「TSUKIHI」福井越前に新星現る!越前テロワールを薪で昇華させる、大注目・衝撃のディスティネーションレストラン

料理: 8.6 その他: 8.6 ポイントについて
TSUKIHI (つきひ)
営業時間 18:00〜(一斉スタート)、土日はランチ営業あり(コースは夜と同じ)
定休日 水曜
価格帯 TSUKIHIコース(20,000円)、TSUKIHIコース+ペアリング(30,000円) 、TSUKIHIコース+ノンアルコールペアリング(25,000円)※サービス料10%は別途
訪問回数 2回

福井県越前市に2025年2月に突如として現れたイノベーディブレストラン。越前市白山地区で栽培されたブドウでワインづくりを行うワイン醸造所「SIX THREE ESTATE(シックス スリー エステート)」に併設されています。

正直、期待値を遥かに超えてめちゃめちゃ良かった!コンセプトである“越前テロワール”を存分に感じさせ、シェフも卓越した“薪”の使い手であり、さらにイタリアンも強い実力派。地元食材を使い、イノベーディブとしてここまで美味しさに昇華させられるのは素晴らしい。北陸で、レベルの高いイノベーディブに久々に出会った気がします。ディスティネーションレストランとしても大注目で、(福井の人もまだ知らないと思いますが)福井が世界に誇るレストランだと思いました。

 

北陸新幹線は2024年3月に福井・敦賀に延伸し、TSUKIHIの最寄駅「越前たけふ駅」にも停車しますので、アクセスが良いのも魅力です。駅からは徒歩12分です。
ワイン醸造所「SIX THREE ESTATE(シックス スリー エステート)」と「TSUKIHI」は同建物内(入口別)で、田んぼの中にポツンとあって、夏時期は緑の稲に囲まれます。
創業者である西野恒樹さんは福井生まれで、2020年から耕作放棄地を活用したブドウ栽培に着手し、無添加・無ろ過で素材を生かす自然派ワインの醸造に取り組みました。料理と共に自社のワインを味わってもらおうと、2025年にレストランをオープン。越前の風土が育むブドウを使ったワインとお料理がいただけるのは、唯一無二の贅沢。わざわざここに来る価値があるというものです。

レストランのテーマは「越前テロワール」と「越前の工芸と食が紡ぐ一皿」。その言葉通り、料理から空間、アート、器に至るまで、“越前”という土地のエッセンスが凝縮されています。

レストランへ続く扉には150年前の越前箪笥の扉を配し、重厚感と趣あり。

30mものアプローチには、越前和紙と葡萄の果皮のアートが。

ウエイディングには、越前瓦と越前レンガの壁を使用し、店内に一歩足を踏み入れた瞬間から「ここにしかない時間」が流れ始めます。


洞窟のような個室も素敵。

大きく取られた窓からは、越前の原風景がパノラマで楽しめます。陽が落ちてくるまでのマジックアワーもいいですね。

食器やカトラリーは「越前打刃物」や「越前焼」、「高村刃物」などを使用。何から何までメイドイン福井、メイドイン越前のこだわりで、食べる前からもう胸がいっぱい。

料理長は、長屋恭平シェフ。イタリアの星付き店で研鑽を積み、帰国後は神戸の薪焼きレストラン「erre」で料理長を務めた実力派。2024年より越前に移住し、ワイナリーで葡萄の栽培・醸造から学ぶ。

厨房では、薪の焼き台で熾火を巧みに操りながら調理するシェフの姿。(ガスやコンベクションオーブンはなく)ご飯も原始的に薪を熱源とする調理台で炊き上げます。さらに、導入しているのは日本で唯一TSUKIHIさんのみというスペイン「Mibrasa社」製の炭オーブンが存在感を放ちます(左)。

長屋シェフの料理は、地元産の食材や伝統調味料を軸に、原始的な熱源(薪の熾火や炭)を駆使し、コンセプトである「越前テロワール」に輪郭を持たせます。その中でも味わいのコントラストやグラデーションは巧妙な設計で、多皿構成ですが、最初から最後まで小さなお皿の中の小さなパーツにも手を抜いていないのがしっかり伝わります。

【紹介項目】

2025年9月27日

前回、2025年7月28日に初めて伺って、今回は2ヶ月後の9月27日に2度目の訪問です。全部良かったけど、今回のハイライトは、豆 蕎麦、越前-海-、越前-里山-、タリオリーニ、薪焼牛。
(構成が細かくて書ききれないので、感想は上記の総括にて。)

・湧き水 葡萄の葉 お米

・昆布 塩雲丹

・豆 蕎麦
落花生、引き立てのそばで作ったそばがき、青大豆の豆乳。
精進料理をリスペクトした、植物性の一品。

・越前 -海-
越前鮑、黒ニンニク、肝、バジル
ヒラソウダガツオ、焼き茄子エキスソース、ガマエビ(越前海老)、赤パプリカジュース
カンパチと胡瓜
のど黒、えごま葉、青大豆のソース、アーモンド、らっきょう、茗荷、赤ワインビネガー

・越前 -里山-
椎茸のスライスをクロスティーニに美しく並べた料理。椎茸のつるんとした切れ味、食感が鮑のようです。
カボチャ、ビーツ、レンコンを卵黄ソースとへしこ糠オイルで。

・鰻
鰻、伝統野菜 吉川なす、蘭麝酒(らんじゃしゅ)

・紅蟹
タリオリーニは、シェフのお得意。絶妙な細さとシコシコとした食感が美味。
紅蟹、ガマ海老と福知鳥の出汁で

・鱸 薪焼
福井の鱸は熟成で、サツマイモ、舞茸、胡桃と麹、蒸したトマトと松のオイル

・牛 薪焼
大豆から取り出した乳酸菌を飼料にした若狭牛のイチボは、薪焼きにて、葡萄の枝で燻製香をのせて。
本来、この手のサシが入った牛は、私は手がつけられないほど苦手なのですが、薪焼の技術が素晴らしく、脂を切って風味を乗せとても美味です。

・玉葱 越前粘度包焼
玉葱を越前焼きと同じ土で包み、1時間炭のオープンで焼き上げて。みずみずしく甘い。


・しらやまのお米
そしてクライマックスとも言えるのが、薪台で炊き上げられる「しらやまのお米」。ご飯そのものの美味しさは言うまでもなく、ご飯のお供がジオラマのように可愛らしくて心躍りました。

牛時雨 ズイキの酢漬け(すこ)、鰹の漬け ロゼワイン、胡瓜の辛子和え 地辛子、ムカゴ黒胡麻和え 白ワインのおり、ラディッシュ葡萄搾りかす 糠漬け

・だし漬け
そばの実、天然クレソン漬け物、連子鯛のスープがけ(魚と水だけで)

・葡萄

・炭オーブンで焼き上げたヘーゼルナッツのケーキ

六条大麦アイス、栗の渋皮煮を削って

・小菓子
ビオレソリレス、そのジュースとエゴマ
水羊羹は竈門で炊いてワインのオリと
葡萄の枝をクロモジのようにしていただいきます。

2025年7月28日

特に私が印象的だったのは、↓こちら。
冒頭の「昆布」と「塩雲丹」の二皿は、同じコンセプトで各異なるアプローチで味わわせてくれて最初から驚き。「越前-里山-」では、椎茸のスライスをクロスティーニに美しく並べた料理。椎茸のつるんとした切れ味、食感が鮑のようでした。鹿肉タルタールに椎茸ジュの旨みが重なり、品の中に山の生命力を感じました。
中盤の「猪」は、ミンチと包丁でのカットと筋などで、野生味・香り・食感・ジューシーさが共存していました。ノンアルペアリングの“蓬コーラ”との組み合わせは、まさにこの土地でしか表現できないテロワールの共演。
中でも圧巻だったのが「白バイ貝のタリオリーニ」。絶妙な細さとシコシコとした食感に、シェフのパスタの力量の高さと貫禄を感じました。バイ貝の出汁と青柚子でさっぱりと。
そしてクライマックスとも言えるのが、薪台で炊き上げられる「しらやまのお米」。ご飯そのものの美味しさは言うまでもなく、赤ワインの牛しぐれ、塩ウニなど、ご飯のお供がジオラマのように可愛らしくて心躍りました。最後まで手抜きなしの丁寧さが光ります。ご飯のおかわりは、飛魚スープでお茶漬け仕立てにして、ナスタチウムの花がピリリと山葵のようなニュアンスでした。

(ここから料理写真です。料理名はメニューのまま)

・湧き水、葡萄の葉、お米

・昆布、塩雲丹

・蕎麦、枝豆
精進料理をリスペクトしたそばがきのお料理

・越前-海-
ヒラマサ 胡瓜スープ、穴子、越前鮑、花ズッキーニ ガマエビ 山雲丹オイル

・越前-里山-
クロスティーニ 椎茸 鹿肉タルタール、炭火オーブン焼きアスパラ 卵黄と柑橘と”へしこ”の糠オイル

・猪(ノンアルペアリングは蓬コーラ、ワイン畑に自生する蓬を使用)

・白バイ貝
タリオリーニ

・鱸 薪焼
マリーゴールドとトマトエキスのソースで

・牛 薪焼
大豆から取り出した乳酸菌を飼料にした若狭牛のイチボ
薪焼きにて、葡萄の枝で燻製香をのせて

・人参 越前粘土包焼
越前焼きの土に包んで、炭のオーブンで1時間焼き上げた人参。包み焼きにすることによって水分も旨みも内包されており美味。

・しらやまのお米

とびうお茶漬け、ナスタチウム花

・甜瓜
葡萄の葉を紅茶にしてアイスにして、葡萄コンブチャ、メロン、キャラメルというグラデーションも美味。

・小菓子
ハーブティー、炭オーブンで焼き上げたヘーゼルナッツのケーキ、福井と言えばの水ようかん

総じて、どの皿も完成度が高く、“一切の妥協を許さない”という気概に満ちていました。
反面、ダイニングには優しい雰囲気が溢れ、リラックスして食べさせてくれるのが心地よい。ソムリエさんのパーフェクト解説、ホスピタリティーも素晴らしい。

予想以上に衝撃が大きかったです。
北陸新幹線でアクセスできるのも有り難く、季節を変えて、グルメな方を誘って、また行きたいと思います。

 

メニュー(※税抜・サービス料込み)
・TSUKIHIコース(20,000円 税別)
・TSUKIHIコース+ペアリング(30,000円 税別)
・TSUKIHIコース+ノンアルコールペアリング(25,000円 税別)