金沢を代表するレストランのひとつ、モダンスパニッシュといえばここ。ミシュランガイドでは2ツ星を獲得。
オープンしたのは2017年7月。シェフは小学校からの友人である3人の、梅達郎さん、八木恵介さん、北川悠介さんです。食通なら知らない人はいないスペインの星付きレストランなどで経験を積み、皆の夢を結集させ形にしたのがこのお店。男のロマンが詰まったレストランです。さらにソムリエ金村俊宏さんをはじめとするサービス陣が素晴らしく、レスピラシオンの“チーム力”が感じられます。
料理は、金沢や能登といった石川県のローカル食材をより一層探求し、和食とは異なるアプローチで食材を昇華させており、同店だからこその表現と役割をしっかりと果たしているように感じます。珠洲焼や九谷焼き、地元作家さん製の器にも注目です。
店名の「respiracion (レスピラシオン)」はスペイン語で“呼吸”の意。
・「ミシュランガイド北陸2021 特別版」2ツ星獲得(2021年5月19日発表)
場所は、金沢市博労町。と言ってもピンと来ない人のほうが多いと思いますが、近江町市場からほど近くです。建物は明治初期以前から残る町家で、できるだけ現状を壊さずに改装されたそうです。店頭の金色の看板をお見逃しなく。
玄関入るとまず見上げるほど高い吹き抜けとステンドグラスに驚きます。このステンドグラスは尾山神社のものと同じものなのだそうです。
ダイニングは2フロアあり、オープンキッチン前のテーブル席は臨場感あり。金沢らしい趣とラボの雰囲気、情熱的でクールな空気がダイニングに漂います。
さらに2021年1月に、築150年の蔵を改装したウエイティングルームができました。まずはこちらでお茶を頂いてからメインダイニングに移動となります。
蔵の中央に鎮座するテーブルは、石川県の地形をイメージしたもの。ディフューザーからの香りは四季ごとに変わるそうです。
料理にはスペシャリテがいくつかありますが、コースの冒頭に必ず出てくる甘海老を再構築した一品「インパクト甘海老」は、オープンから作り続けている名物です。
甘海老を一旦分解して、頭の味噌の部分でシートを作り、塩麹でマリネした身の部分に被せてあります。殻や尻尾を焼いて粉末にし、生地に練り込んで2mmのタルトに仕上げます。摘んで一口で口に放り込むと、まずはひんやり甘い身の部分が舌に当たり、鮮烈な甲殻類の風味と香ばしさが追いかけてきて口いっぱいに広がります。
パエリアのメイン食材は季節によって、ホタルイカ、香箱蟹、毛蟹、ボタン海老、のど黒などに変わります。
パンにはうどん粉を使用してあり、どっしりしていますがホワホワ。素焼きの香ばしさにもそそられ、食べ出したら止まりません。
個人的に甘いものは得意ではないのですが、レスピラシオンさんのデザートからの流れがとっても好きです。小菓子まで手が込んでいて最後まで目が離せないんですよね。
【紹介項目】
2022年5月5日 能登猪カネロネス、ホタルイカパエリア
今回個人的に一番印象的だったのは能登猪と阿岸の七面鳥を使ったカネロネス。あとは、シーズンでメイン食材が変わるパエリア、今回のホタルイカも良かったです。
同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
↓写真をクリックすると内容を見ることができます。
●インパクト甘海老 スペシャリテ
●能登牡蠣
岩牡蠣を新玉ねぎと生クリームと魚出汁を合わせたソースで、実山椒を漬け込んだオイルを仕上げにかけて。牡蠣の潮騒とミルキーな味わいに山椒の青い風味を重ね、玉ねぎの穏やかな甘みで包み込む。
●ガスパチョー
トマトの冷製スープ、ガスパチョーのレスピラシオンバージョンです。
トマト液の力強い旨味の上に、能登あんがとう農園さんのフレッシュハーブの複雑な風味が舞う。香川県産のエキストラオリーブオイルを仕上げに。定番メニューでありシンプルな1品ですが、黄金比に驚きます。
●七面鳥/スナップエンドウ
能登 阿岸の七面鳥モモ肉は藁焼きにして。旨味が骨太で、筋肉の弾力もあるが柔らかく、七面鳥ポテンシャルの高さを教えてくれます。外皮の柔らかいスナップエンドウ、石川県ホリ牧場で今朝搾ったばかりの乳で作ったブラータチーズと。ブラータはぬくぬくとした温度で、密度が濃くもっちりとろけて美味。
●まはた/カリフラワー
2週間熟成させたマハタに、とろとろのピルピルソースをかけて。仕上げには、白の世界に炭化させた真っ黒な柚子を削り、ふわっと和の風味を添えて。ミルキーなピルピルソースが、熟成マハタのアミノ酸に調和。
●七面鳥/独活
独活のフリット、阿岸の七面鳥スープ、阿岸の七面鳥ハツ
●九絵
2週間熟成させたクエは、川端さんの無農薬栽培加賀れんこん、マッシュルーム、輪島のバイ貝をバターソースで。能登の天然クレソンを添え、吉田酒造店 手取川さんの酒粕ソースで。加賀れんこん、マッシュルーム、バイ貝の食感が遊ぶ。
●トマト
シェリービネガーに漬けたトマト、グッと輪郭が出て濃厚で、見た目さながらルビー色の味。
●猪
シェフが修行したスペインカタルーニャ地方の郷土料理“カネロネス”を能登のジビエで。
能登の雌の猪と阿岸の七面鳥のレバーを、パスタで筒状に巻いて、ベシャメルにシェリー、仕上げにチーズを振って。
ベシャメルのまったりとした脂肪味に、パワーを秘めたジビエが重なる。咀嚼するごとに広がる、能登の山の光景。余韻まで美味しい印象的な一皿。
●蝦夷鹿/沢野牛蒡
雌の蝦夷鹿の背ロース、コースで使用した端材のソースで。
レスピラシオンさんはいつも肉料理をしっかりキメてくるので、コースの山にググっと気持ちが盛り上がります。
ソースはこれまで使った食材の端材を使用した奥行きのある旨味のソース。七尾の伝統野菜“沢野ごぼう”で、馥郁たる香りを添える。
●蛍烏賊
シーズンでメイン食材が変わるパエリア、今回は活ホタルイカを使ってくれました。今しがたまで生きていたホタルイカを事前調理。パエリア鍋の中で蒸しあげるように調理してあるので、ふっくらつるっとしていて、素材感が伝わる繊細な美味しさです。口の中でピュッと弾けたホタルイカの肝が、口の中で味の染みたパエリアにソースのように溶け合い、グラデーションも美味。贅沢な美味しさ。
●アロスカルドソ 山菜
●苺/蕗の薹
あまおう苺ムース・苺パウダー・苺コンポートに、青い風味と苦味まで味方につけた蕗の薹アイスで春らしいコンビネーション。
●デコポン/ジン
デコポンの一種である鹿児島の大将季(だいまさき)とスペインのクラフトジンを合わせたデザートで、チーズのムース・大将季の果肉・皮のコンポート・キハダの実のアイス・果肉とミルクシートを組み合わせます。
ミルクと柑橘って相性がとても良いですが、精密にガストロノミーに昇華させたデザートです。
●小菓子、ハーブティー
4種類のお菓子で食後の余韻を楽しみます。
サフランと人参、山菜のクレープ、カラヒージョ、ようこそレスピラシオンチョコレート。
カラヒージョは、エスプレッソとブランデーを合わせたスペインの温かい飲み物で、それを球体に閉じ込めて。外膜が薄く、一口で口に入れると液体がピュッと飛び出し、ビターで重厚な味わいがとくとく広がります。
2021年12月22日 月光ゆり根、沢野ごぼう、鰆とホワイトスター
前回から1ヶ月強。2021年、今年4回目のレスピラシオンです。
スペシャリテはスペシャリテでブラッシュアップされていて、新作では珠玉食材の良さをパーンと引き出してあって印象に残る料理が多かったです。今回特に驚いたのは、月光ゆり根。絶品でした。定番スペシャリテの魚料理もなんだか美味しさが増している気がするし。目が離せません。
同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
↓写真をクリックすると内容を見ることができます。
●インパクト甘海老 スペシャリテ
●蕪
蕪を主役にした一品。蕪、蕪のソース、蕪の葉のオイル、さらに蛤出汁の泡をふんわり乗せて。和食に通じる繊細があります。
●ピルピル
2週間熟成させたマハタに、とろとろのマハタのピルピルをソースにして。白の世界に、炭化させた真っ黒な柚子を仕上げに削ります。ローストしたカリフラワーと。
●ガスパチョー
トマトの冷製スープ、ガスパチョーです。香川県産のエキストラオリーブオイルを仕上げに。
トマト液の力強い旨味の上に、能登あんがとう農園さんのフレッシュハーブの複雑な風味が舞う。定番メニューでありシンプルな1品ですが、黄金比に驚きます。
●百合根、加賀蓮根
通常は脇役となる百合根ですが、しっかりインパクトを残した絶品のゆり根です。帯広で栽培される“月光”という品種で、限られた農家さんでしか栽培がされておりません。
45分低温調理。鱗茎が大きく、ほくほくとしていて、まるで熟成させて糖度を増したサツマイモのような骨太の甘さで、バターを効かせたソースに好相性。
●鰆、ホワイトスター
輪島の2週間熟成の鰆はレアに仕上げてあり口溶けも抜群です。その下には、金沢湯涌の「きよし農園」多田礼奈さんが育てるホワイトスターという品種のネギ。寒くなるに連れて甘味が増したネギの、火入れをしてとろとろになった中心部だけを使っており、MAX値に高められた天然の甘さのジュがソースのような役割を果たします。
●里芋、七面鳥
あんがとう農園の里芋を、阿岸の七面鳥の出汁で3時間煮込みます。蜜柑のオイル、アルバ産白トリュフをはらりと添えて。
阿岸の七面鳥は今回はスープとして出てきましたが、七面鳥に持つパサパサなどのネガティブな印象を覆す肉質の良さで、旨味を蓄え美味なのです。能登自慢のお宝食材です。
●猪、のと115
シェフが修行したスペインカタルーニャ地方の伝統料理フリカンドーを、能登の原木椎茸「のと115」と猪で。猪はタルタールのような口溶けで、野趣と原木椎茸の力強さがマッチしています。
●蝦夷鹿
一目瞭然のパーフェクトな火入れ。蝦夷鹿は部位は背ロースです。レスピラシオンさんは、いつも肉料理をしっかりキメてくるので、コースの山にググっと気持ちが盛り上がります。
ソースはこれまで使った食材の端材を使用した奥行きのある旨味のソース。七尾の伝統野菜“沢野ごぼう”のピュレと。
●香箱蟹、加能蟹
シーズンでメイン食材が変わるパエリア、今回は香箱蟹と加能蟹のパエリア。香箱ガニが食べられるのも今年はあとわずかなので、味わって食べました。
蟹の旨味が染み込んだご飯から、咀嚼するたびに甲殻類の旨味と風味がにじみ出します。
アイオリソースには今回は蟹の旨味を加えてあります。
●アロスカルドソ 輪島の白子を乗せて
●洋梨、大葉
洋梨の果肉と洋梨ジャーベットにミルクシートを被せて、洋梨パウダーと大葉オイルをかけて。
しんしんと雪が積もる冬の金沢をイメージした一皿。和梨にはない洋梨独特のミルキーな味わいに、ミルクシートが調和します。
●紋平柿、黒文字
艶やかなオレンジ色が眩しいデザート。蜜柑などの柑橘ではなく、紋平柿とあんぽ柿ピュレを層状に重ねたミルフィユなんです。ねっとり甘いというよりも透明感のあるすっきり爽やな美味しさで、ジューシーで風味も良い。
●お茶菓子
4種類のお菓子で食後の余韻を楽しみます。
エスプレッソとブランデーを合わせたカラヒージョというスペインの温かい飲み物を球体に変えて。外膜が薄く、一口で口に入れると液体がピュッと飛び出し、ビターで重厚な味わいがとくとく広がります。
蜂蜜とヨーグルトのムースで包んだヤギのチーズ。りんごのコンポート入り加賀棒茶ブッセ。ようこそレスピラシオンチョコレート。
ハーブティーと共に。
2021年11月9日 熊フリカンドー、七面鳥と能登松茸
日に日に冬めいてきて、北陸の食材が本領発揮してくる季節の始まりです。
今回印象的だったのは、ブラッシュアップさせたピルピル、熊のフリカンドー、里芋と鮑、輪島白子のアロスカルドソ。パエリアは香箱蟹と加能蟹でした。
同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
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2021年9月1日 阿岸の七面鳥、能登の日本鹿
今回とても印象的だったのは、阿岸の七面鳥と能登の日本鹿、ヘタ紫なすのエスカリバーダ。食材の季節としては難しい時期だったと思いますが、工夫されていた印象を持ちました。
同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
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2021年4月25日 涙豆、発酵トマト、ホタルイカパエリア
主役となる食材の魅せ方が上手で、一つ一つの料理にちゃんと「おいしい」を置いてあります。新作も多く、構成もメリハリが効いていて、なんだか凄みを増している印象でした。
発酵トマトが衝撃の美味しさでした。
同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
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2020年10月25日 能登鮑ブニュエロ、毛蟹パエリア
厨房を仕切るのは梅シェフ。コースの流れはいつも通りですが、スペシャリテはブラシュアップされていて中には変化を加えたものもありました。さらに梅シェフの新作も加わっており心踊りました。また、前回よりもさらに地元食材ひとつひとつを深掘りしていることが料理に感じられました。
同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
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2020年3月7日 能登鰻ビーツ、湯涌日本鹿
同店は「北陸・トップ100レストラン」に選ばれています。
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2018年11月18日 凸凹、温度焦点、無秩序
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2018年3月下旬
●自家製サングリア
シナモンほんのり香るおいしいサングリア。角切りのリンゴは食べられます。
●アミューズ
地物の甘海老の頭の味噌部分と身、殻を“再構築”したアミューズからスタート。ひんやり舌に当たる甘い身の部分と、さらに底面は甲殻類の風味が鮮烈な殻のビスケットです。なるほど甘海老が再構築され、個性がバーンと前に出ておりおいしさは何倍にも。
●ヤリイカモルーノ
ヤリイカ、河北潟の川端さんの加賀レンコンのお料理。イカ墨のソースは油っ気がないのにコク深く美味。レモンのエスプーマが爽やかな酸味をプラス。食感もおいしい。
●混ぜるサラダ
季節で野菜は変化。生ハム骨の出汁をエスプーマにしてあり、混ぜると卵黄とエスプーマが絡み合い、ふんわりカルボナーラのようなおいしさが寄り添います。
●ピルピル
スペイン料理の代表格ピルピルは、能美市でモーツァルトを聞かせて育てた舞茸を添えて。乳化した部分がミルキーで美味。パンにつけて。
●ガスパチョー
本来はトマトですが、これはキウイと小松菜で。その2つの絶妙なコンビネーションで、青い風味とトロピカルな味わいがマッチ。
●サワラ
七尾のサワラは、芯温43度にキープしてミキュイに仕上げてとける口どけ。
●イベリコ豚
おいしさに唸った一品。イベリコ豚ベジョータの背部分の“天使の翼”と呼ばれている部位で、おおらかで豊満な味わいかつ、脂肪のしつこさはなく、じっくり目を閉じて浸りたくなるおいしさでした。
●ボタンエビのパエジャ
さっきまで生きていたボタンエビをパエジャにしてくれたので、エビの新鮮さが伝わって美味でした。
●ブルーベリーのソルベ
デザート1皿目はブルーベリーのソルベにヨーグルトのエスプーマ。ヨーグルトのやわらかい甘さと程よい酸味、ブルーベリーの色そのものの濃厚でジューシーな味わいと口の中でグラデーションを描きます。
●石川県産有機きな粉 スペイン産ペドロヒメネス
美味!ペドロヒメネスから作った自家製黒蜜をかけて。きな粉の温かでほっこりした味わいに抜群の相性を見せます。懐かしいけど新しい味。
●コーヒー、小菓子