金沢「respiración」×ジャカルタ「August」アジアの食シーンで注目を集める両者がコラボレーション

2026年9月17日(木)と18日(金)、金沢のモダンスパニッシュ「respiración(レスピラシオン)」にて、インドネシア・ジャカルタのイノベーティブレストラン「August(オーガスト)」とのコラボレーションディナーが開催されました。

■「August」
「Asia’s 50 Best Restaurants 2026」で42位に選出され、「The Best Restaurant in Indonesia 2026」にも輝いたジャカルタの名店です。
今回のために、シェフのHans Christian(ハンス・クリスチャン)氏、マネージングパートナーのBudi Cahyadi(ブディ・カヒヤディ)氏、さらに「Asia’s Best Pastry Chef Award 2026」を受賞したパティシエのArdika Dwitama(アルディカ・ドウィタマ)氏も来沢しました。

■「respiración」
ホストを務める「respiración」は、ミシュランガイドで2ツ星を獲得する、金沢を代表するモダンスパニッシュ。2026年3月には「Asia’s 50 Best Restaurants」にて92位にNew Entryを果たしました。
“呼吸”を意味する店名の通り、地元食材と丁寧に向き合いながら、自由な発想で料理を展開。梅達郎さん、八木恵介さん、北川悠介さんの3人のオーナーシェフによるチームワークも、このレストランの大きな魅力です。

「respiracion(レスピラシオン)」リニューアルオープンして凄みが増している!自家製調味料、自家農園にて野菜栽培も。細部に神が宿る。金沢が世界に誇るモダンスパニッシュ

 

9月18日(金)のディナーに参加した際のレポートです。

「August」の料理には、インドネシアで親しまれている伝統料理の要素や、現地ならではのスパイス、ハーブが数多く取り入れられていました。一方、「respiración」は、北陸の魚介や野菜、発酵食品を駆使し、迎える側として持ち味を発揮。それぞれの土地に根付いた食材や食文化、料理の考え方が明確に表れながらも、根底に共通するものがあるため、親和性が高く感じられ、コースは自然な流れでつながっていました。

・インパクト甘海老(respiración)
コースの始まりは、「respiración」がオープン当初から作り続けているスペシャリテ「インパクト甘海老」。金沢を代表する食材の一つ、甘海老を一度分解し、それぞれの部位を生かして再構築した一品です。甘海老の甘さや甲殻類特有の香ばしさを凝縮させた、小さなひと口からコラボレーションディナーが幕を開けました。

・タコ(August)
最初の「August」の料理には、インドネシア産のタコを使用。インドネシアらしい香りと味の組み立てで、早くも「August」の世界へと引き込まれます。
さらに、薫香をまとわせた金沢産の巨峰とジャックフルーツを組み合わせています。巨峰の豊かな果汁と南国果実の甘い香りが、スパイシーなタコの味わいに意外な変化を与えていました。

・ピーマン(respiración)
輪島の「上田農園」が育てる「京波」という品種のピーマンが主役です。
薪焼きにしたピーマンには、石川県志賀町産のモチ麦とホッキ貝を入れて、歯が喜ぶ弾力が印象的。レスピファームで育てた万願寺とうがらしのソース、白山市「M&Mファーム」の「マーシーメロン」という意外性のある食材の組み合わせが、見事に調和していて驚きました。

・自家製カンパーニュ(respiración)
富山県氷見市のワイナリー「SAYS FARM(セイズファーム)」でワインを造る際に生じる、副産物ブドウの搾りかすを利用した自家製カンパーニュ。ブドウ由来のほのかな酸味と風味が感じられ、料理のソースともよく合います。

・麺(August)
インドネシアの製麺所に特注した、そば粉と卵を使った麺です。
インドネシアでは温かい麺料理が広く親しまれていますが、Hansシェフが日本や韓国の冷たい麺料理に魅力を感じ、そこから発想を得て作ったそうです。
唐辛子、カツオオイル、クラゲ、岩モズクに、インドネシア料理でよく使われるショウガ科の香辛料「ガランガル」を組み合わせています。
シコシコとした麺の歯応えが心地よく、クラゲと岩モズクもそれぞれ異なる食感を添えます。唐辛子の辛味とガランガルの爽やかな大地のパワーを、カツオオイルの旨みがつなぐ。日本の冷たい麺文化を、インドネシアの感覚で再解釈した、驚きの一品でした。

・舞茸(respiración)
舞茸を、まったく異なる三つの料理で表現した「舞茸三変化」です。

一品目は、門前・阿岸の七面鳥と舞茸を使ったサブレ。口に入れるとホロリと崩れ、その瞬間、舞茸の香りと七面鳥のふくよかな風味が一気に広がります。

二品目は、押水産の無花果、自家製コンブチャ、舞茸のコンソメジュレを合わせたもの。無花果のみずみずしさと穏やかな甘さに、コンブチャの酸味、澄んだ舞茸の旨みが重なります。軽やかな口当たりながら、滋味深く、クリアで奥深い。引き込まれるようなおいしさでした。

三品目は、自家製味噌を塗った舞茸を薪火で焼き、七面鳥、モロヘイヤ、鹿から取った出汁と合わせています。
舞茸の香りを薪火でさらに引き立て、味噌の発酵による旨みと甘さを重ねた一品。七面鳥と鹿の出汁が味に厚みを加えます。噛みしめるほど甘さと旨みが増し、発酵食品の力をしっかりと感じさせました。

・大根、ブレッドフルーツ(August)
Hansシェフが好きだという日本の「揚げ出し豆腐」を、自身の料理に落とし込んだ「揚げ出し大根」です。
野菜の出汁で煮含めた大根とブレッドフルーツを海苔で巻き、表面を揚げています。大根に染み込んだ出汁の旨みと海苔の磯の風味に、揚げた香ばしさが加わります。ブレッドフルーツは、東南アジアをはじめとする熱帯地域で食べられている果実です。加熱するとホクホクとした食感になるため、野菜や主食に近い感覚で料理に使われます。ソースには、パームシュガーのコクのある甘さと、タマリンドの酸味を使用。日本料理を出発点にしながら、インドネシアの食材と味覚で大胆に展開した、スパイシーでエキゾチックな一品でした。きっと見た目からは伝わらないけど。

・シロソイ(August)
シロソイの上品な身質に、スパイスとココナッツの風味を感じるイエローカレーが重なります。さらに、発酵調味料である豆豉、ショウガの花、カレーリーフのオイルを加え、香りに奥行きを持たせています。
シャープな酸味のビリンビが、カレーの濃厚さとシロソイの脂を引き締めます。

・カレー(August)、付け合わせ(respiración)
ココナッツとトマトをベースに、牛すじを加えて8時間煮込んだカレーです。
スマトラ島のカレーを背景にしながら、Hansシェフの感覚で作り上げたオリジナル。長時間煮込んだ牛すじの旨みとコク、ココナッツのまろやかさ、トマトの酸味に、複雑なスパイスの香りが溶け込んでいます。
ご飯にはインドネシア産の小粒のお米を使用し、コブミカンの爽やかな香りを重ねています。粒の軽やかな食感が濃厚なカレーによく合い、香りの良いご飯だけでも食べ進めたくなります。

「respiración」からは、カレーと味わう三つの付け合わせが用意されました。
一つ目は鹿肉。さすが、火入れが素晴らしいですね。インドネシアのスパイスが効いたカレーと合わせます。

二つ目は、新じゃがいもを金沢の老舗飴店「俵屋」の飴でコーティングしてキャラメリゼし、鹿のハツと自家製BBQソースを重ねたもの。手間のかかる特殊な製法で表面をカリカリに仕上げてあり、まるで“セレブの大学芋”のようでした。

三つ目は、古代米と「きよし農園」の茄子、宝達志水町産プラムのタルト。

・甘糀(respiración)
米と糀、水だけで構築した、お米のデザートです。
使用しているのは、金沢で江戸時代から続く「高木糀商店」の糀、白山市で育てられたミルキークイーン、そして「名水百選」に選ばれている白山市の湧き水「弘法池の水」。そこに、パリッとしたお米のチップと、なめらかなお米のソースを重ねています。
砂糖の強い甘さではなく、米と糀から醸し出される自然な甘さが主役。口当たりは穏やかで、品があり、スッと澄んだおいしさが広がります。素材を削ぎ落とした構成だからこそ、米の甘さと糀の香り、水の清らかさが際立っていました。

・バンダンリーフ(August)
インドネシアのストリートフードとしても親しまれている「チェンドル」を、「August」らしく再構成したデザートです。
チェンドルは、パンダンリーフで香りや色を付けたもちもちのゼリーに、ココナッツミルクとパームシュガーを合わせる、東南アジアで広く親しまれている冷たい甘味です。
こちらでは、弾力のあるパンダンゼリーに、ココナッツミルクのアイス、チーズのムース、ジャックフルーツのメレンゲを組み合わせています。
甘味には、マングローブ地帯などに育つニパヤシの樹液から作るニパシュガーを使用。黒糖やキャラメルを思わせるコクのある甘さが、ココナッツミルクやパンダンの香りを引き立てます。
もちもち、なめらか、サクサクと、食感が次々に変化。南国果実の甘い香りも大きく広がり、インドネシアの庶民的な甘味を洗練されたデザートへと昇華させていました。これは衝撃のおいしさでした。

・青柚子(respiración)
「きよし農園」の青柚子を使用した、爽快感のあるデザートです。
餅には青柚子の果汁と白山のジンを練り込み、塩漬けにしたクロモジの実を添えています。
青柚子の鮮烈な香りと酸味に、ジンのボタニカルな風味、クロモジの清涼感が重なります。餅のやわらかな食感を楽しみながら、口の中をさっぱりと整えてくれる一品でした。

・TEA in the BOX(August)
最後に登場したのは、キューブ状の冷たいプティフール。
インドネシアで親しまれているジャスミンミルクティーの文化を、小さな菓子に落とし込んでいます。
指先に触れた瞬間から冷たさが伝わり、口に入れると中は液体で、ピュッと弾けるようにジャスミンミルクティーが流れ出して風味が広がります。華やかなジャスミンの香りとミルクのまろやかさを、温かい飲み物とは異なる温度と食感で味わわせる、遊び心のある締めくくりでした。

お互いの国の背景、食文化を大切に尊重していることが感じられる感動的なコースでした。