(初投稿2019.5.23 加筆して2023.7.3に再投稿しています。工房には2度訪問させて頂いております。)
トップシェフに支持される包丁、“高村作”で知られる「高村刃物製作所」さんは福井県越前市にあります。TBSで放送され話題となったドラマ、木村拓哉さん主演の「グランメゾン東京」(2019年10月20日〜)で、主人公の尾花夏樹が使うワインレッドハンドルの黒い包丁は高村さんの包丁でした。
高村さんが掲げている3つの信条は「よい材料、よい鍛造・熱処理、よい研ぎ」です。「私たちは包丁の“出来”を見据えて作り出します」と高村光一さんは話します。工程はなんと100以上。一つ一つの工程に魂を込めます。“魂を込める”という表現は決して大袈裟ではなく、なぜならば、一つの工程をおろそかにすると、次の工程に響いて、結果良いものができません。
料理人にとって包丁は命ですが、その包丁を生み出す職人さんは重要なパートナー。また、レストランや料理、味を想像し包丁をつくる高村さんもまた、一緒に料理をつくっていると言えます。
●鍛造粉末不錆鋼ダマスカス共鍔 「打雲」
読みは、
たんぞう ふんまつ ふせいこう(ふしゅうこう) ダマスカス ともつば 「うちぐも」
むくむくと立ち込める雲のような、波のような、木目のような模様。これはミクロにした数種の違う性質の金属を1100度の熱と圧力をかけたのち、鍛造することによってできる模様です。鍛造(たんぞう)は金属を熱して打つこと。層は目には見えないが64層が重なっています。
例えば建物の鉄筋のように太くして耐久性をもたせるのではなく、包丁は薄くて強くなければなりません。見えないところに、全力の情熱が傾けられているのです。長く使ってこそ気づく良さもまた、命が吹き込まれているからこそ。
高村さんの包丁にはロマンと情熱が詰まっています。
こちら↓のダマスカスは、ハンドルが輪島塗「輪島キリモト」さん製です。
木は能登ヒバを使用し、木目を活かした技法“拭き漆”で仕上げてあります。桐本泰一さんに教えて頂いたところ、能登ヒバは圧倒的に水分に強く、輪島の拭き漆技法を施して、手触りの優しさをさらに強調しているそうです。木部の耐久性を伸ばすことも目的としています。
この包丁は立派な木箱に入っており、ただものではない雰囲気を外観から醸し出していますが、この木箱の木地は小松の「北村木箱」さん製で、こちらも能登ヒバを使用し輪島キリモトさんが“拭き漆”にて外回りを仕上げてあります。
2019年5月は富山金沢のシェフと共に見学をさせて頂きました。
みなさん切れ味を試しながら目が輝きます。私は「あぁこの人たちはもう頭の中で料理を作っているんだなぁ」とひっそり見ていました。
【高村刃物製作所】
住所:福井県越前市池ノ上町49-1-6
公式HP http://takamurahamono.jp/