「L’evo(レヴォ)が移転のため閉店する」ということが正式に発表となったのが半年ほど前だったでしょうか。まだしばらく先のことだと思っていたのが、いよいよ2020になり本格的にカウントダウン。ついに2020年1月19日、最終日を迎えました。最後の日のディナーを予約していましたが、この日ばかりは金沢から富山に向かう電車内もずっと胸に込み上げてくるものがありました。谷口シェフは「L’evo」を富山県の山手、利賀村に移転されます。建物も場所も設備も、なにもかもゼロからという壮大な計画なので、完成し本営業するまではしばらく時間がかかります。
※現場所は、レヴォのスーシェフである田中逸平さんが引き継ぎ、「Trésonnier(トレゾニエ)」としてご自身のお店としてオープン。開店は2020年2月25日で、ディナーのみで営業。水曜定休(前日までの予約制)。
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谷口英司シェフ、雅楽倶での最後のディナー。お客さんの私たちも、シェフもスタッフさんも、この景色は最後ということになります。
出席できる嬉しさと寂しさと、感謝の気持ち。私は、たくさんいるL’evoファンのひとりに過ぎませんが、胸がいっぱいでした。しばらくはレヴォロスになりそうです。
谷口シェフが掲げるコンセプトは“前衛的地方料理”。今でこそ地方のレストランに脚光が当たるようになってきたように思います。でもずっと前から、谷口シェフはローカルガストロノミーを突き詰め、第一線を走り、その凄さを教えてくれました。
さて、2020年1月19日最後のディナーです。谷口シェフのスペシャリテあり、一度食べてみたかった料理あり、もう一度食べたかった料理あり、そして最後の日まで新作あり。
「L’evo」は最終日も「L’evo」でした。
●プロローグ
いつもは5種類のフィンガーフードから幕を開けるプロローグですが、この日は7種類。ジビエハム、黒部Y&Co.さんシェーブルチーズのグジェール、ジビエピロシキ、自家製発酵衣のゲンゲンボウボウル、山田村の鴨タルトレット、八尾もなか胡麻味、そしてカワハギ。温度にも気を配ったフィンガーフードで、冷たいもの、熱々のものが織り交ぜてあります。
ジビエのピロシキと鴨タルトレットは初めて食べましたが、どちらも思わず顔がほころぶ美味しさでした。
●氷見 鯨
初めての料理。濃紅の鯨は味的にもずしりとした存在感ですが、クセがなく美味。卵黄ソースには自家製のキャビア。そう、自家製なんです。キャビアを自分で作ってしまう凄さ。これずっと食べてみたかった!塩分は既製品よりもだいぶ抑えて調整してあり、味わいまるく、たっぷりなのにソースに溶け合う。月ノ輪熊の脂を組み合わせてあります。
●大山野 月ノ輪熊
L’evoの熊料理、毎回楽しみです。今回は金長ねぎを巻いて。熊の出汁と熊のジュレ、雲丹をソースとして。辛味のあるかぶらで引き締める。
●岩瀬 万寿蟹
パッと目に鮮やかな赤橙は、メスのズワイガニ“万寿蟹”の内子。カニ身に内子外子、そしてふぐの白子。
●四方 ヤリイカ
薪の熾火で火入れをしたヤリイカのみずみずしくふっくらとした食感。イカスミ、ナバナ、ハコベラ、セリと。
●砺波 大門素麺
乾麺として流通する大門素麺(おおかどそうめん)ですが、これは生麺で、アルデンテであげてあって、もちもちとした食感を残します。白いスープはY&Co.さんのシェーブルチーズで、このチーズがいい仕事しています。シェーブルらしい風味はありますが、乳脂が重たくないので、サラッと素麺に馴染みます。前回はハーブオイルでしたが、今回はふきオイルで、苦味とミネラルを感じる健やかな香りが引き締めます。
●L’evo鶏
これがここでの最後のL’evo鶏かと思うと感慨深かった。
ご存知、レストラン名を冠した谷口シェフのスペシャリテです。L’evo鶏はシェフが生産者さんと連携し、満寿泉の酒粕など飼料から指定して育てた生後55日の鶏。それを一夜干しにしたもので、中には山野草やもち米入り。表面にどぶろくを塗りロースト。旨みがギュッと凝縮された熱々のエキスがピュッと飛び出す。ああ、おいしい。
●生地 甘鯛
カリカリと口の中で乾いた音が弾ける鱗焼き。酒粕ベースのソースにはオリジナルスパイス。パスタのようなのはアンディーブ。
●大沢野 日本鹿
筋感なくてキメ細かく、本当に美味でした。火入れ素晴らしく美味。牛蒡のペーストで馥郁たる土の香りを添えて。
●飛騨 モッツァレラ
乾燥イチゴ、イチゴソルベなど様々な製法のイチゴをモッツァレラ、トマトのジュレに合わせて。L’evoのデセールは、単体として美味しいのはもちろん、コースの流れにものっています。
●福光あんぽ柿
あんぽ柿とショコラのサンド。最後に「L’evo」が現れて込み上げてくるものがありました。
谷口シェフありがとうございました。本当にお疲れ様でした。
次のお店は富山市の山手、利賀村に建設を予定しているそうです。アクセスがとても困難なところですが、自然の豊かさとロケーションの素晴らしさは容易に想像できますね。だからこそ建設は大変なことだと思いますが、世界的なディスティネーションレストランになること間違いありません。
模型が出来上がっていました。
レヴォロスになりかかっていましたが、構想が具現化していて、ドキドキさせてもらいました。楽しみでなりません。