鰯料理専門店、その名も“鰯組(いわしぐみ)”さんです。創業は1986年。「鰯」は魚偏に弱いと書き、その漢字の通り非常に傷みやすい魚です。そんな足の早い鰯を鮮度を保ったまま提供するのは大変なことですが、その鰯で一本勝負されているわけですから、親方の東賢栄(ひがしよしはる)さんの強い思い入れが伺えます。
そして鰯は、脂肪が多く生臭い印象のある大衆魚ですが、“鰯七度洗えば鯛の味”ということわざ通り、よく洗って調理することで鯛のように美味しく食べられます。
そのため親方は、厨房でひっきりなしに鰯を流水調理しています。鰯は主に、奥能登の宇出津漁港から水揚げされる新鮮なものを使用。それゆえシケによって提供できないことや季節で内容が変わることもあり。鰯は2月から5月くらいまでは漁獲量が増え、産卵が終わって、また8月くらいから増えてくるそうです。私は産卵前の時期(4月5月頃)の鰯が一番好きです。ベストシーズン。
絶対食べておきたい料理がいろいろあるので、一人だと胃袋が足りないかも。毎度食べたいものがありすぎて困ります。2人くらいで訪問がシェアできて良いと思います。
お店の場所は犀川大橋からほど近く。
「営魚中」の看板にギョギョギョ(笑)。
背の低い木の扉をがらりと開けて中へ。店内見上げると赤ちょうちんがズラリ。昭和の香りがする味な空間で、懐メロのBGMもいい感じ。1階はオープンキッチンのカウンター席で、2階はお座敷席です。
●お通し
箸に結んであるのは鰯占い。こちらもお楽しみに。
お!超大吉!!(5月のお通し。子の煮付けがうまい!)
●鰯のたたき
鰯のたたきを山芋と長ネギ万能ネギで合えたシンプルおいしい一品。山芋のシャキシャキとフレッシュな食感が良い。生姜醤油、もしくはお塩の入ったごま油で。海苔もセットにしてくれるので、のっけて巻いて食べるのも良いですよ。
●鰯のサラダユッケ
毎回注文しているやつ。たたきにした鰯を甘辛ごま醤油だれで和え、たっぷりの葉野菜にのっけた一品。甘辛の味付けが鰯に合っており、さらに卵黄のコクがいい仕事してます。
●鰯骨せんべい
2度揚げして太い骨までサクサクポリポリです。ちょうどよい塩味で食べだしたら止まりません。
●鰯の明太子焼き
鰯単体での焼き鰯もいいですが、これは明太子とフュージョンという「そんなんうまいに決まってるやーん!」なコラボです。明太子がパンパンに詰めてあるので単品料理のなかでは価格は張りますがオススメの一品。量がしっかりなので2人からの注文がいいですね。説明不要のおいしさで、かつ明太子の塩分が濃すぎず、飽きずに食べられるのもいい。日本酒のアテにぴったりです。
●鰯つみれ
●鰯南蛮漬け
●鰯のにぎり寿し
最後はこれをつまんで締めたい。口に放り込むと、鰯とシャリの間に挟み込んである大葉と、こぼれんばかりにのせられたネギと生姜が爽やかなハーモニーを奏でます。新鮮な鰯だけに身がキュッと締まっており、流水調理されていることで雑味がなく、薬味の妙味と抜群の調和をみせます。
●鰯の押し寿司
白板昆布で巻いた押し寿司です。こちらもおいしいのでにぎり寿司とどちらにしようか毎度迷います。押し寿司はテイクアウトにもできるので、お土産でも良いですよ。
●鰯いしるラーメン
お寿司もいいけどラーメンもいい。スープは、なんでもラーメン1杯分に煮干し40以上を使用し1日がかりで作るそうです。クリアなスープですが、クッと濃いめの旨味がありまろやかで、香ばしく、複雑な良い苦味が後を引きます。気付いたらスープまで飲み干していました。
●夏限定「煮干し出汁 冷やしらーめん」
黄金色の透明スープは、煮干しをベースに、奥能登の伝統調味料である魚醤”いしる”を加えてあり、クリアでとてもまろやかな味わい。ほんのり香ばしくて、煮干しの旨味といしるの旨味の掛け算で、余韻に甘さがとくとくと広がります。お揚げが出汁を吸い込むので、口の中でジュワッと広がるのもいい。コシのある麺は全粒粉を使用しておりしなやかで、濃厚な旨味にピッタリでした。
“たかが鰯”だと思ったら「目からウロコ」いつも食べ慣れている鰯との違いに驚くことでしょう。