富山が世界に誇るイタリア料理店「ひまわり食堂」が、「ひまわり食堂2」として2024年4月1日に富山駅前近隣に移転オープンしました。
ミシュラン1ツ星獲得店であり、The Destination Restaurantsの “オブザイヤー2025”(各年に1名のみ受賞できる)に輝いています。



オーナーシェフの田中穂積さんは、イタリアや東京の有名店などで約10年腕を磨き、Uターンにて富山市石倉町で開業。今回は、富山駅から徒歩5分ほどの元銀行をリノベーションして、重厚でモダンな空間デザインのお店になりました。
今回の移転でパワーアップしたというか、元々持っていた腕の高さが最大限に伝わるお店造りになっており、インパクトと残します。本当に感動した。富山で必ず訪れてほしい一店です。
シェフは引っ込み思案だと自称しており(実際そう)、前のお店では厨房内が見えにくい間取りになっていました。しかしながら、今回はどの席からも厨房の様子がバッチリ見えるようになっており、特にカウンターはお客さんの目の高さにシェフの手元が来るようになっているので、料理が出来上がるライブ感に溢れておりワクワクします。
シェフは「まだこの感じが慣れなくて」と照れながらも、意気揚々と料理をしている姿が印象的でした。

ちなみに元銀行なので金庫の扉があり、その奥には2階個室に続く階段があります。

通常の食べ歩きだと1階のメインダイニングが良いことに間違いはありませんが、こちらはこちらで需要がありそうです。


料理の総括ですが、やはりさすがとしか言いようがありません。これまでよりも、この新店舗の間取りによって、良さが伝わりやすいです。シンプルに主役となる食材を立てて、存在感を出し、研ぎ澄まされた完成度で、ガツンと舌の記憶に残します。「ひまわり食堂2」は、ガストロノミーの目的地。富山という土地の可能性を、田中シェフの感性が世界へと押し広げています。
【紹介項目】
2025年11月12日 マンボウの胃袋、アカイカのラザニア、アニョ
・白海老、バターナッツ
富山湾の宝石・白海老を、甘みあるバターナッツと合わせ、昆布の旨味でやわらかく包み込む。

・越中バイ
越中とエリンギに、青紫蘇、赤紫蘇パウダー、ペリーラ(大葉のベビーリーフ)という、ニュアンスの異なる「大葉」の重奏的な組み合わせが面白い。

・魚介スープ、クネル
フランスの伝統をベースに、富山の魚介で再構築したクネル。軽やかながらも旨味が味わい深い。

・デブガツオのカルパッチョ、烏骨鶏の煮玉子
鰹に玉子という、通常であれば冒険的な組み合わせ。
玉子は鯖節でマリネし、魚介の風味をまとわせて鰹に寄り添わせる。さらに薫香を乗せ、富山のたくあんを添えて食感の妙を生む。

・アカイカのラザニア
今回のコースで最も印象的だった一皿。ペアリングの赤ワインも抜群の相性でした。
イカ墨ソースとパスタという組み合わせは一般的ですが、イカ墨使いは上品に、そしてチョリソーの旨味を絶妙に乗せて、つるつるもちもちとしたパスタに絡ませる。

・サワラのバポーレ
バポーレの火入れの見事さに、繊細なスープが調和。コンソメにジャスミンという、清らかでスッとくる組み合わせで、ジャスミン香の白ワインとのマリアージュが冴える。

・マンボウの胃袋
コース外の一品。なんとマンボウの胃袋。ミノのようなシャクシャクとした食感が美味で、パパイヤでアジアのニュアンスを入れて、味の着地が常に予想を超えてくる。
パセリのサルサベルデを添えて。

・アニョ
肉を焼かせたら右に出る者がいないですね。シェフの実力の見せどころであり真骨頂。さまざまな肉の個性を読み解いて、最高の美味しさに仕上げてくるのはさすがです。ベストキュイッソン!
今回はアニョ(子羊)のロース芯を出してくれましたが、実は骨付きのまま焼き上げてあります。肉の水分量、旨味、弾力、アニョの風味が渾然一体となる、至高のメイン。

・えのきのパスタ
とても素朴でシンプルなパスタに見えますが、カラマンシーを柚子胡椒のように使用してあり、予想外の風味で持ち上げられ、酸味と辛味で旨味を引き立てる。シンプルの中に計算された驚きが潜む、こちらもシェフらしい一品。

・富山りんごのクレープ、カルバドスのアイス、海洋深層水のチーズクリーム

今回もまた、新たな魅力を教えてくれました。
2024年12月7日 うさぎテリーヌ、新湊鰤バポーレ、鮭と蓮根ガレット
オープンぶりに訪問。シェフの緻密な計算と、遊び心も感じられるコースで、今回は特に、たまご焼きと白湯の料理には驚きがありました。
・ポテトサラダ
魚津の毛蟹とじゃがいものピュレを合わせた一皿。クリーミーなじゃがいもに毛蟹の旨みが絡み合い、滑らかな食感と優しい甘さが心地よい。

・ゼッポリーネ
ナポリの郷土料理「ゼッポリーネ」は、ふわふわのピザ生地に海藻を練り込んで揚げたもの。磯の香りが立ち上るこの一品には、発酵トマトと赤紫蘇を使ったスープを注いで。このスープの酸味とコクが美味。

・うさぎのテリーヌ
うさぎ肉の繊細で野趣ある味わいを活かしたテリーヌ。ふんわりとしたバジルのムースに覆われているのはキャロットラペ。うさぎと人参。

・新湊鰤バポーレ
新湊の脂の乗った鰤を使った一皿。プンタレッラや冬瓜、甘長唐辛子を添えて。

・たまご焼きと鶏白湯
今回のコースで一番好きだった料理。一見オムレツですが、ソフトなたまごに包まれているのはタコで、絶妙な濃度の鶏白湯スープと合わさると口の中で”明石焼き”の味になるという!発想に驚かされる料理でした。



・蓮根ガレット
美しい火入れの魚津の鮭を蓮根ガレットでサンドして。白ワイン漬けにしたイクラを添えてあるので、鮭といくらで親子丼の要素もあり。豆乳のアリオリが全体を上品にまとめています。

・おわらクリーンポーク炭火焼き
ブランド名そのものの澄んだ味わい。しっかりと素材の美味しさを昇華させているのはさすがです。
添えられた野菜プレコーチェが、ほのかな苦味をもたらし、良いアクセントに。


・きのこのパスタ
ハナイグチ、シバタケ、シャカシメジ、ムキタケ、モタセ、クリタケ、ナメコ、ヒラタケ
8種のきのこからのそれぞれの旨みが、多重奏を奏でる山のパスタ。

・黒部ラクレットチーズのパンナコッタ
黒部産ラクレットチーズを使ったパンナコッタは、滑らかでクリーミーな舌触り。チーズの塩味とキウイの熟した甘みが調和。

・安納芋スイートポテト、ビスコッティ、ハーブティー

富山の恵みを生かしながらも、そこに遊び心や新しい解釈を加え、ひと皿ごとに料理への情熱を感じました。
2024年4月 ホタルイカクレープ、ヤマドリのスープ

●独活と水タコの前菜
素晴らしいお店は、最初の一品でもう決まる。全てがこのプロローグで伝わりました。透明感のある純白な独活の繊細と苦味を味方に付けた一品。春の味。

●鰯のマリネ、カリフラワーのフリット、たまねぎ、ヨーグルト

●ホタルイカ、イカ飯、山菜、山芋クレープ
クレープと言っても、クレープ状にした山芋で、優しい滋味でホタルイカを包み込みます。ホタルイカの出汁が染み込んだイカ飯に、山菜のフレッシュな苦味がアクセントに。

●白海老、生ハム、ホワイトアスパラ、ゼッポリーネ
切り立ての生ハムをハラリとかけたゼッポリーネです。白海老のねっとりとした甘さとホワイトアスパラのみずみずしさが、ゼッポリーネの香ばしさと生ハムの旨みに溶け合う。

●ヤマドリのスープ、発酵ナメコ
胃から全身の細胞に染み渡るような、クリアでパワーのあるスープ。

●アンコウのポワレ
これほど美味しいアンコウのポワレは初めて出会いました。
アンコウは頬肉の部分で、プリっとしていて存在感あり美味。アンコウのゼラチンを乳化させたソースがベストマッチ。

●おわらクリーンポーク炭火焼き
度肝を抜かれた一品です。うっすら桃色に色づくシルキーな肉質は火入れ完璧。その絶妙な塩で引き立つ甘さ、サクサクしていながら跳ね返す弾力あり、咀嚼するごとにほとばしる旨味がソースとなり、素材を最大限引き立てている。これは何日経っても忘れない美味しさ。

●新玉ねぎのパスタ
クライマックスにまたしても衝撃が。新玉ねぎだけのシンプルなパスタですが、フレッシュでみずみずしく、さらに自然な甘さが凝縮しておりパスタに馴染み、インパクトに残ります。これは何日経っても忘れない美味しさ。

●ドルチェ
アイス、クレープ、舳倉島塩

●カモミールティー、ビスコッティ、いちごのチーズケーキ


