「小松弥助」弥助ワールド健在!レジェンドのオーラ全開!すしを食べさせることで人を幸せにするのが世界一うまい人物。知ってる人だけ注文できる弥次喜多とばらちらし

料理: 7.8 その他: 7.7 ポイントについて
小松弥助 (こまつやすけ)
営業時間 ①11:00〜、②13:00〜、③15:00〜 ※完全予約制(紹介制)
定休日 水曜、木曜 (森田大将不在の日・時間は営業日に関わらず不定です。)
価格帯 15,000円〜20,000円
訪問回数 50回50回以上

小松弥助 すし職人の森田一夫氏は、今更説明の必要がないくらいのレジェンド。2023年3月24日で92才になられました。
1931年3月24日に神戸ですし屋を営む家に生まれ、すしの世界に入ったのは15歳のこと。19歳から銀座で修行し、1958年には石川県小松の「米八」さんで腕を磨きました。「小松弥助」を開業したのは36歳の時。

(すしのタイプは異なりますが)レジェンドという意味で「東の次郎、西の弥助」と称されることも多いですね。池田町APAホテル1階にあった小松弥助が2015年11月末をもって惜しまれつつ閉店し、2017年3月14日に金沢駅前にある加賀屋グループの「金沢茶屋 別館」内に再びオープンすることとなり、「待ってました!」となったファンが多いはずです。ただし、前店を閉じられた理由は、弥助熱が年々ヒートアップして全国から予約が殺到する中で(喜ばしい反面困惑やお考えもあったのでしょう)、なにより昔からのお客さんに対する感謝の思いを強くお持ちで、今回はそのお客さんを中心におもてなしできるお店をとの思いでオープンされています。そのため、予約は「以前の小松弥助に訪れたことがある方とその同伴者まで」に限られます。(初訪問の方が誰かに予約を取ってもらって個人で行くことはできません。)
2019年11月8日に「現代の名工」(厚生労働省)に選ばれたことが発表されました(同年11月11日授賞式)。

営業は11:00から1日3回転。「え!3回転もするの!」と逆にびっくりですが、森田大将は相変わらずその辺の若者よりも若くイキイキされており、ピッカピカのオーラ全開です。90歳を迎えられてさらに若返ったような印象も受けますし。ただし常連さんが多いためか、時間がけっこう押しちゃうこともあるのは予め了承の事。ある日の3回転目は(一応2時半からなのですが)、入れたのは結局3時半ごろでした(そこに不満はありません)。ただ、3回転もしてくださるのは嬉しい反面、森田大将のご無理に繋がっていないのか、勝手な心配をしてしまうところではあります。最近では基本的に“若手を教育する立場に回る”ということになっているのですが、基本は森田大将が握ってくれます。が、時々体調を崩されてお休みになっている日もありますので必ずいらっしゃる訳ではありませんし、1回転目は居ても2回転目からいない時も多いです。

店内はカウンター11席とテーブル席が3つあり、以前のお店よりも自然光が入る造りで明るい印象です。前店同様、お客さんの目の高さにまな板があるため、当たり前のようにお客さんの視線は大将の手元に注がれます。そして店内の雰囲気というか、弥助には独特の空気感があって、それを感じない人はいないのではないでしょうか。「今うまいすし食べさせてあげるからね~」とニッコリ微笑む森田さんに、お客さんも心ほぐされ思わずニッコリ。“すしを食べさせることで人を幸せにするのが世界一うまい方” だなぁと私は思います。握りは手から手へ、心から心へ。森田さんがお客さんの手のひらにポンと置いてくれます。すしを通してのハートに伝わるコミュニケーション。大将の言う「掌(たなごころ)」です。

すしの特徴はいくつかありますが、シャリも独特です。酢が強くなくて、食べ疲れしないふんわり感を持ち、絶妙な温かさで、“ごはん感” があるように思います。米は特別にお願いしている岐阜県郡上産のコシヒカリで、鹿児島県産の天然ミネラルウォーターで炊き、炊き上がりに酒を入れて30分蒸らすそうです。踊るように空気を含ませて握るのが森田流。
おつまみからの注文ならばお造りと蒸し鮑から。握りからの場合は、1貫目は漬けマグロから開始。2貫目は3枚おろしにするイカ握りというのが流れ。ネタは荒々しくワイルドな印象。スペシャリテの一つである、器に入ったおすし「白山」も印象的。アッツアツのうなキュウが出たら終演。追加注文で多いのは、ネギトロ、柚子塩の穴子です。さらに特筆したいのが器の金継ぎで、器もおいしい歴史を紡いで来たんだなぁとしみじみ(下記に紹介)。良いものを大事にされています。

ちなみに大将が不在の際は、和倉温泉「信寿司し」の大将でもある刀祢修(とねおさむ)さんが握ってくれます。私は刀祢さんのすしも洗練されていてとても好きです。

ちなみに、小松弥助の撮影の掛け声は、「はい、チーズ」ではなく「はい、弥助」。
声が聞こえてきそうな、いい写真です。

予約方法(2021年12月から変わります)

気になる小松弥助の予約方法ですが、毎月、月の初めの日である1日に、3ヶ月先の予約を取っています。
例えば、2021年11月1日予約が取れるのは、2022年の2月の席です。
ただし、1日が定休日である水曜・木曜に当たる場合はその次の日が予約日です。

予約者は直接お店まで行って予約を取るので、毎月1日は早朝から行列がついています。(特にすごかったのは、カニが始まる11月の席を取るのに、8月1日は長蛇の列が朝早くから出来ていたそうです。)

月を重ねるごとに列が長くなり、かなり朝早くから待たれる人もいらっしゃるし、前日からずっと待っていた人もいたそうで、これは毎月混雑するということでこの度予約方法が変わりました。

2021年12月1日(2022年3月分の予約)からは電話予約になります。
予約目的のみでの来店はお断りするということになりました。

しかしながら“電話”となると、もっと難易度が高くなってしまうのかなと思われます。でも方法は①1日に電話②もしくは予約を取っている日に次の予約をしてくるということになります。

小松弥助のすし種類

(※写真は一部。わたしはだいたい毎月訪問しているので、その中で良く撮れているものを順不同で載せています。季節もののネタもあるので、全部が出てくる訳ではありません。)

弥助のコースは、にぎり6貫・白山(器のおすし)1皿・うなキュウ1巻ととてもシンプル。意外と短いのですが、一通りのコースの後に、追加で好きなものを注文していくというスタイルなのです。
例えばある日のコースは、
マグロ漬け、イカ、炙りトロ、甘海老、白甘鯛(グジ)、煮蛤、白山、うなキュウ 以上。といういつもの流れ。
そこにネギトロを追加が私の定番です。

・マグロ漬け このわたのせ
握り1カン目の定番。ねっとりもちもちした漬けマグロに、このわたの海の香りと塩気が絡まります。中には細かく刻んだヅケトロ入り。ヅケだれは梅しそ昆布を加えて3日ほどかけて作るそうです。

・イカ
見せ場の一つであるイカの3枚おろしの握り。イカは3枚におろすことによって、空気に触れ、甘さを増してねっとりした舌触り。天然塩でより甘さが引き立ち、輪郭が出ています。ゴマで香ばしさを添えて。これが弥助のイカ握り。

・炙りトロ
脂が乗った美しいトロは表面をサッと炙って。咀嚼するとシャリに美味しい脂が絡みます。ギュッと絞った酢橘が良いアクセント。

・甘海老

・甘鯛(グジ)
甘鯛はしなやかで柔らかく、絶妙な身の厚さ。白甘鯛が入っている時もあります。

・煮蛤
肉厚でぶりんぶりん。歯が喜ぶ柔らかい弾力で、ほっぺたが落ちるとはこのこと。甘いツメも良く合います。

・「白山」
器に入ったおすしで、シャリを敷いてマグロや雲丹をのせ、とろろをかけてあります。器はバカラ。この器は2種類あり、ステムの長いものは男性に出されることが多いです。



・うなキュウ
これが出てきたらコースは一通り終了で、これ以降は追加の握りになります。
焼き立てアッツアツ(本当に熱々!)を有明海のりでくるりっと巻いて渡してくれます。鰻の香ばしさとキュウリのパリパリ、海苔の風味が広がる。


ここからは追加で注文できるネタです。

・蒸しアワビ
食べる時はだいたい冒頭に注文しているやつです。
アワビの立派で肉厚なこと。歯が喜ぶ柔らかさと、やや白濁した出汁のおいしいことおいしいこと。


・ネギトロ
コースが一通り済んだら、だいたいみなさん追加するのがこのネギトロです。荒めにたたいたトロと白髪ねぎをこぼれんばかりに詰め込んだ手巻きです。本当にこぼれそう!脂分が多い部位ですが、白髪ネギがそれを緩和してくれます。ここでお醤油の出番。加賀市の山本醤油さんの冨士菊醤油“寿”。

・白子のすりながし
冬にいただける最初の一品。これが絶品。とくとくと優しくふくよかな味わいがぽわっと口に広がります。金継ぎの器にも注目。

・金沢豆腐と白山なめこの汁
秋はコースの締めくくりに出してくれました。なめこ入りで季節を感じます。

・鯵
シャリを包み込むようにして。

・バイ貝

・アラ
隠し包丁をスッと一本入れてあります。

・小肌


・泉州の水ナス
弥助の夏の定番。これが出てくると夏が始まったなぁと感じます。包丁で切ってあるのではなく指で割いてあります。これがうまいですね。

・穴子(追加)
笹の葉に乗せて仕上げたほわほわな穴子を塩と柚子にて。口の中でとろけ、笹と柚子の香りがふわっと広がります。


・アワビ

価格は、“握りから”の注文で日本酒少しと「弥次喜多」(下記)、追加ネギトロでだいたい16,000円〜20,000円強ほどです。

弥助のお酒
・神泉大吟醸
弥助オリジナルラベルが光ります。大吟醸ですが重厚感もあるお酒で、お寿司にベストマッチ。せっかく飲むならこれがオススメ!ただしアルコール17度あるお酒なのでペース配分をお気をつけて笑

・萬歳楽 白山

・萬歳楽 菊のしずく

ちなみに(カウンター席ではなく)テーブル席だとおすしは皿盛りで提供されます。
これはこれで落ち着いて食べられるので、何度も通っている人的には良いのですが、やはりみなさん大将が居る日にカウンターで手渡しして欲しいですよね。

お店を後にするときは、舞台を見終わったような充実感があります。

流した涙はワサビのせいではない。

  

解禁の時だけ食べられる香箱ガニ

小松弥助のすしはほぼスペシャリテなので、年間通して大きく変わりませんが、いくつか季節で変わるものがあります。特にレアなのは“香箱ガニ”です。地物の香箱ガニが解禁の間は提供されます(石川県カニ解禁日11月6日、お店での提供は11月7日から。香箱ガニ漁は11月6日〜12月29日まで)。ズワイガニのオスである“加能ガニ”は11月の解禁日から3月まで漁が可能ですが、メスの香箱ガニは2ヶ月未満。この期間に弥助の予約ができたら食べられるというわけですね。
香箱ガニの身出しは本当に手間。捌いてキレイに盛り付けてくれたのを食べられるのは最高です(準備する方は大変なシゴトですが)。カニの甲羅に内子外子を詰めて、細い足で蓋をする。これを食べられる幸せ。足はオスより甘くて美味と地元でも評判。内子の凝縮された旨味の妙味。外子のプツプツ。いいですね。

軍艦でも香箱ガニ出てくるのですが、「雪紅葉(ゆきもみじ)」という風流な名前が付いています。この時期に来られたらラッキーですね。

知ってる人だけ注文できる弥次喜多とばらちらし

隠しているわけではないのですが、知っている人だけの特権になっているのが、お持ち帰りで2品あります。1つは「弥次喜多」という名前のおにぎりと、もう一つが“ばらちらし”です。

●弥次喜多(やじきた)(2個で3000円)
海苔に包まれた丸っこいおにぎりが2つ入って1人前です。食事中に「お土産の弥次喜多を」と言って注文しておいてください。
これはすぐに食べてはダメなもので、3時間ほどして味が完成するように作られていますので、家路についてしばらくしてからどうぞ。例えば、東京から来られた方が、家路についてから食べるとちょうどよいというわけです。
漬けにしたマグロや白身魚をまず海苔で包んで、それを酢飯で軽めにふわっと握って、仕上げの海苔を巻いてあります。3時間くらいすると、ヅケダレを吸い込んだ海苔がいい感じにとろとろになっていて食べ頃です。その場で握ってくれるお寿司とはまた別の美味しさ。細かく刻んだ数の子のプチプチとキュウリの食感も良いアクセントになっています。



●ばらちらし
弥助のお花畑。蓋を外した瞬間、パッと華やかで嬉しくなります。
おすしとしていつも出てくるネタが目白押しで驚き。酢飯の上に海苔と錦糸卵を敷いて、その上にマグロ漬け、三枚おろしのイカ、炙りトロ、煮蛤、ウニ、小肌、鰻など。さらに数の子にきゅうり。カウンターで大将が握るおすしを思い浮かべながら食べ進めます。
酢飯の層が軽く、適度で良いですね。一人であっという間にペロリでした。
価格はそこそこしますが、カウンターで食べるものとネタはほぼ同じであるのと、準備する手間も結構かかるので特別感あります。
こちらは電話で事前注文できるそうです(過去訪問歴のある方のみだと思います)が、電話が繋がるかどうかは運次第。

金継ぎの器、激レアな銀継ぎ

小松弥助を訪れる私の楽しみの一つに、「金継ぎ」の器があります。弥助さんでは金継ぎ技術によって修復されたお皿がたくさんあります。おいしい時間を大将と共に奏でて来た器たち。山本長左さんの器をはじめ、良いものを大切に使われていますね。




ある日、蒸しアワビを注文したらダイナミックな金継ぎでした。大当たりを引いた気分。これはすごい。これを金継ぎで修復しようなんて粋です。この“割れ”も一期一会の芸術ですねぇ。



グラスに入ったおすし“白山”のバカラグラスも見事な金継ぎでした。

テーブル席だった日は、「銀継ぎ」の器に出会えました。これ、激レアで1皿しかないそうですよ!

レジの横にはバカラの招き猫と山本長左さんの徳利が。

ちなみに小松弥助の暖簾はバカラの文字が入っているバージョンのときもあります。