富山県砺波市にある人気のそば店。お昼は上質なおそばを目当てに訪れるお客さんで連日混雑している。そばは富山県産が中心。例えばある日は、富山県八尾の在来種のそば9に、富山県高岡の小麦粉“ゆきちから”1の、9割そば。小麦粉まで地元にこだわる。超細打ちだがピチッと跳ね返すような活きたコシがあり美味。
そして店主西村忠剛さんの料理ファンは多く私もその一人。ディナーではおそばを〆とする“日本料理のコース”も予約で食べられる(※現在は短縮営業を行なっており昼営業のみ)。夜コースは2名からで2日前までに予約。銘酒が揃うので、運転などのことを考えると、金沢からだと難易度は上がるが、なんとか手段を考えたい。場所は、砺波ICを降りて車で約10分。民家が点在する田園風景の中に、突如大きなお屋敷が現れる(駐車場も広々)。
元々は養蚕場だったという古民家をリノベーションしてあり、内装も当時の面影を残す。天井には立派な梁が鎮座しており、重厚感と品のある空間にクラシックな面持ちのテーブルや椅子がマッチ。
また、わかる人には興奮度が高いお宝があちらこちらに目に止まる。まるで博物館で食事をするようだ。型絵染の人間国宝 芹沢銈介氏の作品。陶芸家 河井寛次郎氏の壺。巻物。江戸期に贅沢禁止とされた時期、酒を隠すために入れていた木製のタンクなんて珍しいものも。好きな人で語らえば話に華が咲き、何時間も話し込んでしまいそうな名品ばかりだ。
大きな神棚が存在感を放つ。
端午のお節句には鎧兜の展示も。
新年のお軸
(2020年8月14日 最終訪問)
福助 夏のそば
※現在は感染症対策のため、夜の営業を自粛して昼のみの営業です。
夜コースの場合は予約で伺っているので、時間も席もゆったりなのですが、昼はオープン前に行列が付いている日も少なくないので、並ぶのは覚悟で。ラストオーダー前にそばが売り切れる人気です。
●すだちとじゅんさいの冷やかけそば(2490円)
夏と言ったらこれでしょう。輪切りのすだちと透明感あるじゅんさいがのった、見た目から清涼感漂う冷たいおそば。柑橘とそばのキリリとしたのど越しで爽快感が倍増。波しぶきのような音を立ててそばをたぐれば、ひととき外の暑さを忘れられます。
●天ぷらの盛り合わせ(1900円)(海老2本と野菜の天ぷら7品)
福助さんの天ぷら盛りは秀逸。揚げ物が得意でない私もオススメしたいおいしい天ぷらです。それぞれの野菜の個性を引き出してあり美味。
●棒茶アイス
その他今回は夏らしく鱧の天ぷらそば(温かいおそば)、鱧の天せいろ(冷たいおそば)も季節メニューに加わっていました。
↓後記の単品サイドメニューもご覧ください。
福助 2月中旬のディナ そばがき、鱚天そば
今回何も言えないくらい全てが良かった!!特にそばがき秀逸で美味しさが忘れられません。鱚天そばも美味。
まずはひな祭りのしつらえでパッと心が春に。
お酒は七本槍で。
●赤ナマコのおろし和え
●源助大根
源助大根はニボシベースの出汁を塩味でさっぱり仕上げ、八尾の田舎味噌と南砺のふきのとう味噌をのせて。シンプルな料理に西村さんの実力が現れる。
●琵琶鱒
まずは琵琶鱒の美しい鴇色に目が行きます。さらに古九谷の絵皿が料理にリンクしていて嬉しくなる。聞くと、西村さんがこだわって選ばれたそうでなるほど。とろんと舌の上で溶けるような食感が美味。自家製ポン酢で。添え物に大徳寺納豆。
●そばがき
南砺市の新そばを使ったそばがきはうっすら緑ががっていて、柔らかくもっちり優しい弾力あり、里芋の煮物のようなニュアンスだ。つゆの余韻長く奥行きある旨味の味わいと合わさり、「あぁ、うまい」が何度も口からでてしまう。鴨、南砺市の野芹と九条ネギ。
●鱚天そば
そばがきでホームラン!と思いきや、鱚天そばも美味しくて顔が綻びっぱなし。鱚天の秀逸なこと。ほわっと繊細で、繊細の中に立ち上がってくる甘さ。いくつでも食べられそう。南砺市のタラの芽、小坂レンコンの天ぷら。
そばは南砺市産の玄挽き田舎と地元の小麦粉“ゆきちから”を使用した超細切り。
●そば茶プリン
やわらかいタイプの杏仁豆腐のような、とろとろ系のプリン。とろんと口の中に滑り込んできてうっとりしていると、一呼吸おいてそば茶の馥郁たる香りが広がる。
福助 冬のディナー 2020年1月中旬
そばもお料理も西村さんの性格がそのまま現れた丁寧で誠実な味わい。富山県の食材の良いものを多々取り入れてあり、私がまだまだ知らない富山の魅力を教えてくれる。
お酒は地酒他、銘酒が揃う。
・羽根屋 classic
・満寿泉 生純米吟醸 冬らしいデザインがステキだ
●先付八寸
・なまこの海鼠腸とろろがけ
・能登とち餅と干し柿白和え
・一寸豆、自家製カラスミ大根添え、海老、百合根の梅山葵添え
白和えは、とち餅と干し柿の野趣をお豆冨がまとめあげていて美味でした。1番好きだった。
●鯛の鱗揚げ
味のある陶器のお碗にて。福助さんの鯛の鱗揚げおいしいんですよね。白菜のすりながしでぽってりした淡い甘さを添えて。くわいを添え、黒七味を振って。
●お造り タケノコバチメ
●お造り 鱒しゃぶしゃぶ
庄川産の柚子入り割ポン酢で。もみじおろしがピリリ。
●天ぷら 白子、南砺市の朝どれふきのとう
●天ぷら アイナメ
七尾のアイナメは宝達志水町の葛粉をまぶして揚げて、カリカリの衣に。福野の里芋は原種に近いものだそうだ。
●シャラン鴨
鴨は柚子胡椒のソースで。金柑、熟成インカの目覚め、砺波のアスパラを添えて。器は、越中瀬戸焼 庄楽窯 釋永陽(しゃくながよう)さんの作品。
●そば
このディナーコースのために南砺市山斐のそばを10割で打ってくれた。超細打ちの美しさとおいしさ。膨れた胃にもすんなりおさまる。
●蕨餅
本蕨の蕨餅なので、透明感のある千歳茶色をしており、黒糖のホロっと香ばしい雅な甘さに調和。八尾のきな粉、能登大納言と。美味。
福助 夏のディナー 2019年7月中旬
・羽根屋
・七本槍
●先付八寸
白山のなめこ、氷見の鯵手毬すし、氷見のタコ、華小町トマト、セイアグリーのだし巻きたまご、だだちゃ豆の原種、稚鮎など
●お吸い物
この漆塗りの器は高岡漆器。富山に来て高岡塗りでお吸い物が頂けるなんて嬉しいものだ。焼き茄子、鱧、じゅんさい。蓋を外した時に咲いている純白の鱧が美しいこと。
●お造り
ひらまさ、たけのこハチメ(津本式血抜き↓下記同)をかえし醤油と山椒オイルで。山椒オイルの青い風味がアクセントに良い。
●七尾甘鯛 天ぷら
天ぷらと聞いていたので、エビやお野菜の盛り合わせで来るのかと思いきや鱗の立った甘鯛が登場。ややボリュームあるなぁと思ったのは無駄な心配で、夢中で食べてあっという間に皿から消えた。うまい。七尾の甘鯛を(お造りと同様に)津本式で血抜きし1週間熟成。くさみなくアミノ酸値だけが上手に高まっており、まず最初に鱗のサクサクという歯切れの良い乾いた音が口の中で弾け、中はほわっほわで軽くその対比は美味。香ばしさと共に旨味が広がる。
●放牧豚の氷見「ぶーぶーファーム」の豚肩ロース
まずラギオールのカトラリーがセットされて、お!っとなった。ここでこんな料理が食べられるなんて予想外だ。
ストレスのない環境で育てられた放牧豚というだけあって、パワーを感じる。猪にも近い味わいだった。
●すだちもずくそば
すだちの涼やかな柑橘風味でより一層爽快だ。穴水産の細もずくは私にとっては慣れ親しんだ故郷の味。糸のように細く輪郭のあるもずくの心地よい舌触りが涙を誘う。
●せいろそば
●れんこんもち
れんこん粉と和三盆糖蜜と黒砂糖で作ったわらび餅のようなお菓子。もっちりとして滋味とコクがあり、つるんと喉を滑り降りていきます。きな粉はホコホコとした深みがあって美味しいこと。なるほどこちらも八尾産。
福助そば単品・サイドメニュー
お昼は単品で(夜も単品注文できます)。季節限定メニューも注目です。
●鴨汁せいろ
キリリと冷たいおそばを、濃いめの熱~いつけつゆに軽くくぐらせてで頂きます。思わず漏れる「ああ、おいしい」。焼きネギの香ばしさと甘さにもそそられます。
●松茸の天せいろ(2500円)(秋)
松茸なので他の単品そばよりも価格は張りますが、秋を感じる食材、食べておきたいですね。
●すだちの冷かけそば(夏季限定、平日限定)
輪切りのすだちを花弁のように並べてあり、器に大輪の花が咲いています。
●おぼろ昆布とじゅんさいの冷かけそば(夏季限定、数量限定)
じゅんさいの透明感のある澄んだ味わいは言わずもがな美味ですが、旨味を添えるためにおぼろ昆布入り。
●天麩羅の盛り合わせ
ある日は、海老天、アスパラ、牛蒡、オクラ、蓮根、山菜、南瓜、豆冨など。
●野菜の天麩羅盛り合わせ
●れんこんもち
●そば茶のプリン
上質な珈琲プリンのように香ばしさがグッと押し寄せ、なめらかなミルクと調和した口どけのよいタイプ。スイーツ専門店に勝るクオリティ。
●わらびもち
注文があってから作り始め、出来立てを提供。氷水に落とされたわらび餅は見た目も涼やか。きな粉と黒みつをかけて。滋味を感じさせながら、もっちりつるんと喉を滑り降りていきます。