金沢の中心を流れる犀川。その川沿いに、素敵な町家フレンチレストランがあります。創業は1980年5月ですから、2025年で45年目を迎えることになります。長きに渡り愛され続けているレストラン。
建物は、赤い格子戸が目印の金沢らしい外観。アンティーク調の家具で統一されたクラシカルな店内は、町家の風情と見事に調和しています。
店の奥には犀川が流れ、大きなガラス戸越しにせせらぎが聞こえる静かな空間。開放感に満ちたそのロケーションは、訪れる人の心を自然と和ませてくれます。
料理を手がけるのは、オーナーシェフの加藤正行さん。確かな実力に加えて、特徴的なのは野菜へのこだわりで、食材ごとに仕入れる農家を選定するほど。かつてマダムが「シェフが野菜に命がけで、困っちゃいます」と笑顔で話してくれたエピソードからも、その情熱が伝わってきます。
料理を彩る器にも妥協はなく、気品ある美しい食器が、ひと皿ひと皿の完成度をさらに高めています。
何度訪れてもおいしさにときめいてしまう、金沢の自慢のレストラン。
この日はディナー訪問でカウンター席に。メインダイニングも素敵ですが、一枚板のカウンター席も人気なのです。
・稚鮎(琵琶湖)
春の訪れを告げる“初物”の代表格。稚鮎は骨ごと食べられるほど柔らかく、肝にはかすかな苦味があり、身のほわほわとした繊細さのバランスが絶妙。日本料理のように素材を生かしたアプローチで、初春の喜びを味わう。
・菊芋、ふぐ白子
菊芋ピュレの、土の香りと甘みなめらかな食感に、ふぐ白子のクリーミーでとろりと官能的な舌触りが重なる、素朴さとリッチさの共演。
・ヤリイカ、毛蟹、イカスミ
春先に旬を迎えるヤリイカは上品な甘み。毛蟹の甲殻の風味に、イカスミのリゾットが奥行きを生み出します。海の三重奏。
・ホタテ、ボタン海老、そら豆
ホタテとボタン海老の甘さをMAXに引き出し、そこに“そら豆”の青い春の風味と優しい甘さが加わり、春の喜びが雅やかに口に広がる一皿。美味!
・白ソイ
白ソイと小坂れんこんムースをジャガイモで包んだ繊細な一品。ソースはジャガイモを燻製したもので、白ソイの繊細さと旨みに、大地の滋味のニュアンスが重なりハーモニーを奏でていました。ニワトコ、つぼみな、春菊、蕗のとうのフリット。鮑を添えて。
・鴨コンフィ
本当に素晴らしいコンフィ。こんなに火入れが完璧で美味しいコンフィ、なかなかありません。表面の香ばしさと身の水分量と塩味、この味に出会えた嬉しさで胸がいっぱいに。
メインは何種からか選べますが、初めてなら絶対鴨コンフィがオススメです!
添えられる野菜も、一つひとつが主役級。季節の移ろいと土地の恵みを丁寧に盛り込んであります。
・デセール
メイプルシロップのアイス、加賀棒茶ムース、小豆、フルーツ
メイプルシロップのアイスクリームの芳醇な甘さに、加賀棒茶のほろ苦さと風味が美しい余韻を生み出していました。フルーツもたっぷりで、さっぱりとしたフィニッシュであり、品格を湛えています。
(下記は以前のお料理、ランチにて)
●カブのブランマンジェと加能ガニ 菊の花のジュレとトリュフソース
淡く控えめな味わいのカブをギュッと凝縮してあるため、口の中に入れた瞬間、パッと花咲くように鮮烈な風味が広がります。淡泊でほんのりした甘さを持つ加能ガニとも絶妙に呼吸のあった相性。そこに宝石のようにキラリと光る菊の花のジュレが効果的に爽やかさをプラスし、可憐な味わいが完成しています。
●黒鯛と帆立貝のポワレ 小坂蓮根のソース
ホタテはポワレにすることでより甘さが立っており、そこにソースの滋味が軽やかに寄り添い素材を引き立てています。付け合せ野菜はメインに負けない名脇役ぞろいで、手塩に掛けて育てられる姿が目に浮かびます。
料理もおいしくて雰囲気もステキ。デートでここを抑えておいてくれたら、男性の株は上がること間違いないでしょう。
さらに金・土・日・祝限定でランチ営業もしています(ご予約の上でどうぞ)。晴れているとテラス席でお食事するのも最高ですよ。
・ニンジンとトマトのムース
アミューズはコンソメジュレを添えたニンジンムース。ニンジンは独特のクセがなくて食べやすくピュアで軽やか。トマトが効果的に爽やかさをプラスしています。
・パン
パンは確かアリスファームキッチンさん製。保存料や化学添加物を一切使用しないこだわりのパンやさんで、私も大好きなお店。
この日は、バゲットとピスタチオのパンでした。バターは国産。
・前菜 帆立貝のポワレ香草ソース
プリフィックスなのでいくつかから選択できますが、メインにお肉をチョイスしたかったので、こちらを海のものに。表面がカリッと香ばしくて、帆立の旨みが鮮烈。赤穂紫蘇と胡瓜のソースが、爽やかな風味を奏でています。これ一番好き!
・能登いやさかカボチャのポタージュ
色もキレイですが味わいも濃厚で、カボチャらしさがしっかり伝わるポタージュ。
・メイン クイーンポークのソティ レモンとアンチョビソース
レモンでさっぱりですが、ツンツンくる酸味は角がとれて優しい味わい。一目でポテンシャルの高さが伝わる付け合せ野菜も、メインに負けない名脇役。
・あずきのブランマンジェ
スプーンには無花果のアイスが。ハートクッキーをちょこんと添えてある演出もいいですね。あずきのブランマンジェと聞いていたので、シンプルなあずき味のブランマンジェかと思ってたら、フルーツたっぷりで意表を尽かれました。さらに、甘みを抑えたブランマンジェに、粒あずきを合わせながら食べるデザートで、あずきの風味やコントラストも美味でした。