「福光屋」× チーズ職人世界一ファビアン・デグレ氏の実演で知るチーズと日本酒の激アツペアリング!スペシャルディナー

2019年10月29日、金沢の酒蔵「福光屋」さん主催で「FROMAGE×SAKE」という、チーズと日本酒のペアリングの会が金沢ドミニクブシェで開催されました。スペシャルゲスト講師は、世界的なチーズコンクール「Mondial du fromage 2015」で世界最優秀フロマジェ(世界一のチーズ職人)に認定されたファビアン・デグレ氏。この日は、①チーズセミナーと②日本酒とチーズのペアリングディナーが行われ、私は両方参加。丸一日、ファビアン・デグレ氏の解説実演のもと、チーズと福光屋さんのお酒に浸って参りました。

【ファビアン・デグレ(Fabien DEGOULET)氏プロフィール】
1984年フランス ル・マン生まれ。実家は祖父の代から続くチーズ販売業。2008年パリのINALCO卒業後、来日。株式会社フェルミエに入社し、渋谷店店長や愛宕店店長、商品開発を務める。2018年春からは本国にてフロマジェとして活動。フリーランスとして、フランスから世界に向けてチーズのプロモーションを精力的に行っている。
●2012年フランスチーズ鑑評騎士の会 シュヴァリエ
●2015年モンディアル・デュ・フロマージュ 世界最優秀フロマジェ
●2016年ギルド・デ・フロマジェ協会 メートル・フロマジェ
●2017年ピコドン騎士の会 シュヴァリエ

【紹介内容】
●ファビアン・デグレ氏のチーズセミナー
●ペアリングディナー(フォトギャラリー)

ファビアン・デグレ氏のチーズセミナー

セミナーでは、ファビアン・デグレ氏による5種のチーズ解説と試食。シャトー・シノン辻健一氏による日本酒のペアリングでは、4種類の日本酒ペアリング(+ワイン1種)を試しました。
まずはフランスで一番生産されているチーズ「コンテ」から。

コンテは知っている人が多いと思います。約35kgもある大きなチーズで、ジュラ地方・スイスとの国境(モンドールでも有名なところ)で作られているフランスを代表する熟成ハードチーズです。コンテは毎年約60万玉作られているそうですよ。想像ができないくらいの量ですね。伝統的かつ飽きられないチーズということですが、私も今回食べたチーズの中で一番好きでした。
ちなみにフランスには1200種類以上のチーズがあり、ミルク用の牛は約360万頭いるそうです(日本は約100万頭だそうです)。とても勉強になったポイントは、チーズの原料。原料と言われるともちろんミルクですが、もっと言うならば牛が食べるエサがとても大事。チーズは年に2回仕込まれますが、牛は冬に干し草を食べ、夏は牧草を食べます。エサの違いで当然味わいにも違いが出ます。また、牛一頭が1日に食べるエサの量は70キロ、水は100L飲むそうです。人間とは比べ物にならない量です。さらに1キロのチーズを作るのにミルクは8リットル必要(ハードタイプであれば12リットル必要)。と数字で見るとより膨大なことが分かります。大事に食べよう、チーズ。
35キロのコンテ1ホール作るには、牛20頭分のミルクが必要なのだそうです(イメージ↓)。

このコンテは黄色味を帯びていますが、冬に牧草を食べて育った牛のミルクだと白いチーズになるそうで、これは夏のエサを食べて育ったということが分かります。

さらに(写真では分かりにくいですが)チーズ表面に小さな粒が見られます。これはアミノ酸が結晶したもので、10ヶ月熟成くらいから見られるので、チーズを見れば仕込んだ時期もわかるんですね。なるほど。
コンテは弾力あり、夏のなのでシュワっと爽やかな風味あり、余韻長くてずっと旨味が感じられますがしつこくなく美味。なんでしょうか、この絶妙なおいしさは。


ここからはペアリングです。
●ブリアサファラン×「禱と稔(いのりとみのり)」フクノハナ2015酒造年度
ブリアサファランは白カビタイプで、とろっと絹のような舌触りと、バターのようなコク、マッシュルームのような香り、ピリッとくる辛味も印象的でした。
「禱と稔」は野生のコウノトリが飛来する自然豊かな里山で作られた有機栽培米“フクノハナ”を使用。やわらかな口当たり、おおらかな旨味、豊満なコクとボディを感じる味わい。口に含むと一旦お酒がぐっと前にでますが、後からチーズが出てきて調和します。



●エポワス×「ITAYA RICE WINE for RED FOODS」
ウォッシュタイプの香ばしくクリーミーなチーズ。エポワスもワイン好きな方はよくご存知のチーズだと思います。
ITAYAはFA酵母による酸味に、10年熟成させた黒麹仕込みの熟成酒をブレンドした「熟成黒麹仕込み」。古酒らしく、メイラード反応によって黄金色に色づいています。エポワスの持つ香ばしさとコクに熟成酒のアミノ酸が同調。そしてクリーミーさを酸で切るという、なるほどのペアリングです。


●ラングル×「加賀鳶」山廃純米 超辛口
こちらもウォッシュタイプで、粒子細かくサッと溶ける感じ。山廃の香りとのマッチングが良い。ミネラルも感じる。


●ブルードラカイユ ×「黒帯 堂々」山廃純米
ブルーチーズは好き嫌い分かれますが、ここで日本酒の包容力が発揮されていました。
福光屋さんを代表する銘柄のひとつ黒帯。その黒帯には4つの種類があります。「燦々(さんさん)」、「飄々」、「悠々」そして「堂々」。堂々は山廃でその名の通り、ゆったりと堂々とした味わい。ブルーチーズのクリーミーさと刺激を包み込みます。

ペアリングディナー

さてディナーです。セミナーから引き続き講師は、ファビアン・デグレ氏(チーズ)とシャトー・シノン辻健一氏(ペアリング)。さらに福光屋の正司和利さんが日本酒の解説。ディナーはこの日限定のチーズを取り入れたコースで、福光屋さんのお酒をペアリングします。お料理の担当は、ドミニクブシェ総括料理長の吉田能(よしだたかし)シェフ。吉田シェフは、ドミニクパリ本店で修行後、日本のすべての店舗の立ち上げに携わる、ドミニク氏ご本人の信頼の厚いシェフです。個人的に特に印象的だったのは、「フルムダンベールのリゾット」です。このリゾットのお米には、酒米の山田錦を使用。しかも酒造り用に磨いた(削った)お米です。小粒の真珠のように、輪郭を残しつつツルッと滑る口当たりが気持ち良い。こちらには先日リリースされたばかりの「金沢美人 純米吟醸あまくち」が良く合いました。

(以下ディナーのフォトギャラリー)

●コンテをを使ったグジェール

●サーモンのタルタル リコッタチーズのクリーム

●フルムダンベールのリゾット イチジクとくるみ


●ノドグロのヴァプール ブリアサヴァランのソース・ジュプレーム

●鶏のバロティーヌ ブリ・ド・モーと茸のファルシ 鶏肉のジュ

●柿とマスカルポーネのモンブラン


(ディナーのペアリング日本酒。左から)
●慶祝 御即位礼 橘酵母仕込
「玉葉南殿の橘」
柑橘のようなバランスのよい酸味とすっきりとした後味の純米大吟醸酒。橘より改良を経て今に伝わる蜜柑の花から採った酵母で醸しました。
●「金沢美人」純米吟醸 あまくち
JA金沢中央が長年守り育てた、稀少なコシヒカリの特別栽培米「金沢美人®」を、丹念に仕込んだ極甘口の純米吟醸酒。アミノ酸を豊富に含んだ濃密な味わいです。
●「禱と稔」フクノハナ2015酒造年度
野生のコウノトリが飛来する自然豊かな里山で育てられた有機栽培米のフクノハナを使用。やわらかな口当たりとおおらかな旨味、豊満なコクとボディを感じる味わいです。
●「ITAYA RICE WINE for WHITE FOODS」
山廃仕込みのキレと黒麹のコク、新開発FA酵母の酸味が一体となった「山廃黒麹仕込み」。キレのよい酸味と芳醇なミディアムボディ。
● 「百々登勢」五年長期熟成 純米酒
四季の気温の変化に従って熟成させた「濃熟」タイプの熟成酒。山吹色に熟成した醇味と、奥行きのある柔らかな芳香が豊かに調和します。