食通の間で、今最も注目を集めている金沢NEWオープンのお店の一つが、2025年5月8日グランドオープンした「てんぷら的場」さん。(グランドオープン日に訪問させていただきました)。
大将の的場大樹(まとばひろき)さんは、東京の名店「天ぷら元吉」にて10年にわたる修業を重ね、ミシュラン2つ星の味を支えてきた職人。2022年より南青山で「天ぷら元吉的場」の店主として腕を振るい、食通たちを魅了してきました。そんな的場さんが金沢に心を動かされたのは、やはり食材の宝庫である能登などの生産地に近いという環境だそうです。
(ちなみに看板の文字は、的場大将が尊敬する、「すし処めくみ」の山口大将が書いてくれたそうです。)
店の場所は、金沢屈指の観光地・ひがし茶屋街の路地裏という贅沢な立地。観光喧騒から一歩引いた静けさの中、町家を改装した端正な空間が広がります。カウンター6席のみ。凛とした空気のなかに、茶屋街の風情が重なります。
食材は全て地元石川県産(ホタルイカなど、時折富山県産や福井県産もあり)。七尾の港にはほぼ毎日通って魚を仕入れます。さらに、信頼を寄せる漁師は、能登町の網元「日の出大敷」の中田洋助さん。農家さんとの繋がりも強く、地に足をつけて料理をしている印象です。“江戸前”ならぬ“能登前”ですね。
さすが、金沢が好きで好きで「移住したい!」という強い思いを叶えて出店してくれただけあります。本当に石川県愛に溢れた方で、地元の私からすると感謝しかありません。ただの“東京から来た新店”ではなく、石川県食材の声に耳を澄ませ、北陸における天ぷらの新たな可能性を提示する一軒だと思います。
特筆すべきは、その軽さ。いくつかのこだわり油を独自ブレンドし、「衣は軽く、思いは重く」と語る的場さんの言葉通り、どれだけでも食べられる軽さです。薄衣で食材を内包しながらも、グンと食材力を引き出し、天ぷらだからこその美味しさに昇華しています。
※注意:過度な香水は不可。ドレスコードはスマートカジュアル推奨(短パンやサンダル不可)。写真は料理撮影のみ素早く(調理風景、他のお客さん・従業員さんの映り込みは禁止)。動画撮影禁止。
予約方法は、レストラン予約サイト「Table Check」のみ(※電話での予約は不可)
1日ごとに1ヶ月後の予約が順次開放されていきます。(※代理予約不可、貸切予約不可)
https://www.tablecheck.com/shops/tempura-matoba/reserve
●おまかせコース(25000円税込)
今回は、春食材が豊富でした!嬉しい。
コース内で個人的に特に印象的だったのは、海の稚鮎、虎魚、山独活、タケノコの花山椒と木の芽の醤油漬けのせ、天丼、天バラ。
・お造り メジマグロ(能登町)、赤貝(七尾・石崎)
天ぷらの前に“海の序章”から。
・そら豆
天ぷら1種類目は、旬を感じるそら豆から。ふっくらほくほく、そして青い香りを存分に引き出しています。
・海の稚鮎(七尾)
ふわっとした身の繊細さがお見事。春の繊細が口福をもたらす。
・アスパラガス
野々市市で無農薬栽培されるアスパラは、良い時期がわずか10日くらいだそう。今朝どれのフレッシュなものを、2つの部位の食べ比べで。上部は塩が合い、土に近い部分は水分量が多くててんつゆがぴったりでした。
・虎魚(オコゼ)
ふわふわしっとりしており絶品。半身でも太くて、個体の大きさを印象付けます。
・山菜三種(コシアブラ・タラの芽・山独活)
山菜も地物で揃えており、それぞれの個性を食べ比べ。
・サワラ(能登町「日の出大敷」)
厚切りにして、中はレアにしっとりと仕上げます。腹身は塩、背身は蕗味噌で。
・トラフグ・トラフグ白子
身は漬けにしてから揚げることで、唐揚げと天ぷらの間のような良いとこどりの美味しさでした。
・タケノコ(小松・東山地区)
一切めは素材そのまま、二切めは花山椒と木の芽の醤油漬けで香りを添えて。
・甘鯛(能登島)
身の方だけに衣を付け、鱗には直接油が入るようにして衣は付けず、揚げ切ることでカリッと歯切れの良い鱗上げが完成。
・川端れんこん
金沢の加賀れんこんカリスマ農家、川端さんの蓮根の2節目を使用(蓮根は節ごとに食味が異なるため)。皮は香ばしく滋味あり、中はホクホク。
・鮑(七尾)
10時間蒸し上げてから天ぷらに揚げに。二切れめは肝のせで。
・安納芋(小松)
半年以上の熟成で蜜のような甘さと滑らかな舌触り。
お食事は、天茶漬けか天丼の選択で私は天丼を選び、天バラまでいただきました。白海老・タケノコ・こごみのかき揚げは、コースの最後に春の余韻を残します。
・天丼
・デザート
小松のイチゴと宝達志水のトマトに、福光屋さんの「福みりん」ゼリーがけ。特に、イチゴより甘いトマトの糖度には驚きでした。
的場大将の優しいお人柄が味わいに現れておりました。石川県への愛情を全身でいただいてきました。
次は、食材が変化した季節に訪れたい!