富山県南砺市利賀村の山奥にあるオーベルジュ「L’évo(レヴォ)」にて谷口英司シェフと、京都の人気イタリア料理店「cenci(チェンチ)」坂本健シェフとのコラボレーションディナーが、2026年11月3日・4日の2日間限定で開催されました。
イベント名は「cen-vo ―追憶と進化―」。
ともにミシュランの星を獲得し、アジアのレストランランキング「Asia’s 50 Best Restaurants」にも名を連ねる、日本を代表する2人の料理人による特別な共演です。
今回のコラボレーションで特筆すべきは、単に両店の料理を交互に提供するのではなく、プロローグのアミューズとプティフールを除くコースの全皿を、2人のシェフが共同制作したことです。
それぞれがアイデアを出し合い、一皿一皿を完成させた、まさに本気のコラボレーション! 富山の食材に、京都の食文化やイタリア料理の技法が加わる、両シェフの個性が融合したこのイベントでしか味わえないコースでした。

■L’évo(レヴォ)|富山県南砺市利賀村
富山県南砺市の山深い利賀村にある、谷口英司シェフが率いるオーベルジュ。
2014年に富山市で誕生し、2020年12月に現在の利賀村へ移転オープンしました。
コンセプトは「前衛的地方料理」。近隣で採取する山菜や野草、ジビエなど、この土地ならではの食材で、フランス料理の技術を基盤にした料理を生み出しています。
「ミシュランガイド北陸2021特別版」で2ツ星を獲得。「ゴ・エ・ミヨ」では2017年と2022年に「今年のシェフ賞」を受賞。「Asia’s 50 Best Restaurants 2023」では初登場60位にランクイン、2026年は97位に選出。
レストランに加え、宿泊施設や自家菜園、ジビエの熟成庫なども備え、料理を通じて富山の風土を体感できる、日本を代表するデスティネーションレストランです。
■cenci(チェンチ)|京都府京都市
京都の平安神宮の近くにあるイタリア料理店。
2014年12月にオープンし、築100年以上の日本家屋を改装した趣のある空間で、京都をはじめ日本各地の食材を生かした独創的なイタリア料理を提供しています。
オーナーシェフの坂本健氏は、1975年京都府生まれ。イタリア料理を基盤としながらも、昆布や鰹出汁、麹味噌、酒粕など、日本ならではの食材や発酵文化を積極的に取り入れ、生産者とのつながりや食材の持続可能性も大切にしています。
「ミシュランガイド京都・大阪2026」では1ツ星を獲得。「Asia’s 50 Best Restaurants」では2022年43位、2023年32位、2024年47位、2026年76位にランクインしています。2019年には「ゴ・エ・ミヨ」の「明日のグランシェフ賞」を受賞。食材の未利用部分の活用や海洋資源の保全など、サステナブルな食への取り組みにも力を入れているシェフです。
■「cen-vo ―追憶と進化―」特別コラボレーションコース
・イタヤカエデ(板屋楓)樹液
最初の飲み物には、イタヤカエデの樹液のエッセンスを。イタヤカエデは日本に自生するカエデの一種で、樹液には自然由来の糖分やミネラルが含まれています。透明感のある樹液は、ほんのりとした自然な甘みが特徴。森の恵みをそのままいただくような、「L’évo」らしいスタートです。

・プロローグ
「L’évo」から4種、「cenci」から2種、合計6種類のフィンガーフードが登場しました。
L’évo
①グジェール
「L’évo」の定番アミューズであるグジェール。チーズを使ったフランスの小さなシュー生地で、香ばしさと軽やかな食感が魅力です。
②ブリハム
ブリの旨みを凝縮した昆布〆のブリハム。
③白海老、香茸サブレ
富山を代表する白海老と、芳醇で香り高い天然キノコの香茸を組み合わせたサブレ。
④真鯖、木苺シート、レフォール

cenci
①生シラス
カリッと香ばしく焼き上げたジャガイモに、生シラスをたっぷりと。ジャガイモの香ばしさと生シラスのやわらかな食感、繊細な塩味の対比が印象的です。

②大根餅、3%の塩分のキャビア
香ばしい大根餅に、塩分濃度3%のキャビアを贅沢にのせた一品。塩味を抑えたキャビアだからこそ、本来の風味ややわらかさも楽しめます。

・毛蟹
蒸した毛ガニとズッキーニを合わせ、紙のように薄いパイ生地とともにいただく一皿。毛ガニの甘みに、坂本シェフが朝摘んできたというたっぷりのフレッシュハーブに調和。最初にふわさしい、軽やかでみずみずしい一品。

・甘海老
甘海老を蕪の浅漬けで包み、乳酸発酵させた梨を合わせた一皿。
甘海老の濃厚な甘みを、蕪のやさしい塩味と梨の発酵由来の酸味が引き立てます。
さらに、カキドオシのハーブがアクセント。口に含んでひと呼吸置くと、爽やかなハーブの風味がふわりと広がり、甘海老の余韻を鮮やかに引き上げます。

・熊の手/里芋
今回のコースで、特に印象に残った料理のひとつです。
熊の手をじっくり炊いてから焼き上げ、クレープ状にしたものに、きめ細かくなめらかな里芋を合わせています。
さらに、里芋の皮を添えて熊の毛皮を表現するという、遊び心のある演出も。
そこへ「L’évo鶏」のスープを注いで完成。熊の手ならではの濃厚な旨みとゼラチン質、里芋のやさしい甘みに、牡蠣の燻香と魚醤の旨みが重なり、完熟山椒が香りのアクセント。山の恵みである熊と里芋、海の旨みを持つ牡蠣と魚醤。それぞれの個性が見事に調和した、パーフェクトな味わいでした。衝撃の美味しさ。

・モクズガニ
モクズガニ、百合根、鮒寿司の飯をラビオリに詰め、モクズガニの内子を使ったソースを合わせた一皿。
モクズガニの濃厚な旨みと百合根のほっくりとした甘み、鮒寿司の飯が持つ発酵の風味が、ラビオリの中で一体となっています。
さらに、繊細な白海老のスープとエゴマが加わり、繊細な甲殻類の旨みを幾重にも楽しめる構成です。

・南瓜
坊ちゃん南瓜に、赤大豆とラクレットチーズを合わせた一皿。
坊ちゃん南瓜は小ぶりながら甘みが強いのが特徴。ソースには、「L’évo」のスペシャリテである大門そうめんの料理にも使われるヤギチーズと、「L’évo鶏」のスープを使用。南瓜の甘みと赤大豆の滋味に、ラクレットチーズのコク、ヤギチーズの独特の風味が加わり、鶏のスープが全体をまとめています。秋らしいお料理。


・ゲンゲ/蕪
富山湾の深海魚として知られるゲンゲと蕪を合わせた一皿。
ゲンゲはゼラチン質が豊富で、やわらかく繊細な身質が特徴。この料理では、ゲンゲの油分を乳化させることで、白濁した白湯(パイタン)仕立てのスープに。
ゲンゲの旨みが溶け込んだまろやかなスープに、蕪のやさしい甘みがよく合います。

・穴子/天然キノコ
天然キノコのリゾットに、香茸と米麹のソースを合わせた一皿。
お米には、イタリアのリゾット用米として知られるカルナローリ種を使用しています。肉厚な穴子と、香茸の力強い香りが贅沢な印象。秋のキノコの魅力を存分に味わえるリゾット。

・仔猪
仔猪を絶妙な火入れで仕上げた一皿。美しいロゼ色の断面からも、その火入れの素晴らしさが伝わります。ジャストキュイッソン! 仔猪ならではのピュアなジュが口の中にほとばしります。ソースは、ペルシュウを煮出した出汁に、米麹やハム麹を合わてあります。
付け合わせのマコモダケも美味。

・内蔵/トリュフ
こちらも今回特に印象に残った、熊の内蔵のパスタです。
タヤリンは、ピエモンテの郷土料理として知られる細い卵入りパスタ。トリュフとの組み合わせでも有名です。熊の内臓の優しい弾力が美味。たっぷりと削られたトリュフの芳醇な香り、栗の素朴な甘みがベースに効いていて、驚くほどよく合います。
「cenci」とのコラボレーションだからこそ生まれた、イタリア料理の技法と「L’évo」のジビエ料理が融合した素晴らしい一皿でした。

・万願寺唐辛子
鮮やかなグリーンが印象的なデザート。
万願寺唐辛子のパウダーアイスに、青リンゴの品種「グラニースミス」のパルフェを合わせ、モッツァレラのソースを添えています。
グラニースミスならではの爽やかな酸味に、万願寺唐辛子の青々とした風味がよく合います。ピリッとした爽やかな辛みが絶妙なアクセント!

・丹波栗
秋の味覚、丹波栗を主役にした秋らしいデザート。
蒸したての栗に、カカオのゼリーとカカオのアイスを合わせています。
温かな栗のほっくりとした食感と素朴な甘みに、カカオの芳醇な香りとほろ苦さがよく合います。

・プティフール
最後は「L’évo」と「cenci」、それぞれの個性が楽しめるプティフール。
cenci
・ローゼルと甘酸っぱいジャム
・新生姜フィナンシェ
L’évo
・からたち
からたちという柑橘(みかんの原種)を器にしたジュレ。ピンポン玉くらいの可愛らしいサイズで、柑橘の爽やかな風味とすっきりした酸味と野趣が楽しめます。
・とちもち
谷口シェフが以前から作りたかったという郷土料理「とちもち」が、今回、新作として登場。栃の実を使ったとちもちに、くろもじのあんを合わせています。
栃の実ならではの素朴な風味と滋味深い味わいに、くろもじの清々しい香りがよく合います。

それぞれの個性が見事に調和し、互いの持ち味を引き立て合うことで、新たな料理の魅力を生み出した素晴らしいコラボレーションでした。

