2020年8月15日と16日に行われた、大阪フレンチ「agnel d’or(アニエルドール)」 藤田晃成シェフと金澤スパニッシュ「respiracion(レスピラシオン)」のポップアップイベントに参加。テーマは「connect(コネクト、繋ぐ)」。
コースは全皿が “合作”であるが、打ち合わせをみっちりされたのか、もしくはめっちゃめちゃ相性が良いのか、タッグは完璧だった。料理に迷いが見られず、コンセプトもハッキリ定まっており、一皿一皿に“味わいのポイント”を置いているのが分かった。
イノベーティブの要素も多く感じるが、華やかなだけでなく、“おいしいを構築する”という根幹がブレておらず、どの料理も着地がしっかり美味かったし、石川県食材の新しい魅力を教え、“ローカルガストロノミー”として昇華されており素晴らしいと思った。印象に残った料理がいくつもある。
ポップアップはたくさん開催があるが、本当に意味のあるコラボイベントだと思った。
●能登岩牡蠣 青柚子 ハーブ
能登牡蠣を使った最初の一皿がまず、とにかく良かった。
能登岩牡蠣の表面は眩しいシルクのようなショーフロワでコーティング。湯涌の柚子、レモングラス、エストラゴンとミントのグラニテを忍ばせ、仕上げにハーブの香りを移したオイルをかけて。柑橘やハーブの爽やかさを意識して効かせてあるが、フュメとミルクのショーフロアが味をまとめ上げるのに一役買っており、岩牡蠣と一体感がある。
●かわはぎ トマト 加賀棒茶のコンブチャ+こんぶどう
まずは昆布締めにしたデラウェアのドリンクを一口飲んでから。本当に昆布締めのぶどうだ!
カワハギを熟成させ肝のソースを和えたものの下には、ピクルスなどにした「あんがとう農園」のトマト、仕上げに加賀棒茶を発酵させたソースを。カワハギにその肝という、和食でもベストな組み合わせだが、その美味しさの上を行く味の乗せ方で、昆布の旨味の余韻も効果的だった。果実やトマトの酸味使いで爽やかに。
●能登鰻の肝 能登猪 キヌア
能登鰻の肝と能登猪のパテショー。その下にはコンソメで炊いたキヌア。バイマックルー、コリアンダーを効かせたソースで。これはもう参りましたの美味しさ。鰻肝と猪のパテショーの組み合わせや火入れ食感はもちろんのこと、そのうまさのメロディーラインに、アジアのハーブを織り込み、音階を変えてくるという。
●金沢港甘鯛 珠洲アスパラ
鱗焼きにした甘鯛、珠洲のアスパラに炭の風味をのせて。ソースは2種類。バジルにんにくを効かせたソースと、乳白色のほうは農口直彦研究所の山廃純米と羽咋の自然米のソース。後者が驚きの美味しさで、酒、米の新たな魅力を教えてくれた。ふくよかでクリームのような温かな旨味が広がるが、軽くて甘さがとくとく広がる。なんだろうこの豊かな満足感は。
●へた紫茄子 そーめん
料理が2品準備されたが、どちらも茄子料理で、しかもそれぞれ味わいの方向性が全く異なり面白い。
1つ目は、金沢の郷土料理“なすそうめん”をイメージしたもので、藤田シェフの出身である大阪泉州の“泉州の水なす”をそうめんで巻いて揚げてある。そうめんのパリパリ乾いた香ばしさの後に、泉州水なすのあのみずみずしい味と風味が湖のように口に広がる。
2つ目は、湯涌へた紫なす。揚げてシンプルにそのポテンシャルを味わいながら、ハマグリの泡、チーズのソース、バジルのオイルで。
●能登鮑 エンドウ豆
えんどう豆を魚介の出汁を瞬間的に吸わせて軽い煮込みで、青い風味に海の旨味を添えて。能登の鮑は5時間ゆっくり火を入れてやわらかく仕上げる。これは説明不要のおいしさ。
えんどう豆の皮を使って焼き上げたパン、鮑の肝バターで。
●湯涌日本鹿 無花果 能登ビーツ
鹿背ロースはジャストキュイ。カトラリーからも心地よい弾力が伝わったし、歯が喜ぶ食感だった。
ソースは、無花果とペドロ・ヒメネス。付け合わせは、無花果と鹿ハム、ビーツを巻いたものの中にセミドライ無花果。山の野趣を味に添える。
●犀川の天然鮎+たで
レスピラシオンお得意のパエリアに今回はなんと鮎をのせ、“鮎といえば”のたでと組み合わせる。たではアルバリーニョと合わせ“たでモヒート”にして。これは心踊る演出だ。
(デセールは専門外なので写真のみです。)
●クレームダンジュ 能登ブルーベリー
●茶菓子、ハーブティー
コーヒーのタルト、トリュフとうもろこし、ごぼうのガナッシュ、アンダルシアの黄身プリン。
レスピラシオンお取り寄せで超人気のバスクチーズケーキ、そしてガトーバスク。
ハーブティー
本当に良いコラボディナーでした。これは、もう一度同じコースを食べたいくらい。
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