「AKEME」台湾 高雄|AKAME, Kaohsiung Taiwan

(訪問日 2019年7月7日)

台湾の高雄から車で約1時間、少数原住民ルカイ族兄弟のイノベーティブレストラン。という、聞くだけでかなりのインパクトがあるお店です。たどり着くまでが難易度高めの秘境レストランなのですが、唯一無二の美味がディスティネーションレストランの魅力を存分に教えてくれました。

お店の場所は、台北からだと台鉄に乗って高雄まで。高雄駅からさらに車で1時間かかります。
タクシーでアクセスするのが(乗っているだけなので)スムーズですが、車で行きました。台湾は通常の国際免許ではダメで、台湾用を申請しなければなりません。ハイウェイを走り(怖い)、真面目にオバケがでそうな道のりを探り探り走り(怖い)心細さマックスです。Googleマップは民家が密集する一角を指します。「本当にここにあるの?」「合ってるよね?」と呪文のように100回は呟きました。
ようやく「AKAME」という看板を見つけても、「実は同じ名前のお店あるとかないよね?」と心配になっている自分がいます(笑)。とにかく、最初の一皿が出て来てやっと安堵感ありました。

店内はワンフロアで思ったよりもコンパクト。キッチンに向かうカウンター7席と、キッチンを背にした壁に向かうカウンター7つ、ソファーのテーブルが1ですが一体感があります。存在感を放つのは、赤々と炎が上がる薪窯。そして窯の前ではシェフAlexが炎と肉と対話をしていて終始目が離せなさそう。その真剣味を背中が語っていました。
店内は電波無しで、何もかもひとまず忘れてこの空間と料理に向き合うこととなります。
ちなみにこのレストランは家族経営。 お店をオープンしたシェフは兄弟で、それぞれが西洋料理で修行し地元に帰省したそうです。現在はシェフのもう1人は今は別レストランにいて、従兄弟がいます。接客は姉妹がこなしているので、フレンドリーで肩肘張らない空気感もまた良く感じました。

メニューはアラカルトで、前菜2品、メイン肉2品、デザートを選びました。
料理の特徴として挙げたいのは素材力で、生命力がバンバン感じられる台湾の地物食材やこの集落のスパイス、野生野菜などを使用。台湾の自然や人々の営みなど、背景を想像させるのも味わいの一つと捉えたい。薪焼きの肉料理も味わいどころの一つです。
カトラリーセットのナイフは、AKAMEオリジナルで、実際に使っているハンティングナイフのミニ版だそうです。これで食べる嬉しさ。


●自家製酵母パン
見るからに香ばしそうに照り輝く台湾の大麦をトッピングしたクリーミーなバターと。(これ食べてやっと安心してる笑)


●蜂の巣、エディブルフラワー
野生の蜂の巣をフィンガーフードとして。チューイーな食感は天然のガム。噛むほどに滲み出す蜂蜜からのお花の風味が秀逸で、ひととき夢の世界に連れて行ってくれました。

●台東手採野菜
台東の野生野菜5、6種のミックスですが調和がとれています。温泉卵、チーズ、ピーナッツを合わせますが、それらに負けないパワフルな味わいの野菜。生命力すごいがエグミなく美味。日本のモロヘイヤにも似てる。

●烏殼筍 油封櫻花蝦 洋蔥昆布醬
ジャストシーズンの筍を選びました。和食に通じる、素材を立てた一皿。筍は聡明で、みずみずしく梨のようでした。桜海老、オニオンソース、ライスワインのチーズを添えて。

●黑豚梅花心肉 燻烤花生醬 煙燻蕃茄
ローカルの黒豚。“絶妙な火入れ”とはまさにこのこと。食感しなやかで味が濃い。旨味の凝縮といえるトマトのソースと、やや重厚なピーナッツソースが添えてあります。計算された一皿でパーフェクトとしか言いようがない。美味。

●嘉義黃牛菲力
台湾ビーフ。ワイルドだがあっさりして歯ごたえがあり、良い意味で肉々しくなくて新感覚。ソースもそれに合わせ、ビーツのさっぱりしたものでした。付け合わせはパンプキン、胡瓜花など。

●五葉松吉拿棒&62%台灣巧克力
シグネチャーデザート。チュロスはボリュームあるので胃袋が心配になりましたが、飛び上がるほど美味しくてあっという間にお皿から消えました。ローカルカカオ62%のチョコソースを添えてありますが、そのままでも永遠に食べられる。熱々で香ばしく、一口ごとに砂糖と香ばしさが弾け、中はモチモチでふわっと軽い。

本気の本気で食べたい人しか来ないのだから、自動的にお客さんは世界の食通やシェフ(もしくは土地勘ある地元の人)のみになる。“食いしん坊は美味しいもののためなら労力は惜しまない”と言うけれど、このレストランはそれが試され、そして証明してくれる。ちなみに連日満席で予約はかなり困難。

ちなみに帰り道もまた冒険なので、高雄のホテルに着くまで気が抜けません(笑)。
人生に刻まれるレストランです。