お料理の見た目に派手さがないのですが、塩や出汁といったベースにこだわり抜く日本料理店で、端正な味を好まれる方が常連さんに多い印象。店主の下平さんは銭屋で長年料理長を務められた方。この場所で暖簾をあげて20年以上経つというのに、カウンターから臨む厨房はピッカピカで新品の輝きですから、入った瞬間「お、なんか違うな」っと思うはずです。こんなところにも店主の信条が感じられます。特筆すべきはやはり塩や出汁へのこだわりです。お造りに添えてあるいしる塩もオリジナルで作ってもらっているものだとか。お出汁はまろやかでいて優しく語りかけてくるようなおいしさで、目を閉じて浸りたくなります。食材使いはシンプルで、出汁の味わいを重視したお皿が多いですから、華やかさを期待して行くと印象が違いますし、食べ歩きをあまりされていない方や若い方だと退屈に感じるかもしれません(私も20代の頃はそういう印象でした)。しかし、食の経験値が増えてくると雅乃さんのすごさに気付く。“自家製”というところにもこだわりがあり、営業時間よりも仕込みに割かれる時間が大半なのだそうです。塩は雑味をなくすために卵白荒いをするというのも有名な話。味噌も自家製で5個ある樽を毎年1樽ずつ仕込んでいるそうです。
場所は、繁華街片町を離れるようにして犀川沿いを進んで行ったところで、民家の中に落ち着いた面持の一軒家があります。1階はカウンターに6~7席設けられており、2階は個室があります。お祝いごとや接待などの時は2階が良いですが、食事メインのときは1階カウンターをオススメします。店主の調理風景が間近で拝見できていいですよね。“接待向け”という雰囲気ですから、格の高さにちょっと躊躇してしまいますが、通の方はカウンター狙いでぜひどうぞ。
(2018年10月23 更新)写真で雰囲気が伝われば。
2018年10月22日の雅乃
・無花果 胡麻だれがけ
・お吸い物 海老の葛打ち
・お造り イカ、アラ オリジナル配合のいしる塩
・マグロ
・枝豆おこわ いくらがけ
・鰯つみれ これがとても好きです。鰯の旨味が溶け合いそれは良いお出汁に。
・カマス
・わかめ 箸休めにと。とろとろです。
・汲み上げ湯葉 雲丹のせ
・蕪 炊き合わせ
・お食事 しめじご飯のしめじは一度軽く干してあるのでしょうか。とても味が濃く美味しい。
・自家製上生菓子 菊が繊細に表現されています。きっと加賀丸いも入りでしょう、後引く地味が良いお味。
2017年10月の雅乃
(※お料理は一部)
・無花果の胡麻だれがけ
・お吸い物
・カマス
・ボタンエビ
・栗おこわ
秋を感じる一品。まずは立ち昇る枝豆の香気に鼻腔がこそがされます。もち米のじんわり深い甘みと栗の素朴な甘さがマッチング。ああ、おいしい。
・鰯つみれ
・カマス
・粟蒸し
・お口直しの若布
・揚げ胡麻豆腐
・蕪 菊花
・お食事
・加賀丸いも 能登大納言あんがけ
大正時代から栽培が始まった能美市の特産物“加賀まるいも”に卵黄を和え練って、能登大納言のこしあんがけにしてあります。加賀まるいもは、白山連峰を仰ぐ加賀平野のごく限られた地域だけで栽培されているヤマトイモで、大きな球状をしています。まるでお餅のような強~い粘りがあるのが特徴的。ねっとりと素朴なおいしさが立ち上がり、能登大納言の底力ある甘味がそれを包み込みます。
6月の雅乃
・加賀丸いもすり流し 塩水うに
・お吸い物 蓬しんじょ、あいなめ
・お造り シマエビ、シロガレイなど
お魚はお醤油と特注のいしる塩なのですが、このいしる塩がまた美味で、これだけでお酒が飲める。
・車海老おこわ
蒸すことで車海老の甘さが引き出され、口の中でもち米をコーティングし、噛むほどににじみ出る旨さとマッチング。
・つみれ
・水巻たまご、自家製汲み上げ湯葉、自家製ひろず、蒸し里芋
出汁巻き玉子ではなく“水巻き”玉子。卵白に含まれる塩分だけで、こんなにも旨さが前に出てくるなんて驚き。
・のど黒
添えてある大根おろしは辛味大根と紅芯大根を併せたもの。
・自家製胡麻豆冨揚げ
・ハモの肝のせ
・茄子
・うどん、新生姜ご飯
・自家製菓子
お菓子まで自家製。加賀の丸いもと蓬を併せて餡にしてあるので、ねっとりとした口当たりに、雅な風味が余韻します。
8月の雅乃
(※お料理は一部)
・一献と先付けのたこオクラ
・加賀太胡瓜のしんじょう
・お造り
・シロカレイ揚げ出し
・鮎の塩焼
・笹うどん
・茄子
・お食事
・水羊羹