ミシュラン3ツ星を獲得した日本料理店。
店主小松隆行さんの端正な料理に加え、所有する器の素晴らしさも味わいどころのひとつ。しかしながら美術館に骨董品を鑑賞しに行くような感覚というよりは、さらにその先にある、器に料理がのってこそ完成する“器は料理の着物である(北大路魯山人)”を体現させたところに感動があります。店内は無垢の一枚板カウンターに、薄香の落ち着いた風合いの土壁。同店は以前の鱗町の大通り沿いの店舗から、2017年8月末にここに移転。少し足を伸ばして静かな場所になりました。
・「ミシュランガイド北陸2021 特別版」3ツ星獲得(2021年5月19日発表)
・「ミシュランガイド富山石川(金沢)特別版」2ツ星獲得(2016年5月31日発表)
大将は基本的に奥の厨房にいて、お造りだけ目の前で引いてくれる感じです。こんないいカウンターなので、実演が少ないのは正直ちょっと寂しいですが。スタッフの人数も少ないお店なので、料理もオペレーションが考えられた内容でもあるなぁと思います(お食事は基本雑炊。など)。あと、食材は地物に特化しているわけではなく、良いものがあれば地物でという感じ。
日本酒を注文すると、ガラス製もしくは陶器の酒器で選ばせてもらえるのですが、どちらを選んでもかなりの種類から選べるようになっていて心踊ります。
ガラス製の酒器は、200年前のアンティーク、バカラ、イギリス製、ラリック、切子グラスなど。
大将が一つ一つ集めた貴重な器ばかりなので、ぜひ大事に扱って頂きたいです。
こちらの徳利は、備前焼最高峰の金重陶陽 作。落ち着いた風合いで静かな存在感があります。お猪口は現代作家さんのように思われますが、今はない金沢の尾山窯のもの。
青いガラス製の徳利は100年前のバカラ。ガラス製のコースターもアンティークです。
【紹介項目】
- 2023年2月20日 節分:黄身酢がけ、海鼠、粟ぜんざい
- 2022年11月8日 秋:香箱ガニ、天然茸の蓮根餅、無花果胡麻がけ
- 2022年9月13日 秋:スッポン玉締め、無花果揚げ出し、甘鯛と門前栗
- 2022年8月31日 初秋:無花果胡麻がけ、鱧と松茸お吸い物、玉蜀黍すりながし
- 2022年6月29日 夏:稚鮎、岩牡蠣フライ、吉川ナス、葛切り
- 2022年5月19日 初夏:稚鮎、鱧、ヒラメ、柏餅
- 2022年3月29日 春:生クチコ、白魚の雑炊
- 2021年12月7日 冬:香箱ガニ、ズワイガニ
- 2021年7月14日 夏:玉蜀黍すり流し、鮎の飯蒸し、う雑炊
- 2020年11月2日 秋:能登松茸、焼スッポン、天然茸ぞうすい
- 2020年3月6日 春:蛤の飯蒸し、生くちこ、タケノコ
- 2019年11月25日 冬:香箱ガニ、加能ガニ、能登ブリ
- 2019年10月3日 秋:新いくら飯蒸し、スッポンお吸い物、甘鯛と門前の栗
- 2019年8月1日 夏:鰻の飯蒸し、鱧お吸い物、スッポン蓴菜
2023年2月20日 節分:黄身酢がけ、海鼠、粟ぜんざい
2月の小松さんは節分のしつらえです。
お料理は大将らしさが発揮されていて、本当に感動的でした。飾りっ気は無いが端正な美しさがあり、経験とセンスによって導き出された大将の美学を感じる料理の数々はさすがでした。
そして、今回も器コレクションが増えていた印象(笑)。
●黄身酢がけ
パッと鮮やかな黄色と、どっしり貫禄のある大樋焼(9代)がまず目を引きます。この器は撃ち抜かれる。
黄身酢に隠れているのは、菜の花、車海老の昆布締め、飯蛸、子持ち昆布。春を漂わせる一品で幕開け。凛として品のある美味しさ。
●お吸い物
ふっくりとしたお餅のような白子に、空豆という珍しい組み合わせ。ふっくら食感の白子に、空豆の青い風味と香り高い出汁が広がり鼻腔を抜けていく”口福”と、ゴージャスな鶯宿梅蒔絵の美しさの”眼福”。
●お造り 鯛 明石、アラ、甘海老、煎り酒
器は、永樂 和全 古清水写し
●お造り メジ、生岩のり
程よい脂の乗ったメジの美味しいこと。生岩のりのしゃくしゃくとした歯応えと風味も抜群で、外海の荒々しさが目の前に浮かぶようでした。
●生クチコ
磯の香り立つスープにゆらゆら揺らめくクチコ。生を使用しているため、火入をすると輪郭が出てちゅるんとした舌触りに。
●海鼠 七尾、このわたがけ
クチコからの流れで海鼠シリーズ。海鼠のこのわたがけで日本酒が進んでしまう。
●あん肝
ふわっとムース感のあるタイプとはまた違った、ややクラシックな味付けが小松さんのあん肝。
●カニ蒸し寿司
ほこほこと温かいカニの蒸し寿司です。蒸すことで開いたご飯の甘さに、まろやかなお酢の酸味とカニがマッチし一体に。
●のど黒 輪島、すずか
のど黒に添えてあるのは柑橘の「阿波すずか」。スダチと柚子を掛け合わせた品種で、果皮まで食べられます。すずかはオレンジのように濃厚で、果汁の酸味とほのかな苦味が、のど黒の豊かな脂にアクセントとなっていました。
●海老芋、蕪みぞれがけ
地力を感じる味わい深い海老芋でした。お食事前に野菜の印象付けるこういう一品も小松大将らしい。
●浅利雑炊
定番のお食事、雑炊です。今回は浅利で春の予感。浅利の旨味が溶け合い、清楚で綺麗な味わい。
●粟(あわ)ぜんざい
目を閉じて味わいに浸った最後の一品。
粟の細かい粒感がサワサワと広がり舌に遊び、穀物の滋味が余韻。能登大納言の趣のある旨味とエレガントな風味にマッチし、本当に素晴らしいと思いました。
お献立の流れとしても大変素晴らしくて、コースの満足度を高めていました。
2022年11月8日 秋:香箱ガニ、天然茸の蓮根餅、無花果胡麻がけ
小松大将の美学を存分に感じた秋のコースでした。
夏から季節がガラッと変わり秋のど真ん中。食材も景色も日毎に移ろい、彩りを増していく今が最も面白い時期かもしれません。
この日のお軸は、一見季節感が分かりにくいですが、実は百人一首の小倉山で、「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば いまひとたびの みゆきまたなむ」という秋の歌でした。店主が込めた思いを知ると、感動が広がり面白さが増すのが日本料理の素晴らしいところです。
今回とても印象的だったのは、天然茸の蓮根餅と無花果胡麻ソースです。
↓写真をクリックすると内容を見ることができます。同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
●香箱ガニ
色づき始めた紅葉をハラリとあしらった、香箱ガニのお料理からコースが始まり、気持ちも高揚(紅葉)。
カニ漁解禁後、初の香箱ガニを小松さんでいただけるなんて嬉しいことです。
カニ身に、外子・内子と酢飯を合わせて、軽くお酢のまろやかな酸味でまとめ上げています。外子のプチプチが食感に遊ぶ。
●カニ真薯 お吸い物
コース直前に厨房から聞こえてきた鰹節を削る音が、再び耳の奥から聞こえてくる気がしました。秀逸な吸地で、胃に納まってからの返り香も素晴らしい。細胞が美味しいと言っている。
端正で繊細なカニ真薯から、食べ進むごとに旨味が溶け出し、グラデーションを描きながら濃度が増す。
●アオリイカ、キャビア
●明石の鯛
●天然茸の蓮根餅
絶品でした。あるでお餅のように練り上げた、粘度がしっかりしたきめ細かい蓮根餅には、天然茸のヌメリとシバタケをあんにしたものをたっぷりとかけて。ワイルドな風味と複雑な旨味は、山と大地の秘められたパワーをグッと感じさせてくれました。
●無花果 胡麻がけ
秋に楽しみにしている一品。見た目も味わいも芸術的。
無花果に、滑らかでクリーミーな胡麻ソースをもったりとかけてあり、まるで白漆のようで恍惚と魅入ってしまいます。美しい。乳白色のソースに箸を入れると、赤紫の無花果がパッと顔を出して再び驚きがあります。
無花果の野生味と甘さに濃厚で品のある胡麻がマッチ。美しく完成された味わい。
●加能ガニ 茹 金石
金沢金石で揚がった加能ガニです。茹でたてのホコホコと温かいこの温度が一番美味しい。
●甘鯛 輪島
●蕪 菊あん、コロ柿
小松さんの根菜の煮物は秀逸です。蕪は繊維感が無くて口溶け良し。透明な出汁あんに浮かぶ黄色の菊がゆらゆら美しい。
●松茸 茶漬け
●栗きんとん
小松大将が使われているのは門前の栗。この栗が別格の美味しさなんです。口の中で甘さが広がり、三温糖のように深く優しいコクもある。粒感を残してあり、咀嚼するごとにまた栗の風味も広がります。器は初代の梅山。
2022年9月13日 秋:スッポン玉締め、無花果揚げ出し、甘鯛と門前栗
前回訪問は8月31日で、2週間前に伺ったばかりでしたが、お料理はガラリと秋になっており、まだ夏を引きずったままの私に、秋のスイッチを入れてくれました。
今回は、小松大将の貫禄や腕の高さ、センスが直球で伝わるお献立で、「料理小松ここにあり!」と言えるコースでした。なんだかジーンとしてしまった。
数ヶ月前まではサービススタッフが少なくて、正直提供時間などにストレスを感じる時期もあったのですが、それが解消されたのもあり、食べ手も料理だけに没頭できます。
毎秋出してくれる門前の栗を使った甘鯛のお料理も出てきて感激。小松大将のスペシャリテと言いたい。究極ですよ。その他印象的だったのは、すっぽん玉締め、伊勢海老、筋子飯蒸し、無花果、イナダ。
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2022年8月31日 初秋:無花果胡麻がけ、鱧と松茸お吸い物、玉蜀黍すりながし
夏から秋に移り変わるタイミングは目立った食材がなくて、天候も荒れていことが多いため魚も入りにくく、料理人さんにしたら一番困ってしまうタイミングではあります。が、こういう時にこそ、食材力だけではない、小松大将の腕の高さや貫禄が随所に感じられてハッとなります。小松さんでは学ぶものが多い。季節毎に勉強になります。
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2022年6月29日 夏:稚鮎、岩牡蠣フライ、吉川ナス、葛切り
夏の小松さんは、秋冬とはまた違った日本の風情があって好きです。
土壁に掛けられているのは1900年代のフランス製の花器で、ガラスとシルバーを組み合わせたもの。お花はオカトラノオ。
今回のお料理で印象的だったのは、お造りのヒラメ、能登岩牡蠣フライ、吉川ナス、葛切り。後半に向けて盛り上がっていった印象でした。
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2022年5月19日 初夏:稚鮎、鱧、ヒラメ、柏餅
前回の訪問では、長年小松さんでサービスをされて器なども全て把握しているベテランさんが辞められて、表をしっかり任せられる人がいないタイミングだったので、正直サービス面で問題があり、料理にも影響がありました。が、短い期間で改善してバシッと決めてきているのはさすがだったし(18:30開始で最後のお菓子が出切ったのが21:05でした。)、お献立構成も良かったし、小松大将の本領を発揮されていました。
実力の高さがバシバシ伝わってくる、「料理小松ここにあり!」といったコースでした。
ただ、(いつも通り小松さんスタイルで)食材は石川県の地物をメインで使用しているわけではありませんが、卓越した料理の腕とセンスは毎回勉強になります。
今回は特にお椀、粽と鯛白子、賀茂茄子、柏餅に感動がありました。
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2022年3月29日 春:生クチコ、白魚の雑炊
小松さんは地産地消にこだわっている訳ではないので、県外食材が多く登場します。
料理の腕は、“さすが役者が違う”と言える素晴らしさなので、「何を味わいに行くか」かなと思います。
特に県外の方は、地方に来るからには石川・北陸の地物食材がいいに決まっているので。
また、最近は人手不足が顕著に現れてしまっているなぁと思わざるを得ない料理スピードと御献立構成なので、大将の凄さが十分に発揮されるような人員がほしいなと正直思いました。
コースは魚料理(特に鮮魚)が続くので、野菜類や山菜など挟んでもらえるとありがたいなと思いました。あと、今回は八寸もなかったですね。
とはいえ、(御献立構成はさておき)一皿だけを見た場合、丁寧で卓越した仕事に感動があります。
今回印象的だったのは、鯛の子と桜餅。
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2021年12月7日 冬:香箱ガニ、ズワイガニ
ミシュラン3ツ星獲得からますます予約困難になり、前回から5ヶ月ぶりの訪問です。
冬の王様食材である香箱ガニ・ズワイガニを中心としたお献立構成。小松大将の料理は以前からシンプルですが、今回一層シンプルになった印象で、気を衒わず静かに技術力を見せて行くような感じ。1つの素材を主役にしたお皿が続きました。
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2021年7月14日 夏:玉蜀黍すり流し、鮎の飯蒸し、う雑炊
3ツ星獲得後では初訪問となります。元々予約が取りにくいお店ですが、席数が限られている上に1日1回転なので、より一層予約困難に。
小松大将は良い意味でいつも通りの落ち着きと優しい笑顔で、実力の高さを見せつけてくれました。役者が違う。
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2020年11月2日 秋:能登松茸、焼スッポン、天然茸ぞうすい
春の営業が出来なかったのと、営業開始してからは席数制限されていて予約困難だったのとで、前回から8ヶ月ぶりの訪問になってしまった小松さん。秋の回、楽しみに伺いましたが、今一度別格の凄みを教えてくれました。珠洲産の能登松茸の土瓶蒸し、栗蒸し、焼きすっぽん、天然茸雑炊も素晴らしかった。
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2020年3月6日 春:蛤の飯蒸し、生くちこ、タケノコ
前回から約3ヶ月強ぶりになってしまったのは、1月にと思っていたのに予約満席で取れなかったから。春の小松さん、楽しみに訪問。全部地物ではないが、七尾や能登の食材が多く準備されていて心踊りました。
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2019年11月25日 冬:香箱ガニ、加能ガニ、能登ブリ
10月3日から約2ヶ月ぶりの訪問。今の時期の主役食材はなんといってもカニとブリですが、小松さんの工夫と技術力が光り、ここで食べる意味を大いに感じました。地物で揃えてくれて喜びも膨らむ。
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2019年10月3日 秋:新いくら飯蒸し、スッポンお吸い物、甘鯛と門前の栗
8月1日から2ヶ月ぶりの訪問。前回は15000円コースだったので、今回は22000円コースで。食材チョイスに自由度が出るためだろう、活伊勢海老や明石鯛、松茸など県外産だがすごい食材を揃えてくれた。かぶらなども、地物はもう少し後のほうが良くなってくるものは県外産で。なるべく地物が食べたいですが時期もあるので。
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2019年8月1日 夏:鰻の飯蒸し、鱧お吸い物、スッポン蓴菜
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