメは能登のご馳走。自家製カッテージチーズの軽やかでフレッシュな味わいが、ナメラバチメの淡白で品のある甘さに相性良し。紫蘇とフェンネルの風味が持ち上げます。

添えてあるのは、能登町の郷土料理「ひね寿司」。すしの原型と言われる熟鮓(なれずし)の一種で、鯵とご飯、山椒をミルフィユ状に重ねて重石をして、3ヶ月ほどかけて乳酸発酵によって作られます。春に仕込み、食べるのは夏。
冷蔵技術のない時代からずっと作られてきた発酵料理です。常温で生魚を仕込むわけですから、発酵とは本当に不思議ですね。
チーズのような深みと、独特な酸味と風味はひね寿司ならでは。

●トビウオのマリネ
躍動感ある羽根のような胸ビレが、海の姿を想像させます。自家菜園バジルのソースをマリネして。

●ガーリックサザエ
能登でよく食べられる発酵食の一つ“こんかいわし”を漬けたときの糠で、アンチョビのような旨味と塩味を添えます。自家製フォカッチャでディップして。

●吉田牧場カチョカヴァロ
入手困難な吉田牧場さんのカチョカヴァロ。鰹パウダーがかけてあり、旨味の輪郭がハッキリ出ています。

●自家製手打ちパスタ
自家製の手打ちパスタは、ここに来る楽しみの一つ。生麺だからこそのしなやかな麺肌にソースが絡んで、口の中に一緒につるんと滑り込んできます。むちむち食感に呼応する、スルメイカ子イカの優しい弾力。ローズマリーの風味をアクセントに置いて。


●鯛のグリル

●赤崎いちごソルベ
能登で育つ赤崎いちごのソルベは、果肉を口に放り込んだようにジューシー。能登ブルーベリーと。

ふらっとの夕食(イタリアン)2019/9/10

乾杯は日本海倶楽部さんのビールで。

●ポテトと自家製いしりのスープ
じゃがいもの大地のプレーンな味わいに、いしりの奥深い塩味が良いグラデーションとなります。輪島塗の器で。


●鯛
鯛カルパッチョは、山椒ソースがけで熟鮓の飯を敷いて、皿縁に乾燥山椒を散らして。熟鮓の飯が美味しいこと。酸味がもっとツンツン立っていると思いきやまろやかで、そのあとで広がる深みの余韻がすごい。さすが“発酵”を使いこなしています。ガラス作家さんの“みずたまり”のお皿は、角度を変えると波紋のような輪っかが現れます。

●のと115ステーキ
珠洲の原木しいたけブランド「のと115」を乾燥させたものを戻してステーキに。パルミジャーノレッジャーノをきめ細かく削って添えて。のと115は乾燥させて旨味がMAX値で、乾燥させたのに鮑のような弾力あり美味。


●白ナスのチーズ焼き
白ナスにサザエをのせ、吉田牧場さんのカチョカバロでチーズ焼きに。さすが吉田さんのチーズは甘くてコクがありとても良い芳香で、白ナスに相性良しでした。

●オコゼ
オコゼフライは珠洲の炭塩と柚子果汁で。衣サクサク、中はほわっと繊細で、熱々の湯気にのって甘さが広がり美味。

●アオリイカとフレッシュトマトの手打ち生パスタ
パスタは乾麺でなく毎日打つ生パスタで、卵黄の黄色が濃いめに出ていて食欲をそそられます。生パスタならではのソフトな弾力と厚みがイカと同調します。味の置き方が食材そのもののおいしさを立ててあり、パスタでありながら和を感じました。

●ハチメのグリル、サラダ
ハチメは能登のご馳走!グリルにしてメインに。プリッと滑るような身がやはり美味。目の前の海を感じました。

●レアチーズ 地元産のブルーベリー、エスプレッソ

能登の人々が紡いできた食文化。ふんだんに発酵食を取り入れたおいしいイタリアンに驚くはずです。

ふらっとの朝食(和食)

朝食は和食です。朝から智香子さんがお手製の囲炉裏の前で何やら焼いています。

これは「さんなみオリジナル海餅(かいべ)」で、ご飯にいしるとイカを混ぜたものをお団子にして炭火で焼いてくれます。さらに笹の葉にのせた鯖糠漬けも同様に炭火で温めて。
次々にテーブルに準備されるお料理の数々。ご飯はつやつやの能登産コシヒカリ。自家製切り干し大根、キュウリとイカの酢の物、能登のお豆腐に自家製なんば、自家製熟鮓、お漬物。

さらに大きなお椀にたっぷりとあら汁が。立ち上る真っ白な湯気が朝日で眩しかった。

海餅(かいべ)はイカの魚醤が温められてご飯の甘さにマッチ。ホロリとくる香ばしさ、口の中で広がる馥郁たる香り、甘さ。懐かしみが広がる。絶品です。

炭火で温めた鯖の糠漬け3年ものは、箸先ちょっとの量でご飯がもりもり進む。みなさんご飯をおかわり。
お茶は自家栽培杜仲茶です。

“能登の当たり前”が何よりのご馳走。それを教えてくれるベンさんと智香子さん、素敵なご夫婦です。

ふらっとの夕食(イタリアン)順不同

(以前訪問のお料理を順不同で載せています。)
●カルパッチョ 自家製ゆうなんばドレッシング
地物の新鮮なお魚はカルパッチョとして提供!

●サザエとナメラバチメのカルパッチョ、能登115ガーリックバター焼き、タラのグリル、カボチャのポタージュいしり風味

お造りのハチメには粉状のシソを散らして。添えてあるソースは「ゆうなんば」。長期熟成させてあるため、コクのある丸い味わいに仕上がっており、肝ソースのような感じでサザエにも相性良し。
能登のブランドしいたけ「能登115」は、アワビしいたけと呼ばれるほど肉厚。食感はまさにアワビのようにやさしい弾力があってジューシー。ガーリックのしっかりした味に負けない、能登115の旨味を堪能できました。
身の厚いタラは肝ソースで。深い味わいの肝ソースがタラに寄り添い、次の一口を進めさせ、あっという間に完食。
●自家製タリオリーニのイカクリームソース
パスタはその日の客人をもてなすためにつど打つ生パスタ。
最初は予め絡めてあるクリームソースで頂き、食べ進んでいくごとに敷いてあるイカ墨がパスタに絡まり、最後にはイカ墨パスタになるという計算された一皿。つるんと滑り込んでくる手打ちのパスタの口当たりと、朝どれイカのプリっとした食感が歯を喜ばせます。クリームベースですが、イカ墨が新鮮なので、深みはありますが最後の一口までフレッシュな印象。全てが合わさったときの調和もお見事でした。夢中になった一皿。

●朝どれカニの自家製パスタ

●サワラのグリル 自家栽培バジルのペストソース
濃厚なペストソースは、バジルの香りが口いっぱいに広がります。