「片折(かたおり)」究極の地産地消。研ぎ澄まされた美味しさの先に見える宇宙。もはや日本の頂点のひとつに(※基本的に紹介制)

料理: 9.7 その他: 9.7 ポイントについて
片折 (かたおり)
営業時間
定休日 不定休
価格帯 35,000円〜60,000円(※金額は時価なので日によって変わります)
訪問回数 15回

2018年5月16日に暖簾をあげた日本料理店。開業1年経たない間に噂になり全国・世界の食通の間で注目を集め、今では予約が極めて困難な一店に。
・「ミシュランガイド北陸2021 特別版」2ツ星獲得(2021年5月19日発表)

店主の片折卓矢さんは日々実直に料理に向き合い、食材への探求心と熱量は増す一方で目が離せません。
場所は、金沢では通称“女川”と呼ばれる浅野川沿いの、卯辰山に続く天神橋のたもと。雑踏のない静かな雰囲気が漂います。店主の片折卓矢さんと女将の裕美さんは、お二人とも「懐石つる幸」さんのご出身。女将さんもつる幸時代は調理場にいらっしゃいました。おもてなし、気配りの細やかさも超一流。つる幸の後は、「玉泉邸」さんのオープン(2014年4月1日)から3年半強、料理長と女将を務められました。昼夜営業で、かつ結構なキャパシティの日本料理店ですから、かなりお忙しい日々をお過ごしだったのではないでしょうか。お二人のご努力あって玉泉邸さんは大変な人気店になり、ミシュランガイドでは1ツ星も獲得されました。そこから独立出店されたのがこのお店です。玉泉邸時代は後半くらいからどんどん研ぎ澄まされて進化されていましたから、これからどのような風に突き進まれるのか楽しみでした。
現在は食べログ石川では堂々の1位。メディアにはあまり出演されませんが、2019年6月放送の「人生最高のレストラン」では、ミシュラン3つ星13年連続獲得の「カンテサンス」岸田周三シェフ(木村拓哉さん主演のドラマ「グランメゾン東京」の料理監修も)が選ぶお店のひとつとして紹介されました。さらに、グルメサイト「TERIYAKI(テリヤキ)」“ベストレストラン2020”のGOLDに選ばれました。(GOLDはその年最も素晴らしかったレストラン1店舗に贈られる賞で、全国を食べ歩くテリヤキストの投票によって決定します。)

ちなみに店名はつる幸先代の河田三朗さんが書かれました↓

さて同店片折ですが、修行先のつる幸さんとは真逆な感じのお料理ですし、玉泉邸の頃ともまた違うので、片折さんの事を元々ご存知の方のほうが今のスタイルに戸惑われるかもしれません。“日本の美”“日本料理の美”の中でも、食材に関しては季節の“地産地消の究極”、味わいに関しては“引きの美学”で食材を最大限に立ててあります。見た目に派手さは無いけれど、シンプルの奥に宇宙を見せてくれる料理。“単味”を立ててあります。
食材は、店主自ら毎日能登や氷見を回って、魚、野菜、水などの食材を調達しています。片折さんの1日は長い。まだ明るくなる前に金沢を出て、氷見を経由して奥能登珠洲や七尾など回る。片道ですら2時間から3時間強はかかる道のりをよくぞ毎日。店に戻ってからの仕込み、本営業、店仕舞いを考えると、いつお休みになっているのか。簡単には想像できない裏のご努力が毎日あるのだと思います。頭が下がります。そのためお料理は毎回(毎日)変わります。
特徴的なのは、お弟子さんが毎回目の前で削ってくれる鰹節で作る“命の出汁”です。この鰹節は鹿児島枕崎のもので、片折さんの特注(なのでここでしか味わえません)。これがとても印象に残ります。まるで天女の羽衣のように薄く透明感のある、たおやかな鰹節。削るごとに香りも立ち、日本人としてのDNAが反応する。一本釣りなためストレスがかからず、酸味が味に出ないのも特徴。能登の“藤の瀬の霊水”で40時間水出しした昆布に合わせて。昆布は利尻まで足を運ばれて一等品を確保されたそうです。



さらに、信田巻きや揚げ豆腐、クラゲの和え物など、古典レシピを見直した料理も泣ける美味しさでファンは多いはず。派手さはないが和の真髄です。
ご飯は氷見のコシヒカリ一等米を使用。ご飯も楽しみのひとつ。
 
※これまで写真は不可だったのですが、もう解禁とのこと。しかしこの雰囲気を壊したくないので音無しで撮影。
  

【紹介項目】

(最終訪問 2021年8月31日、全15回訪問)

2021年8月31日 初秋、 鮑お吸い物 鮎笹寿司 太刀魚(15度目の訪問)



●氷見産天然天草の自家製心太
毎年夏に片折さんを訪れる楽しみの一つでもあるのが心太。キリッと輪郭のある心太で、舌触りもハリがあり喉越し爽快。今年は原種のオクラのたたきを乗せて。このオクラはもっちりしておりパワー漲る食材です。

●お吸い物
鮑料理の美味しさのMAX値は大体想像できるのですが、その期待値を超えてきたところに感動がありました。想定外の美味しさを生み出してある驚き。美しく包丁を入れることで絹に撫でられるような舌触りで、昆布を効かせた出汁に、海藻の味がする鮑がシンクロします。塗り物は幕末のものなのだとか。



●キジハタ、青バイ貝
片折さんで出してくれる青バイ貝は、贅沢に芯の部分だけなのですが、これが絶品なのです。
サザエともアワビとも違う食感で、シャクっと優しい弾力と歯切れの良さがある、清らかな天然の甘さが湧き出すようです。
器はガラス工芸家 藤田喬平さんの作品で、透明感と可愛らしさと趣きあり、片折さんの器コレクションでも斬新で目を引きます。3Dで絡み合う螺旋糸が濃淡も美しく描かれていて、魅入ってしまいます。

●アカイカルイベ、ヒラソウダガツオ、ボタンえび
アカイカルイベは、つる幸時代に初代河田三朗さんから受け継いだレシピなのだとか。口の中でちょうど良い感じで溶けて、出汁とネギ、そしてイカの甘さが徐々に一体になります。

器は大樋焼馬上盃(ばじょうはい)にて。この高台の高い器は、昔、馬の上で盃を交わすために作られた酒盃で、高台を握って持ち、酒を飲んでいたそう。楽焼の手法の伝統と格式を守る「大樋焼」と言えば、飴色の釉薬が特徴ですが、こちらも大樋焼。焼成温度を高くして焼いているそうです。崇高な美しさ。

●鮎の笹寿司
庄川の鮎を塩焼きではなくお寿司として。水分量も程よく鮎の旨味も絶妙で、そこに笹の青い風味を乗せた風流な一品。完成されている。


●太刀魚
繊細な火入れでほわっとした食感で、細やかで貫禄も感じる一品。素晴らしいと思いました。

●のど黒の酒盗焼き
口の中でひたひたと溢れるのど黒の美味しい脂に、ふんわりと酒盗の発酵の旨みをほんのり乗せて。

●能登天然岩がき

●福井三方湖 天然鰻

●シラサエビ 百合根まんじゅう
美しい揚げまんじゅうはとても精巧で、熱々の温度の後に、じんわりと百合根の強い甘さが広がる。日々お忙しい中でも新作を創造してくる凄さ。

●お食事
氷見牛の八幡巻き、香の物、ボタン海老頭入りの汁

●漬カツオ、カマス、小鯛茶漬け、卵かけご飯

●パンナコッタ

2021年6月11日 初夏、青バイ貝、ボタン海老の回 (14度目の訪問)

気温30度、夏日和の金沢。そう言えば暦の上はもう夏。七十二候では、湿った草から蛍が出てきて、幻想的な光を灯しながら飛び交う「腐草為蛍」に当たります。ロマンチックな夏の始まり。
2ヶ月前とは食材とお料理がガラリと変わり、ドキドキの連続でした。夏らしいお料理の数々に、刻々と移りゆく季節を丁寧に摘み取って表現されているこもが改めて伝わりました。
松茸やカニなどの王様食材がない時期ですが、こういう時の片折さんにはまた別の良さがあって、特に、通われている方にはこっちが好きな方も多くいらっしゃるはずです。片折さんの世界観がバシバシ伝わってきますよね。
ちなみに片折大将、毎日寝るのは確実に0時越えなのに、4時半には目覚めて能登や富山などの漁港や生産者を目指すという生活です。本当に頭が下がります。ここまで突き詰められて生み出される料理の尊さ。でも体壊されませんように。

●青バイ貝、一寸豆、金時草
夏の風物詩、青バイ貝のシャクシャクとした食感と咀嚼するごとに立ち上がる甘さ。

●能登飛魚の沢煮椀
今回のお吸い物の椀種は飛魚すり身。吸地に飛魚の旨味も溶け合い、旨味の相乗効果でまろみと深みが海のように広がる。千切りのネギをたっぷりとのせた沢煮椀で。

●お造り マコガレイ、アオリイカ
七尾の朝どれアオリイカ。寝かせたイカも美味しいですが、活きの良い朝どれも良いもので、細かく深めに包丁を入れることでピンッとした質感が舌に当たり心地よく、甘さもしっかり伝わります。

●新湊ボタン海老、氷見マグロ
大樋焼馬上盃(ばじょうはい)にて。この高台の高い器は、昔、馬の上で盃を交わすために作られた酒盃で、高台を握って持ち、酒を飲んでいたそう。楽焼の手法の伝統と格式を守る「大樋焼」と言えば、飴色の釉薬が特徴ですが、こちらも大樋焼。焼成温度を高くして焼いているそうです。崇高な美しさ。
箸にどっしりと重みを感じる立派なボタン海老、頭は後ほど汁として。


●のど黒レタス
炭火焼のど黒はほわほわとしており、口の中で美味しい脂がジュワッと湧き出す素晴らしい火入れ。溢れた脂を受け止める千切りレタスも美味。

●雲丹素麺
福井県産ムラサキウニを素麺に絡ませて食べる贅沢な一品。ねっとりと密度は濃いが、上品な甘み。珠洲の天然蓴菜がとっても涼しげで、ちゅるんと滑る喉越しにも夏を感じました。


●ヘタ紫なす
加賀野菜“ヘタ紫なす”は、ヘタの下まで紫色の卵形のナス。冷やし鉢として。こういう料理に力量が現れますね。添え物の錦糸卵も美しい。

●甘鯛酒蒸し

●加賀丸いも
加賀丸いもは、石川県能美市・小松市で栽培されるブランド山芋で、砲丸のようにどっしりまんまるの形をしているのが特徴です。粘り気の強い丸いもは少しシャキシャキ食感を残して寄せて豆腐のようにし、軽く昆布締めにした白海老を乗せて。白海老は小さくとても繊細ですが、一つ一つ綺麗に身出ししてあり、美しさに惚れ惚れします。

●揚げ豆腐
日本人のDNAが反応する、片折さんの泣ける古典レシピシリーズ。揚げ豆腐の美味しさよ。宇出津のアワビもうまいが、主役は揚げ豆腐。口の中に含むと出汁がじゅわぁとなり、香ばしさと奥深い甘さが波紋のように広がる。

●お食事
氷見牛の八幡巻き、香の物、ボタン海老頭入りの汁


おかわりは、マナガツオ天丼、ヅケ丼、卵かけご飯



●わらび餅
冷涼で風情のあるデザートで締めくくり。弾力のあるタイプで、ちゅるんと清涼感があって、さっぱりと控えめな黒蜜が趣を添える。

2021年4月20日 春、トリ貝 ホタルイカの回 (13度目の訪問)

●よもぎ豆腐
雪解け水のふもとのよもぎ新芽を使った胡麻とうふ。苦味が優しく風味が鮮烈で、体の細胞を目覚めさせてくれるような美味しさ。

●ヤナギバチメお吸い物

●七尾トリ貝、氷見キジハタ
待ってましたの七尾のトリ貝。解禁してすぐに食べられた喜び。メロンのようなニュアンスと昆布のような旨味。


●スミイカ木の芽和え
クリーミーで濃厚な木の芽のペーストで和えたスミイカ。青い風味がふっと持ち上げる。

●和風カニシュウマイ 新湊の紅ズワイ
つる幸初代河田三朗さんのDNAを継承する一品。ふくふくと湯気が立つシュウマイ、味わいに淡い美味しさと品を置く。

●のど黒蒸し寿司
新作ですが完成されていてとても印象深く、その美味しさに歓喜した一品。
のど黒の蒸し寿司と言えば、太平寿しさんのスペシャリテとしても有名ですが、そちらとはまたガラリと味の方向性が異なります。
のど黒はとろける食感ですが、冬よりも脂の落ちた春ののど黒だからこそのしつこくない絶妙な美味しさ。また、のど黒というと高級魚の代表でもありますが、豪奢な味わいではなく、雅な美味しさに着地させていることにも感動があります。繊細な錦糸卵も美味しさに一役買っていました。

●メダイの幽庵焼き、葉わさび

●白えびのあられ揚げ


●新湊ホタルイカ
活ホタルイカの目と口を手早くピンセットで取り釜揚げに。ぷっくり膨らんだホタルイカは、皮が薄く美味。ホタルイカの“淡さ”も味わえる。


●イワシのつみれ

●お食事 氷見牛八幡巻

おかわりは鱒ご飯。鱒が絶妙な火入れでご飯に溶け合う。

●桜餅
もちもちとした生地とこしあん、熱々の温度と共に。

2020年12月18日 冬、カニの回 (12度目の訪問)

ズワイガニのオスメス両方を食べられる時期の訪問。
ズワイガニのオスの素晴らしさはもちろんでしたが、衝撃はメスの香箱ガニ。12月も後半になるとさすがに食べ飽きてくる食材ですが、片折さんの香箱ガニは別格の美味しさで驚きました。今までの人生で一番おいしかったと断言できます。
●蕪の風呂吹き
朝掘りの蕪。この日は昼席の予約だったので、ついさっき掘ったばかりの蕪の風呂吹きです。

●氷見ズワイガニ 
真薯ではなくカニ身を寄せてあり、とろんと口に入ってきて喉を滑っていきます。
命の出汁は、試飲の段階で今回は昆布がいつもより少し強めだなという印象でしたが、なるほど、カニにピッタリとくるバランスです。思わず吐息の漏れる美味しさ。

●香箱ガニ
絶品。越前港の香箱ガニをお客さんが口に入れるタイミングを逆算し、湯がいて手早く身出し。6人分を本当に直前のタイミングで行っていました。特に内子の美味しさには驚きで、半熟卵の卵黄のようなとろける食感と密度の濃い旨味、ほわほわとした温かさが相まって美味しさが膨らみます。プチプチの外子も、だしガラのようになっている場合が多いですが、この外子はしっかり味がある。香箱ガニのおいしさを引き出した最上級というものを堪能しました。

●お造り 氷見のヒラメとアオリイカ 

●氷見メジ
氷見の11kgのメジはグラデーションと光沢が美しい。
サクサクとした筋肉の弾力がまだあり、脂は綺麗な味わいで甘く、甘めの能登醤油ベースの自家製醤油が相性ぴったりです。 

●越前ガニ
活きのいい立派な越前ガニを目の前で捌いてくれます。元気過ぎてちょっと凶暴。暴れる暴れる。大胆かつあざやかな実演に無言で見入ってしまいました。あっという間です。
6人でカニ3杯、ということは2人で1杯、というのもすごい。


まずは、目を見張り炭火焼にして。味を加えずに塩水の味のみで。海水で引き立つ雅な薄甘さが広がります。

さらに裏ごししたカニ味噌を甲羅で、炭火の熱で沸かさないように温め、カニ足をカニ味噌しゃぶしゃぶとして。目を閉じて味わいに浸りたくなる妙味。どことなく透明感のある味でもあり、昆布のような旨味と湧き上がるようなカニの甘さが相まって口中に鳴り響きます。



●宇出津港のど黒 炭焼き

●里芋原種 カニあんがけ

●信田巻き
クラシックレシピを掘り起こした片折さんの料理は泣ける美味しさです。派手さはないが和の真髄で、コースの中でも特筆したい料理です。ゼンマイの凝縮した旨味と食感、それを受け止めるほんのり甘めの揚げが懐かしみを添えます。

●ご飯
氷見のコシヒカリ一等米、今回は4段階で頂きました。
銀シャリ、カニご飯、鮮度の良いメジマグロの漬け丼、卵黄と鰹節のせご飯

●葛焼き
焼きたてのアッツアツを手で掴んでハフハフ言いながら頂きます。きつね色に焦げる皮目の香ばしさと、熱々だからこその程よい甘さで美味。

2020年5月26日 春、トリ貝の回 (11度目の訪問)



●海素麺
細長い海藻の一種“海素麺”。これは能登の名人が採ったものだそうで、今までに食べた海素麺とは別物のうまさ。太もずくのようにやわらかい印象を持っていたが、これはシャキッとしていてコシもあり美味。たぐるとキリリとした清涼感がたまらない。「海素麺ってこんなに美味しいのがあるのか」と開眼。最初からググッと掴まれた一品。

●小鯛お吸い物
命の出汁、吸地をまずは一口頂いて、一旦ふぅと浸るのがお決まり。

●ヨモギ豆腐
摘んできたヨモギの鮮烈な風味がパッと口に響き、一瞬で野に連れて行かれる。一呼吸置いて訪れる苦味にしみじみ。

●氷見のコチ、アカイカ
片折さんが刺身を引くとき客席が自然に静かになるのは毎度お決まり。手元に惹きつけられる。息を飲む音が聞こえそうだ。

●富山 青バイ貝
大きな富山の青バイ貝。金沢のバイ貝は殻が固いので金槌を使ったりして割るのだが、富山のバイ貝は綺麗な水に生息するため身を守る必要がないから殻が薄いとかで、殻が手でクシャッと割れるほど薄い。そして、芯の部分だけを使うのが片折スタイル。シャクシャクとした食感と甘さ、この妙味。


●氷見のどぐろ
ほどける身からとくとくたゆたう脂と香ばしさ。

●胡瓜、クラゲ、椎茸 和え物
古典レシピを改めて見直しているのも片折さんの特徴の一つだ。派手さはないが和の真髄と言える。懐かしみすら味付けにし、咀嚼するたび故郷の光景が浮かぶようだ。


●宇出津の鮑
シンプルに酒蒸しで。絹織物のようにしなやかに折りたたむことができる薄さに削ぐ。口に運んだ瞬間、能登の潮騒を思い起こす味わい。

●七尾のトリ貝
この時期は七尾のトリ貝のシーズン。今年は漁に出ている漁師さんが限られるそうで、他でもなかなか食べられずにいましたので、食べられた幸せひとしお。
軽く備長炭で炙って温め香ばしさを添え、甘さも立ち上がる。てろんとたおやかな食感に歯が喜ぶ。クレソン、スナップえんどう、独活の野性味とそれぞれの遊ぶような食感を楽しむ一品でもある。

●揚げ豆腐、絹さや
揚げ豆腐からふくふくと湯気が立つ。和え物同様にこういう料理が心に刻まれる。貫禄と繊細を感じる。

●お食事
今回は3段階で頂いた。
①まずは光り輝く氷見のコシヒカリ一等米。まずはそのままひとくち。さらに添えてくれた氷見牛ごぼう巻きとともに。

②かほく市西山愛鶏園さん平飼い“もみじたまご”のたまごかけご飯。

③新タマネギごはん
とろとろに炊いた糖度の高い新タマネギが銀シャリのうまさに重なる。

●天然木の芽のアイス
舌の上で堂々と花開く鮮烈な風味と、尖った辛味を包み込むミルクの妙。美味。

●いちご大福
今春3度目のいちご大福。あぁ嬉しい。
ゴロッと大きなイチゴの山に雪のように求肥がかぶさる。ガブリとするとジューシーなイチゴの果汁が流れて来て、ほの温かい求肥の素朴でミルキーな甘さに溶け合い、最後にふぅっと小豆のアロマが鼻腔を抜ける。

お抹茶は陶芸作品水元かよこさんのお茶碗で。

2020年3月17日 春、ホタルイカの回 (10度目の訪問)

記念すべき10回目の訪問。なんだか感慨深い。来るたびに勉強させてもらっています。前回訪問から2週間強ぶり、と間を置いていませんが、いよいよ今年も活ホタルイカが出ていて心躍りました。
●先付
山の雪解けをイメージした一皿で幕開け。片折さんが金沢市牧山で摘んできた野三つ葉、センナ、山葵の葉などをかぶのすりながしで覆い、菜の花に見立てた柚子を散らす。まさに今山はこのような景色なのだとか。山通いしている片折さんだからこそ知る風景で、寒さに耐えた春の味が上手に表現されていて感動がある。食べ進めるごとにそれぞれの持つ苦みや辛味といった個性が現れアクセントに効く。

●お吸い物 氷見毛ガニ
椀種は氷見の毛ガニを寄せたもの。何度食べても片折さんのカニ寄せは素晴らしい。黄金のお出汁は秀逸で、そのまろみと深みにとろんとした舌触りのカニのふくらみのある甘みが溶け合う。皆しばらく会話を忘れて味わいに浸る。

●ふぐ造り

●生クチコ玉じめ
先月、今月共に食べられて幸せ。今だからこその生で味わえるクチコは塩味軽やかで、火入れするとぷっくり輪郭が出て美味だ。

●干ぜんまい白和え
片折さんのこういう料理が心に響いて泣かせてくれる。派手さはないが和の真髄。そして懐かしみすら味付けにする。珠洲のぜんまいは干すことで凝縮された旨味が底力となりしみじみ旨い。やわらかく戻した程よい食感。咀嚼するたび浮かぶ故郷の光景と秀逸なおいしさ。

●白子粥
いつもは冒頭にくるお粥が中盤に。なるほどふぐの白子か。クリームのようにミルキーだが乳脂肪ではないので後味軽く、お粥の薄甘さを包み込み一体となる。これは衝撃の完成された美味しさ。

●ホタルイカ
今年も食べられた幸せ。今回のメインはこれと言ってもいいだろう。片折さんは活ホタルイカを準備し、目の前でホタルイカの目と口を手早くピンセットで取りしゃぶしゃぶにする。


ぷっくりぽんぽんに膨らむ。皮が薄く美味なのは今しがたまで生きていた証。ホタルイカの味が濃いので味付けはほんの少しだけ。天を仰ぐ美味しさだ。
添え物は原種の菜の花。目を閉じれば菜の花畑が広がるように風味が鮮烈だ。

●海鱒の炭火焼
レア感を残して炭火焼してあり、香ばしさと口溶けを感じるタイミングが同じ。ほどよく脂がのっていて一呼吸おいて甘さがとくとく広がり「あぁうまい」と箸が止まらない。身は大きいがすんなり胃に収まる。

●宇出津アワビ
宇出津のアワビは煮アワビとして。丁寧に包丁が入れてあり出汁あんが絡まり口まで一緒に運ぶことができる。とろんというくらいのやわらかな食感。悦楽に浸る。

●鰯つみれ
片折さんで鰯つみれは初。このクリアな出汁は鰯に合わせていりこ出汁。天然アサツキを添える。

●ままいかイカ大根
小ヤリイカかしら、漁師さんの間ではママイカと言うらしいです。干ぜんまいに同じく、こういう料理の凄みよ。

●お食事
今回は3段階で楽しませてもらいました。
①光り輝く氷見のコシヒカリ一等米。まずは銀シャリでそのポテンシャルを味わう。

②たまごかけご飯
かほく市西山愛鶏園さん平飼い“もみじたまご”の卵黄と削り節。説明不要の美味さ。

③漬けマグロ丼

●イチゴ大福
先月↓今月と今シーズン2度味わえて本当に幸せでした。

2020年2月28日 春の回 (9度目の訪問)

松茸やカニといった王様級の食材がない季節。そんなときだからこその片折さんの工夫が最高である。やられたー!の連続でした。

●野芹粥
医王山の麓で片折さんご自ら摘んできた野芹のお粥。

●お吸い物 柳バチメ
まずは吸地を頂いて一口美味しさに浸る。鎮座しているのは氷見朝どれ柳バチメ。サイズが大きくなり過ぎると身がかたくなるので程よい大きさのものを半身使っているのだそうだ。めちゃくちゃ高級魚なわけではないが、一番おいしく頂ける短い旬のちょうどど真ん中に頂ける幸せ。

●ヒラメ造り
片折さんが刺身を引くとき自然に静かになる客席。手元に一点惹きつけられ恍惚となる。息を飲む音が聞こえそうだ。二代須田菁華さんの器に映える、氷見ヒラメの海水のような透明感よ。見た目に呼応する澄んだ味から一呼吸置いて立ち上がってくる甘み。白山市の山葵が引き立てる。

●生クチコの玉締め
今の時期だからこそ味わえる美味のひとつ“生クチコ”を、最大限の美味しさで味わえた一品。石川県能登の七尾はナマコの漁場として有名で、(故郷七尾の)私もナマコや干クチコ、コノワタは食べる機会が多いが、だからこそ一線を画する美味しさには感動がある。舌に当たる細く柔らかなクチコは干していないからこそ。また、塩味がとにかく優しいのも生だからこそ。

●メジマグロ造り
脂がスッとした綺麗な味わい。この美味しさもちょうど今だからこそ。

●あん肝酒蒸し
ふわっとしていて舌の上から消えるようだ。極上の口どけ。

●なます
箸休めとして出してくれた一品だが、こだわりは徹底している。大根や人参は原種を継承しているもので、片折さん自ら畑から抜いて来たものだ。シャキシャキ心地いい食感と瑞々しさ、透明感。

●珠洲の干ゼンマイ
珠洲のゼンマイの、干して程よく凝縮した旨味と甘味がいい食感のうえに立ち上がり、広がり余韻する。添え物は壬生菜。

●アワビステーキ
能登半島の先端、宇出津のアワビをステーキで。とぅるんと滑り込んでからの歯が喜ぶやわらかな食感と焼きの香ばしさ。コースの流れにこのメリハリ。

●かぶら
蓮蒸しのようにしたかぶらは白く光り輝く雪のようだ。その雪の下には、冬の寒さに耐えた蕗の薹が春を待っているという演出。ミネラルを感じる苦味が味を引き締め、眠っていた体の細胞も目覚めさせてくれるようだ。

●稲荷豆冨
こういう料理が秀逸なところがすごい。油揚げに豆乳を充填して作った稲荷豆冨。新大正もちの一等米(もち米)お餅入り。出汁を吸ったお揚げの甘さが中のお豆冨に寄り添う。端正でありながら懐かしみすら味付けにする、涙腺が緩む美味しさ。

●お食事
5つの顔で楽しませてくれました。
①光り輝くお米は氷見のコシヒカリ一等米。まずは銀シャリでそのポテンシャルを味わう。
②漬けマグロのせ
いい脂のマグロがご飯に身を寄せる。とろんとしてご飯の粒に溶け合い、お醤油の味わいがご飯を進めさせる。うまい。

③イワシ茶漬け
濃いめに味が入った鰯からの塩味のグラデーションが美味。

④時雨煮

⑤鰹節のせ
冒頭削ってくれる珠玉の鰹節。あれを食べてみたいとみんな思うやつ。また少し削ってくれて、ご飯にのせて。説明不要の美味しさ。シンプルだが記憶に残る。

●いちご大福

2019年12月6日 冬、カニの回 (8度目の訪問)

この季節の主役はカニ。昨年2018年のカニが素晴らしくて今年も楽しみに伺った。
もちろんカニが主役なのだが、それ以外の冬食材も今まで味わったことのない珠玉続きで、予想以上の回に。

お酒は、数馬酒造「NOTOプロトタイプ」。この酒は、石川県が開発した酒米68号を使って仕込んだ酒。金沢では片折さんでしか取り扱いがないはず。さらに手取川の大辛口を。

●すっぽんおかゆ
片折さんで最初に出してくれるおかゆ、まず最初に胃を撫でてくれるようで好きです。なんだか体が軽くなる。この時期はすっぽんのおかゆ。

●蕪と氷見あんこう お吸い物
あんこうは通常は独特のクセがありますが、これは全くくさみなくて味噌や醤油の味付けをしなくてもよい、凛としたあんこう。あんこうの無垢な味が黄金の出汁に寄り添う。面の広いあんこうを頬張る喜び。知らなかったこんなおいしいあんこうの味。

●氷見クエ

●能登島 迷いガツオ能登島
つやっと輝く断面に、まずは間違いない美味しさを宣言されているよう。

香ばしい皮目の薄いパリっとした食感を感じてからの、とろけるような身の柔らかさ。サーモンのミキュイのような口どけだ。さらに皮目と身の間のゼラチン質が溶けて口の中でじゅわっとなる。目尻の下がる美味しさ。

●あん肝
酒蒸しにしただけというあん肝。ムースのように軽く美味。

●氷見 海鰻
これはヤバイやつ。年に1度あがるかどうかという海鰻を幸運にもこの日引き寄せる。よく知っている身のふわっとした鰻の食感とは全然違う、野生的と言える弾力のある噛みごたえ。この妙味。印象に残る。

●越前蟹
さぁさぁ主役のカニが登場。その日の最高のものを準備してくれるのが片折さんらしく、石川県の加能ガニだと水槽しかいないタイミングだったそうで、それは立派な活「越前蟹」を準備してくれた。食い入るように見る興奮気味の私。今年もカニ解禁日から既にたくさんカニを金沢で食べている私だが、これは間違いなくナンバーワンのカニだ。

暴れまくる元気なカニを、片折さんが鮮やかな手つきで目の前で捌いてくれる。元気すぎて自ら、ブランド証明の黄色いタグも切ってしまうくらい凶暴らしく予測不能のハサミの動きが怖い。片折さんは嬉しい表情と真剣な表情を交互にのぞかせる。


まずは焼きガニにて。殻のまま焼くことで蒸し焼きのようにし、絶妙な火入れで、まるで艶やかなシルクのような身。みずみずしく、てろんと舌に滑り込んでくる。一呼吸おいて立ち上がる甘さと潮騒。絶品だ。

●ふろふき大根
煮含めなどにせずとも今はお大根のいい季節なので、できるだけシンプルが一番とふろふきで、柚味噌をのせて。繊維もきめ細かく美味だ。

●カニ味噌ディップで
カニ味噌を入れた甲羅を炭火にかけ、ふつふつと温まったところで、蟹の爪と蟹足をソースのようにディップ。先ほどのシンプルな美味しさに奥行きが増す。とはいえ研ぎ澄まされた美味しさ。思わず天を仰ぐ。

●里芋田舎煮
今回は金沢無農薬農家MEGLIY(めぐりー)さんの里芋で。ニボシをベースに炊いていて、いい香りがします。
日本人なら誰しも懐かしみをおぼえるお馴染みの料理を、片折さんが秀逸に仕上げることで、日本人のアイデンティティを再確認し誇りを持たせてくれる。矢口永寿さんお弟子さんの器で。

●お食事
今回は4つの顔で楽しませてくれました。まずは銀シャリで。お米は氷見のコシヒカリ一等米。卵は、かほく市西山愛鶏園さんのもみじたまご。

お次は、ほぐした越前蟹をのせたカニ飯で。中にカニ味噌を忍ばせてあるのがニクい演出。

お次は、なんと鯖寿司。氷見で今朝あがったばかりだという鯖は、その鯖のフレッシュな美味しさが活きている。海苔の部分を持ってふた口で。

さらに香箱ガニご飯。ズワイガニのメスである香箱ガニは、外子の食感と内子の美味しさが混ざり合い、満腹でも入ってしまう。しかもおかわり。

●葛焼き 湯涌の柚子
最後の一品。焼きたての葛焼きは手で掴んで。きつね色に焦げる表面は見るからに香ばしくてそそられる。はふはふと言いながら口にする喜び。柚餅子のようなコク、湯気とともにふわっと軽く持ち上がる。今日も片折さんは最後まで手抜きなしの全力だった。

2019年10月18日 秋、松茸の回(7度目の訪問)


この時期の片折といえば能登松茸。昨シーズンの松茸がパーフェクトワールドで、昨年食べられた方はそれをもちろん期待しちゃうわけなのですが、今シーズンは松茸が裏年なのかどこのお料理店さんにも入っておらず「今年は全然ダメですねぇ」という声しか聞こえてこない(出てきても長野県産)、ですが、この日は運もあってかもしれませんが、片折さんの大きなご努力の甲斐あり地物の能登松茸が準備されていて度肝抜かれました。
今年はさすがに片折さんでも食べれないだろうと思っていたので、ほんと夢みたい。馳走を駆け巡って珠洲の松茸を準備をしてくれた。なんたること。(ちなみに翌日は大雨もありゼロだったらしい)

手取川古古酒を初代徳田八十吉の徳利にて。さらに能登町数馬酒造「NOTOプロトタイプ」を。

●昼どれ珠洲松茸おかゆ
この先付はまず松茸のおかゆ。風味が鼻腔をくすぐり、喜びで胸がいっぱいに。温もりがとくとくと食道を伝わり胃袋を優しく優しく撫でてくれる。

●お吸い物
椀蓋を外すと命の出汁に加賀れんこんが鎮座。この潔さ。気持ちいいほどシンプル。削ぎ落とした美味しいがここにある。レンコンの下には、今では稀少になってしまった七尾の沢野ごぼう。大地の風味と、極太なのにやわらかい繊維に驚くはず。根菜のコンビネーション。


●氷見クエ
今日の氷見のクエは、片折さんのテンションの高まりが溢れて伝わるくらい最高のもの。岸田シェフの「人生最高のレストラン」で片折さんが取り上げられたときに出ていたのが立派なクエでしたが、それに匹敵するものらしいです。えんがわ寄りの部位。こんな絶妙に良い脂がのったクエは食べたことがない。たおやかな身に立ち上がる聡明な旨味。山葵は白峰の。
少しチャーミングさも漂わせる器は、九谷焼に新風を吹き込んだ陶芸作家と言われる北出塔次郎氏の作品。

●茄子と福井県の赤ウニ
金沢市安原の茄子、福井県の赤ウニのおいしさ。


●焼能登松茸
目の前で炭火で焼いてくれるのを見守りながら待つのも至福の時。胸いっぱいに吸い込むとクラクラするくらいのいい香りはたまらない。ああ、美味しそうだこと。部屋中に満ちるこの香りでお酒をチビリやりながら。
昨シーズンはホイルで蒸焼きにしていたのですが、今年は松茸の状態で調理を変えて、切り込みを入れて炭火焼きにし、割いていきます。
能登松茸は他県と比べて結構荒々しい地形で採れるらしく、そのためか食感シャキシャキ。
塩は角花さんのを挽いて粉状にしたもの。食べるときに指でつまんでサラサラと。
シャクシャクとした食感と、松茸から溢れるジュを全身で迎えに行く。角花さんの塩で旨さに輪郭が出る。



●氷見テッポウカマス

●クエの酒蒸し
先ほどのクエ、こちらは胴のほうを。天然のシメジの歯応えの妙。シャクシャクと絶品。シメジってこんなに美味しかったっけ。


●氷見里芋田舎煮
原種の里芋を田舎煮に。ニボシをベースに炊いて、里芋の持つ大地のパワーが活きる味の入れ方。矢口永寿さんお弟子さんの器で。

●自家製ひろず

●お食事
お米は氷見のコシヒカリ一等米。卵は、かほく市西山愛鶏園さんのもみじたまご。おかわりでは、蒲焼き風ののど黒を贅沢に。これはおかわりするよね、間違いなく。


●水菓子
富山呉羽梨、能登黒豆

●栗きんとん
能登宇出津の栗をしっとりした栗きんとんに。器は中村錦平さん。

2019年8月9日 夏の回(6度目の訪問)

最初に通される待合にかかるのは日本画家 中村宗弘さんの作品。真夏日にこの“樹林”が山からの風を吹かせ、室温が下がった気がする。まずは玄米を煮出した香ばしいお茶、そして青梅を。



カウンター席に移動して、お酒の前にお茶を。お茶も氷見産で嬉しい。
●氷見のハトムギ茶

お酒は勝駒、手取川大吟醸古古酒を。

・魯山人

・イギリス18世紀のアンティーク
「昔はこれで何を飲んだのだろうか」という背景を想像するのも楽しい。

●先付
金沢の伝統野菜“加賀野菜”のひとつ“ヘタ紫なす”の薄い皮を美しくつるんと剥いた煮浸しに、福井小浜の赤ウニ。端正な一品から幕開け。

●お吸い物
桐の花の蒔絵が施されたお椀。椀蓋を外すとそれは美しい純白のオコゼがゆらゆら朧げに咲く。舌触りも花びらのように繊細。雅な薄甘さに特製出汁がスッと溶け合う。


●能登島アラ お造り

●新湊 青バイ貝
食べ歩きをしていると珠玉の食材に出会うことは、ありがたい事に多いが、“素晴らしい食材を一番最高の状態で”とか“その中でも一番おいしい部位”に出会わせてくれるのはそれらを熟知した料理人さんの経験値と腕あってこそである。特大の青バイ貝、今回食べさせてくれたのは芯の部分。「え?そこだけ?」という贅沢な使い方だが、なるほどこの妙味に驚いた。サザエのような噛みしめるコリコリ感とも、蒸しアワビの歯が喜ぶ柔らかさとも違う、表面はバイ貝らしいつるっとした光沢があり、ひんやりした舌触り、厚み、シャクっと優しい弾力と歯切れの良さを感じて、清らかな天然の甘さが立ち上がる。絶品だ。
大樋焼馬上盃(ばじょうはい)にて。この高台の高い器は、昔、馬の上で盃を交わすために作られた酒盃で、高台を握って持ち酒を飲んでいた。馬上盃と書いて“ばじょうはい”と名が付いている。楽焼の手法の伝統と格式を守る「大樋焼」と言えば、飴色の釉薬が特徴だが、こちらも大樋焼。焼成温度を高くして焼いているそうだ。

●新湊 白えび、アカイカの子 おこわ詰
美しい白えび。これだけ粒揃いの白えびを数そろえて、綺麗に剥き身にするのは大変なことだ。子を離す前の今が、ちょうどおいしさMAX値のときだ。ねっとりした甘さ、美味なり。

●氷見 岩牡蠣

●氷見産天然天草の自家製心太
さすがお料理店さんの心太は美しく品あり、ひと味もふた味も違うが、能登では自家製で作るので懐かしさも込み上げ心でも味わった。あぁ嬉しいなぁ。すだちの輪切りも一緒に頂くと、酸味が弾けて涼しい。

(一品撮り忘れ)
●湯涌 鹿 たたき

●焼きトマト

●お食事
お米は氷見のコシヒカリ一等米。思わずありがとうと言いたくなる美味しさだ。卵は、かほく市西山愛鶏園さんのもみじたまご。

●胡麻豆腐

2019年4月20日 春の回2(5度目の訪問)

過去、秋の松茸の回が宇宙で、冬のカニもパーフェクトワールドだったため、主役級の食材がないと思われる春は一体どうするんだろうか。という少しの疑問がありましたが、それを完全に払拭。春先の回も素晴らしかったので、春の訪問2回目(笑)計5度目です。
前回3月23日に伺ってからあまり期間が空いてないので「お料理そんなにガラッと変わらないですよ。かぶる料理もあるかもしれません。すみません。」ということでしたがこちらとしたら全然かぶっていいので「それも嬉しいです。」という回答していたのですが、全然かぶってないし、食材共通なものありますが調理法や味の添え方が違っていて全部新しく感じられました。
●新玉ねぎ
金沢市安原の荒川さんの新玉ねぎからスタート。神々しく輝く純白の玉ねぎ。つるんとしていて淡く澄んだ味わいで、そこはかとなく立ち上がる甘味に出汁が溶け合う。

●お椀 鮑
お吸い物は例によって鰹節を削るところからやってくれる命の出汁で。宇出津の立派な鮑を目の前でさばくのを拝見済み。柔らかく美味なのは言わずもがな、天国だ。能登島のフキの禅味で引きしめる。

●オコゼ
雪解け水を思わせるような美しい造り。1日熟成させることによってアミノ酸値が良い感じに。ウルイとウドを添えて。

●能登トラフグ
能登の天然トラフグに裏ごしした白子をかけて。なんだか白無垢みたいな美しさだ。

●カタクリの白和え
春、人知れず密やかに咲き誇るカタクリ。根にパワーを溜め込み、花は繊細だけど生命力を秘める。その姿が脳裏に浮かんだ。春の息吹を感じる。しみじみ泣ける味。

●のど黒
箸を入れるとジュワッと脂が溢れ出す。この美味しい脂が口の中にほとばしる。口の中から喉に落ちてゆき、口喉胃袋の全部でうまさを感じる。

●七尾の鳥貝
ヴィーナスが誕生しそうなくらいの、それは立派な鳥貝だった。金額にするとこれでけっこうするのではないだろうか。肉厚の鳥貝を備長炭で軽く炙って香ばしさを添える。


●新湊ホタルイカ
なんと今回は活ホタルイカ。目の前でピューピューと水を吐き出すほど元気だ。たまらない。目と口を手際よく抜いて、素出汁で軽く茹でるとぷっくりぽんぽんに。氷見の菜の花に黄味酢。春の色がパッと目に鮮やか。


●ふぐ唐揚げ
ふぐの唐揚げは大好物だけど、良いふぐだからこその別格なうまさを教えてもらった。おいしいエキスが飛び出す、なんてジューシーなんだ。ヒレ酒と共に。

●鰯つみれ
鰯のいい時期だ。このつみれ碗は、片折さんが修行時代よく作っていたそうで、思い出の一品でもあるようだ。

●七尾鱒
七尾の鱒に今回はセリの出汁餡。出汁餡のまろみにセリの苦味がのる春の二重奏。ああ、おいしい。

●お食事
お米は氷見のコシヒカリ一等米。おかわりは卵黄をかけ、削りたての鰹節をはらりとのせてくれる。日本人が慣れ親しんだ、情のある味の洗練。うまい。


●胡麻豆腐
最後はきな粉がけの胡麻豆腐。

一刻一刻と移ろう春の刹那を、静かに静かに感じ取るような回だった。心くすぐられた。

2019年3月23日 春の回(4度目の訪問)

片折さんにハマってしまい4回目の訪問。
●イサザがゆ
まずはピチピチとグラスの中で跳ねる活イサザが調理台に準備されていたので、(能登生まれの私は)春の風物詩に「あぁこの季節か」としみじみ。これをサッと釜揚げにして氷見のコシヒカリ一等米のおかゆにのせて“イサザがゆ”として。ぷっくりつるっとした舌触りが実に美味。小さい身が全身で春を教えてくれた。淡い妙味で幕開け。

●クチコ椀
ナマコから出したばかりのてろてろの艶っとしたクチコ(卵巣)が大椀にたぷたぷと準備されているのがまず最初の驚きだった。これを目の前で(フライパンで)焼いて、さらにそれがお椀として提供されると言う前代未聞な流れにも驚き。
七尾はナマコの産地として有名だが、あんなにたっぷりの生クチコは料理店では出会えるものではないし、加工場では干クチコに加工すること前提なので塩を当てるけどこれは生のまま(かなりの値がついている三角形の干クチコをご存知のことと思う)。椀蓋を外すと出汁の中にたゆたう焼クチコ団子に心踊る。ナマコの町で育ったけどこんな料理初めてだ。それは口の中でほわほわとほどけ、出汁のまろみと完全に一体となる。ほのかに感じる潮騒と苦味。豪快だが極めて繊細な一品。

●能登トラフグ
フグだとは思えないどデカさのフグ、しかもトラフグの登場。5キロはあるらしく、視界から無視できない存在感バリバリ。能登は天然フグの漁獲量が実は日本一だが、魚種が多くて、例えばマフグやゴマフグなど8種類ほどがとれる。トラフグは珍しい。しかもこんな立派なトラフグを仕入れられるのはすごい。漁師さんとの信頼の高さを伺わせる。


刺身にするときはメスのほうが向いているらしく、これはメス。うらごしした白子をソースのようにかけてあり純白で眩しい。3日寝かせて旨味がMAX値で食感も良い。

●七尾ボタンエビ
片折さんには何でも最上級品が揃っているのでいちいち驚きがあるが、こちらも立派なボタンエビだった。春蘭を添えて。添え物まで手を抜かない、仕事が綺麗で惚れ惚れする。

●あん肝
低温蒸しにしたアンコウの肝が、これまたがドーン!と登場し、おおおお!となったが、提供されるのは一番おいしい限られた一部だけ。心の中で「まじか!」と叫んだ自分がいる。まずはみずみずしく美しい珊瑚色にうっとり。食感はやわらかいを通り越して、スッと消えるような軽さに驚き。“夢”みたいな味だった。

●青バイ貝
氷見の青バイ貝は通称“薄バイ貝”とも呼ばれるらしいが、とにかくサイズが大きく、そして殻がとても薄い。手でクシャっと割れるくらい薄いのは、金沢のバイ貝とは全然違う。身はうすく引いてあり、甘さがほとばしる。
添え物の壬生菜は胡麻和えで。胡麻は目の前で炒って擦ってくれたので、食べる前から香ばしさが舞う。

●若芽、アワビ
椀蓋を外すと潮騒に鼻孔をくすぐられた。若芽に覆われているのはアワビ。かなり立派なアワビだったし、アワビって見た目が強そうだから、(視覚の印象とは真逆の)目尻が下がるようなやわらかい食感にうわ!っとなった。アワビを覆っていた若芽のシャクシャクとした食感が良いアクセントだ。

●ホタルイカ
朝どれのホタルイカが、泳ぐように器に盛り付けてあった。そのホタルイカの目と口を手際よく目の前で取り始める大将。足が早いホタルイカは事前に下ごしらえすると痛みが早いことからこのようにしてくれている。それを出汁にくぐらせると、ぽんぽんぷりぷり。ぷっくりなったホタルイカは口に入れるとぴゅっと中からエキスがこぼれる。うまい。目を閉じて味わった。

●焼きフグ
冒頭から漬けにしてあったフグの切り身。こちらはオス。目の前で炭火で焼いてくれた。焼きフグは焼き過ぎると鶏肉のようになってしまうので、火入れが命。目を光らせる大将。中が均一にみずみずしい最高の焼き加減だ。
添えてくれたヒレ酒がまたうまいこと。ヒレ酒飲んでるけどこんなうまいヒレ酒は初めてだ。ヒレの焼き方が均等でムラがないのが良いんだろうなぁ。

●七尾鱒
お料理最後は七尾の鱒の揚げたものにカブラのみぞれがけ。焼いた蕗の薹を添えて。カブラは片折さんがご贔屓にされている金沢市安原の荒川さんのカブラ。これは本当に絶品だ(後記)。立派なカブラをお弟子さんがすり下ろす。甘く香り高く美味。

●お食事
信楽焼 中川一辺陶さんの御飯鍋がまた目を引く。ツヤツヤの氷見コシヒカリ一等米。一杯目はシンプルに銀シャリで、二杯目おかわりは梅茶漬けで。お味噌汁はボタンエビの頭入りで良い出汁が出ている。



●いちご大福
水菓子は作りたてのいちご大福。隠しきれない立派ないちごにそそられる。なんだか雪山のようないちご大福。求肥の上の方にはこしあん、イチゴの高い糖度にマッチ。

2018年12月23日 冬、カニの回(3度目の訪問)

(※写真不可な回だったので写真はありません。)
片折さんにハマってしまい、秋冬で3回目の訪問。秋の松茸づくしの次は冬の蟹づくしです。
白子の先付け、お次は香箱蟹という冬の美味で幕開けし、もうここで既にハート掴まれてたわけなんですけど、目の前に登場したのは、今回の主役である加能がに(ズワイガニの雄)。まだ生きていて暴れるほど元気なやつを、目の前で捌いてくれる。活カニを目の前で捌くところまで見せてくれるお店はあまり無いと思う(少なくとも金沢には無かった)。「おおおお!」と言わずにはいられない。手際よく捌く大将の目も輝いており、どこか意気揚々としていてこちらも嬉しくなる。
お吸い物は例によって鰹節を削るところからやってくれる命の出汁で。椀種は、一等の新大正もち米で作ったお餅の干口子射込みで、カニ身も惜しげなく太い足が一本。さらに沢野ごぼうも添えてあった。沢野ごぼうは七尾のブランドゴボウで、極太なのに繊維がきめ細かでやわらかく、いつものゴボウとはまるで違う食感。
お造りは能登の天然トラフグにあん肝を添えて。身はもとより、皮の部位も美味なのには驚いた。今まで食べてきたテッピとは別物の、歯が喜ぶようなソフトな食感だ。
お次は目の前で蟹足を炭火焼きに。切れ目は入れずに殻そのまま。こうすることで言わば蒸し焼きになるため、身はみずみずしく“とぅるん”としていて絹の舌触りだ。迷い鰹の炙りを一皿を挟んで、炭火には、かにみそがたっぷり入った甲羅がかけられた。ふつふつと温まったところで、蟹の爪と蟹足をソースのようにディップ。贅沢の極み。説明不要のおいしさ。英語でいうならHEAVEN。さらにさらに、ほぐした蟹身をシャリにのせたおすし。もう「参りました」ですよこれは。
お食事前に、金沢市安原の荒川さんのカブラ。シンプルにふろふきに。これがまた吐息が漏れるような美人で、繊維がきめ細かく風味よく美味。きっと我が子のように大事に育てられたんだろうなぁということが伝わった。お食事は氷見のコシヒカリ一等米で、美しく光輝いていた。食後はお抹茶と穴水の栗を揚げたもの。最後まで手抜きなしの全力。
全ての季節通いたくなるのが正直なところだし、価格は金沢のお店では高いが、こんな料理東京で食べたらお会計こんなもんじゃないと思う。そして他より高くても価格に対する満足度は大きい。金沢の誇りだ。オススメしたい。

2018年10月20日 秋、松茸の回(2度目の訪問)

(※写真不可な回だったので写真はありません。)
今回のメイン食材は能登の松茸。最初に通される待合からカウンターがちょっと見えるのですが、席前に鎮座する立派な松茸の山に一気にテンションが上がる。気持ちがかき乱されてニヤけてくる。「何だあのすごいのは」これらは能登の松茸名人さんが採ってきた松茸で、思わず拝みたくなるような神々しさ。山になっている松茸の手前にはスッと伸びた白マツタケも一本。中も純白で眩しいくらいだった。
ちなみに今回は食材だけでなく、店主もスコーーーンと突き抜けていて、一線を画した素晴らしい回でした。(ただ、松茸は自然のものなので入手できない日もありますから、前日のお客さんには松茸は提供できなかったそうです。地物の良いものにこだわっているだけに、毎日納得するものを仕入れるというのは、相当な緊張感があるでしょうね。)
まず最初の一品は松茸のお粥から。提供されてすぐ食べてほしいとのことで、後の方を待たずに頂きます。薄くスライスした松茸を軽ぅく火入れしお粥に合わせて。塩は引くに引いて、五感をすり抜けそうな淡さ。そこから時間差で立ち上がってくる、優しい甘さに胃袋を撫でられてスタートとなりました。
お次は黄金蟹の真薯のお吸い物が登場。かと思いきや、こちらもつなぎは引くに引いてほぼ黄金蟹を寄せたものでとても繊細なものでした。お吸い物は例によって鰹節を削るところからやってくれる命の出汁で。このベースの昆布出汁のたおやかさに、黄金蟹の絹のようなとろんと滑らかな舌触りが合わさってそのまま喉へ滑っていく。目を閉じて浸った。大きな松茸も嬉しい。
お造りはキジハタ(ナメラ)にアオリイカ。もちもちとしたキジハタの美味しいこと。けんは大根ではなく、生のマツタケを1寸の針にしたもの。
そして、“何か”がふんわりと包まれた大きなホイルが人数分登場し、目の前の七輪にのる。しばらくして火から外されて登場したのはこちらも松茸。松茸はそのまま炭火焼きにするとたしかに香ばしく美味しいが旨味が落ちる。こうやって“ジュ”まで味わい尽くすとなるとホイル焼きが一番だ。シャクシャクとして歯ごたえも美味。なるほどなるほど。
松茸づくしの流れにここで牛が登場。能登牛ではなく、店主の故郷の氷見牛で、湧き水と酵母を加えた飼料で育てられているそうで、こんなピュアな味わいの牛は食べたことがないってくらいピュアで驚き。シルクの舌触り。干ぜんまいと湯涌の胡桃の白和え。ほのあたたかい胡桃の口当たりの心地よいこと。優しく寄り添う野趣がまた良い味となる。なんとなく懐かしさも湧き上がる、思い出まで味付けにした一品。すっぽんのスープはすっぽんの存在はないのに、すっぽんが堂々と存在感を表した豊かな美味しさ。揚げ物は、カマスの天ぷらに天然ナメコのあんがけ。さらに松茸を散らして。
お食事は氷見のコシヒカリ。自家製イクラをのせて。膜の柔らかさも絶妙で皆おかわり。誰かが言い出した「これが究極のたまごかけご飯だねぇ」という一言に「なんて贅沢な」と笑いがこらえきれない。
また、最後の棒茶も目の前で煎ってくれましたが、こういう演出いいですね。和の香りって、やはり日本人としてのDNAがそわそわします。菓子は本物のわらびもち。最初から最後まで本物で通してくれるのはやはりここの価値。八尾のきなこがけにしたものを目の前のまな板で切って。もちもちとかみずみずしいとか、そういうのはなんかもう野暮な表現で、自分の細胞にスッと寄り添ってくれそうなデリケートさ、奥深い妙味に感謝すら覚えた。

素材の骨格を出すには塩が必要だが、ギリギリまで引いたところに見えてくる景色もあることを教えてもらった。
片折さんはこのまま「どこまでいっちゃうんだろう」と期待させてくれる、予感させてくれるからだろう、既に何度も通っている人が結構いる。

2018年9月25日 秋の回(初訪問)

(※写真不可な回だったので写真はありません。)
2018年9月下旬に頂いたお料理は、蓮豆腐、黄金ガニ真薯、天然鰻、マコガレイお刺身、白甘鯛揚げ物、地物ノドグロ焼き物など。お食事はマコモごはん。テングサから作った寒天黒蜜がけ、輪島の栗の自家製栗きんとん。見た目に飾りっ気なくとってもとってもシンプルで、引き算をして削ぎ落とした感じです。華やかな八寸や盛り込みもありませんから、お皿の上の食材とその味で季節を感じとります。椀種の真薯は黄金ガニ。黄金ガニは紅ズワイとズワイガニのハーフで1000匹に1匹とも、1万匹に1匹とも言われる幻のカニですが、この日はなんと上がったばかりのものを準備してくださいました。焼き物の鰻は日を逆算して3日間温度管理をして提供。百合根は北海道の帯広の農家に見に行かれたそうです。