「Les Tonnelles(レ・トネル)」砂山シェフの“Farm to Table”な野菜主役のイノベーティブに注目。ぶどうの木グループが展開するグランメゾン。世界の建築家 坂茂氏による建物もすごい

料理: 7.5 その他: 7.5 ポイントについて
Les Tonnelles (れ とねる)
営業時間 11:30〜14:30(L.O.)、18:00〜19:30(L.O.)※昼夜共に完全予約制
定休日 火曜 その他定休日あり
価格帯 (税別)8000円コース、15,000円コース、ベジタリアンコース:12,000円
訪問回数 5回

・「ミシュランガイド北陸2021 特別版」2ツ星獲得(2021年5月19日発表)

同店は、金沢の方はよくご存知の「ぶどうの木」グループが展開するグランメゾンで、2019年(令和元年)11月1日にオープンしました。店名「Les Tonnelles(レ・トネル)」は、“ぶどう棚”や日本では“藤棚”など木棚、緑廊の意。
同グループは金沢市岩出町に本店があり、この広い敷地には、お子さんから大人まで楽しめるイタリアンカフェや洋菓子工房、豆菓子ショップ、ぶどう直売所などが並び、村のようになっており、観光バスが入るほどです。
しかしながら、ここ「Les Tonnelles」に限っては客層を食通に絞っています。
(ぶどうの木だけに、ぶどう色の着物で訪れてみた)

見ごたえある建物は、世界の建築家 坂茂(ばんしげる)氏によるもの。大きくアーチを描く外観に圧倒されますが、交互にガラスが張ってあり、店内のあたたかな光が漏れています。

さらに中に入ると、驚くことに、天井の柱や椅子などが紙管で出来ていることがわかります。これも坂茂さんのデザインの特徴。曲線、丸みが効果的に空間に温かみを与えています。


店内からは畑側にぶどう棚が見えますが、店内にもぶどうの木がニョキッと生えていてぶどう棚を形成しています。“切らずにそのままを活かす”というのが粋ですね。のびのびとぶどうの木の呼吸が感じられます。なんて思い切ったデザインなのでしょうか。ナチュラルで斬新な新しい世界観。
夜は、まだ明るさのある夕空から刻々と漆黒へと移り変わって、レストラン内の照明で店内が映えていくのも一興。昼は自然光が入って緑が眩しく、昼夜で違った景色が楽しめます。

シェフ砂山利治さんは、2015年からフランス「La Grenouillère(ラ・グルヌイエール)」で腕を振るい、スーシェフを務めたという経歴の持ち主。1ツ星から2ツ星に昇格した際もいらっしゃったそうです。
ここでの料理で特徴的なのは、“Farm to Table”な野菜主役のイノベーティブ。
ぶどうの木の敷地内には、耕作放棄地を整備して作った95mの円形の畑「L’assiette(ラシェット)」があり、自然農法にて野菜や果樹などを育てており、目の前で採ってきたばかりの野菜が使えるというわけです。
この場所での強みを活かし、自分スタイルで表現するというのが、いよいよ定まっていい感じになって来たように感じられました。今後もとても楽しみ。

主役は野菜。ビーガンメニューもあるのですが、通常のコースを注文しても野菜が主役です。ポワソンもヴィヤンドも出ますが、あくまで主役は野菜!とても良いと思いました。各料理ごとに違ったパンが出てくるのもお楽しみに。
ソムリエ福島大悟さんのペアリングは、アルコール・ノンアルコール共にとても素晴らしいので、飲み物はペアリングがオススメです。

器は全て森岡希世子さん。釉薬を使わずにヤスリで磨いてあってフォルムがやわらかいので、するりと手に馴染みます。

(訪問回数5回、最終訪問 2021年4月19日)

2021年4月19日

昼の訪問で15000円コースを頂きました。
「地物食材をイノベーティブとして昇華させるためにはどうしたら良いか」ということを、一皿一皿に対して考え込んだことが伝わる料理で、砂山シェフの挑戦心も感じられました。複雑な組み立てで、和食にはないアプローチです。坂茂氏による建築を大いに利用しての回遊型プレゼンテーションも同店の特徴の一つですが、より楽しめるように工夫されていました。
印象的だった料理は、アミューズのモッツァレラチーズ、キジバト、デセールの肉桂です。
ノンアルコールのペアリングも突き詰めて研究されており、新しい味に出会えて面白いです。お酒が飲めない方は、ぜひノンアルペアリングに挑戦してみてください。

●アミューズ1
まずはアミューズ2品と飲み物をエントランスフロアにて。
飲み物は黒文字の葉のお茶。紙管デザインの3段バスケットを広げると、メニューと2種類のアミューズが。ひとつは冬の野山をイメージした蕗の薹味噌と鹿肉のクロケット。もうひとつは、加賀丸いもとホタルイカのタルト、ハマボウフウを添えて。

●アミューズ2
厨房前のカウンターに移動して、シェフがもう一品をプレゼンテーション。
今回はなんと目の前で仕上げるモッツァレラチーズです。能登の七面鳥と貝の出汁に、乾燥させた牛蒡を加えて作ったスープを、チーズの元となるカードに注ぎ、お客さんがかき混ぜるとモッツァレラチーズが完成するという一品。ほちゃほちゃ柔らかい出来立てのモッツァレラチーズに、馥郁たる香りのふくよかなスープが重なります。


このあと席に移動してコースがスタートします。

パンは自家製パンが種類豊富。間引きにした野菜を生地に練りこんだ“サスティナブリオッシュ”も面白い。


●庭師 高田ラボ
スペシャリテ。トネルのサラダは卓上で収穫体験をしながら味わうもので、毎回旬の野菜が登場します。ぶどうの木の敷地内にある95mの円形の畑「L’assiette(ラシェット)」を模した器に旬の野菜が植え込んであります。土に見えるものはおからをローストしたもの。
卵黄と土佐酢のジュレを混ぜてソースにして野菜をディップします。


●1ヶ月人参
人参を粘土焼きにして、牛脂を塗ってから冷蔵保存し熟成。野菜の端境期を凌ぐ知恵として考え出したそうです。人参はセミドライフルーツのような凝縮された甘さでみずみずしさもあり。鰆のスモーク熟成を添え、ブラッドオレンジとアプリコットのソースで。


●ポロ葱
ポロ葱を真っ黒になるまで焼いてありとろとろ甘い。蛸島の桜鱒、蛤の泡、ベルガモットのジュレで。

●色白美人
朝堀りの筍をパン生地で包んで揚げパンにして火入れ。目の前でシェフがデクパージュ。イノシシのバラ肉とメカブ、メカブバターを詰めて、ホエーとキナメラ干物をソースに。


●アスパラ
アスパラを3つの味で。左から、塩、鴨の内蔵、野ウサギの脳味噌と能登の粒マスタードをのせて。

●春キャベツ
キジバトは、キャベツのヂュクセル、バターライス、キジバト内蔵を詰めて、柚子胡椒を効かせた鶏手羽先のソースで。骨太な味わいを柚子胡椒が引き締めます。キャベツボウルには、生キャベツ、ソバナ、三つ葉、セリ。

●ころ柿
デセール1品目。ころ柿、河内晩柑、ジューシーフルーツ、ベルベーヌのこんぶ茶ゼリー、仕上げにグラノラをトッピング。朝食をイメージしたというのに納得の、爽やかな一品。

●熟成馬鈴薯

●肉桂
場所を移動し厨房前のシートで。シナモンの木をイメージしたお菓子は、メイプルシロップ、ミルクチョコ、カカオソルベなどで構成されており、そこにシナモンの葉をシロップで詰めて糖化させたお茶をかけて。シナモンの主張がしっかりされていて、カカオとのコンビネーションも良く、印象に残りました。

●小菓子、ハーブティー
テラス席にて場所を移し食後のティータイム。雲ひとつない晴れた日だったので、自然光と緑と風がとっても気持ち良かったです。
アロマティカス、レモングラス、レモンタイム、ブルーベリー蕾などのハーブティーと小菓子。食後が充実するいい時間でした。

2020年9月24日

昼の訪問で8000円コースを頂きました。
前回とはガラリと趣向を変えて、スペシャリテ以外は新しい料理だったのがすごい。さらに、最初のアミューズに少し厚みが出てきたのも良いと思いました。
  
●アミューズ1 枝豆、茄子
まずは入ってすぐのエントランス席にてアミューズを頂きます。この建物のデザインに呼応する、丸みを帯びた3段の紙菅バスケットでの演出が素敵です。

枝豆とタピオカ粉を揚げたもちもちのフィンガーフードに、ハーブのオキザリスをはらりと添えて。
自家農園の中茄子は、中身を一旦取り出して皮だけをカリカリに揚げ、身に生姜を混ぜて戻して生うにをのせ、紫オキザリスをあしらって。もちもちとカリカリの対比を意図的に感じさせるアミューズ。
 
ドリンクは摘果された青いルビーロマンで作ったもの。赤紫のルビーロマンは糖度が約20度ありとても甘いですが、摘果された青いものは糖度が4しかなく、酸味がとても強くてびっくりするやつです。しかしこれはとても良い経験です。

●アミューズ2 発酵トマト
席を立ち、さらに少し奥に進んで、厨房の前で砂山シェフが1品フィンガーフードを作ってくれます。
今回は、発酵させたトマトの外皮のパウダーに、トマトのアイスを入れて。口の中の温度で溶けて、まずはトマトの酸味が立ち、さらに旨味がぶわっと押し寄せてきて余韻に残ります。

●庭師 高田ラボ
トネルのサラダは卓上で収穫体験をしながら味わうというもので、花壇を模した有機野菜サラダの登場です。卵黄と土佐酢のジュレを混ぜてソースにして野菜をディップします。土に見えるものはおからをローストしたものですが、本物の土に見えて楽しい。「これは何の野菜かしら」とひっこ抜いて、シンプルに個性を食べ比べます。


●トマト
“究極の冷やしトマト”と銘打った、見た目にトマトを感じないトマト料理。
トマトをろ過したトマト水を球状のアイスにし、コスモスの花を散らして。中には、レモン果汁とレモンバームでマリネしたフレッシュのトマトが。スモモと未熟ぶどうのソースをかけて。ひんやり爽やかで可憐な一皿。




●トウモロコシ
昆布締めした真鯛を、トウモロコシを衣のようにして揚げる。揚げて甘さを増すトウモロコシには、トウモロコシと梨の甘くさっぱりしたソースを合わせて。泡はハマグリの出汁。真鯛は揚げることでふんわりとした食感に。ニラの花、セイヨウノコギリソウの葉をあしらって。ポワソンだが野菜が主役。

●ビーツ
ビーツを粘土で包み焼きにして、ビーツのおいしさをギュッと逃さずに。1切れめは塩で頂く。ホコホコとしていて、なるほど内包されたジュのおいしさをシンプルに味わえる。2切れめは無花果とフォアグラを合わせて、ふくよかな味わいにも負けないビーツの力強さを感じる。ランド産の鴨は焦がし玉ねぎのソースで。鴨もうまいが、あくまで野菜が主役というのが良い意味で分かる一皿。


ここからはデセールです。
●ポムフリット
呼び出し番号「1番」の旗をもらってドキドキ待っていたら、出てきたのがこちら。どこかのファストフードチェーンのような風貌のフライドポテトかと思いきや、実はリンゴのデセール。フランス語でリンゴもじゃがいもも“pomme”ですが、それにかけているんですね。じゃがいもを揚げたフライドポテトは“pommes frites”ですが、これは“揚げリンゴ”の意。しかしながら揚げてあるのではなく、リンゴにクランブルをまぶしたものです。ケチャップに見えるのはトマトとラズベリーのソースで、マスタードに見えるのは卵黄とオリーブオイルから作られています。
なんて楽しいアヴァンデセールなんだ。

●サニーサイドアップ
目玉焼きを模したデセールです。艶やかな卵黄は、パッションフルーツとマンゴーと鬼灯ジュースで作ったもので、白身はココナッツの寒天ゼリー。卵黄の下にはバニラとココナッツのエスプーマー、フレッシュ鬼灯が。フライパンの焦げ目はクレープをカリカリに焼いて再現してあって本物そっくりです。塩はバニラシュガー、醤油はパッションフルーツジューズとダークラムと黒糖。とことんの遊び心が気持ちいい。童心に返ったようにテンションが上がります。

●小菓子

 

2020年7月21日

(3回目の訪問で初めて書きます。)
●8000円コース(税・サ料込)(アミューズ3品、オードブル2品、お魚料理、お肉料理、デザート2品、小菓子)
  
●アミューズ1 クッキーニ、野ぜり
まずはアミューズ2品と飲み物を入ってすぐのエントランス席にて。
1品目には、ズッキーニの茎をくり抜いて、サザエやアワビなどの詰め物をしてナスタチウムをのせて。2品目は、香り高い野ぜりの根っこの素揚げに、ジャガイモピュレと牡蠣のバウダーを添えて。ハーブティーはシナモンの葉が入ったシナモンティー。


●アミューズ2 スッシーニ
さらに少し奥に進んで、厨房の前で砂山シェフが1品フィンガーフードを作ってくれます。この日はズッキーニの花に酢飯を詰めた“スッシーニ”。ガリの泡でイノベーティブな野菜寿司が“トネルらしい”プロローグ。これを頂いてから席に。

・ぶどうの木で育ったぶどうを“金沢ワイナリー”さんが醸造したワイン

●庭師 高田ラボ
スペシャリテです(解説は上部)。





その日の野菜は“納品書”にも書いてあります。


・ベルベーヌ
店内で育つベルベーヌ(レモンバーベナ)をベースにしたノンアルコールドリンク。グラスのステムが特徴的。

●アーティチョーク
このアーティチョークもここの畑で育ったもの。食べられるのは根元の部分で、竹炭と豆乳、にんにく、バニラのソースにつけて。アーティチョークの個性的な風味がディップソースにぴったり。

●ズッキーニ
ズッキーニとアマダイ。ポワソンではあるが野菜が主役。ズッキーニは麺のようにしてソテーし、海苔のソースで。泡はネギと貝出汁で、軽やかで青い風味の繊細な味付けがアマダイにも調和。
・数馬酒造の酒をペアリングに。海藻酵母であるMisaki酵母を使った日本酒に、クロモジの仲間のダンコウバイを合わせてスッと爽やかで色気のある香りを添えて。


●赤皮栗南瓜
夏鹿と加賀野菜のひとつである打木赤皮甘栗かぼちゃ。ヴィヤンドですがこちらも野菜が主役。パンに見えるのは、ライ麦の乾燥を塩釜に練りこんで南瓜を塩釜焼にしたもの。



中にはしいたけの赤ワイン煮込みが入っています。包み焼きにされたかぼちゃは良い水分量が保たれてしっとりとし、塩気で甘さが引き立ちます。ライ麦の野趣もほのかに。


・高村刃物製作所さんのナイフで


●ルバーブ
アーモンドミルクの泡をのせて。フレッシュでシャリシャリとしており、柑橘のような味わい。

●さくらんぼ
チョコレートとさくらんぼの菓子“フォレノワール”をイメージしたデセール。グリオットのコンフィチュール、カカオニブのムース、チョコレートのソルベ、スポンジの代わりにゴーフレットを。濃厚なアメリカンチェリーとチョコレートが好相性なのはもちろん、夏仕様でさっぱり食べられました。

●プティフール