「eaufeu(オーフ)」小松観音下(かながそ)に廃校を利用したオーベルジュが2022年7月14日にオープン!今最も注目の北陸ディスティネーションレストランの一つ

料理: 7.8 その他: 7.7 ポイントについて
eaufeu 観音下 西尾 (おーふ かながそ にしお)
営業時間 【昼(土日祝のみ)】12:00~15:00(L.O13:00)【ディナー】17:30~22:00(L.O20:00)
定休日 火曜・水曜 (火・水が祝日の場合は営業)
価格帯 宿泊(1泊2食付/ 1名 税込サ別 26,400円~)、ディナー(税込サ別 16,500円)
訪問回数 2回

2022年7月14日に小松市にオープンしたオーベルジュです。シェフはフランスや国内の名店で腕を研磨してきた糸井章太さんで、建物は廃校となった小学校をリノベーションしています。


場所は石川県の加賀エリア、小松空港がある小松市で、空港から山手に30分ほど車を走らせた観音下(かながそ)という地域にあります。同施設は過疎化で廃校になった旧小松市立西尾小学校を活用。山々と田畑に囲まれた原風景の中に、ポツンと佇んでいます。平成30年3月に閉校となるまで、半世紀に渡って子供たちを育て世に送り出してきた尊い場所。
新たな命が吹き込まれ、オーベルジュとして生まれ変わりました。
さらに、気軽に楽しめるカフェも営業し、農口尚彦研究所の仕込み水をドリンクメニューに使用するそうです。
お隣には、農口直彦研究所さんがありますので、こちらもセットで行かれると良いと思います。

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建物は学校だったというだけあって、やはり巨大です。(1階がレストランフロア、2階・3階が宿泊のお部屋)

小学校だった頃の面影を所々に残してあるのも素敵です。

小学校の名残を見つけてしまうと、なんだかソワソワしてしまう。

eaufeuの目の前には石切場もありますよ。

店内の作品は、現代芸術家 小川貴一郎氏によるもので、空間に独特な世界観を生み出しています。迫力があります。


宿泊のお部屋は12部屋あります。
オーベルジュ(宿泊+お食事)としての営業がメインですが、宿泊無しでレストランとしてのみの利用も可能です。
(この日は宿泊はしておりませんが、お部屋を一つ見せて頂きました。)

こちらは宿泊フロア2階の廊下。学校の教室の前を思い出します。

レストランのメインダイニングは元職員室をリノベーションしてあります。「え?ここが職員室だったの?」と驚いてしまうほど、モダンな空間に生まれ変わっています。自然光が入る大窓の向こうには、校庭が広がり、遊具も見えました。

なんと個室は元校長室だったのだそうです。

シェフ 糸井章太(いといしょうた)プロフィール
1992年 京都府生まれ
2013年 辻調理師専門学校へ進学後、系列校のフランス校へ留学
アルザスの3つ星レストラン「オーベルジュ・ド・リル」にて研修
2014年 帰国後 「メゾン・ド・ジル芦屋」に入店
2015年 「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」アシスタントとして出場 アジア大陸予選優勝/フランス本選 総合5位入賞
2016年 ブルゴーニュ地方の1つ星「レストラン・グルーズ」 にて研修
2017年 帰国後「メゾン・ド・タカ芦屋」 に入店
2018年「RED U-35」35歳以下の料理人を対象にしたコンクールにて最年少の26歳でグランプリ「レッドエッグ」を受賞
2019年 フォーブス 「30 UNDER 30」 Asia アーティスト部門に選出
2022年 アメリカ「マンレサ」 「フレンチ・ランドリー」 にて研修
帰国後、「Auberge“eaufeu”(オーベルジュオーフ)」シェフに就任


各国各レストランで培ってきた経験と磨かれた感性を、小松の食材を用いて、自信を持って堂々と発揮されている印象を持ちます。

2022年8月29日 鱧、白カジキ、棒茶スフレ

前回から1ヶ月半ぶりの訪問です。そんなに間を置いていないので、食材は夏の余韻。次は秋も冬も訪れてみたいですね。
個人的に好きなのは、やはりアカイカの料理。シェフのセンスも感じられて完成度も高くて、イノベーティブなイカ料理の中でピカイチだと思います。スッポン出汁の小松うどんも良いです。新作の鱧セビーチェも好きでした。

品数が多いので、記憶に残ったものと個人的に好きだった料理だけ解説入れています。

●農口尚彦研究所の仕込み水 酒粕焼酎 甘酒 西俣どじょう サワガニ 山椒 丸いも よもぎ
オーフから30分ほど山に入ったところでスタッフと捕ってきたきたサワガニは、農口さんの焼酎に漬け込んで酔っぱらい蟹にしてから素揚げに。西俣のどじょうは糠漬けにして米粉をつけて揚げて、木の芽の風味を添えて。ヨモギを練り込んだドーナツ、出汁を含ませた冬瓜はカエルに。農口の仕込み水に木の芽の風味付けをして炭酸を加えたドリンクと。
観音下の沢の光景を表現したアミューズ。清らかな水音が聴こえて来そうなプレゼンテーションです。

●鱧 梅干し 紫蘇
青々とした蓮の葉を器にして。鱧はキューリとハーブで和えてセビーチェにして、トマトと今年作った梅干しのゼリーがけにして。夏の爽やかさと潤いを感じさせ、和の風味で持ち上げる。

●赤イカ 加賀蓮根 ホエー ニラ
初回に食べて一番好きだったイカの料理。
イカの甘さに、薄くスライスした蓮根の冷っとした舌触りとシャキシャキ心地良い食感がアクセントとなり、ホエーとニラのソースの酸味でまとめ上げて風味で持ち上げます。温度帯も含めて素晴らしい完成度。
やはりこれが一番好き。

●白カジキ 白ナス セレアル
白カジキの一皿。フレンチで意外な食材使いで驚きでした。白カジキをレモンと塩でマリネし仕上げに燻して。白ナスと枝豆のタルタールに、松の実などの香ばしさをアクセントに加えて。

●庭
庭と名付けられた多種の野菜を使用した一皿。ズッキーニはフリットに、金糸瓜・梨など、旬の野菜それぞれに合った調理法を施し、黄身酢のソースで。

●小松うどん すっぽん でけなめこ ピパーチ
スッポンの甲羅で蓋をした、スッポン出汁の小松うどん。長い歴史のある小松を代表する郷土料理を糸井シェフバージョンで。
体に染みるような奥深くまろみのあるすっぽん出汁が、つるっとした中太の小松うどんに絡む。
新生姜と新玉ねぎのかき揚げを入れると、凝縮された旨味と甘さ、香ばしさが溶け合い味変。ピパーチの妖艶な風味とも好相性。

●甘鯛 南蛮漬け 青柚

●イノシシ ささげ 実山椒

●マスカット アップルミント ゼラニウム

●チョコレート ヘーゼルナッツ ほうじ茶
焼き上がったばかりのスフレは、聞くだけでもう美味しい。温度感のあるデセールが食後の満足度を高めてくれます。アッツアツふるふるエアリーで、口の中でチョコとほうじ茶の馥郁たる香りが膨らみます。

●黒文字シュークリーム、コーヒー
 

2022年7月16日 鮎、太刀魚、マンゴー

総括です。
シェフの経歴が華々しく施設も超立派で、HPもインスタもブランディングがしっかり作り込んであるので、“鳴り物入りでのオープン”となり、逆に期待外れだったらガッカリ度が大きかったのですが、その世界観のままの期待値以上の美味しさでした。
(もちろんオープンしてすぐだったので、まだ安定していない部分もありましたが)季節を変えて通いたいお店です。
2022年オープンのお店で、最も注目の料理人の1人と言えます。
今回のコースで個人的に最も好きだったのは、赤イカの料理。スペシャリテにもなりうる美味しさで、味の組み立て方にシェフのセンスを感じました。
さらに、鮎の新しいプレゼンテーション、糸井シェフバージョンの小松うどんも印象的。マンゴーのデセールも好きでした。
少し気になったのは、陽が落ち切ってからのライティングが暗い(照度が低い)ことかな。ムードは出るけど、せっかくの料理の繊細さが(色彩の美しさなど)伝わり辛いという点では明るめの方が個人的にはありがたいと思いました。

ショープレートは、観音下の日華石です。コースのコンセプトとメッセージが伝わる。

(解説長くなるので、お気に入りだけ解説入れていきます)

●農口尚彦研究所の仕込み水 酒粕焼酎 甘酒 西俣どじょう サワガニ 山椒
観音下の沢の光景を表現。清らかな水音が聴こえて来そうなプレゼンテーションで、情緒まで味わえる。
西俣のどじょうは、泳いでいる光景を切り取ってきたよう。ソフトに仕上げてあり美味。キュウリのカエルと、山椒の風味ドーナツ、酒粕ディップ。農口の仕込み水に木の芽の風味付けをして炭酸を加えたドリンクと。

●焼きなす トマト 潤菜 ナスタチウム
ガスパチョーをイメージしたソースと、日本の夏を思わせる焼きなすの香ばしさ。辛味も積極的に取り入れ、メリハリも持たせており、風味にも立体感がある。

●赤イカ 加賀蓮根 ホエー ニラ
個人的に今回のコースで1番味で印象的だった一品。
引き出されたイカの甘さに、薄くスライスした蓮根のシャキシャキ心地良い食感がアクセントとなり、ホエーとニラのソースの酸味でまとめ上げて風味で持ち上げる。どことなく優雅かつ爽快で、温度帯も含めて素晴らしい完成度。

●鮎 きゅうり ホーリーバジル コリアンダー
焼き鮎で胡瓜やハーブを挟み込み、さらに柑橘とライスペーパーで包んだ、イノベーティブな要素も織り込んだ想定外の鮎料理。ベトナムの生春巻きの糸井シェフバージョンという感じ。
あんがとう農園さんのホーリーバジル、ワイルドコリアンダーの妖艶な風味と柑橘のキレのある酸味に、甘酢と鮎魚醤のタレのさっぱりとして深みのある味わいがマッチ。鮎の厚みとソフトな食感も絶妙でした。

●太刀魚 ツルムラサキ 発酵玉ねぎ
軽く炙ってレア感を残した太刀魚のもっちりとした食感に、透明感のある発酵玉ねぎのソースを合わせて。聡明で軽やかな酸味があり、一呼吸置いて発酵の甘さが広がり余韻する。ガリとケイパーからの酸味が良いグラデーションになっています。
ツルムラサキの肉厚でソフトな葉の食感も美味。

●小松うどん すっぽん でけえなめこ 玉ねぎ
体に染みるような奥深くまろみのあるすっぽん出汁が、つるっとした中太の小松うどんに絡む。小松の山の美味しさを教えてくれました。

●なめら 発酵トマト サフラン

●放牧豚 パプリカ トマト麺 オレガノ 実山椒

●マンゴー パイナップル ベルペンヌ
ひまわりをイメージしたという、夏らしいデセール。真っ白なお皿にパッと咲く眩しいイエロー。
マンゴーとパイナップルを貴腐ワインマリネし、ベルベンヌのブランマンジェにのせて。南国の元気のある太陽の甘さと、立体的に広がっていくハーブの風味。コース終盤に再度気持ちを盛り上げてくれる一品。

●酒粕 メレンゲ チョコレート くまいちご
“加賀の特産品と言えば”の加賀棒茶をフォンダンショコラにして。先ほどとは温度感もガラリと変えた、ホコホコと温かいデセールです。中はとろとろで、加賀棒茶の馥郁たる香りが温度と共に立ち上る。
酒粕のアイスには、スタッフが摘んできたという“くまいちご”のコンフィチュールを添えて。酒粕アイスは、酒粕の主張はあるけど嫌味には出ないくらいの絶妙なまろやかさで、エレガントに仕上げてあります。くまいちごは野趣があり美味で驚きました。

●黒文字シュークリーム

しばらくしたら超有名店になっていそうな勢いです。
アクセスは難易度高いですが、ここにまで来る価値があると言えます。食通な方にぜひ行ってもらいたい一店。

【使用食材と生産者さん】
西田農園 : 野菜、 ハーブ
本田農園 : 野菜、ハーブ
ジビエアトリエ:ジビエ
川端さん:蓮根
高農園 : 野菜、ハーブ
きよし農園 : 野菜
あんがとう農園 : 野菜、ハーブ
水野善一商店: 野菜、果物、ハーブ
石与 : 鮮魚
ブーブーファーム : 放牧豚
西俣どじょう : どじょう
山立会 : でけえなめこ
飯尾釀造 : 酢
ブロートルーフ ビオベッカライ : パン
農口尚彦研究所 : 仕込み水、酒、酒粕、 米麹