私が特別講師をしている「スーパースイーツ調理専門学校」1年生、今年最後の授業は教室を飛び出してグランメゾンにやってきました。フランス料理の歴史、偉大な料理人の功績、フランス料理のコースなどを授業で解説。さらに実際に体感するために、金沢の「ジャルダン ポール・ボキューズ」料理長である藤久周悟さんにご協力をお願いし、スペシャリテを作って頂き、歴史の解説、料理の解説、さらにデクパージュのデモンストレーションもして頂きました。
ご存知の通り、ポール・ボキューズ(Paul Bocuse)はフランス料理の巨匠、ヌーベルキュイジーヌの旗手とも呼ばれる偉大な偉大な料理人です。お生まれは1926年2月11年、リヨン近郊。昨年2018年1月20日、91歳で天に召され、世界中が悲しみに包まれました。
ボキューズ氏が残した功績の数々を振り返ると、どれほど偉大な方であったかをよく分かっていただけると思います。1961年にはMOF(フランス国家最優秀職人章)を取得。リヨンにあるレストラン「ポール・ボキューズ」はミシュランガイドの3つ星を1965年に獲得してからというもの、50年以上もの長きにわたり維持しています(ポール・ボキューズ逝去後の2018ミシュランフランス版でも3つ星を維持)。また、“料理人の世界選手権”と言われる「ボキューズ・ドール」の創設者でもあります(2年に1度リヨンで開催)。
そして、ポール・ボキューズといえば、数々のスペシャリテを生み出した方でもあります。スープにパイがかぶさっている「V.G.E.に捧げるトリュフのスープ/1975年にエリゼ宮にて」はあまりにも有名。平皿で提供する「クレーム・ブリュレ」はフランス映画の「アメリ」に登場。スズキのパイ包み、牛フィレ肉のロッシーニ ペリゴール風、ブレス鶏のヴェッシーなど、まだまだスペシャリテがあります。
この日は授業として2品を作って頂き、魚料理はデクパージュのデモまでみせてもらいました。
●V.G.E.に捧げるトリュフのスープ/1975年にエリゼ宮にて(Soupe aux truffes noires V.G.E./Plat créé pour l’Élysée en 1975)
このスープは、1975年にポール・ボキューズが、フランスの料理人として初めてレジオンドヌール勲章(シュバリエ級)を受勲した際、エリゼ宮殿で行われた晩餐会で、時の大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタンに捧げた伝説のスープです。
実はこのスープ、懐石料理のお吸い物にヒントを得ており、お椀の蓋に当たる部分をパイで作ってあって、トリュフの香りを閉じ込めてあります。パイを外した途端にトリュフの香りが広がるという、まさにお椀の蓋の使い方です。フォアグラの入ったスープは旨味が凝縮されており、まるで濃厚なエキス。しばらくこの余韻に浸ります。
●スズキのパイ包み焼き ソース・ショロン (Loup en croûte feuilletée)
フェルナン・ポワン氏から伝えられた料理で、スズキ一匹を魚の形そのままパイで包んで焼いたもの。大きな魚型のパイは、運ばれてきた瞬間に歓声が上がります。
デクパージュの鮮やかな手つき、生徒達は皆静かに魅入っていました。
まずはパイをパートに分け、身を骨から外して、あっという間に美しくお皿に盛り付け完成。お見事です!
スズキの身、そしてホタテのムースも入っているので、ふわっと軽やか。酸味のあるやや重厚なショロン・ソースが良く合います。美味。
フェルナン・ポワン氏の時代はシンプルなブール・ブランソースでしたが、ボキューズは酸味の効いたショロン・ソースを使いこの料理を完成させました。
最後は藤久料理長に厨房の解説をして頂きました。
みんなどう感じてくれたでしょうか。
偉大な料理人のスペシャリテの味、形、香り。グランメゾンたる料理、サービス、しつらえなど、学んでくれたでしょうか。
実際に感じてみる、味わってみる。体験を通して学んでもらうことを私の授業ではできるだけ重視しています。
ジャルダン ポール・ボキューズさん、ご協力誠にありがとうございました!!
店名: ジャルダン ポール・ボキューズ
住所: 石川県金沢市広坂2-1-1 しいのき迎賓館内 2F
電話番号: 076-261-1161
HP: https://www.hiramatsurestaurant.jp/paulbocuse-jardin/