「一本杉 川嶋」七尾に光る新星!もはや予約困難の日本料理店。建物は元万年筆屋、シンボル的な有形文化財

料理: 8.5 その他: 8.2 ポイントについて
一本杉 川嶋 (いっぽんすぎ かわしま)
営業時間 18:30 一斉スタート(18:15ドアオープン)
定休日 月曜
価格帯 コース15,000円(税サ別)※松茸、蟹のシーズンはプラス料金
訪問回数 8回

能登七尾の一本杉通りに、2020年7月29日にオープンした日本料理店。オープンから1年経たない間に、2021年5月発表のミシュランガイドで1ツ星を獲得しました。
 ・「ミシュランガイド北陸2021 特別版」1ツ星獲得(2021年5月19日発表)

店主の川嶋亨さんは七尾出身。京都「桜田」さんなどで修行後、和倉温泉「のと楽」内にある「割烹 宵待」の料理長として腕を振るってきました。さらに、35歳以下の若手料理人のための日本最大級の料理コンテスト「RED U-35」2018では、3次審査を通過しファイナリストとして“ゴールドエッグ”を獲得(狭き門です)。JALとのコラボで「RED U-35 ~若き料理人たちによる機内食~」で料理提供し、JAL国際線機内食も担当。
その川嶋さんが、独立開業場所に選んだのは故郷の七尾市です(私の地元でもある)。建物は、風情漂う一本杉通りの一角にある、築80年の有形文化財でもある元万年筆屋をリノベーションしています(以前は雑貨屋さんだった)。

とてもお洒落な外観で、一本杉のシンボルでもあるので、地元七尾の人ならみなさん知っているのではないでしょうか。2階の窓は万年筆の筆先の形をしており、入り口頭上をよく見ると、インクの壺と万年筆が発見できます。
店名に“一本杉”という土地の名前を入れたのは、祇園とか銀座のように全国に知られるブランド地名になってほしいという気持ちから。

店内は奥に長い造りで、カウンター席が並びます。それ以外に個室も1つありますが通常は不使用です。

団十郎茶色の土壁が風合いを感じさせます。カウンターは珍しいタモの一枚板。席に着くと最初は照明が落とされており、一本杉通りにある創業1892年の和ろうそく「高澤ろうそく店」さんの和ろうそくが灯っている。植物ロウの明かりというのは、なんだか骨太の味わい深さがあって良いものです。

料理の中で大将がこだわるのは出汁で、目の前で一番出汁を引いてくれます。鰹節は、枕崎の一本釣りの本枯3年熟成を主に、他部位も食材によって加えます。ちなみにこれは特注品で、本来は3回燻すところを5回しているのだそうです。昆布は、一本杉「しら井昆布店」の3年熟成の利尻昆布。お水は、中島町の“藤瀬霊水”を汲みに行っているそうです。



お魚の藁焼きに使用する藁は、お食事で使用している自然栽培無農薬米の藁です。一本杉川嶋の建物を模した一斗缶で藁焼きします。

ご飯は中能登の無農薬棚田米か能登島の自然栽培無農薬米を使用。営業時間前直前に精米し、能登島「陶房独歩炎」藤井さんの土鍋で炊いてくれます。土鍋の蓋の重さが通常2倍ほどあり、しっかり圧力がかかります。水は中島の藤瀬霊水を使用。


川嶋大将の料理を食べて感じたのは、実力の上に花咲くセンスと、食材や器、演出に至るまで試行錯誤し、ぐっと思いを込めているんだなということ。席数が7というのも良く、川嶋さんの目が行き届く数だし、客席側からも手元がじっくり見物できて、プレゼンテーションがしっかり受け止められるのも良いです。

2021年12月14日 冬:香箱ガニ、加能ガニ、海鼠、沢野ごぼう

冬の川嶋。カニが主役になる季節ですが、その他の食材も光っていて良かったです。七尾の海鼠や伝統野菜の沢野ごぼう、本鰹、「日の出大敷」中田洋助さんの鰆、鯖。さらに自家製のウスターソースの美味しさにも驚きました。

●能登若芽のグリッシーニ
輪島塗の棗を開くと能登の若芽の茎が。若布の茎に能登のじろ飴(米飴)を塗ってそばの実をつけて和のグリッシーニとして。

●海鼠粥
七尾を代表する冬の味覚の一つである海鼠をお粥として。さっきまで海にいた海鼠を藤の瀬のお水(藤瀬霊水)と精米したてのお米でお粥に。海鼠は赤海鼠と黒海鼠の2種類で、それぞれ食感が異なります。塩気は海そのもので、潮騒を感じる一品。


●ズワイガニ
加能ガニ、朝採れの能登野菜の中島菜をスダチジュレがけで。川嶋さんではコース序盤に定番となっている“五味”を意識した一品です。器は山本長左さん。

●お吸い物
七尾が誇る“沢野ごぼう”の葛どうふとヒラスズキのお吸い物です。
沢野ごぼうは320年ほど前から栽培されている伝統野菜で、極太なのに繊維がやわらかく、さらに口いっぱいに広がる馥郁たる香りに定評があります。しかしながら、掘るのが重労働で後継者不足なのです(太くて長いため引っこ抜けない)。

小さい頃は給食にも出てきたのですが、近年数量が少なくてなかなか食べられなくなってきました。この素晴らしい食材を知ってもらいたい。
美味しさに加えてメッセージ性も感じるお椀。素晴らしかったです。
80年ほど前の輪島塗の“長命富貴”椀は、貫禄があって趣きがあります。


●お造り クエ、アオリイカ
クエは熟成6日目で、脂が乗っていて美味。
アオリイカは、さっきまで生きていた新鮮なものを両目から包丁を入れて最大限甘さを引き出してあります。
10年ものの山葵、能登島の塩、スダチと。14代永楽の器で。


●本鰹
度肝を抜かれた鰹です。まるで大トロのようにとろける口溶けで、皮目ギリギリがとにかく甘くて旨い。


●鰆 藁焼き
能登町鵜川「日の出大敷」中田洋助さんの鰆。特大です。

自然栽培の藁で藁焼にして。

冬らしくみぞれ仕立てにして、土佐酢にて。食感に弾力を感じると美味しい脂が湧き出すような鰆です。
田端志音さんの「雪笹」にて。

●鯖鮨
酢飯よりも鯖の層の方が厚い鯖鮨です。この鯖も能登町鵜川「日の出大敷」中田洋助さんの鯖。こちらも思わず目尻が下がる、惚れ惚れする美味しさでした。

●香箱ガニあんだし
香箱ガニは美しい仕事が光る身出しで、ほこほこ温かい香箱ガニの濃厚な出汁あんがけにするという、ありそうでなかった食べさせ方で。


●八寸
冬の八寸。川嶋大将が早朝に能登を回って仕入れに行く時の景色をジオラマにしてあります。この日は気温はマイナス1度で、うっすら霜がかかっていたそうです。
朝どれの水菜・のと115・自家製の干し柿のおひたし、万願寺とうがらしおかか和えと鰹角煮、サザエ麹漬け岩海苔和え、里芋親芋の唐揚げ、新大正餅米の飯蒸しズワイガニと海鼠腸
川嶋さんの八寸は小さい一つ一つがちゃんと美味しくて、食感や調理法も様々だし、熱々の料理も織り込んでいるのでメリハリがあります。

●目鯛フライ
8キロという目鯛を自家製パン粉でフライにしてあります。目鯛の美味しさはもちろんですが、驚いたのは自家製のウスターソースです。色が淡い“薄ターソース”。実はこれ、お店で使う野菜の端材を使用したもので、サスティナブルな取り組みの一つなのです。
そして、このアンバー色からは想像できなかった、びっくりするような豊かな旨味と複雑味が素晴らしかった。

●かぶら蒸し
今朝畑で抜いてきたばかりの蕪のかぶら蒸しは、天然の甘さが最大限感じられます。春菊、甘鯛、ナメコと。

●お食事
ご飯は中能登の無農薬棚田米を営業時間前直前に精米し、能登島「陶房独歩炎」藤井さんの土鍋で炊いたもの。土鍋の蓋の重さが通常2倍ほどあり、しっかり圧力がかかります。水は中島の藤瀬霊水。

今回の汁は冬にふわさしく粕汁。8種の食材からの旨味と粕汁が溶け合い、ポタージュのようにとろとろで、まろやかでぽってりと温めてくれます。

おかわりはなんとズワイガニ。身と蟹味噌を甲羅に入れて炭火で温め、たっぷりとご飯にかけてくれました。


さらに、鰹の漬けと粘り気の強い城山自然薯のコンビネーションで。

●そばブランマンジェ
中能登町の新そばと能登ミルクを使用したブランマンジェ。七尾で採れたイチゴ“さがほのか”と。

●能登栗きんとん
秋から熟成させた、糖度28くらいある能登栗をきんとんに。砂糖は加えてありませんが、甘さに厚みがあり、しっかりと奥深い。

2021年10月7日 秋:松茸


今回の主役は何と言っても能登松茸。能登町で朝と昼に採れたばかりの能登松茸をたっぷりと準備してくれました。料理人さん争奪戦のやつです。これだけの量を仕入れられるのは川嶋大将のご努力あってこそ。できるだけフレッシュな状態でお客さんに出せるのは、ここ七尾だからこそ。
能登松茸は今年は例年よりも早いそうで、ちょうど前々から予約していた日にタイミンクが合ってラッキーでした。
最初に山盛りの能登松茸を見せてもらって興奮気味の客席。


●能登松茸おかゆ
くつくつと目の前で炊き上げるお粥から、松茸の香りが漂います。秋の香りと共にスッと体に溶け込み、優しく胃を撫でて体の中から温めてくれます。


●カマス
しつらえに重陽の節句の着せ綿をした菊が。綿には藤ノ瀬のお水を含ませてあります。

通称“テッパウカマス”という特大のカマスを焼き霜にして、菊菜と菜の花、酢橘ジュレで。脂の乗りが良く美味。


●イチジク胡麻がけ
営業前にもいできたばかりのみずみずしくて味の濃いイチジク。とろっと濃厚な胡麻だれをかけて、さらに煎りたて擦りたての香ばしい胡麻をハラハラとかけて胡麻をダブルで。ギュッと凝縮した1皿の中に甘味・酸味・苦味・塩味・旨味の五味のある料理です。オクラおひたしと。器は坪島土平。


●お吸い物
菊が描かれた美しい輪島塗にて。朝産みたての能登地どり卵で作ったたまご豆腐を月に見立てて。マハタの揚げ出し、松茸、口頭にはススキに見立てた酢橘を。


●お造り クエ、ヒラソウダガツオ
10キロのクエのお腹の部位は、とてもよく脂が乗っていて、まるで鰤の砂ずりのような感覚でした。美味。クエと言われなければ分からない。
ツマは能登野菜の金糸瓜。
お月様を思わせる眩い器は魯山人のうつしで、ススキが描かれていて風流。

●サワラの藁焼き
お食事で使用している自然栽培無農薬で育てているお米の藁で藁焼き。一見サワラに見えない7キロの大物でした。


わざと厚めに引いてあり、ワイルドに食べられます。朝どれのキュウリで作ったカリカリキュウリを添えて。

●お凌ぎ
翡翠銀杏、新大正糯のもち米、ふぐの卵巣糠漬け。田端志音さんの尾形乾山写しで。

●八寸
川嶋さんの見せ場のひとつ。ススキと虫籠とウサギのしつらえで秋の風情漂います。能登を旅するように能登食材を取り込んだ八寸に感動があります。

虫籠には、柚子釜には小木漁港のイカの焼きわた塩辛、朝どれ枝豆、冬瓜の旨煮、天然ミョウガ、加賀レンコンおかか和え、能登栗の焼き栗、鮑の肝煮、里芋の唐揚げ。
ウサギの器には、金時草おひたしと渡蟹の土佐酢ジュレ。

●蒸し物
2キロののど黒と若い天然三つ葉


●焼き物
メダイの炭焼きは珠洲のクヌギの炭で、近火の強火で、メダイが持っている脂で皮目をパリっと焼きあげてあります。中は余熱で火が入ったくらいのレアな状態に。土佐酢大根で。


●能登松茸フライ
贅沢に松茸の姿を残したままフライにし、衣で風味を閉じ込めて。能登島の藻塩が香ばしさに合う。


●蓮根餅のおやき
もっちり粘りとシャキシャキの食感を両方感じさせ、さらに香ばしさと甘さ、滋味深さの余韻が広がります。

●お食事
中能登の無農薬棚田米の新米を、まずはそのまま頂き、ポテンシャルの高さをダイレクトに受け止めます。お米が立っていて輪郭があり、咀嚼するたびに甘さが立ち上がります。心からの美味しい。

お次はサワラの利休漬けを乗せて。力強い胡麻の風味にも負けないお米のパワー。

さらに、お茶漬けとして。

●能登松茸ごはん
さて、クライマックスのすごいやつです。川嶋大将の松茸ご飯は、ホイル包み焼きにした松茸をご飯に乗せてくれるという、一味違う松茸ごはんです。


閉じ込められた松茸の旨味、贅沢にしっかりと感じる食感、ご飯が吸う旨味。これはたまらない。

●能登ミルクと能登地どりのクレームブリュレ、加賀しずくと

●柚あん団子
お月様のようなお団子には、能登の小豆と柚あん入り。出来立てなので、お団子がもっちりほちゃほちゃしておりました。

2021年7月31日 初夏:能登島 雲丹、七尾 蝦蛄、能登うなぎ、舳倉島アワビ

7月29日で1周年を迎えた川嶋さん。この1年で美味しさで人気を集め、全国からお客さんが訪れるお店になり、一ツ星も獲得するという、七尾自慢の日本料理店になりました。夏のお料理も、能登島の雲丹、七尾の蝦蛄、能登うなぎ、舳倉島アワビなど、“能登だからこそ”の強みを活かしていて素晴らしかったです。

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2021年6月1日 初夏:トリ貝、鱒天ぷら、エンドウ豆ご飯

今回のスペシャル食材は特大のトリ貝。その他にも大物食材がオンパレードでしたが、その凄みに加えてメリハリもしっかり付けた抑揚のあるお献立で、最後まで引き込まれました。ここまで食べに来た甲斐を感じるコースでした。

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2021年3月26日 春:ホタルイカ、トラフグ

蟹や寒ブリと言った王様食材の季節が過ぎて春へ。大物の主役食材がない時期は、それはそれでとても楽しい。さすが川嶋大将は自身で能登を巡ってるだけあるなぁと感じる、能登の繊細な旬が頂けたコースでした。

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2020年12月1日 晩秋:香箱ガニ、加能ガニ

秋から冬に移り変わる晩秋の川嶋。11月6日に解禁になった香箱ガニ、加能ガニもお献立に加わっていました。

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2020年10月31日 秋:能登の秋づくし

約2ヶ月ぶりの訪問。季節はガラリと変わって秋へ。

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2020年8月27日 夏:月とスッポン、鰹藁焼、新蓮根

中能登無花果の胡麻がけ、お吸い物は「月とすっぽん」、七尾のヒラメと赤イカ、カツオのタタキ、ふぐの親子丼など、夏の川嶋さんもすごかったです。

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